「そういえば、唯先輩に聞きたいことがあるんですけど」
「なぁに?」
「唯先輩がギターを始めたきっかけって何ですか?」
「う……それは……」
「それに、初心者だったのに何で軽音部に入部しようと思ったんですか?」
先輩方から聞く限り、唯先輩が入部した理由がわからない。
ライブでもあぁは言っていたけど、本当のところどうなんだろう?
「……聞きたい?」
「はい」
「うぅ……笑わない?」
「何で笑うんですか? 笑いませんよ」
しばしの沈黙の後、唯先輩が口を開いた。
「実はね……軽音部って、軽い音楽をやる部だと思っていたの」
「軽い音楽ですか?」
「口笛とか、カスタネットとか……」
「あれ本当だったんですか!?」
「うん……」
ライブで新入生が入りやすくしようと思って言っていたと思ったのに……。
「ごめんね……?」
「はぁ……まぁ、いいですけど。きっかけなんて人それぞれですし」
「じゃあ、あずにゃんは何でギター始めたの?」
「前言った通りで、親がジャズバンドをしていたからで……」
「でも、ジャズってあんなギター使ってないと思うんだけど」
「少ないですけど、使っているバンドもありますよ」
「ねぇ、本当にあのむったんを始めた理由は?」
「むったんを始めた理由……か」
親がジャズバンドをやっているのに、何で私はあのギターを始めたんだろう?
「まぁ、ギターに触れる第一歩ってことで、あのむったんを選びました」
「ふ~ん。じゃああずにゃんはジャズをやりたいの?」
「今はそうでもないですけど、機会があったらやってみたいです」
「そっか……」
少し悲しそうな顔をする唯先輩。

「あ、一番大事なのは放課後ティータイムですから!」
慌てて訂正すると、唯先輩の顔も笑顔に戻った。
「よかった。このままあずにゃんがいなくなっちゃうかと思った」
「大丈夫ですよ。私はこのバンドが好きなんですから」
いつもだらしなくて、練習しなくて、それでもここぞという時は凄まじい演奏をするこのバンドが好きだ。
「私も大好きだよ。だから本当にギターを始めてよかったと思ってるんだ」
唯先輩がうれしそうに言う。
「それにね……」
「それに?」
「あずにゃんと出逢えたし!」
「そうですか……」
嬉しいような、恥ずかしいような……。
「ギター上手だし、色々教えてくれるし、かわいいし」
「最後の何ですか?」
「本当のことだもん」
「かわいいって出逢ってよかった事に入るんですか?」
「当たり前だよ!」
胸を張って言わないでください。恥ずかしいです……。
「さぁ、休憩もこれぐらいにして練習しようか」
「唯先輩がそんなこと言うなんてめずらしいですね」
「あずにゃんに負けてられないからね!」
「だったら、もっと厳しく教えてあげますよ?」
「そ、それはちょっと……」
唯先輩も十分上手ですけどね。
「またあの時みたいに2人で演奏したいですね
「そうだね。今度は最後まで聞いてもらいたいね」
「だったら、ギターの腕を磨かないと!」
「は、しまった……」
「やっぱり厳しくいきましょう!」
「何だかあずにゃん鬼嫁みたい……」
「誰が鬼嫁ですか!」
「ほら、そういうところとか」
「これは違いますよ!」
「わぁ~。嫁が起こった~」
「誤解の招くようなこと言わないでください!」

END


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最終更新:2010年12月08日 09:41