お正月に行くところといえば初詣と新春セールに盛り上がる百貨店と昔から相場が決まっておりますが、
わたくしこと中野梓もまたその風潮に逆らうことなく近所の神社にやって参りました。
まぁ予想通り大勢の参拝客で賑わっているわけですが、私は一つ思うのです。
この中にいる若者のカップルにとっては、おそらく初詣なんてデートをする口実に過ぎないのだと。
実際には恋人とくっついてイチャイチャするのを見せつけに来ているだけなのだと。
あぁ、なんというか非常に忌々しいです。私はこうやって一人突っ立っているだけなのに、どうしてこう…あぁ、嫌だ。こんな自分がいやだ…
と下を向いていると、ざわめきの中から聞きなれた声が私の耳に届きました。
誰誰?誰なの?と思うまでもなくあなたにはこの声の主は分かるでしょう。
あずにゃーん♪だなんてこっぱずかしいあだ名を恥じらいもなく叫びやがる方は、この世に一人しかいらっしゃらないので…

「あずにゃーん!AZUNYAーN!」
「分かりましたからそうローマ字風に叫ばないでください!恥ずかしいです唯先輩!」
「いやぁ、新年なんだしなにかしら変化をつけようかと…」
「いりませんそんな変化!」
「…で、20分も遅れた理由はなんなんですか?」
「わ、私は悪くないんだよ!テレビが!コタツが!」
「寝過ごしたんですか…まぁ、今さら怒りも湧きませんが」
「ご、ごめんね!じゃあお願い事しに行こうか」
「とっと…なに普通に並ぶ気になってんですか?」
「え?」
「初詣、カップル、賽銭箱への列…この3つの要素から導き出される行動は!」
「…や、焼きそばを食べる!」
「そう、イチャイチャすることです!」
「スルー…」
「見てくださいこの列を!家族連れに混じってイチャイチャしてるカップルのなんと多いことか!」
「ホントだー。澪ちゃんとりっちゃんもラブラブだー」
「そう、澪先輩も律先輩も…はい!?」

唯先輩の指差す先には(人を指差しちゃいけません)、なにやら周りが引くレベルにイチャついている澪&律先輩の姿がありました。
…ま、負けた。

「律ぅ、お賽銭はぁ、いくら入れたらいいのかなぁ~?」
「そうだなぁ、やっぱご縁があるように5円じゃないか?」
「でもぉ、律に私以外の人と縁があるのやだかもぉ~♪」
「かわいいこと言ってくれてんじゃんかよぉ澪~♪ようし、1円にしようぜ」
「えー、なんでぇ?」
「1円、いちえん、いいえん、いい縁…私たちがいい縁でいられるように、だよ♪(キラッ」
「やだ、律かっこいいー!んー!ちゅっ!」
「おいおい、恥ずかしいぜ澪♪」

とてつもなくぶっ飛ばしてやりたい衝動をどうにか抑え、私は地面をガッ!と蹴りました。
ごめんなさいお父さんお母さん。梓は一瞬だけ女の子らしさを失ってしまいました…

「…あずにゃん、さすがの私もちょっとだけイラッときちゃったよ」
「正常な反応ですよ。まぁ他人の振りをしておきましょう…さ、私たちは私たちでイチャイチャをしましょう」
「どんなことするの?」
「まぁとりあえず…腕組みをしましょう」
「ほい!」
「いや、なんで腕組んで仁王立ちしてるんですか!先輩は応援団長かなにかですか!」
「いやぁ、つい~♪さ、じゃあ腕組もうか!」ガシッ…ポニッ
「あっ…(ポッ」

唯先輩が勢いよく腕を組んだせいで、私のひじが先輩の…お、お胸にポニッとくっついてしまいました。
なんというすばらしい感触…この柔らかさはとても文章では表現できないです…ああ、幸せ…マジ幸せ…

「うふふ、私たちイチャイチャしてるように見えてるのかな」
「yes…」
「キリスト?」

そうこうしているうちに、私たちの番がやってきました。

「で、あずにゃんはいくら入れる?」
「んなもん適当でいいんですよ。さ、早くしてください」
「じゃあ…5円でいいや…えいっ」チャリーン…

「…唯先輩と、もっとラブラブになれますように」
「ギタリストとして、さらなる高みにたどり着けますように」
「ちょっ…なんでこういう時に限って音楽関連持ち出すんですか!?」
「え…変かな」
「変です!さぁもっと私たち二人のことをお願いしてください!」
「じゃあ…もっともっとあずにゃんとラブラブになれますように!あと結婚できますように!」
「…ま、まぁ若干無茶な気もしますが…いいでしょう」
「えへへ…♪あずにゃん、今年もよろしくね!」
「はい♪」

お願い事とはいえ唯先輩が結婚のことまで考えてくれていたなんて…お父さんお母さん、梓の名字はそう遠くないうちに変わりそうです。

おしまい…

「じゃないや、唯先輩、お守り買って行かないと」
「あ、うん!そうだね」
「すいませ~ん!お守り買いたいんですけど~!」
「はーい♪」
「なっ…!」
「あ、あなたはっ…!?」
「いらっしゃいませー♪うふふー♪」

売り場に現れたのはなんと、巫女の姿をした我らが琴吹紬先輩でした。
珍しくおとなしいと思ってたらこんなところに…衣装に血の痕があるのはおそらく鼻血だろう。なんという執念!

「な、なんでムギちゃんがここに?」
「実はこの神社、父が経営してる系列の神社なの♪特別にアルバイトさせてもらってるのよ♪」
「へー」
「嘘つかないでください!!」
「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ、細かいことは気にしないで!さ、お守りならこれをどうぞ♪特別に私からプレゼント!」
「わーい♪ありがとムギちゃん♪」
「な、なんで安産祈願なんですかぁ!!」
「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ、細かいことは気にしないで!さっき澪ちゃんにもあげたから♪
 ところで、二人はどちらが産むかもう決めたの?」
「やだぁムギちゃんったら~♪」
「あらあら、うふふ♪」
「……」

…お父さんお母さん、喜んでください。梓はそう遠くないうちに、孫の顔を見せられそうです。

「多分…きっと」
「カット?」

おしまい


  • 6回 -- (名無しさん) 2010-05-24 19:18:45
  • 律澪もはや別人wwwww -- (名無しさん) 2010-06-06 22:19:19
  • 澪のキャラが酷いwww -- (名無しさん) 2010-06-10 17:40:15
  • yes…キリスト、の流れに吹いたwww -- (名無しさん) 2010-07-20 07:44:57
  • キットカットwww -- (名無しさん) 2010-08-30 00:37:58
  • 色々ワロタ -- (名無しさん) 2010-09-16 23:44:15
  • りつみおにイラ -- (あずにゃんラブ) 2013-01-21 17:23:29
  • wwww -- (名無しさん) 2017-05-12 00:25:02
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最終更新:2010年01月04日 03:24