梓「ありがとうございます、唯先輩」
唯「ううん、これくらい大丈夫だよ」
梓「いえ、すごく助かりました。本当にありがとうございます」
唯「もー、そんなにお礼ばっか言われると照れるよぅ」
梓「そうですか?そうだ、何かお礼にして欲しいこと、ないですか?」
唯「え?いいよーそんなの」
梓「それじゃ私の気がすみませんし。えっと、何でもいいですから、何かないですか?」
唯「何でも?」
梓「はい……って、あんまり無茶なお願いとかはダメですよ」
唯「えへへ~」
梓「って、なんですか、その笑いは……」
唯「えへへ、なんでもいいんだよねー?」
梓「何か不安になってきたんですが……無茶言ったら容赦なく断りますからね」
唯「じゃあさ……うん、私が帰ってくる時間くらいにさ……私のベッドで寝ててもらっていい?」
梓「それはさすがに……って、そんなことでいいんですか?」
唯「うん、そんなことでいいの」
梓「はあ……それくらいなら」
唯「じゃあ、はいこれ。合鍵。えっと、私明日多分今の時間のちょっとあとくらいかな?それくらいには帰ると思うから」
梓「あ、はい。寮の訪問手続きって……」
唯「うん、いつもの感じでー。私からも話通しとくから」
梓「はい、じゃあ」

梓「という訳で、唯先輩の部屋」
梓「えっと、もう少ししたら、帰ってくるはずだよね」
梓「そろそろ、寝ておこうかな……唯先輩のベッド、お邪魔します」
梓「……唯先輩の、匂いがする――って当たり前だけど」
梓「って、寝てなくちゃいけないんだよね。……意外と難しいかも」
梓「……唯先輩、まだかな」
梓「なんか、変な感じ……こうやって先輩のベッドで横になって、先輩の帰りを待つなんて」
梓「こんなの、普通やらないもんね。こうしてると、まるでさ――」
梓「まるで――って、何考えてるんだか」
梓「ああもう、早く寝なきゃ。唯先輩、帰ってきちゃうよ」
梓「あ……この足音、やば、帰ってきちゃった」
梓「と、とりあえず、寝たふりしよ」

唯「……ただいまー……えっと、あずにゃーん?」
梓(寝たふり、寝たふり……ん、唯先輩、気配が近づいてくる)
唯「あ、いたいた。ちゃんと約束守ってくれたんだ……」
梓(私は約束は守る女ですからね)
唯「かわいい寝顔……ふふ、あずにゃんはやっぱりかわいいねぇ」
梓(あ、頭撫でられてる……気持ちいい)
唯「……」
梓(もう、そんな無心に撫でないでください……気持ちよすぎて、本当に寝ちゃいそうです)
唯「ごめんね、変なお願いしちゃって」
梓(って、自覚してたんですね)
唯「でもね、こういうのやってみたかったんだ」
梓(そうなんですか)
唯「帰って、ベッドを見たらそこであずにゃんがすやすや寝てるの……ふふ、そんなの普通じゃありえないもんね」
唯「……そのね、普通じゃないのをね、一回でいいから味わってみたかったの」
梓(……唯先輩?)
唯「あはは、変だよね、こんなの――わかってる、自分でも」
唯「だから、あと少しだけ、ね。あずにゃんが寝てる間だけ、この気持ちに浸らせてね」
梓(……唯先輩、それって……?)
唯「いいよね、今だけ――あずにゃんは、私の恋人」
梓(……っ!)
唯「大好きな大好きな、私だけのあずにゃん」
梓(ゆい、せんぱい……)
唯「――えへへ、なんでだろ、嬉しいのに……なんで、なんで涙がこぼれちゃうんだろ」
梓(……唯先輩)
唯「笑わなきゃ、あと少しだけなんだもん。今だけは、私の夢、叶ってるんだから」
梓(唯先輩……っ)
唯「あと、少しだけ。それが過ぎて、終わったら――また」
梓「唯先輩!」
唯「ふぇ?え、あ、あずにゃ――っ!?」
梓「唯先輩、私、正直混乱してます」
唯「え、あ……?と、というか、あずにゃん、寝てたんじゃ……っ」
梓「いいえ、寝付けませんでしたから、寝たふりしてただけです」
唯「……じゃ、じゃあ!さっきまでの……っ!」
梓「はい、全部、聞いてました」
唯「や……っ!な、なんでっ!」
梓「ちょ……唯先輩、暴れないでください」
唯「やあっ、やだぁ!あずにゃんに嫌われちゃう……!」
梓「ああもう!おとなしくしてください!というか、嫌いになったりしてませんから!」
唯「嘘だもん!だって、だって……」
梓「ああもう、というか、嫌いになった相手をこうして抱きしめたりなんかしませんから!」
唯「あっ……」
梓「はあ、とにかく落ち着いて聞いてください」
唯「……」
梓「えっと、とりあえず混乱はしましたけど……嫌いになったとかそういうのはないです」
唯「……うん」
梓「というよりですね、自分でも不思議だったんですけど、全然嫌じゃなかったんですよ」
唯「……え?」
梓「だから、唯先輩さっき言ってましたよね。今だけ私は……唯先輩の恋人だって」
唯「そ、それは……」
梓「というかですね、実は私も同じこと考えてましたから」
唯「え?」
梓「ベッドに潜って先輩の帰りを待ってるとき――これって、まるで私が唯先輩の恋人みたいって」
唯「あ……」
梓「嫌じゃなかったんですよ、それも。そして、唯先輩にそのあと、そうされたことも」
唯「あずにゃん……」
梓「だから――つまり、そういうことです」
唯「どういうこと?」
梓「って、なんでそこできょとんとした顔するんですか!も、もう、ここまで言えば全部言ったようなもんじゃないですか!」
唯「へ?え、え?」
梓「だからつまり……もうこの合鍵は返さなくていいですよね?ってことです」
唯「あ……えっと……ほんとに?」
梓「そうです、唯先輩と私は同じ気持ちってことです」
唯「……ふふ」
梓「……何がおかしいんですか」
唯「いやだってさ、そこまで言っておいて……あずにゃん、その言葉言ってくれないんだもん」
梓「ああもう!だって、恥ずかしいじゃないですか!」
唯「そういう遠まわしなほうが恥ずかしい気もするけど」
梓「そんなことないです!」
唯「あずにゃん、好きだよ?」
梓「――っ」
唯「はい、あずにゃんも」
梓「う、うう……す、好きです、唯先輩」
唯「はい、よくできました……えへへ、これで私とあずにゃん、恋人同士だね」
梓「そう、なりますね」
唯「……なんか夢みたい――私ね、ずっとずっと夢見てたんだよ。あずにゃんとこうなること。ああ……ひょっとしたら、夢なのかな、これ」
梓「夢なんかじゃないですよ、ちゃんと現実です。私と、先輩の現実ですから」
唯「……えへへ、そう、でいいんだよね」
梓「そうですよ」
唯「じゃあ、あずにゃん……ね、証明、して?」
梓「証明、ですか?」
唯「うん、私がね、あずにゃんの恋人だってこと……このまま、証明して欲しいの」
梓「……じゃあ、私にも証明してください。私が、唯先輩の恋人、だってこと」
唯「えへへ、そうだね……じゃあ、証明しあおっか?」
梓「はい……いっぱい、しちゃいますから」

唯「やっぱり、夢みたい」
梓「まだそんなこと言いますか」
唯「えへへ、今のはね、幸せってことだよー」
梓「わかってましたけどね」
唯「あずにゃん、好きだよ。大好き」
梓「……ふふ、もう、今日何回目ですか、それ」
唯「何回言っても足りないもん。ね、あずにゃんも聞かせて?」
梓「もう、恥ずかしいからやです」
唯「もー、そう言わずにさー」
梓「あと一回だけですよ……大好きです、唯先輩」
唯「えへへ、もっと」
梓「……愛してます……んっ」
唯「……ん……ふふ、あずにゃん……」


  • いいね -- (名無しさん) 2013-07-27 22:20:54
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最終更新:2011年06月08日 21:46