111 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/19(木) 14:07:02 ID:VqIlGzHc0
このターンであの2体の化け物をどうにかしなければ、勝ち目は限りなく薄い。
負けるものか。こんなところで負けるわけにはいかないのだ。
霊使い達よ、僕に力を貸してくれ・・・!
「僕のターン、ドロー!
・・・よし!魔法カード、ドロー・ザ・ワールド!!」
二ノ宮が引いたのは、相手に永続魔法かフィールド魔法の発動を許すと共にカードを2枚ドローできる強力なドローソース。
万能なドローソースとして使い手の多いカードだ。
「それなら俺は、フィールド魔法深き森を発動する。」
フィールドが一転して、青々とした木々の生い茂る暗き森となる。
獣・獣戦士・昆虫・植物族の能力がアップし、さらに攻撃をかわす力を得ることが出来る強力なフィールドだ。
功生のモンスターが強化され、さらに二ノ宮は後がなくなる。
祈りを込めて、2枚のカードを引いた。
引いたカードを見、しばし考える。
できるか、この手札で状況を巻き返せるか。
しばらく思考を巡らせ、やがて二ノ宮の顔に笑みが浮かぶ。
二ノ宮は勝利へのルートを見出したらしい。
霊使い達、ありがとう、力を借りるよ!
二ノ宮は力の篭った笑みで伏せカードを起動する。
「僕はリビングデッドの呼び声を発動!
復活させるのは、クリッター!」
二ノ宮の墓地からクリッターが這い出てくる。
霊使いではなく、リクルーターを復活させる。
このクリッターが、二ノ宮の反撃の狼煙となるのだった。
「クリッターを生け贄に、グリューン・サモン・サークル!
デッキから攻撃力2000以下のモンスターを特殊召喚する!来い、風霊使いウィン!」
這い出したばかりのクリッターが魔法陣に飲み込まれ、代わりに緑の髪の魔法使いが召喚される。
召喚されたウィンはヒータと並び、目の前の巨大な甲虫に負けじと睨みをきかせている。
「そんなザコモンスター並べたところで!」
「霊使いはザコじゃない!クリッターの効果でデッキから2体目のアウスを手札に加える!
そしてそのままアウスを召喚!」
「攻撃表示で召喚・・・!?」
二ノ宮のフィールドに現れる2体目のアウス。
リバース効果を持ちながら、表側攻撃表示で。
「一体何やってんだ!?」
「二ノ宮!あんたまじめにやってんの!?」
二ノ宮の行動に功生もナギサも困惑する。
リバース効果モンスターを攻撃表示で召喚するとは、その行動の意味するところが理解できなかった。
しかしアウスは、ヒータとウィンと並び、キッと功生を睨みつけている。
マスターの勝利を信じる、幼いながらも強い眼差しで。
「さらにヘヴンズゲート発動!墓地からエリアを特殊召喚する!」
リビングデッドの呼び声に続き、再び蘇生カードが使用される。
天より降りる光の柱に従い、エリアが天国から舞い戻った。
これで二ノ宮のフィールドには、ヒータ、ウィン、アウス、エリア、4体の霊使いが揃った。
フィールドに揃った4体の霊使いはお互いの杖を合わせ、力強い笑みで功生を見据える。
4体の霊使いが揃った時、その団結力は誰にも負けないものとなる。
「霊使いが4体・・・・!」
「君は霊使いをザコ呼ばわりしたな!今その発言を後悔させてやる!
行くぞ、魔法カード発動!暴走する幼い魔力!!
ヒータ!ウィン!アウス!エリア!全てを、吹き飛ばせ!!」
マスターの言葉に従い、霊使い達が顔を見合わせこくっと頷く。
そして4体の霊使いは杖を構え、呪文を唱え始めた。
やがて風が吹き、大地が震え、炎が巻き起こり、水柱が立ち上がる。
もはやそれは霊使い本人達でも制御できない物となり、全てを消し去るべく膨れ上がる。
「な、なんだよこりゃ!?」
「す、すごい・・・。」
「霊使いはザコじゃない。
4人揃った時、その力は全てを超えるんだ!
これが霊使い達の真の力、暴走する4つの波動!エレメンタル・フォーーース!!!」
目の前の幼い魔法使い達が見せる恐ろしいほどの魔力に、功生が目を丸くして後ずさる。
それは霊使い達にはとても似つかわしくない意圧力。
霊使い達の4つの魔力は4色の竜となり、目の前の敵全てを喰らい尽くそうと功生を見下ろしていた。
「こ、こんなザコに──・・・」
功生がそう呟こうとした時、4色の竜は雄たけびを上げながら功生のフィールドに襲い掛かった。
巨大な竜達の突撃を受け、功生のフィールドのモンスターが次々爆裂していく。
それはまるで、恐ろしい天変地異に世界が滅んでいくような光景だった。
その恐怖に、功生は思わず頭を抱えて目を瞑った。
112 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/19(木) 14:07:32 ID:VqIlGzHc0
やがて爆裂音が静まり、恐る恐る目を開ける。
功生の目の前に広がるフィールドには何も残っていない。
風と大地と炎と水の洗礼を受け焦土と化していた。
「お、俺のモンスターが・・・・。」
「見たか!これが霊使いの力だ!」
愕然とする功生に、二ノ宮はにっと笑みを見せる。
「すごーい!やるじゃない!二ノ宮!!」
ナギサも思わず二ノ宮に拍手を送る。
かわいい女の子のカードを使って喜んでるただのオタクだと思っていたが、意外と実力のほうもあるようだ。
ナギサはちょっとばかり関心した。
「へへ・・・。よし!がら空きの山下君に攻撃だ霊使い達!」
あれだけ巨大な魔力を開放したにも関わらず、元気よく突撃していく4人の霊使い。
魔法で攻撃するわけではなく、持っている杖で功生をボコボコと殴りつける。
「つぁっ!がああっ!ぐぅぅっ・・・!ぐああああ!」
霊使い達の4連攻撃を受け、情けなくも悲鳴を上げる功生。
「山下、だっさー・・・。」
ナギサもその滑稽な光景に失笑し、二ノ宮もニヤニヤと笑っていた。
フィールドを壊滅され、幼い魔法使いにボコボコと殴られ、オタクと女子に笑いものにされ、その余りに散々な仕打ちに功生はもう冷静でいることなどできなかった。
「がぁぁー!畜生が!!
見てろよ!てめぇボコボコにしてやるよ!クソがぁぁぁ!!!」
逆上して二ノ宮に汚い言葉を吐きつける。
今度は逆ギレかよと、ナギサはさらに冷めた目で笑っていた。
「ふふっ・・・。僕はカードを1枚伏せてターンエンド。
エリア、ありがとう。」
ターンエンドと共にヘヴンズゲートで呼ばれていたエリアが天に帰る。
帰り際のエリアは笑顔で二ノ宮に手を振っていた。
二ノ宮 LP:5800
功生 LP:2650
113 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/19(木) 14:08:05 ID:VqIlGzHc0
「俺のターン、ドロー!
そんなザコモンスター共、すぐに蹴散らしてやるよクソがぁ!」
屈辱を受け、目を血走らせながら二ノ宮に息巻く。
「手札からスタッグビートルβ召喚!!」
《スタッグビートルβ》
効果モンスター
星4/地属性/昆虫族/攻1700/守1000
「行けβ!そんなザコ共切り裂けぇ!!」
スタッグビートルβが、そのパイルバンカーのように鋭く尖った顎を煌かせ、攻撃表示のアウスに突撃する。
いくら暴走する幼い魔力を発動するためとは言え、攻撃力500を曝け出しておくなんていうことは自殺行為だった。
しかし、そう簡単に二ノ宮が通すはずがない。
「速攻魔法デスペラード!迎え撃てアウス!!」
魔法の力を受け、アウスの力が限界を超え開放される。
全身に輝くオーラを放ち、伝説の宇宙猿のようになったアウスがβに突撃していく。
強烈な魔力の衝撃を受け、βはあっけなく爆散した。
「ぐあああああ!!な、なんだ!?」
返り討ちにあい、痛みに奥歯をかみ締めながらアウスを見据える。
一体何故やられたのだ。
「デスペラードは攻撃力1000以下のモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで3000にする。
その代わり、ターン終了時に破壊されるけどね・・・。」
効果を説明し、ちらっとアウスを見る二ノ宮。
デスペラードによる力は命を削る。このターンに破壊されることを約束してしまって、少し申し訳ない気持ちだった。
しかしアウスは気にする様子もなく、二ノ宮に笑顔を返す。
「くそ、くそ、そんなんありかよ・・・!
やべぇ、やべぇ・・・!」
再びフィールドががら空きになり、功生は苦虫を噛み潰したような顔をする。
もはや功生のライフは1350。
アウスは破壊されるとはいえ、次のターンでモンスターを引かれれば敗北は必須。
しかし、手札にあるのは昆虫モンスターを手札に加える能力を持つ攻撃力0のモンスター、誘蛾灯だった。
もはや功生になす術はない。
「ターン、エンドだ・・・。」
二ノ宮 LP:5800
功生 LP:1350
114 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/19(木) 14:08:35 ID:VqIlGzHc0
「二ノ宮!やっちゃいなさい!」
「うん・・・!」
「くっ・・・。」
完全に流れは二ノ宮に傾いている。
二ノ宮の勝ちは、もはや決定的だ。
「ドロー!
・・・僕は、手札から2体目のエリアを召喚!!」
二ノ宮のフィールドに2体目の水の霊使いが現れる。
3体の霊使いが揃い、合計攻撃力は1500。
これで二ノ宮の勝利は決定した。
「に、二ノ宮!許してくれ!俺が悪かった!!」
と、敗北が決まり、功生は必死で命乞いをしだす。
先程まで汚い言葉をぶつけ罵倒していた相手に土下座するその姿は、あまりにも無様なものだった。
「何こいつ・・・。あんだけ二ノ宮のこと馬鹿にしといて、今更命乞い?
調子いいこと言ってんじゃないわよ!」
その功生の態度にナギサは腹を立て、つかつかと歩み寄る。
「勝手な偏見で人馬鹿にして、自分より強いと分かったら媚び諂う?
あんた、プライドとかないわけ?最高にかっこ悪いよ!
自分の信じるカード使って、自分の信じる物のために本気で戦える二ノ宮のが数倍かっこいいわ。」
ナギサに睨みつけられ、説教され、功生の顔が歪む。
ナギサの言うことは尤もだが、功生はそれをそう簡単に認められなかった。
「う、うるせぇ!自分で戦わねぇで二ノ宮なんかに守ってもらってるお前に、そんなこと言われたくねぇんだよ!」
侮辱され、頭にきた功生はナギサを押し倒す。
一瞬怯んだナギサだが、すぐに功生を睨み返す。
「あたしは、確かに戦えないけど、二ノ宮が代わりに戦ってくれてるけど、だからその分あたしは二ノ宮を信じて、二ノ宮を応援してるんだもん。
あたしは二ノ宮に媚び諂ったり、二ノ宮を盾にしてるわけじゃない!
二ノ宮だって、あたし殺そうと思えばできたのに、あたしと一緒にいてくれるって言ってくれたから。
だからあたしは二ノ宮を信じて一緒にいるんだもん!二ノ宮がピンチになったら、あたしだって手出すもん!」
そう言いながらばっと立ち上がり、功生の胸倉を掴む。
功生はその勢いに一瞬気圧されそうになるが、ぐっとナギサを睨みつけ、手を振り上げる。
「この・・・!生意気なんだよッ!!」
思いっきりナギサを殴りつけようとした、その時、いきなり功生は何者かに吹き飛ばされた。
「ぐああっ!?」
「!?」
殴られそうになり、目を瞑っていたナギサが驚いて辺りを見回す。
そこには杖で功生を殴り飛ばしたヒータが、ナギサに向かってにっと笑っていた。
「二ノ宮・・・。」
「危ないことしないでよ・・・。
戦うのは僕の役目だから、安心して下がって見てて。」
急にデュエルの間に入ってきたナギサを、二ノ宮は黙って見ていた。
しばらく黙って話を聞いていたのだが、功生が手を上げようとしてるのを見て慌てて攻撃命令を下したのだ。
「山下君・・・、霊使いだけじゃなく、人間の女の子にまで手上げるなんて・・・。」
倒れた功生を、冷めた目・・・かつ、その奥に闘志の燃える目で睨みつける。
二ノ宮は昔から気弱で、臆病で、周りから馬鹿にされてきた。
功生もその一人。臆病な二ノ宮はどんなにからかわれても抵抗など出来なかった。
しかし、今は違う。
今目の前にいるのは僕なんかより遥かにろくでもない最低野郎だ。
霊使いと、ナギサに暴力を振るった倒すべき相手。
そして、こいつを倒せるのは、今ここにいる僕だけなんだ。
二ノ宮の心が怒りと使命感に突き動かされる。
115 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/19(木) 14:09:06 ID:VqIlGzHc0
「いってぇ・・・。くそ、なんだ。」
立ち上がり、二ノ宮のほうを見る功生。
その顔が一瞬にして青ざめる。
目の前にいるのは本当に二ノ宮か。
二ノ宮は、功生に向かって恐ろしいほどの明らかな敵意を向けていた。
「に、二ノ宮。わ、悪かったよ。ちょっとかっとなっちゃってさ。」
その圧力に震え上がりながら、再度命乞いする。
だが、もはや二ノ宮は聞く耳など持っていない。
「もうだめだよ。」
「え・・・。」
「もう君は、許さないよ・・・。」
怒りに燃える目で、すっと手を向ける。
それは静かな攻撃命令。ウィンが杖を構え突撃し、功生を思いっきりぶん殴った。
「がああああっ・・・!」
再度殴り飛ばされる功生。
もう体中が痛い。もうだめだ耐えられない。
功生はもう体裁など気にしていられず、必死に許しを請うことしか出来なかった。
「あぁぁっ・・・・いてえ・・・いってえ・・・!!
に、二ノ宮、頼む、許してくれぇ・・・・。」
「命乞いするなら、江藤さんにしたら?」
そう言われ、ハッとナギサのほうを見る功生。
ナギサは強い目で功生を睨みつけていた。
「え、江藤、悪かった・・・。頼む、許して・・・・」
「却下。」
功生の命乞いはナギサに一蹴される。
もはや、功生に掛ける情けなどナギサにも二ノ宮にも残されていなかった。
「い、いやだ、頼む、頼むから・・・。」
あわあわと地団駄を踏む功生は、ひどく滑稽な姿だった。
「もういいわ・・。二ノ宮、やっちゃいなさい!」
「ん・・・、うん。」
哀れな功生を見かねたのか、二ノ宮に攻撃命令を出すナギサ。
「山下君、終わりだよ・・!」
「ひぃぃぃ!」
「エリア!山下君を攻撃!行けー!」
マスターに忠実なエリアは、躊躇なく功生に飛び込んでいく。
そしてその無慈悲な杖が、功生の顔面を思いっ切り殴り飛ばした。
「ぐははああああっ!!」
功生 LP:0
116 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/19(木) 14:09:39 ID:VqIlGzHc0
ソリッドビジョンが消滅し、そこには二ノ宮とナギサの2人。
そして、幼い魔法使いの杖に殴り殺されるという哀れな末路を遂げたもう動くことのない功生だけが残った。
「二ノ宮!強いじゃない!」
「え・・あ、うん・・・。」
デュエルに勝った二ノ宮にナギサが走りよる。
だが、きゃっきゃと騒ぎ、二ノ宮とハイタッチしようとしたところで、はっとして動きを止めた。
「っ、ま、まぁ、ちょっとは見直したかな。」
「あ・・・ありがと・・。」
ナギサは急にそっぽを向いてそう呟く。
二ノ宮は戸惑いながらも、とりあえず礼を言っておいた。
「こ、これならまた誰か敵が来ても安心かな。
それに、あたし助けてくれたときの二ノ宮、ちょっと・・・ったし・・・」
「ん、なに?」
功生のデュエルディスクからキーカードとデッキを取り出しながら、何かをもごもごと口篭っているナギサに聞き返す二ノ宮。
そんな二ノ宮に、ナギサは顔を赤くして顔を背けた。
二ノ宮は怒らせちゃったかな・・・などと思いながら、功生のカードをポケットにしまう。
「な、なんでもないわよ!
ほら、もうこんなとこ用はないわ。とっとと行くわよ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ・・・。」
ぷいっと後ろを向き、すたすたと歩き出すナギサ。
慌ててそれを追いかける二ノ宮。
このデュエルを通じ、二人の間には少しずつ信頼が生まれていた。
・・・一人の、哀れな命の犠牲など忘れて。
第7話に続く。
最終更新:2007年09月04日 16:21