谷口のモテ期(?)とその終わり ◆d6XolF19qU
何で俺がこんな目に合うんだ? 俺は無茶苦茶ビビってた。
急に家からあそこに呼ばれたと思ったら殺し合え?
それで知らないおっさんが文句言ってたらいきなりおっさんがぶっ飛んで、
そしたら次は女の子もふっ飛んで……これ以上何も考えたくない。
これ以上考えたってあの二人と同じ首輪を俺もつけられている事実は変わらねえ。
糞っ! 信じられねえ! なんで俺がこんな少年漫画みたいな事に巻き込まれているんだよっ!?
ただの学生である谷口が間近であれほど鮮烈な誰かの死を突きつけられた事などもちろん初めての事だ。
人の死なんてテレビの中での出来事、又は学校で又聞きで誰それのじいさんばあさんが寿命で亡くなったとか聞くのがせいぜい。
だが今は違う。
谷口の周りが、見覚えのない初めて訪れる場所だという事を考慮に入れてもただの建物が普段とは違って見える。
ビルの物陰から自分を殺そうとしてる誰かがこちらを窺ってる様に思えて全く気が休まらない。
次の瞬間に自分が誰かに襲われる恐怖が絶えず谷口の心を蝕んでいく。
ひんやりとした首輪の感触が無性に気にかかる。
今すぐにでも外したいが、無理に外そうとすれば爆破されるに違いない。
あの首輪を爆破された少女の姿に自分自身の姿が重なる。
「い、嫌だあっ、死にたくねえよおぉ……」
嫌な想像が止まらない。
首輪を外そうとして手をかけた瞬間、カウントダウンが始まって…
束縛から抜け出ようとした罰を知らせるのは無機質な電子音。
更に躍起になって首輪を外そうとするが所詮は無駄で…
そして審判の時は訪れ、自分の首輪は――
「嫌だ、嫌だ、嫌だあよおぉ……」
想像してしまった。
自分が死ぬ瞬間をリアルに想像してしまった。
さっきより余計に周りの事が気にかかる。
今は建物の中だからこのまま自分以外の人間が死ぬまで隠れていればもしかしたら生きて帰れる。
でもそれまで自分の心が耐えられそうにない。
建物の中でも安心できない。
(どうする? どうする? このままじゃ誰かに殺されちまう。
どうすればいいんだよっ!? 何か無いか? そうだ、あの糞狸が言ってた支給品!)
今まで持っている事を忘れていた四次元デイバックに注意を向け、中身を漁る。
確かにあの狸が言ってた通りのアイテムはあったがこれでは身を守れない。
俺は夢中で中身を探る。
そして出てきたのは銃と刀と……銃の様な物? おもちゃか?
とりあえずまず本物の方の銃を手に取って見てみる。
やっぱり持ってみるとテレビで役者が軽々と扱ってるのとは大きく違う。
武骨で黒光りしててずっしりと重い。無機質な感じが自分は兵器だと自己主張している様で無茶苦茶存在感がある。
こうして持ってるだけで背筋がぞくぞくする。
もう一つの刀は……素人の俺がまともに扱える自信がないというか自分の足を切りそうな嫌な予感しかしない。
……とりあえずどういう原理か知らないがこっちはデイバックの中に戻しておく。ついでにおもちゃも直しておく。
支給品に銃があったのはついてる。こいつさえあれば俺は、死ななくてすむんだ。
別に俺は人を殺したいわけじゃない。ただ襲われたら俺も攻撃し返すだけだ。
そう! 正当防衛! これは正当防衛なだけだ!
ともかくこれで一安心だ。後は人数が減るまでどこかに隠れて…
「ね、ねえキミ、大丈夫?」
突然そんな声が聞こえた。そんな声を谷口にかけた相手は鮮やかな金髪と吸い込まれそうな綺麗な瞳を持っていた。
人が本当にびっくりすると何もできないらしい。谷口はしばらくただぽかんと口を開けて彼女を見ているしかなかった。
◇
「……ホント、マジですまねえ。テンパってたわ」
「それは仕方ないと思いますよ。だっていきなりこんな状況に放り込まれたんだし…」
正直、警戒され疑われてもおかしくなかったのに向こうはこちらの挙動を不問にしてくれた。
シャルロット・デュノアと名乗った女の子も学園で普通に生活していたら突然ここに呼ばれて放り込まれたらしい。
こんな状況じゃなかったら駄目元でカラオケにでも誘いたいなあと思えるほど可愛い。
着やせするタイプみたいだが……うん、胸も大きそうだ。しかも明るくて性格もよさそうだしこれは高ポイントだぜ。
そうだよな。よくよく考えてみれば俺一人で生き残るなんて無理ゲーに近かったし
案外ゲームに乗っていない奴の方が多いかもしれない。
そうと決まれは仲間を探そう、その方が生き残る可能性が高くなる。
「なあ、ここで引き籠るのもなんだしもっと仲間になりそうな奴を探さ、っておい!」
「ごめんね、でも僕も凄く怖いの…」
ちょ、いきなりびっくりするだろ。急に抱きつかれるとか心臓に悪い、あ、いい匂いが。
いや、確かにこういう展開もありというばありだがこんなの反則だろ?
……特に胸が当たってるとか。
「本当にごめんね。初めて会った人にこんな事しちゃうなんて最低だよね?」
「いやいやっ! そんな事無い無い。俺でよければ何時でも抱きついていいからさ」
「……キミも優しいんだね。日本の男の子ってみんな一、……優しいのかな?」
シャルロットが更に俺に抱きつく。おおう、胸の感触が更に、沈まれ、沈まれ俺。
今は我慢する場面だろ。この段階でがっついたら嫌われるから落ち着け俺。
「い、いやあ、ほら、こういう時はやっぱり男が女を守らなきゃいけないじゃん。は、はははは」
「男の子が女の子を守るんだ、かあ。本当に……」
谷口を抱きしめている腕に更に力が込もる。
「……こんな状況でなかったらお友達になれたかもね。本当にごめんね」
「へえ? どういう……」
ガッ
後頭部に何かがぶっかる。一瞬の激痛。体中の力が急激に抜ける
立ちくらみしたよりも視界がぶれて、視界が……急に辺りが暗くなって……
そして谷口が最後に見たのは強張り、青ざめた彼女の表情だった……
◇
彼女――シャルロット・デュノアが谷口を好ましく思い始めていたのは本当だった。
何故なら彼女の想い人、彼とは大きく似ていなかったが女の子に優しい日本人の男の子という一点で織斑一夏を連想されていたから。
谷口に声をかけるずっと前から彼を観察していた。傍目から見ても冷静さを失って近寄って会話するのも躊躇われた。
同行者にするにしてもただの一般人、それも挙動不審な男の子と一緒に行動していたら足を引っぱられるのは目に見えてる。
それでも近づいたのは彼女の支給品で役に立ちそうなのがアイスピック。後は役に立ちそうにない物ばっかり。
だから多少危険であってもここで彼に接触する必要があったのだ。
隠し持ったアイスピックで彼の支給品を奪う為に。支給品が貧相なら奪えばいい。
そしてシャルロット・デュノアは谷口を殺したのである。
「……………っ!」
弾かれた様に谷口の死体から目を背けると急いで彼の銃とアイスピックを自分のデイバックに入れる。
それから相手のデイバックを奪い取ると脇目もふらずにその場を走り去る。
手足がガクガクして走りにくい。胃もムカムカして吐き気が込み上げてくる。
本当は殺したくなかった。殺しなんてしたくなかった。
谷口は自分を守ると言ってくれた。だがシャルロットはそんな彼を裏切った。
だが殺した。一時の気の迷いではなく、自分の意思で殺したのである。
「…………一夏、みんな……」
それでも、それでもあの場所に帰れるのなら。
自分がやっと得られたあの場所に帰れるのなら。
あの温かくて光溢れる場所に帰れるのなら、彼と親友達の元に帰れるのなら。
失いたくない。織斑一夏の隣へ、みんなの元へ帰れるのなら……
もうひたすらに進むしかないのだ。
【谷口@ハルヒの憂鬱】死亡
【F-4/ビル内部/深夜】
【シャルロット・デュノア@インフィニット・ストラトス】
[状態]:精神疲労(中)みんなに再会したい
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、S&W M36(5/5)@現実、S&W M36の弾丸(30/30)、
アイスピック、刀の様な物、銃の様な物、支給品1~2(シャル視点で武器ではない)
[思考・状況]基本優勝してでもみんなの元に帰る
1:出来るだけ敵を増やしたくない(無意識の非殺?)
2:だが殺せそうなら殺す
備考:F-4/ビル内部に谷口@ハルヒの憂鬱の遺体が放置されています
最終更新:2013年02月24日 00:26