冬。
寒空の下、二人きりの
帰り道。
冬至が近いからか、辺りはすっかり真っ暗だ。
三人の先輩方と別れて5分が過ぎた頃、唯先輩がおもむろに口を開いた。
演芸大会に一緒に出場したときの、あの公園。
背もたれ付きのベンチに、二人並んで腰を下ろす。
「……そうそう、それでさぁ……」
「……相変わらず、忙しない人ですね……」
他愛もない会話を交わす。
静止していた体は、だんだんと震え始める。
「くしゅっ!……ううっ、寒い……」
「動いていないんだから、当たり前ですよ……そろそろ、帰りましょう?」
「もうちょっとだけ……お願い、あずにゃん」
「あっ……」
唯先輩が、私の体をそっと抱き寄せた。
背中に回された両腕は力強く、温かい。
頬に当たるマフラーと髪の毛の感触も、くすぐったいようで気持ち良い。
突然のことに一瞬戸惑うも、私は無言でそっと体重を預けた。
時が止まったように、居心地の良い時間だけが過ぎていく。
「……」
「……」
言葉は何も要らなかった。
ただ、あなたの温もりを感じていたい。
共鳴する二人の気持ちが、お互いの体温を高め合っていく。
いつの間にか、私も唯先輩の背中に腕を回していた。
目を閉じて、鼻から下を柔らかな茶髪に埋める。
鼻孔をくすぐる、甘い香り。何だかとても安心する。
きっと通りすがりの人にとって私たちは、さぞ一組のカップルのように見えていたことだろう。
普段なら恥ずかしいその視線も、今は全く気にならなかった。
まるで、二人だけの世界。いつまでもこんな時間が続けばいいと思った。
「……そろそろ、帰ろっか」
「……温ったまりましたか?」
「うん……ありがとう、あずにゃん」
幸せな時間が過ぎていくのは、あっという間だ。
名残惜しみながらも、体を離してベンチから立ち上がる。
ギターを背負うと、私たちはまた寒空の下の帰り道を歩き始めた。
ぎゅっ。
どちらからともなく、繋がれた私たちの手。
少しだけ、唯先輩の方が温かいような気がした。
END
- これは良か -- (名無しさん) 2015-01-31 12:50:48
最終更新:2010年12月18日 02:40