今日は11月27日。それは世間一般ではいつもとなんら変わらない平日。
だけど私にとって、そしてこの部室にいる皆にとっては、とても特別な意味を持つ日だ。

律澪紬梓さわ子「誕生日おめでとーー!」
唯「皆ありがとう!それでは…ふぅーー!」

皆の声を合図に、唯先輩はケーキのろうそくに勢いよく息を吹きかけた。
するとろうそくの火がきれいに消え…ない。5本ほど残っている。

唯「あ、あれぇ?ふー、ふー!」
紬「あらあら、なかなか消えないわね♪」
澪「あはは…唯らしいな」
律「お前、年ごまかしてんじゃないかー?」
唯「むぅ、そんなことないよ!もう大人だもん!」
さわ子「じゃあ私は年寄りだっていうの唯ちゃん!」
唯「や、やめてよさわちゃーん♪」

さわ子先生とじゃれ合う唯先輩は、とても幸せそうな顔をしていた。そりゃそうか、誕生日だもんね。
先輩の笑顔を見る私も、いつの間にか釣られて笑顔になっていた。

唯「あずにゃん、なんか楽しそうだね!」
梓「そ、そうですか?まぁ…はい、楽しいです」
律「こらこら、二人だけで盛り上がるなよー!」
梓「も、盛り上がってなんて…」
唯「いやぁ、照れるねあずにゃん!」
梓「て、照れてません!」

誕生会は、とても楽しいものになった。
皆でお菓子やケーキを食べたり、歌を歌ったり、途中で調子に乗ったさわ子先生がお酒を飲もうとしたのを必死で止めたり…

さわ子「なんでダメなのよ!私があんたたちくらいの頃はねぇ…!」

と昔話を始めたのを皆でスルーしたり…
そんなこんなであっという間に下校時刻になってしまった。
練習をせずにこんなに時が経つのを早く感じるのは、軽音部に入って初めてかもしれない。

律「じゃあな唯ー」
紬「唯ちゃん、またね♪」
澪「家帰ったらあまり食べすぎるなよ?」
唯「大丈夫だよ、私いくら食べても太らないから!」
澪紬さわ子「ずるい!」
唯「えー!?」

…皆も帰るみたいだし、このままお開きにするのもいいんだけど、せっかく二人きりなんだし…

梓「ゆ、唯先輩」
唯「なあにあずにゃん?もっとケーキ食べたいの?」
梓「そうじゃなくて…その」
唯「ん?」
梓「お誕生日…おめでとうございます」
唯「え?あ、ありがと。でもあずにゃん、さっき言わなかった?」
梓「それはそうですが…これは私個人からのお祝いです」
唯「そっか♪…そうだあずにゃん、さっきもらったプレゼント、開けていい?」
梓「ど、どうぞ」

私は少し緊張しながら唯先輩が包みを開くのを見ていた。先輩、喜んでくれるかな。
先輩にとってはとても実用的なものだし、きっと役に立つ…はずなんだけど。
ちなみにそのプレゼントというのは…

唯「これ…CDに、ギターの本?」
梓「私のおすすめのCDと、ギターの教則本です。それがあれば唯先輩もめきめき上達するはずです!」
唯「どれどれ…うっ、何がなんやらちんぷんかんぷん!CDは…うっ、洋楽!英語わかんない…」
梓「そう言うと思ってました!心配ご無用です!私がつきっきりで教えてあげますから!」
唯「え?いいよそんなの、悪いよ!」
梓「いいんです!遠慮しないでください!」

唯先輩は珍しく困ったような顔をしていたけど、私は思わずヒートアップしてしまう。
なんというか、唯先輩には教えがいがあるのだ。

梓「音楽用語は私が一から説明してあげますし」
唯「あのぅ」
梓「洋楽は英語が分からなくても大丈夫です!私が大事なとこだけ解説してあげます!」
唯「あの…あずにゃん?」
梓「は、はい?」
唯「ありがとう」

唯先輩はそう言うと、私をぎゅっと抱きしめた。普段よりも優しく、そして力強く。

梓「…先輩?」
唯「私のために、色々用意してくれたんだ…ありがとうね」
梓「れ、礼には及ばないです!これは軽音部のためでもあってですね」
唯「それでもありがと、あずにゃん♪」

鼻の頭がぶつかりそうな距離で、唯先輩は優しく笑った。
私は急に照れくさくなって、唯先輩から顔を背ける。

梓「ほ、ホントは…もっとかわいい物の方がよかったんじゃないですか」
唯「ううん、今ちょうど洋楽入門しようと思ってたとこなの!ギターの本も欲しかったし!」
梓「あはは…そうですか」
唯「それに、あずにゃんと二人で練習できるしね♪」
梓「な…べ、別に私は、先輩と一緒にいたくてこういうプレゼントをしたわけじゃ決して…」
唯「え、違うの?」
梓「なくもない…ですけど…」

ああ、今の私真っ赤な顔してるんだろうなぁ…

梓「…って、なにネコミミつけてるんですか!」
唯「ふふふ、さわちゃんがプレゼントにくれたんだよ!どんどんあずにゃんに付けなさいって!」
梓「あの先生はホントにもう…」

でもまぁ…今日くらいは怒らないでいてあげようかな。
こんなにうれしそうな唯先輩を見ていると、起こる気にもならないし。

唯「あずにゃん、にゃあって言って!にゃあって!
梓「…にゃあ」
唯「まぁ、あずにゃんたら素直!どーして?」
梓「どーしてって…唯先輩の誕生日ですし、今日くらいは唯先輩のためにいろいろしてあげようかと」
唯「いろいろ?」
梓「あ!ち、ちが!別に変な意味じゃなく」
唯「変な意味って、どういう意味?」
梓「う……」

私は何も言えず、唯先輩の胸に顔を埋めた。
なんていうか、これ以上何か言うと取り返しのつかないことになってしまいそうな気がする…

唯「今日のあずにゃんはかわいいな~♪」
梓「ちょ…く、苦しいです…」
唯「へへへ…今日はありがとう♪」
梓「…どういたしまして」
唯「よーし、あずにゃんの誕生日にはとっておきのプレゼントあげるからね!」
梓「ホントですか?…期待してますよ♪」
唯「うん!手作りネコミミを…」
梓「それはいいです!」


おしまい


  • 可愛い -- (名無しさん) 2013-11-01 03:06:11
  • 誕生日の特権って良いね -- (あずにゃんラブ) 2013-12-31 03:12:44
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最終更新:2009年11月29日 02:08