梓「みなさん、ありがとうございます」
今日は私の誕生日ということで先輩たちが私の家で誕生日会を開いてくれた。
ちなみに今日の練習はそのためキャンセルされたけど、誕生日ぐらいは休んでもいいかな
紬「さあ梓ちゃん、ケーキ持ってきたわよ~」
律「今日のムギのケーキ、すっごく高いんだってよ!」
紬「そんなことないわ。ただちょっと行列のできるお店から取り寄せただけで」
澪「ケーキを取り寄せただけでもすごいだろ…」
梓「あはは…」
唯「それじゃあローソク刺そうか!あずにゃん!」
やっぱり誕生日って祝ってもらえるから嬉しいな。
唯「よし、それじゃあムギちゃん電気消して~」
紬「了解だわ!」
電気が消えると部屋の中はロウソクの火の明かりだけになった。
唯「それじゃあ…せーの!」
「はっぴば~すで~あ~ずさ~…はっぴば~すで~でぃああ~ずさ~…はっぴば~すで~とぅ~ゆぅ~」
唯「あずにゃん17歳おめでとう!」
梓「ありがとうございます」
律「ささ、早くロウソク消そうぜ!」
梓「はいっ…ふぅ~」
「おめでと~!」
梓「えへへ…」
こうして私の誕生会は幕を閉じた。
途中で唯先輩が喉にケーキを詰まらすというアクシデントもあったけど、無事終わった。
梓「みなさん、今日は本当にありがとうございました。」
澪「良かったな、梓」
律「年齢が一つ上がったからって調子に乗るなよ~?」
梓「来年も開きましょう?今度はもっとすごいケーキ用意するわ」
梓「はい!さようなら~」
誕生会が終わったらまた私は一人になる。
今日も母さんと父さんは公演の練習で忙しいので帰りが遅くなるらしい。
楽しい時間ってあっという間だな…
ぴんぽ~ん
私がリビングに戻ろうとすると玄関のチャイムが鳴った。
あれ、誰だろう?
梓「は~い」
梓「唯先輩?どうしたんですか一人で。何か忘れ物ですか?」
ふと見ると、唯先輩はバッグから何かを取り出そうとしていた。
唯「みんなには忘れ物したって言ってきたんだけどね……実はこれを渡そうと思って」
梓「マフラー?」
唯「えへへ…私からの誕生日プレゼントだよ、あずにゃん」
それは暖かそうな毛糸のマフラーだった。でも市販のとはちょっと違うような…
梓「いいんですか?…あ、ありがとうございます」
唯「私が編んだマフラーだよ。大切にしてね」
梓「唯先輩が編んだんですか!?憂じゃなくて!?」
唯「も~だからそう言ったでしょ?憂の手を借りたんじゃなくて、私一人で頑張っただよえっへん!」
唯先輩のお手製…私の為に、唯先輩が?
梓「…ありがとうございます。こういうの貰ったことないので…ちょっと嬉しいかも、です」
唯「良かった~喜んでもらえて。…ねぇ、巻いてみて」
梓「っと……こうですか」
唯「ん~っ!やっぱりあずにゃんに似合うよ~!可愛い!」
私がマフラーを首に巻いて再び唯先輩の方を見ると、先輩は私に抱きついてきた。
梓「にゃあ!また抱きつきですか!?」
唯「えへへ~だってマフラーが似合って可愛いんだも~ん」
梓「もう…」
唯「あれ?あずにゃんいつも『やめてくださいよ!』とか言うのに今日は言わないね」
梓「…だって…唯先輩が私の為に作ってきてくれたんですから…だから今日ぐらいは許してあげます」
私は唯先輩の顔の横で喋る。だから唯先輩の声も耳元で聞こえてちょっとくすぐったい。
唯「……ありがと。あずにゃん」
梓「…はい」
唯「ねぇ、あずにゃん。私と一緒にいると楽しい?」
いきなり変な質問をされたのでちょっとびっくりしたけど、動揺してるのが知られたら嫌だと思って私は答えた。
梓「…そりゃあ…退屈はしませんね」
唯「それって楽しいってことで良いの?」
なんだか変な唯先輩だ。いつもと様子が違うっていうか…恥ずかしがってる?
梓「…まぁ…そうなりますね」
唯「そっか………ねぇもう一つ質問、いい?」
梓「なんですか?」
唯「えっと……私の……事……なんだけど……」
急に唯先輩の声の調子が変わった。いつもの軽い調子じゃなくて、心に直接訴えかけてくるような調子で。
梓「唯…先輩?」
その沈黙の間は数分にも感じられた。
私に抱きついている力の強さもほんの少し強まった気がする。
ついに、その沈黙が破られたかと思うと…
唯「…やっぱなんでもない!じゃあね~あずにゃんまた明日!」
梓「えっ…あ……はい…さようなら…」
さっきの、なんだったんだろう…
次の日の朝、登校中。
唯「あ~ずにゃん!」
梓「わぁ!唯先輩!びっくりさせないでくださいよ…って、そのマフラー……昨日私がもらったのと一緒じゃないですか?」
唯「あ、気づいた~?あれは2個作ったんだ。私とあずにゃんはお揃いだよ~♪」
梓「えぇ~!」
最終更新:2010年11月26日 06:43