幸物語 ◆Z9iNYeY9a2
数多くの世界を巡るループの果て。
結局まどかの魔法少女の契約を止めることはできなかった。
まどかは私を救うためにインキュベーターと契約を結び。
概念となって消え去っていった。
全ての魔法少女を、魔女の定めから救うため。
魔法少女は夢と希望を叶えるものだと。
いつかまた会えると。
そういったまどかの声が未だに頭の中に残っている。
そして、最後にまどかの姿が霞のように消えていって。
気がついたら青い狸に殺し合いをしろと命じられた。
「私はどうなったの…?」
記憶はある。意識もある。
ソウルジェムもその手にはしっかり備わっている。
ほっぺたを抓る。痛い。おそらく夢ではない。
ではさっきのまどかとのやりとりの方が夢だったのだろうか。幻だったのだろうか。
体を探ろうとして、手の中に握り締められた布の存在に気付く。
「まどか…」
真っ赤なリボン。消える直前、鹿目まどかが託してくれた、彼女がいたという唯一の証。
あれが夢ではなかったということは、これで分かった。
ただ、今は悲しみより混乱が大きかった。ここがどこなのか。自分はどうするべきなのか。
周囲を見回すと、ここはどこかの市街地のようだ。
しかし自分達の住んでいた場所と違う、見たことのない街並み。もし見知った風景であれば行くべき場所に見当をつけられたのだが。
と、歩き出そうとした時に気付く。
足が動かない。まるで石にでもなってしまったかのように。
「ゴルゴンって知ってるかしら。
ギリシャ神話に出てくる蛇の化け物。
その目を見たものはみんな石に変わるっていうあれよ」
背後からそんな声が聞こえてくる。おそらく性別は女だろう。どこかで聞いたことがあるような声だ。
ついでに鎖を引きずっているかのようなジャラッという物音。
「それで、私の支給品の中にはその首が入ってるらしいのよ。
まるでペルセウスにでもなった気分ね」
振り返ろうとした瞬間、光線のような何かが煌く。それは腕や腹部に当たり、両腕の、胴体をも石のように固めた。
気がつけば頭以外の全身をほとんど硬化。後ろを振り向いて確かめることもできない。
「さて、今この場においてあなたがするべきことは分かるかしら?
とはいってもその体でできることなんて無いでしょうけど。
大人しく支給品を渡してこの場で静かに死ぬことよ」
そしてその女は背後まで迫る。
気配と音でしか確認できないため推測しかできないが、おそらくその手に持っている凶器を振り上げたのだろう。
そのような絶体絶命とも言える状況の中、ほむらは沈黙を守り続ける。
そして静かに目を閉じた瞬間。
鎖の擦れる音と共に、女であろう背後の存在はその背に武器を振り下ろした。
◆
「…どういうつもりかしら」
「それはこちらのセリフよ」
数分後、そこにあった光景は血まみれで倒れた暁美ほむらではなかった。
腕の関節を極められた状態で地面に伏せられた者と、相手の腕を極めてその背に乗った者。
前者はほむらを襲った女であり、後者は暁美ほむらだった。
体を石化させられたはずの少女がなぜ迫り寄った襲撃者を組み伏せているのか。
「あなた、私を殺す気なんてなかったでしょ?」
「別に何ということはないわ。まず第一印象。大人しそうな女の子ね。
体を石にされたときの反応。特に取り乱すようなこともなく至極冷静だったわ。自分の体が石になっているって御伽話みたいな目にあっているというのに、よ?
あとあの石化ね。割とちょっとした拍子で元に戻るくらいには弱体化させられてるらしいのよ。あなたみたいに、何か特殊な力を持っている者なら、やり方次第ですぐ解除できるくらいには」
あの時ほむらは咄嗟に身に着けた服を魔法少女のそれに変化させた。反射的行動だったのだろう。
そして、その瞬間完全に固められたはずの部位は一斉に解除され自由になった。
全身に魔力がまわった影響なのだろうか。
あとのことは大したことではない。そのまま背後にいた女の腕をとり、流れるようにこの態勢に持ち込んだ。
油断ゆえの動揺があってしかりのはずのその状況で、女は顔色一つ変えずその結果を受け入れていた。
「もし最初に見つけた人物の第一印象が、そうね、不良、ヤクザやマフィア、怪獣や吸血鬼やクソガキだったならまず逃げたわね。
石にしたときの反応が、驚きのまま喚き散らすだけならそのまま支給品を奪って逃げたわね。
そして、石になったままだったらまた同じだったでしょうね。
でもあなたはそのどれも違ったわ」
「…危ない賭けね。私があなたを殺さない理由としては不十分じゃない?」
「かもしれないわね。でも私は私の人を見る目を信じたわ。実際あなたは私を生かしているじゃない」
極めた腕を解き、その背から離れる。
「用件を言いなさい」
「そうね。単刀直入に言うわ。私を守ってほしいの」
改めて女を見据える。
おそらく高校生くらいの身長。女子としてはそこそこの長さの黒髪。服装はどこかの学校の制服だろう。
少し離れた場所には木箱が落ちていて、右手には鎖のついた釘のような短剣を持っている。
「こんなことやってるけど、私死ぬのは怖いのよ。
いきなりドラえもんに殺しあいをしろなんて言われて、どうしたらいいかなんて分からないもの。藤子・F・不二雄先生はどう思っているのかしら?
だからと言って、言いなりになって人殺しをするわけにもいかない。阿良々木君に血まみれの彼女なんて似合わないから。私まだ阿良々木君の彼女でいたいのよ。
当然死ぬって選択肢もないわ。彼女、って発言で分かると思うけど、私には帰らなければいけない場所があるのだから」
「それで私に守ってほしいと?」
「もちろんただとは言わないわ。生き残ることができたら私にできる範囲で、どのようなことをしても代価は払うわ。
別に無理強いはしないわ。無理ならこのまま去ってもらっても構わない。
無理を言っているのは分かっているけど、私にはこうするしかできないのよ」
そんなことか、と溜め息をつきながらほむらは相手を見つめる。
当然その懇願を受けるかどうかの決定権はこっちにある。
そもそも生き残れるかどうかについては自分の手で守りきれるかどうかなど分からない。利己的に動く魔法少女のような者がいたらどうなるだろう。
守りきれなかったときは守り損だろう。時間の無駄になるだけだ。
「……」
ふと視線を落とすと、握り締められた手の中にあるリボンが目に入る。
さっきの襲撃の中でも決して手から離すことのなかったもの。
「…、そうね。別にタダで受けてあげてもいいわ」
「なるほど、あなたは相当のやり手のようね。そうやって甘い蜜を垂らして多くの人間を騙して…恐ろしい子」
「?」
「タダほど怖いものはないのよ。…まあでもあなたの反応を見るにそっちじゃない選択肢だったみたいね」
まさかそんなお人よしを捕まえられるなんてねとボソリと言ったのを聞き逃さなかった。
「まあいいわ。それで、世話になっていいのかしら?」
「ええ、どうせ私も何をしたらいいか考えていたところだから。
暁美ほむらよ。よろしく」
「戦場ヶ原ひたぎ。私立直江津高校三年生よ。名前を呼ぶときはひたぎ様と呼びなさい」
「………」
「冗談よ。そんなキョトンとした顔しないで」
◆
まどかのいない世界。でもかつてまどかがいたという確信はある。
たとえまどかがいなくても、それでも生きていかなければいけない。きっと自分がこうやってまどかのことを覚えているのもきっと意味があるのだろう。
ならば私がどうやって生きていくべきなのか。
もしかしたら、帰る場所があると、待っている人間がいるといった彼女が羨ましかったのかもしれない。
まどかは言った。魔法少女は夢と希望を叶えるものだと。
もしこんな私でもこれから生きていく意味を持ってもいいのなら。
夢と希望を叶える魔法少女。せめてこんな殺し合いなんてふざけたこの場でくらいはそんな存在になれるかもしれない。
戦場ヶ原ひたぎという者に自身の命を守ってほしいと請われたとき、ふと思ったのだ。己のやるべきことを。
あの時まどかに救われたように、誰かを救えるような魔法少女に。
まどかのいた証であるリボンを髪に結びながら、ほむらはそう願った。
「それにしても暁美ほむら、だったかしら?いい声してるわね。まるで斎藤千和さんみたいな」
「誰よそれ?」
「何でもないわ。気にしないで」
【F-5/市街地/深夜】
【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:健康
[装備]:魔法少女服、ツインテほむ
[道具]:支給品一式 、不明支給品(1~3)
[思考・状況]
1:夢と希望を叶える魔法少女を目指す
2:そのために青狸を倒す
3:とりあえず戦場ヶ原ひたぎをできる限り守る
[備考]
※12話、まどかと別れた後、改変後の世界にたどり着く前からの参戦です。
※使える魔法は弓と羽の方ではなく時間停止です。時間遡行は使えません。
※まどかのリボンは没収漏れしたものです
【戦場ヶ原ひたぎ@化物語】
[状態]:健康
[装備]:無銘の短剣@Fate/stay night、ゴルゴンの首@ドラえもん
[道具]:支給品一式、 不明支給品(0~1)
[思考・状況]
1:生き残って阿良々木君の元に帰る
2:でも殺し合いには可能な限り乗らない
3:生き残るためにとりあえず暁美ほむらに守ってもらう
[備考]
※参戦時期は少なくとも偽物語後です。
※二人の元にはまだ少佐の演説は届いていないようです
【ゴルゴンの首@ドラえもん】
ドラえもんの秘密道具。
岡持ちのような蓋の付いた箱に、光を当てた部位を石のようにする光線を放つゴルゴンの首が収められている。
原作においては石化は首についた蛇状の髪を引くことで解除された。
本ロワにおいては以下のような制限がかけられている
- 石化時間は数分程度。必ずしも髪の毛を引っ張る必要はない
- 時間をおかずとも何らかの他の手段で石化を解除することは可能
- 光線は、ゴルゴンの首が箱に収められている限りは参加者の下になければ発することはできない
【無銘の短剣@Fate/stay night】
ライダーの持っていた武器。
長い鎖のついた太い釘状の武器であり、本編では刺突、投擲といった手段での攻撃に用いられた。
特にこれといった特殊な効果は持っていない。
最終更新:2013年02月27日 01:39