56 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/08(日) 18:22:24 ID:HX66qydY0
第4話~恐るべき絶対零度の天才~
「ひ、氷室・・・。」
「ん?君は・・・。」
非常にまずい相手にあってしまった。
氷室 蒼と対峙している少年、紺野 涼一(こんの りょういち)はそう思っていた。
起きてみたら一人で部屋に寝ていて、誰かいないかと外に出てみたらいきなり出くわしたのが氷室とは・・。
氷室と直接デュエルしたことは数えるほどしかないが、1度も勝った覚えはない。
その才能はこのクラス最強と言っても過言ではなかった。
戦うことになれば、勝てる確率は大分低いだろう。
涼一は考えていた。どうやってこの場から逃げるか。
涼一は、友達の数はそこそこ、成績は中の下。デュエルの腕もイマイチ。
女の子など無縁な、どこにでもいるマンガ好きな男子だった。
特技といえば部活でやっているテニスだが、飛びぬけてうまいわけでもなく、いまいちぱっとしない奴だ。
「や、やあ、氷室。無事みたいだね。」
「ああ。」
「もう、誰かとデュエルした?」
「いいや。」
違和感のないような世間話を切り出した。
氷室から敵意は伝わってこない。
うまくすれば、何事もなく終われるかもしれない。
「俺もまだなんだよ。いやーまいるよなーこんなの。」
「そうだな。」
「氷室は強いからいいよな!俺なんてなー。」
「・・・。」
氷室の表情は変わらない。
その無表情な顔は、何を考えているのかわからない。
涼一は少し焦りを感じ、背中に嫌な汗をかいていた。
「こ、これからどうするんだ?」
「そうだな・・・。」
氷室は考え込むような素振をしている。
「適当にぶらついて、友達でも探すか。」
「そ、そうだな!俺もそうしようと思ってたんだ!」
涼一はほっとした。どうやらここで涼一と戦う気はないようだ。
そうと分かればここでこんな世間話をしている必要もない。
氷室とはどうも話しづらい。一刻も早くこの場を離れたかった。
「そ、それじゃ、じゃあな!友達見つかるといいな!」
涼一はそそくさと走り去ろうと後ろを向いた。
こんなにあっさり逃げられるとは、氷室が意外と穏便なやつでよかった。
さてと、内山田はどこにいるかな・・・。
などと思いながら走り出そうとする。
だが・・・
「ひっ・・・・!?」
気づくと、足が動かなくなっていた。そしてとても冷たい。
恐る恐る見てみると、足は凍りつき、地面とくっついていた。
「う、うわあああ!!」
驚いて、腕をばたつかせながらもがく涼一。
だが足はぴくりとも動かない。
「へぇ。本当にカードの効果が実体化するんだな。」
「・・・!」
後ろを振り向くと、氷室が不敵な笑みを浮かべにこちらを見ていた。
その手には何かの、おそらく足を凍らせた効果を持つカード。
ま、まんまと騙された・・・!?
「な、なんのつもりだよ!!離せよ!!」
「逃がすと思ったか?僕も、目の前に現れた獲物をみすみす見逃すつもりはないのでね。
君にはここで氷像になっていてもらうよ。」
甘かった。氷室は露骨な敵意こそ見せないが、その心の奥でひっそりと獲物を狙うようなタイプだった。
氷室がデュエルディスクにカードをセットしようとする。
このまま殺されてたまるか。とっさに涼一はカードを発動させた。
「げ、激流葬っっ!!」
「ちっ・・!」
涼一のデュエルディスクにカードがセットされ、効果が発動される。
どこからともなく物凄い勢いで水流が押し寄せた。
その激流で足の氷は砕かれ、涼一も氷室も、なす術もなく流されてしまった。
57 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/08(日) 18:23:04 ID:HX66qydY0
「ぐっ・・・。ゲホッ・・・。」
激流に流され、壁に叩き付けられた氷室は肩を抑え立ち上がった。
「あんな無茶な効果まで起こせるのか・・・。」
あたりは水浸し、服も濡れていた。
だがカードやデュエルディスクに問題はないようだ。よくできている。
「腕を凍らせるべきだったな。
全く、やっかいな事をしてくれる・・・。」
氷室は服をしぼりながら辺りを見回す。どのくらい流されたのだろうか。
ふと見ると、涼一がゆらりと立ってこちらを見ていた。
その顔には相変わらず怯えが見える。
「ふん。どうするんだ?僕とデュエルでもするか?」
氷室は身なりを整えると、涼一に向き合いデュエルディスクを起動させた。
涼一に選択の余地はなかった。
逃げ出したい。勝てるはずない。
だが、今背を向ければ、おそらく今度こそ殺される・・・。
みすみす殺されるくらいなら、一か八か、デュエルに賭けてみようか・・・。
深呼吸し、ようやく覚悟を決める。
そして涼一もデュエルディスクを起動した。
「肩慣らしにはなるかな。」
「お、俺だって、負けるもんか・・・!」
「「デュエル!!」」
58 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/08(日) 18:25:25 ID:HX66qydY0
氷室 LP:8000
涼一 LP:8000
「俺の先行!ドロー!
よし!手札から伝説の都 アトランティスを発動!」
フィールドが、遥か昔海に沈んだという幻の都へと変化する。
涼しげな青い光に、苔むした岩の建物の立ち並ぶ都。
その海の底の街では、水属性モンスターが縦横無尽に泳ぎ回る。
「なるほど。君のデッキは水属性デッキか。」
「ああ!モンスターを1体守備で召喚してターンエンド!」
「僕のターン、ドロー。
モンスターを守備で出してターンエンド。」
お互い変化はなく1ターン目が過ぎる。
だが涼一は次のターンで攻めに出る自信があるようだ。その顔には笑みが浮かんでいた。
「俺のターン、ドロー!
よーし・・!手札から牙王鮫アギトを召喚!」
《牙王鮫 アギト》
効果モンスター
星5/水属性/魚族/攻2200/守 600
涼一のフィールドに巨大な赤紫の鮫が現れる。
アトランティスの効果によってレベルが4へ下がり、生け贄は必要ない。
体には無数の傷跡が残っているが、全てを食いちぎらんと恐ろしい牙を剥き、目はギラギラと輝いている。
「そんな守備モンスター、食い破ってやる!!
行けー!アギト!ブラッディバイト!!」
アギトが高速で泳ぎ、伏せモンスターに食らいつく。
だがアギトの牙は、伏せモンスターの張った氷のバリアに防がれていた。
「な!」
「僕のモンスターはブルーマジシャンだ。
こいつは1ターンに1度戦闘では破壊されないエフェクトを持つ。」
《ブルーマジシャン》
効果モンスター
星2/水属性/水族/攻 600/守1400
「く、くそっ!だけど、アギトは守備モンスターを攻撃した時貫通ダメージを与える効果がある!
くらえ!!」
アギトの牙による攻撃が血のような紅色をした閃光となって氷室に襲い掛かった。
そのダメージは800程度。氷室は顔色一つ変えない。
「こんなものか・・。
ああ、そうだ。ブルーマジシャンを攻撃したモンスターにはアイスカウンターが一つ乗る。」
アギトにアイスカウンターが乗せられた。
見た目にこそ変化はないが、それは絶対零度の可能性を含む氷の因子。
氷室は、アイスカウンターを自在に利用するアイスデッキの使い手だった。
「ア、アイスカウンター・・・?
まあいいや・・!俺は伏せモンスターをリバース!
深海アンコウの効果で、そのマジシャンをバウンスするぞ!」
アンコウの光に操られ、ブルーマジシャンが氷室の手札へと帰っていく。
さらに、深海アンコウはサイクルリバースモンスター。
自身の効果で再び裏側守備となった。
「俺のターンは終了!」
氷室 LP:8000
涼一 LP:7200
59 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/08(日) 18:26:01 ID:HX66qydY0
涼一のターンで、ライフアド、フィールドアドともに涼一が上回った。
だが氷室は相変わらず表情を変えない。
不利とも、優位とも思っていない、つまらなそうな表情だ。
「僕のターン。ブリザード・ナイトを召喚。
さらに装備魔法、魔剣アイスソードを装備する。」
《ブリザード・ナイト》
効果モンスター
星4/水属性/水族/攻1700/守1500
氷室のフィールドに白銀の雪の騎士が現れる。
さらにその騎士に限りなく氷に近い素材で作られた魔法の剣が装備された。
使い方次第では炎さえ凍らせるという伝説の剣の一つだ。
「アトランティスの効果も受けて、攻撃力2400か・・・・。
う、アギトと相打ちか・・・!」
涼一が少々困った顔をする。
だが、その顔は氷室の言葉によってさらに歪むことになった。
「残念だが、ブリザード・ナイトはフィールド上のアイスカウンター1つにつき攻撃力が300上がる。
君のアギトに一つ乗っているので、攻撃力は2700だ。」
「や、やば・・・!」
「ブリザード・ナイトでアギトに攻撃。」
凶悪な威圧感を持つ鮫の王は、白銀の騎士の剣によってあっさりと狩られてしまった。
アギトが爆発し、その爆風が涼一に襲い掛かる。
「うああっ!」
そのダメージはわずか300だが、涼一はその痛みですら苦痛に顔をゆがめてしまった。
それを見て氷室が少々表情を変える。
呆れたような、哀れむような、そんな表情に。
「ふう。ブリザード・ナイトがアイスカウンターの乗ったモンスターを破壊した時、もう1度攻撃できる。
アンコウを攻撃だ。」
「う、うわっ・・・!」
アイスカウンターがなくなったことでブリザード・ナイトの攻撃力は2400となる。
だが深海アンコウを倒すには十分すぎる攻撃力だった。
裏側守備表示のアンコウは騎士の剣によって3枚に捌かれた。
「く、くそ・・・壊滅しちまった・・・。」
「・・・カードを1枚伏せ、ターンエンド。」
氷室 LP:7200
涼一 LP:7700
あまりにも淡々とした氷室のデュエル。
氷室は普段から、あまりデュエル中に楽しそうな顔をしない。
まるでそれは作業のような。相手を倒すためだけのデュエル。
氷室がデュエル中に少し楽しそうな顔をするのは、自分の想像を超える戦術をこなす相手、自分よりも強い相手とやる時のみ。
だが氷室は天才レベルのデュエルの腕を持つ。氷室より強い相手などそうそう存在しない
このクラスにおいて、氷室に勝つことが出来た最初の一人は、陽だった。
60 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/08(日) 18:26:39 ID:HX66qydY0
1年前・・・。
「神崎くぅーん。ちょーっと遊ばねぇー?」
「むぅ・・・。」
中学に入学したての頃、陽は黒崎率いるヤンキー3人組にちょっかいを出されていた。
陽は普段は大人しめで特に抵抗もしないので、よくヤンキー達のからかいの対象になっていた。
魁が一緒にいる時はヤンキーも手を出してこないのだが、この日は魁は風邪で休みだった。
「なー神崎くーん。黙ってないで何か言えよー。」
(うざいなぁ・・・。)
口には出せず、困った顔で黙り込んでいる陽。
そこに一人の少年がやってきた。
「何しているんだ?お前達。」
「あぁ?遊ばないかって誘ってるだけじゃねぇかよ。なんだてめぇ。」
「そんなに遊びたいんなら、僕が相手をしてやろうか?
無論、デュエルでだが。」
そう言って少年はデッキを突き付ける。
その目は自信と相手への侮蔑に満ち、とても冷たく輝いていた。
「こいつ、氷室か・・・・。」
「あー、このクラスでデュエル成績トップの野郎か。
はん。面白れぇ。俺がその面潰してやるぜ。」
ヤンキー3人組のリーダー格、黒崎がデッキを取り出しながら前に出る。
生意気なクールフェイス気取りを蹴落としてやろうと、邪悪な笑みを浮かべて。
だがその戦いは、僅か数分で幕を閉じた。
氷室は、僅か3ターンで黒崎を打ち負かしてしまったのだ。
「なっ・・・!
い、今のは引きがちょっと悪かっただけだ・・!!もう1度やりやがれ!!」
「何度やっても同じだ。君では僕に勝てない。」
結局もう1度デュエルをすることになったが、やはり3ターンで打ち負かす。
「俺らん中で一番強い黒崎が・・・。」
「くっそ!ふざけんなよ!ちきしょう!覚えてろ!!」
2連敗を喫した黒崎は顔を赤くして机を蹴り大股で帰っていった。
周りからはさすが蒼くーんなどと黄色い歓声が上がっている。
「あ、ありがと。」
「何、大したことはない。」
お礼を言う陽に氷室が軽く微笑む。その目はさっきのような冷たさはなく、どことなく暖かくなっていた。
「君、強いね。」
「まぁな。」
「ちょっと俺とデュエルしてみない?」
陽がデッキを取り出しながら言う。
氷室は少し戸惑ったような顔をしたが、すぐに承諾した。
黒崎達の言葉や、先程2連勝を見せたように、氷室は相当なデュエルの才能を持っていた。
そのお陰で、氷室はデュエルに絶対的な自信を持っている。
こんな大人しい少年に負けるはずはない。だが余り簡単に負かすのもかわいそうかもしれない。
そう思っていた。
だが、氷室の予想は大きく覆されることになる。
「God whom I considered!!コールドエンチャンターに攻撃だ!!」
「攻撃力、8800・・・!?」
陽の切り札、神の前に氷室は敗北を喫してしまった。
氷室はこの意外な展開に言葉を失っている。
周りからも信じられないなどという声が上がっている。
「ふう。結構面白かったよ。」
「あ、ああ・・・。君、強いんだな・・・。」
「まぁね。」
氷室がまだ動揺しているような声で言うと、陽はいつもの眠そうな目で微笑んだ。
この時、氷室はこのクラスに来て初めて思った。
こいつとのデュエルは楽しめそうだ、と。
それ以来氷室は頻繁に陽にデュエルを申し込んでは、楽しそうにデュエルをしている。
陽とのデュエルで見せる少しわくわくしたような顔は、周りの人たちからも少し新鮮だった。
そうして何度かデュエルしているうちに、自然と仲良くなり、氷室は積極的に陽と一緒に行動するようになっていく。
また、陽とのデュエルを重ねるうちに、氷室は陽とのデュエル以外でもデュエル中に楽しそうな顔をする事が心なしか増えていた。
相手を倒すためだけのデュエル。もともと氷室にとってのデュエルはそういうものだった。
だが自分よりも強い相手に出会って、それは少し変わる。
相手をただ倒すデュエルから、相手を乗り越えるデュエルに。
しかし氷室の心は、命がけのデュエルロワイヤルというこの状況によって再び凍りつくことになる。
弱い相手は倒すべき獲物。そこに価値などない。
力を持たない者に生き残る資格はない。
氷室にとってのデュエルは今再び、相手をただ打ちのめすだけのデュエルとなっていた。
61 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/08(日) 18:27:50 ID:HX66qydY0
氷室 LP:7200
涼一 LP:7700
「ドロー!!よし・・・。これならいける!
まずはフィールド魔法、ウォーターワールド!これでアトランティスは墓地へ送られる!」
本来フィールド魔法を2種類使うなど事故の原因になるのだが、涼一は独特の戦術を持っていた。
海の底の都となっていたフィールドは一転し、見渡す限り海の青、そこらではイルカが泳ぎ回るの水の国となった。
「そして魔法カード、伝説の釣り竿!デッキから魚族モンスターを手札に加える!
手札に加えるのは、ジェノサイド・キング・サーモンだ!」
涼一が手札に加えたのは、魚族のかつてのホープ、ジェノサイド・キング・サーモン。
その戦闘能力はジェノサイド・キング・デーモンをも凌ぐ。暗黒海の恐ろしい鮭だ。
だが、涼一はそのカードを召喚することなくそのまま墓地へ送る。
「さらに魔法カード、大魚への生け贄発動!
手札からレベル4以上のモンスターを生け贄に捧げ、手札からレベル8以上の魚族モンスター、究極魚を特殊召喚する!!」
《究極魚(アルティメット・フィッシュ)》
効果モンスター
星8/水属性/魚族/攻3000/守1000
タンカーほどの巨大さを誇り、トゲトゲしい鱗を持つ化け魚が巨大鮭を丸呑みし、涼一のフィールドに現れた。
人間一人など軽く丸呑みにしてしまいそうな恐ろしい巨大魚。
しかしその巨大さからは想像も出来ないほど高速で泳ぐことが出来る強力なモンスターだ。
「へへっ、こいつが相手モンスターを破壊した時、もう1度だけ続けて攻撃できるんだ!
行け、究極魚!アルティメット・スウィム!!」
究極魚がその巨体からは想像も出来ないほどの俊敏さで、一度後ろに下がる。
そして、すぐに方向転換し、ブリザード・ナイトに向かって突撃した。
だが、突如として究極魚の動きが止まってしまう。
「な!?なんで!?」
「速攻魔法、アイスショット。君の究極魚にアイスカウンターを乗せさせてもらった。
そしてアイスソードのエフェクトで、アイスカウンターの乗ったモンスターは攻撃ができなくなる。残念だったな。」
「そ、そんな・・・。」
雪玉をぶつけられた究極魚が、アイスソードから放たれる冷たい風によってカチコチに固まってしまう。
結局何もする事ができず、バトルフェイズは終了した。
「く、くそ。せっかく究極魚出せたのに・・・。
ターンエンドだ!」
涼一は切り札を封じられ、悔しさに顔を歪ませながらターンエンドを宣言した。
これが、最後のターンになることなど知る由もなく。
62 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/08(日) 18:28:22 ID:HX66qydY0
「僕のターン。ドロー。
残念だが、紺野。君では僕に勝てない。」
「な、なんだよ!?
そんなこと、やってみなきゃ・・・。」
「このターンで終わりだ。僕は魔法カード、氷像の接収を発動。」
凍てついた究極魚が氷室のフィールドに移された。
それはまるで氷の彫刻のよう。究極魚はもう動くことはない。
「お、俺の究極魚が・・・!」
「このエフェクトでコントロールを得たモンスターは、攻撃する事ができなくなる。
まぁこのカードのための生け贄にするので関係ないがな。
魔法カード、炸裂氷塊。」
氷像と化した究極魚が、激しい音と共に砕け散った。
そしてその究極魚の残骸は、細かい氷の粒、ダイヤモンドダストのようになってブリザード・ナイトに降り注ぐ。
「お、俺の究極魚ぅ・・・・。」
「アイスカウンターの乗ったモンスターを生け贄に捧げ、そのモンスターのレベルと同じ数、フィールドのモンスターにアイスカウンターを乗せる。
究極魚のレベルは8。よってブリザード・ナイトにアイスカウンターを8つ乗せる。」
「や、8つ!?」
ブリザード・ナイトに8つものアイスカウンターが乗った。
膨大な氷の力を得て、その剣は巨大な氷塊と化す。
アイスカウンターによる攻撃力上昇が2400。アイスソードとウォーターワールドの効果がそれぞれ500。
今やブリザード・ナイトは攻撃力5100の化け物となっていた。
「こ、攻撃力5100ぅ!?や、やばい・・・!」
「さらに俺は手札からコールド・エンチャンターを召喚する。」
氷室のフィールドに現れる白き氷の魔術師。
これもまた、ブリザード・ナイトと同じくアイスカウンターによる攻撃力上昇能力を持っているモンスター。
氷の力を得て巨大化した、雪の結晶を象った杖。その攻撃力は4500となる。
氷室のフィールドに揃った二人の巨大な氷使いに、涼一は言葉を愕然とした。
「ま、負ける・・・。」
「ブリザード・ナイト、ダイレクトアタックだ。」
無感情な声で攻撃命令を下す氷室。
その言葉に従い、ブリザード・ナイトは全長2メートル近い氷の剣を振り回し、涼一に痛恨の一撃を与えた。
「があああああああああああああああああっ!!
アアアッ!かはッ・・・うあああァァ・・・・・!!」
心の準備もなくいきなり叩き込まれた5100ものダメージ。
それは涼一の想像を遥かに超えた痛み。2メートルの氷の刃で全身を寸断される痛み。
涼一はあまりの激痛に、理性を保つことすら困難だった。
「アアァァッ・・・・痛い・・・イタイ、痛いぃぃ・・・!!」
胸を押さえうずくまる涼一を見て、氷室が静かにため息をつく。
しかしそれは、苦しむ涼一への感情など一切篭っていない、やっと仕事が終わったかのようなため息。
「終わりだ。
恨むなら、自分の無力さを恨むんだな。」
そして、最後の攻撃命令を下す。
コールド・エンチャンターが杖を振るうと、涼一の頭上に巨大な氷の塊が現れた。
そして氷は、激しい音を立てながら涼一目掛けて落下した。
「うわあああ────ッ・・・・・」
涼一の最後の悲鳴は、氷の崩れる音にかき消される。
ガラガラという激しい音と共に、一方的なデュエルの幕は閉じた。
やがてデュエルディスクのランプが消え、実体化していたソリッドビジョンも消滅する。
そこには、倒れ、氷のように冷たくなりピクリともしない涼一。
氷室は、ゆっくりと歩み寄った。
「・・・相手が悪かったな。」
表情も変えずにそう言い放つ氷室。
そして涼一のデュエルディスクからキーカードとデッキを抜き取ると、振り向くことなく、静かにこの場を去っていった。
生き残るために勝つしかないのなら、今ここで必要なのは力だけだ。
僕は生きる。愚かな弱者にかける情けなどない。
・・・神崎は生き残っているだろうか。
僕を負かした神崎だ。まさか誰かにやられてるはずがないだろうが。
この戦いは、一体どこへ向かうのだろうか。
生き残るのは誰になるのだろうか。
・・・神崎は、僕を殺すだろうか。
僕は、神崎を殺すのだろうか・・・。
第5話に続く。
最終更新:2007年08月25日 19:09