「ただいまぁ、あずにゃん♪」

その甘くかわいい声が玄関に響いたのを聞いたとたん、私の胸から寂しさが消え、代わりにあったかい気持ちでいっぱいになる。
やっと帰ってきてくれたんだ。とは言っても、ほんの小一時間出かけていただけなんだけど…

「あれ?あずにゃん?ただい…」
「唯先輩っ♪」
「わわっ、あずにゃん?」
「もう、遅いですよ?何かあったんじゃないかって心配したんですから」
「ごめんごめん、家に着替え取りに行ったはいいけど、和ちゃんが来てしばらくおしゃべりしちゃっててさ」
「…へー、私がこんなに心配してたのに、先輩は友達と楽しくおしゃべりですか。へー」
「そ、そんな怒らないでよぅ」
「なーんて、そんなくらいで怒ったりしないですよ♪だって……ちゅっ」
「あ、あずにゃん…」
「私は先輩の奥さんなんですから♪」

そう。私と唯先輩は今日からめでたく私の家で一緒に暮らすことになったのだ。
…両親が旅行に出かける年末年始の1週間だけ、だけど。

でもいつか必ず唯先輩と一つ屋根の下で暮らしてみせる。これはその予行演習みたいなものなんだ。

「さ、うがいと手洗いしてきてください。もうすぐ夕飯ですよ?♪」
「うん♪あ、でその前にあずにゃん…」
「?」
「…ぎゅってして?」
「え?」
「…だめ?私、あずにゃんから離れてて寂しかったから…」
「えぇ、えっと…」

ど…どうしようか…いや、悩むことなんてないよね。
今私たちは夫婦なんだし、片方がしてほしいことはしてあげなきゃ。うん、それが夫婦円満の秘訣なんだよね!

「い…いいですよ」
「ホント?やったー♪」
「じゃあ…失礼します」

私は唯先輩を抱きしめた。柔らかくてあったかくていい匂いがして、頭がボーッとなる。
おまけに唯先輩が頬擦りまでしてくるものだから、私はそれはもうまずいことになりそうになってしまう。

「先輩…」
「…あずにゃん」
「えっ?あっ…」

唯先輩は不意に私の頬をペロリ、と舐めた。私は体がぞくっと震えるのを感じた。

「ひ…ゆっ…唯…しぇ…」
「……」
「んっ…」

唯先輩はさらに、私に口づけをした。ものすごく、甘かった。

「…い、いきなり…なにするんですか…」
「ごめん…あずにゃんがすっごくかわいかったから、つい」
「あの…ゆ、唯先輩…」
「ん…?」

私は正直、変な気分になっていた。こんなつもりじゃなかったのに…唯先輩のせいだ。

「すいません、私…もう我慢できそうに…ないです…なんか…」
「…あずにゃん……」
「えっ…?あ、あぅ!?」

突然唯先輩は私をそっとソファに寝かせた。そして優しく、でも力強く、私を抱きしめた。
その顔は真っ赤になっていて、なんというか…すごく、色っぽかった。

「せ…先輩…?」
「あずにゃん…どうしよう」
「え?な、なにが…?」
「私も…我慢できないの…ど、ドキドキしちゃって、なんかすごく変な気持ちなの…」
「…一緒、ですね」
「え?あずにゃんもこういう気持ちなの?」
「…はい。だから、大丈夫ですよ」
「そっか…えへへ、よかった…」「唯先輩」
「なに…?」
「…ずっと、一緒にいましょうね。ずっと、ずっと」
「うん…もちろんだよ」
「えへへ…よかったです」
「あずにゃん、じゃ、じゃあ…いくよ?」
「は、はい!」

おしまい


  • てぇ洗わなくていいの? -- (名無しさん) 2010-10-22 19:40:45
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最終更新:2009年12月31日 14:15