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第6話~秘めたる力、必殺!エレメンタル・フォース!!~

100 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/19(木) 13:58:10 ID:VqIlGzHc0
第6話~秘めたる力、必殺!エレメンタルフォース!!~

「うはー!すげー!本物のエリアたんだー!」

ここに、実体化したモンスター、水霊使いエリアをぎゅっと抱きしめている少年が一人・・・。
名前を二ノ宮 灯慈(にのみや とうじ)。
あまりぱっとしない外見に大人しい性格、臆病な性格で人と話すことをあまり得意としない。
ヤンキー達にもいつもからかわれ、友達も少なかった。
休み時間、本を読むか寝ることしかすることのないような彼は、今ここぞとばかりにこのシステムを満喫していたのだ。

「ウィンたんも召喚・・・!うはー!すげぇー!!」
二ノ宮はとても楽しそうな顔で実体化したエリアとウィンの頭を撫でる。
心なしか、撫でられている二人は恥ずかしいような困ったような顔をしているように見える。

「ここは最高の世界だー!」
二ノ宮はこのデュエルロワイヤルのルールなどお構いなしに自分の趣味を堪能していた。
死ぬ直前まで幸せな思いができればそれとでも言うかのように。

だがしかし、現実はそう甘くはなかった。
戦いの運命は、幸せの絶頂にある彼に無常にも突き付けられる。

ガタッ・・・

部屋の外で物音がした。
エリアとウィンの頭を撫でていた二ノ宮の動きが止まる。
恐る恐る、外に聞き耳を立てる。

「だ、誰か・・いる?」
外から声が聞こえた。どうやら女子のようだ。
女子とまともに話したことのない二ノ宮は、声だけで誰かまでは判断できなかったが。

二ノ宮は返事はしなかった。
もし相手に敵意があれば、デュエルは避けられない。
下手したら殺されてしまうだろう。
それになにより、今この時間を邪魔されたくなかった。

だが部屋の外の女子に二ノ宮の事情など通じない。
やがてドアがゆっくりと開き、そこから一人の女子が顔を覗かせた。

「うわっ・・・!」
「わあっ!」

二人の目が合った。


101 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/19(木) 13:58:41 ID:VqIlGzHc0
「な、なんだ、二ノ宮かー。いるならいるって返事しなさいよ。」
「あ、えと、ごめん。」
「ってかあんた何やってんの?うわ、何それ、女の子のカード!?
あんたそれ出して萌え~とかやってたわけ!?うわ~!!」
「・・・。」

いきなり現れた女子に早口で捲し立てられて、二ノ宮は何も言えなくなってしまう。
男子とすら余り話せない二ノ宮。女子相手にまともに喋れるわけはなかった。

「はぁ、でもまぁあんたなら危険はないかな・・・。」
「ん・・・。」
「何よ。あんたもしかしてあたしに喧嘩売る気?」
キッと睨みつける女子に、黙ってぶんぶんと首を振る二ノ宮。

「それならいいんだけど。」
「あの・・。」
「何よ?」
「名前、何て言ったっけ・・・?」
「はぁ!?あんたクラスメイトの名前覚えてないの!?ありえないー!」

その物言いに内心むっとするが、口には出来なかった。
それにもうこのクラスになってから3ヶ月は経つ。
クラスメイトの名前くらい覚えているほうが自然だった。

「江藤ナギサよ!え・と・う・な・ぎ・さ!覚えときなさい。」
「う、うん・・。」

茶色く染め、ウェーブのかかった髪が綺麗なその女子、江藤ナギサはそう怒鳴りつけた。
いつも友達ときゃっきゃとはしゃいでいる明るい女子だ。相手が誰だろうと、物怖じせずに話せる。
そんな調子で、早速ナギサは現状についての愚痴を二ノ宮に捲し立てていた。

無論、二ノ宮はそんな女子が苦手も苦手。
先程まで天国だったこの部屋は、一変して居心地最悪な部屋になっていた。

「あ、あのさ。」
「だからさぁー、って何よ?」
「俺、そろそろ外出ようかな・・・なんて。」
「えっ!」

その言葉にナギサがちょっと困った表情をする。

「いいでしょ!別に!ここにいるほうが安全だって!」
「江藤さんはここにいていいから・・。」
「そういうことじゃなくって・・!」

二ノ宮はよく分からない顔をして、結局そそくさと部屋を出て行こうとする。
だが、ナギサがそれを制止してきた。

「ね、ねぇ。ここいようって・・!」
「な、なんでさ・・。」
「あたし・・・その・・。」

ナギサが口篭る。
さっきまでベラベラと喋っていたのに、急に態度を変えたナギサに二ノ宮は戸惑った。

「あたし、カードとか、ホント興味なくって。だからデッキとか全然適当で・・・。
だから、あたし、デュエルとか全然できないのよ・・・。」

「だから、その、一人でいるの、嫌なの・・・。いつ誰に襲われるかわからないし・・・。
やっと人に会えて、これでもほっとしてて・・・。その・・・。」

ナギサの言葉に、二ノ宮はようやく気がついた。
置いて行かないでと言っているのだと。
女子の苦手な二ノ宮とはいえ、この状況ではいそうですか頑張ってと立ち去ることは出来なかった。

「わ、わかったよ・・。」
二ノ宮はひとまずこの部屋にとどまることを決めた。
この部屋が安全なのも、また事実だ。

「・・・か、勘違いしないでよ。別に、あんたがここにいただけで、ホントはあんたと一緒にいるのなんか嫌なんだから・・・。」
「う・・・。」
一緒にいてくれると言ってくれた二ノ宮に、冷たい言葉をぶつけるナギサ。
それは本心ではないとも言えないが、照れ隠しでもあった。

ここから、オタクと女子の、二人の戦いが始まる。


(霊使い達愛でれないじゃん・・・。はぁ・・・。)


102 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/19(木) 13:59:11 ID:VqIlGzHc0
二人で部屋に篭ってから何分経過しただろうか。
部屋には時計などないので、二ノ宮は時間の感覚を失っていた。
相変わらずナギサはぺらぺらと話をしている、よくそれだけ話題が出てくるものだ。
適当に合槌をうっていた二ノ宮だが、いい加減疲れていた。
それも、精神的に。

「あの・・・。」
「んでぇー、え、何?」
「・・・なんでもない。」

再び外に出ようとも言えなかった。
外に出れば、誰と出くわすかは分からない。
この部屋にいるのが一番安全なのは違いなかった。違いなかったのだが。

「だからあのときみもりがさー。あいつにしっかり言っとけばよかったのにさー。」

止むことのない、合槌を打つことしかできない話に、二ノ宮はやはり耐えられそうもない。
しばらく黙って話を聞いていた二ノ宮だが、いい加減精神がここにいるのは辛いと訴えてきていた。

意を決して、立ち上がる二ノ宮。

「ん?どうしたのよ?」
「そ、そろそろさ、外、出てみない?」

当然ナギサは嫌な顔をする。
だが、二ノ宮も引き下がりたくはなかった。
ここで引き下がれば、この苛酷な環境を抜け出せるのは本当にいつになるかわからない。

「い、いやよ・・。だって誰に出会うか・・・。」
「そ、そんなこと言ってずっとここにいるわけにもいかないよ。
どうにかしてここから出なきゃ・・・。
それにもしかしたら友達に会えるかもしれないし・・・。」
「でも、あんた友達とかいないでしょ・・。」

二ノ宮の言うことは尤もだ。ちなみに、ナギサの言うことも尤もだ。
食料もないし、いつまでもここに篭っていられるわけはない。
それに、この建物のどこかにはナギサの友達もいるのだ。

二ノ宮はナギサの言葉に胸を痛めながらも、説得を続ける。
ナギサも、このまま二ノ宮といるよりは友達を探すのが賢明かもしれないと思い始めていた。

「しょうがないな・・・。出てみる・・・?」
「う、うん。」

二ノ宮の意見はついに可決された。
しばらく座っていたので、足をふらつかせながらナギサも立ち上がる。

二ノ宮がゆっくりとドアを開き、外の様子を伺う。
誰もいないようだ。ナギサに向かってこくりと頷いた。
そして二人はこの部屋を後にした。


103 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/19(木) 13:59:44 ID:VqIlGzHc0
「あ、あたし、デュエルできないんだからね・・・。
もし敵に会ったら、あんたがデュエルしてよねっ・・・!」

強気な口調で二ノ宮に言いつけるナギサ。
だがやはり敵に会うのは怖いのか、二ノ宮の後ろをきょろきょろおどおどしながら歩いている。

「わかったよ・・・。」
嫌とも言えないし、嫌という理由もないので頷く二ノ宮。
しかし二ノ宮も、敵に出会うのは内心怖かった。
デュエルはそこそこの腕なのだが、何分臆病な性格なのだ。
ナギサの手前、平然を装いながらも、誰にも会いませんようにと祈りながら歩いている。

だが、その祈りが神に届くことはなかった。


そのまましばらく歩いてたところで、出会ってしまった。

廊下の角を曲がったところで。

二ノ宮と、一人の男子が鉢合わせた。

「や、山下君・・・。」
「うわ!?二ノ宮!?」

目の前に髪を金に染めたがたいのいい男子が現れた。
名前は確か、山下 功生(やました こうき)。
クラスの中心的なグループの一人で、いつも仲間内とわいわいと騒いでいる。
ちなみに、このクラスでサッカーにおいて彼の右に出るものはいない。

「あ、山下・・・!」
「え、江藤まで!」
後ろから歩いてきたナギサも、二ノ宮と同じような反応をする。

二ノ宮は功生と話したことはほとんどなかった。
話すとしたら、たまにからかわれる程度。
クラスの日陰と日向、ほとんど正反対の存在。
しかしなんとなくだが、二ノ宮は功生に対して、この人はいい人だと言うイメージを持っていた。

「や、やあ・・・。」
かける言葉が浮かばず、微妙な挨拶を交わす。
だが、功生は挨拶を返さない。
それどころか二ノ宮を睨みつけながら後ずさりしていた。

「山下!あんた無事だったんだ!」
ナギサが二ノ宮の後ろからひょこっと顔を出す。
若干、二ノ宮と話す時とは声のトーンが違っていた。

功生はクラスの中でも比較的もてるほうだ。
背も高く運動神経もよく、性格も明るい。
なかなかかっこいい部類に入る人間だった。

「よかったー、こいつと会って二人っきりになっちゃって困っててさー・・。
山下ならちょっと安心できるー。」

ナギサも、功生に悪い感情は抱いていないらしく、二ノ宮に対して冷たい言葉を平気でぶつける。
功生のようなかっこいいやつなら、二ノ宮より安心できるのか。
二ノ宮は内心落ち込んでいた。

しかし、功生の反応は二人の予想とは大きく違っていた。

「お前ら何ぬるい事言ってんだよ。
お前らと一緒に行く気なんかねぇよ!デュエルの相手になりやがれ!」

歩み寄ろうとしたナギサを跳ね除け、後ろに跳び下がりデュエルディスクを起動する。
功生の目には、敵意しか篭っていなかった。

「ちょ、ちょっと!
戦わずに済むんならそれにこしたことないでしょ!
そんな・・・」
「ここを出れるのは、一番強い奴一人だけなんだよ。
俺はお前らみたいなザコとつるむ気なんかねぇ。
大人しく俺に倒されやがれ!」

このデュエルロワイヤルという環境によって、功生の性格は豹変していた。
いや、もともと自信過剰な面もあったのかもしれない。
功生は目の前の二ノ宮とナギサをザコ呼ばわりし、挑発する。

「な、何こいつ・・・・。
あったまきた。二ノ宮、やっちゃって!」
「え、ええ?」
功生の態度にカチンときたナギサは、先程まで歩み寄ろうとしていたことなど忘れ、二ノ宮の後ろに下がる。
ナギサはデュエルができない。
必然的に二ノ宮がデュエルするしかなかった。
ナギサは二ノ宮の後ろに立ち、完全に応援の体制だ。


二ノ宮は、正直デュエルするのが怖かったが、なぜか不思議と逃げる気にはならなかった。
ここで逃げたくなかったし、なぜか目の前の相手に負ける気もしなかった。
二ノ宮の心には不思議な自信が生まれていた。

仕方ないな・・・などと呟きながら、デュエルディスクを起動する。



今ここに二ノ宮と功生のデュエルが始まった。



「「デュエル!!」」


104 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/19(木) 14:00:35 ID:VqIlGzHc0
二ノ宮 LP:8000
功生 LP:8000

「僕の先行、ドロー!」
先行は二ノ宮だ。二ノ宮は一体どんな戦術を持つのか。

「モンスターと、カードを1枚セットしてターンエンド。」
安易に攻めには出ず、守りを固めてターンエンドする。


「俺のターン!ドロー!!
徴兵アリを召喚!」

 《徴兵アリ》
 効果モンスター
 星3/地属性/昆虫族/攻1200/守 400

功生のターン。フィールドに現れたのは小さなアリのモンスター。
小さな体で日々仲間を集めるために頑張っている健気なアリだ。

「徴兵アリの効果でデッキの一番上を確認、それが昆虫族モンスターだったら、そのカードを手札に加える!
俺のデッキの一番上は・・・よっしゃあ!ハイパースタッグビートル・ヘラクレス!昆虫族モンスターだ!」

徴兵アリが功生のデッキトップを確認し、仲間に招き入れる。
功生の手札に加わったのは、ハイパースタッグビートル・ヘラクレス。その能力は分からないが名前からして恐らく強力な昆虫モンスター。

「ハハハ!二ノ宮!お前如き俺の敵じゃねぇのを見せてやる!
魔法カード、蜂蜜発動!!」

二ノ宮を挑発しながら手札を1枚捨て、功生のフィールドに蜂蜜が塗りたくられた。
甘い香りがフィールドに広がる、その効果とは・・・。

「手札から、召喚条件を無視して昆虫族モンスターを1体特殊召喚する!!
召喚!ハイパースタッグビートル・ヘラクレス!!」

功生のモンスターに巨大な影が現れる。
蜂蜜の香りに誘われ、森の中から現れる巨大な化け物。
巨大な曲刀のようなクワガタの顎と、槍のようなカブトムシの角を持つ最強クラスの甲虫。ハイパースタッグビートル・ヘラクレス。

 《ハイパースタッグビートル・ヘラクレス》
 効果モンスター
 星8/地属性/昆虫族/攻2950/守1000

「攻撃力2950・・・!?」
「何あれ!?つ、強そう・・・・。」

僅か1ターンにして功生のフィールドに現れたその化け物に二ノ宮とナギサが驚きの声を上げる。
本来規定の2体のモンスターを生け贄に捧げなければ召喚できない強力な特殊召喚モンスター。
その恐ろしく強大な姿は誰であろうと恐怖を覚えるであろう。

しかし、二ノ宮は一瞬驚いたものの、次の瞬間には落ち着いた表情に戻っていた。

「蜂蜜の効果で特殊召喚したモンスターはそのターン攻撃できない。
徴兵アリでその伏せモンスターを攻撃!!」

徴兵アリがちょこちょこと伏せモンスターに突撃し、その小さな顎で食いつく。
しかし、守備モンスターの能力のほうが高く、徴兵アリの小さな顎は欠けてしまった。
その反動が功生を襲う。と言ってもデコピンを食らったような程度の痛みだったが。

「いてっ・・・くそ、倒せなかったか・・・!
って、なんだそのモンスター!?」

徴兵アリの攻撃を防いだ二ノ宮のモンスター。
それはモンスターと言うには憚られる、青き髪の可憐な少女だった。

「霊使い!?お前霊使いなんか入れてんのかよ!?ギャハハハ!!」

功生が二ノ宮のフィールドに現れたモンスター──水霊使いエリアを指差して大笑いする。
霊使いとは、その容姿から一部のプレイヤーに絶大な人気を誇る幼き魔法使いモンスター。
人気こそあるものの、その能力はファンデッキでしか生かすのが難しい、実用性の低いカードだった。
功生に取っても、それはオタク御用達の観賞用カードという認識しかなかった。

「んーなカード入れて萌え萌え言ってんのかよ。勝つ気あんのかよ~?」
ゲラゲラと笑いながら馬鹿にしたように二ノ宮を見る功生。

「・・・ちょっと、大丈夫なんでしょうね・・・?」
そのあまりの馬鹿にされように、カードに詳しくないナギサも少し不安を覚える。
しかし、二ノ宮は軽い笑みを浮かべながらこくっと頷いた。
ここは二ノ宮を信じるしかない。ナギサは黙って見守ることにした。

「ハハハ!俺の勝ちは決まったようなもんだなぁ!
カードを1枚伏せてターンエンドだ!」


二ノ宮 LP:8000
功生 LP:7700


105 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/19(木) 14:01:05 ID:VqIlGzHc0


「僕のターン。ドロー!
山下君・・・、霊使いを馬鹿にしてると痛い目にあうよ。」
「ハハッ!あわせてみろよ!」
「・・・モンスターをセット。」

挑発的な言葉を掛けながらも、守備モンスターを召喚する二ノ宮。
しかし、当然これで終わりはしなかった。

「罠カード、砂漠の光!」
二ノ宮のフィールドに伏せられていたカードがギラギラとした太陽となり輝く。その眩しい光によって伏せモンスターが照らし出された。
二ノ宮がセットしたモンスター、それはまたも少女のモンスター。地属性の霊使いモンスター、地霊使いアウスだった。

「アウスの効果発動!君のヘラクレス、もらうよ!」
「なっ!?」

アウスが杖を振り上げると共に、土煙が巻き起こり、大地が地響きを鳴らす。
その効果はリバース効果。本来受け身の効果だが、他のカードのサポートをかけることで1ターンで発動できる。

地属性を支配するアウスの力。大地に這い蹲るモンスターを支配し味方につけることができる。
地属性のハイパースタッグビートル・ヘラクレスは大地の鳴動に誘われ、二ノ宮のフィールドへ移動した。

「お、俺のヘラクレスが!?てめぇ!!」
「僕の霊使いを馬鹿にするからだよ・・・。」
「おー!やるじゃん二ノ宮!」

切り札を強奪され、激昂する功生。
霊使いの効果を見事に決め、頼りないながらも勝ち誇った笑みの二ノ宮。
そんな二ノ宮を見てナギサが拍手を送った。
ナギサに褒められ、二ノ宮は若干照れを見せる。

「よ、よし、行くよ!ヘラクレスで徴兵アリを攻撃!!」
気を取り直し、奪ったヘラクレスに攻撃命令を下す。
ヘラクレスは迷うことなく先程までの仲間、徴兵アリに突進し、その巨大な顎と2本の角で突き潰した。

「ぐああああっ・・・!」
衝撃が功生に襲い掛かる。そのダメージは先程の反射ダメージとは非にならない。
巨大な鉄骨の槍で突かれたような衝撃に肋骨が軋む。
功生は胸を押さえ二ノ宮を睨みつけた。

「カードを1枚伏せてターンエンド。」
功生のフィールドには今や伏せカード1枚のみ。
対する二ノ宮のフィールドには守備表示のエリアとアウス、そして功生の切り札の一体、ハイパースタッグビートル・ヘラクレス。
さらに伏せカードが1枚。
二ノ宮の戦術に、よくは理解できないながらもナギサがきゃっきゃと喝采を上げている。

フィールド上も、ライフも、精神的にも、二ノ宮のほうが上回っていた。


(く、くそ、こんなオタク野郎に負けてたまるかよ・・・。
すぐに俺のヘラクレスを取り返してやる・・・!
それに俺にはまだあいつもいる。あいつを召喚してぶっ殺してやるぜ・・・!)


二ノ宮 LP:8000
功生 LP:5950


106 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/19(木) 14:02:07 ID:VqIlGzHc0
「ドロー!
おし!手札からクワガタ・ガンマを召喚!!」

 《クワガタ・ガンマ》
 通常モンスター
 星4/地属性/昆虫族/攻1800/守 100

功生のフィールドに凶暴なクワガタが現れた。
体は小さいながら、強靭な顎をガチガチと鳴らして相手を威嚇している。

「アウスを倒しちまえばヘラクレスは帰ってくる!
行け!クワガタ・ガンマ!アウスを攻撃!」

功生の言うとおり、霊使いのモンスター奪取効果は、その霊使いがフィールドを離れた時に消える。
アウスの守備力は1500。あまり高いとは言えない。ヘラクレスを奪われようとも、アウスを倒すのは難しくなかった。
鉄をも切り裂くガンマのギロチンカッターがアウスに襲い掛かる。

だが、寸でのところでガンマの動きは止まってしまった。

「罠カード!グラヴィティ・バインド‐超重力の網‐を発動!」
「なに!?ちきしょう!厄介なマネを・・・!」

フィールドに超重力がかかり、レベル4以上のモンスターはその自重で身動きが取れなくなる。
大分昔から使われてきた優秀なロックカードだ。
二ノ宮のデッキは霊使いの力をフルに使うデッキ。霊使いを守るためのカードも当然仕込んである。

対する功生のデッキは重量級昆虫モンスターで叩き潰す単純なビートダウン。
グラヴィティバインドはかなり厄介な存在なのだが、今の状況では逆に嬉しかった。

「とりあえず、ヘラクレスが攻撃できなくなるから助かるか・・・。
俺はターンエンドだ!」


「僕のターン!」
「二ノ宮!そんな奴とっとと倒しちゃいなさい!」
「ん・・・。ごめん、まだ無理・・・。」

ナギサが急かしてくるが、二ノ宮の手札にはまだ勝利のキーは揃っていなかった。

「モンスターをセットして、ターンエンド。」
少しずつ地盤を固めていく。
二ノ宮のデュエルは勝ちに急がない。魁のように、慎重タイプのデュエリストだ。


107 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/19(木) 14:02:38 ID:VqIlGzHc0
「俺のターン、ドロー!」
今までの戦い方を見れば分かると思うが、功生は後先考えずに攻め込むタイプ。
大抵は相手の罠にかかるので、勝率はあまりよくないのだった。

「よし・・・、フローラル・フラワー召喚!」
功生のフィールドに甘い香りを漂わせる妖しい花が咲く。
見た目こそ美しくないが、その香りは
あらゆる昆虫を惹きつける。
さらに召喚された時に自身の効果で守備表示になる、守りに長けたモンスターだ。

「そしてライフを800払って早すぎた埋葬発動!徴兵アリを復活させる!!」
そして発動されたのは、墓地のモンスターを復活させる汎用性の高い装備魔法。
魔力に触発され、墓穴から徴兵アリが這い出す。
それはゾンビが這い出ると言うよりは、小さなアリが巣穴から出てきたかのようだった。

フローラル・フラワーと徴兵アリがフィールドに揃った時、それは強力なシナジーを生み出す。

「フローラル・フラワーの効果発動!デッキから昆虫族モンスターを1体選びデッキトップに置く!
俺が選ぶのは人喰い虫だ!
そして徴兵アリの効果を発動だ!デッキトップを確認、もちろん昆虫族モンスターだぜ!手札に加える!」
「1ターンに1度、好きな昆虫を手札に加えられるのか・・・。」

デッキから昆虫族モンスターを選択し、即座に手札に加える。
功生の切り札となる重量級昆虫モンスターを呼び出すためのキーパーツを簡単に集めることができる、強力なコンボだ。
手札に加えたのは人喰い虫。
除去能力を持つリバースモンスター。その効果が発動されれば、アウスが喰われヘラクレスのコントロールが戻ってしまう。
今まで冷静にデュエルしてきた二ノ宮も、少し厄介そうな顔をした。

「まだ終わらないぜ!伏せカード発動!血の代償だ!
ライフを500払って、モンスターをセット!
ハハッ、教えてやるよ、もちろん人喰い虫だ!」
「・・・っ!」
リバース効果の欠点は発動が遅いことだ。
次のターンセットされ、その次のターンまでは猶予がある。それまでにどうにかできるかと二ノ宮は考えていた。
しかし血の代償の効果によってこのターンにセットされてしまうとは想定外だった。
次の二ノ宮のターンにどうにかしなければ、ヘラクレスのコントロールは戻されてしまう。

「ターン終了だ!」


二ノ宮 LP:8000
功生 LP:4650


「僕のターン・・・、ドロー!」
人喰い虫をどうにかしなければフィールドはやっかいな状態になる。
グラヴィティバインドがあるとは言え、いつまで持つかはわからない。
コントロールを戻されるのはできれば防ぎたいところだった。

さらに徴兵アリとフローラル・フラワーのコンボもある。どちらかをどうにかしなければ、功生の手札は増える一方だ。
功生のフィールドは、二ノ宮にとって大分不利な状況になっていた。

しかし二ノ宮の霊使いデッキには攻めに出るカードは少ない。
残念ながら、二ノ宮にこのターンでどうにかする手段はなかった。

「カードを2枚セットして、僕はこれでターンエンド・・・。」


108 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/19(木) 14:03:53 ID:VqIlGzHc0
「俺のターン、ドロー!
早速行くぜ!人喰い虫を攻撃表示に変更!アウスを食い殺せ!!」

裏側表示で待機していた人喰い虫が飛び上がり、アウスに喰らいつく。
アウスは無残にも、悲鳴を上げるようなモーションを起こしながら、その大きな虫にあっさりと食い殺されてしまった。

「うわ、悲惨~・・・・。」
その光景に、ナギサも悲痛な声を漏らす。
ソリッドビジョンは一般向けに開発されたシステムだ。そこまでグロテスクな映像はない。
しかし幼き魔法使いが虫に喰われると言う内容は、やはりショッキングなものだった。

アウスからの魔力が途切れ、ヘラクレスが我に帰る。
何故二ノ宮のフィールドにいるのかなど忘れ、ずしずしと功生のフィールドへ戻っていった。

「ハハハッ!ヘラクレスは返してもらうぜ!よくも俺のモンスターを奪ってくれ・・・」
「・・・くも・・・・・。」
「・・・あ?」
「・・・よくも・・・・よくも、アウスを・・・。」

ヘラクレスを奪還し、余裕の笑みを見せようとした功生だが、二ノ宮の言葉に遮られた。
その二ノ宮を見て、功生が若干驚きを見せる。
アウスを破壊された二ノ宮は、それまで臆病者だった二ノ宮など嘘のように怒っていた。

「んだよ!モンスター破壊されたくらいでキレてんじゃねぇよ!」
「霊使いの恨みは恐ろしいよ・・・。」
功生をじっと睨みつける。
それはあたかも、本当に愛する人の仇を見るかのように。


109 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/19(木) 14:05:28 ID:VqIlGzHc0
「き、気持ち悪いやつだな・・・!
何かできるもんならやってみやがれってんだよ!
俺は、サクリファイス・インセクションを発動!!」

二ノ宮の怒りに若干たじろぎながらも、魔法カードを発動する。
昆虫を墓地に送り昆虫を手札に加える、これも功生のキーパーツを集めるためのカードだ。

「人喰い虫を墓地に送り、デッキからクワガタ・ベータを手札に加える!」
クワガタ・ガンマと同種のクワガタモンスターをデッキから手札に加える。
クワガタ・ベータ、クワガタ・ガンマ、これらのモンスターの関連性とは・・・。

「そしてフローラル・フラワーの効果発動!デッキから殺戮甲虫ギラファスタッグ・ヴァルキリオンをサーチして、
さらに徴兵アリの効果で手札に加えるぜ!!」

さらに昆虫を手札に加えていく功生。
殺戮甲虫ギラファスタッグ・ヴァルキリオン。名前からしてヘラクレスと同種の強力なモンスターに違いなかった。
手札にヴァルキリオンを加え、功生は二ノ宮に向かって高らかに笑いだす。

「ハハハハ!二ノ宮!俺の2体目の切り札を見せてやるよ!
クワガタ・アルファ、クワガタ・ベータ、クワガタ・ガンマをゲームから除外!
そして現れろ!!殺戮甲虫、ギラファスタッグ・ヴァルキリオーーーン!!!」

手札のベータ、フィールドのガンマ、そして蜂蜜のコストとして捨てられていた墓地のアルファがゲームから除外され、その化け物は現れる。
大地を揺るがし、森の木々をなぎ倒し、大岩をもいとも容易く鋏み砕く巨大な鋏を両腕に装備した巨大な甲虫人型兵器。
3体のクワガタが合体し、功生のフィールドに現れたのは、2本足で立ち、世界最強の甲虫の力を持つ巨人。
殺戮甲虫、ギラファスタッグ・ヴァルキリオン。

 《殺戮甲虫ギラファスタッグ・ヴァルキリオン》
 効果モンスター
 星8/地属性/昆虫族/攻3800/守3500

「こ、攻撃力、3800!?」
「な、何あれ、でかっ!?」

二ノ宮も、ナギサも、堪らず再び驚きの声を上げた。
ハイパースタッグビートル・ヘラクレスも巨大だが、この化け物はその非にならない。
特撮映画に出てくる巨大怪獣のようなその姿に、二ノ宮のフィールドの水霊使いエリアもあわあわと怯えるようなモーションを見せる。

「だけどグラヴィティ・バインドがある限りは・・・。」
「ハハッ!あめぇぜ二ノ宮!ヘラクレスの効果をよく確認しとけ!
ヘラクレスの効果発動!手札を1枚捨て、人喰い虫を復活し、てめぇのフィールドのカードを1枚破壊!
もちろんグラヴィティ・バインドだ!」
「なっ・・・!」

ヘラクレスの持つ強力な効果。
昆虫族モンスターを蘇生させ、相手フィールドのカードまで破壊できる。
ヘラクレスが墓地から人喰い虫を引っ張り上げ、その衝撃でグラヴィティ・バインドが吹き飛ばされた。

功生のフィールドは徴兵アリ、フローラル・フラワー、ハイパースタッグビートル・ヘラクレス、殺戮甲虫ギラファスタッグ・ヴァルキリオン、人喰い虫。
モンスターで埋め尽くされた。
対する二ノ宮のフィールドはグラヴィティ・バインドを破壊され、エリアと守備モンスターが1体。そして伏せカードが2枚・・・。
さすがに二ノ宮の顔にも焦りが浮かぶ。

「ハハハッ、形勢逆転だなぁ!?」
「くっ・・・。」
「ちょっと、二ノ宮!押されてるじゃない!」

ナギサが騒いでいるが、今の二ノ宮にはどうしようもなかった。


110 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/19(木) 14:05:58 ID:VqIlGzHc0
「行くぜぇ!!ヘラクレスでエリアを攻撃!スタッグビートル・クラッシャー!!」

ヘラクレスがその巨体でエリアに突撃する。
2本の角でエリアを突き刺し、その巨大な顎で無残に切り裂く。
それは余りにも悲惨な光景だった。

「エリアーーッ!!」
「ハハハハッ、絶え間なく行くぜ!
ギラファで伏せモンスターを攻撃だ!殺戮顎(ジェノサイド・シザー)!!」

エリアを弔う暇もなく、ヘラクレスよりもさらに巨大なクワガタの化け物が二ノ宮に迫る。
圧倒的な威圧力。実際に対峙したら二ノ宮など、いや、人間などひとたまりもないであろう凶悪な2対のハサミをガチガチと鳴らしながら。

ギラファスタッグが右腕のハサミを叩き付け、伏せモンスターを一撃で葬り去る。
そしてその攻撃は伏せモンスターだけでは収まらず、左腕のハサミが二ノ宮にも叩き込まれた。

「うわあああああああっ!!!」
「に、二ノ宮!!」

二ノ宮に、体を切断される痛みが走る。
本来なら一撃で死んでしまっているであろう痛み。
二ノ宮はガクっと膝を折り、苦しそうな目で功生を見る。

「ハハハ、ギラファには貫通能力があるんだよ!
痛ぇか?痛ぇだろ!?ギャハハハ!!」

辛そうにうずくまる二ノ宮を見て、功生は大笑いする。
相手を思う存分に痛めつける功生は、実に楽しそうだった。

「うっ・・・ぐぅ・・・・。」
「ちょっと、二ノ宮!立ちなさいよ!」

うずくまり呻いている二ノ宮にナギサが檄を飛ばす。
二ノ宮がここで負ければ次に功生に狙われるのは自分だ。
なんとしても二ノ宮に勝ってもらわなくてはならなかった。

「二ノ宮!こんな奴に負けるんじゃないわよ!」
「そんなこと・・・言ったって・・・。」
「あんたこのまま負けるの!?
霊使いとかなんとか・・・、女の子の仇討たなくていいの!?」
「っつぅ・・、そうだった・・・・!」

ナギサの言葉を受け、胸を押さえゆっくり立ち上がる二ノ宮。
そうだ、倒された霊使い達のためにもこのまま負けるわけには行かないのだ。
二ノ宮の霊使いへの想いは、この程度の痛みなどかき消すほどに強いものだった。

「・・・それに、ここで負けたら、江藤さんも巻き込んじゃうしね・・・。」
「わ、分かってるじゃない・・。」

しかし二ノ宮を突き動かす物は、霊使いへの気持ちだけではなさそうだ。


「へっ、立ったか。
まぁいいぜ、ここで戦意喪失されてもつまらねぇからな!
おら行くぜ!徴兵アリで攻撃だ!」
「その前に、僕のさっきの伏せモンスターはクリッターだ!
効果を発動して、火霊使いヒータを手札に加える!
そして罠カード発動!強襲!
手札からヒータを守備表示で特殊召喚!!」

クリッターの効果で手札に加えられた幼い火の魔術師、ヒータが手札から飛び出す。
これ以上はやらせねぇ!とでも言うかのように、徴兵アリの前に立ちふさがった。
ヒータの守備力は1500。モンスターが5体並んでいる功生とはいえ、ヘラクレスとギラファの他にヒータを倒せるモンスターはいなかった。

「ちっ・・・壁を張りやがったか・・・。
だが俺のヘラクレスとギラファを倒せるものか、次のターンが楽しみだな!
ターンエンドだ!」

二ノ宮 LP:5800
功生 LP:4650


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最終更新:2007年09月04日 16:19
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