好きな人への気持ちの大きさ。
私は100だとすると、唯先輩は200。単位は何だっていい。
これが私と唯先輩の愛情のタンクの容量だ。

だから私が唯先輩から200の愛情を注がれると、あっと言う間に溢れてしまう。
文字通り愛に溺れてしまう。
逆に私が唯先輩に、100の愛情全てを注いでも、唯先輩のタンクの半分にしかならない。
つまり、私の愛情ではどうがんばっても唯先輩を満たせないことになる。

これが私の最近の悩み。

私と唯先輩は今現在、”恋人” としてお付き合いをしている。
誰から見ても羨ましがられる様ならぶらぶカップルだと、友人や先輩方は口を揃えて言ってくれる。
でも、そんな私達…ううん、私は悩んでいる。

別に唯先輩の口から不平や不満の言葉を聞いたわけではない。
それどころか満足げな言葉や感謝を口にするほうが多い。
先輩はウソをつくような人ではないのは分かっている。
その笑顔が本物だと言うことをわかっている…だけど、
私は知りたいのだ。本当に私の想いで満たされているのかどうかを。

いつだって、どんな時だって…
たとえばデートの時、たとえばキスの時、たとえば、エッチの時・・・
私だけ先に容量100のタンクを満たされてしまう。トロトロに蕩かされてしまう。
逆に唯先輩は残った100の愛情をも、もっともっとと私に注いでくれるうえに、
私からは100の愛情しか貰えない…つまりタンク半分しか満たせていないのだ。

そこがもどかしい、歯がゆい。もっともっと愛情を注ぎ込みたい。
唯先輩の事がありえないほど大好きだから、満足してもらいたい。私に溺れて欲しい。
でもどうすれば唯先輩を満たしてあげられるのか…
どんなに考えても愛情のタンクの大きさが違いすぎるから分からない。

いい加減、答えが出ないこの迷宮から抜け出したくて、
恥ずかしかったけど思い切ってデートの時に聞いてみた。

 「唯先輩 どうすれば私はあなたを心のそこから満足させる事ができますか?
  どうすれば私に溺れてもらえるんですか?」

愛情のタンクの話を交え、ストレートにぶつけてみた。

いきなりそう聞かれた先輩は当然ながら目を丸くする。
すると ”う~ん…” とわざとらしく悩んだような素振りを見せた後、ぱっと顔を上げ
優しい微笑を私へぶつけてきながら、口を開いた。

 「あずにゃんは一つ、大きな勘違いをしているよ?」

 「勘違い…ですか?」

 「うん、勘違い…
  愛情のタンクって言うものがあって、そのタンクが私のほうが大きいって言うのは、
  あながち間違いじゃないかもね? ほら私って、欲張りだしね~」

 「ふふっ、確かにそうですよね」

えへへっ と、子どもっぽく微笑む唯先輩。
唯先輩は確かに欲張りだ。好きなものだって一杯ある。
その欲張り度は私にも及ぶ。 だっていつだって私を求めてくるんだから。
もっともっと私が欲しいと、ぎゅっと抱きしめて、キスをねだり、体を求めて…

 「じゃあさ、あずにゃん
  私のタンクにあずにゃんの愛情を100全部注いだとするよね?」

 「は、はい」

 「100の愛情を注いじゃったらさ、あずにゃんはもう、私を愛してくれないの?」

 「え…?」

 「あずにゃんの私への愛には限界があるの?」

 「…あっ!」

私が気づいた事に満足したのか唯先輩は私の頭をなでてくれる。

 「ん、気づいたみたいだね?
  愛情のタンクは確かにあって、それが愛で満タンになる ってのはそうなのかもしれないけど、
  そこへ注ぐ愛情のエネルギーの出所はそのタンクからじゃないんだよ?」

 「!」

 「全く別のところから湧き出すものなんだ 無限なんだよ? 相手を想う気持ちってさ
  私のあずにゃんへの愛情はどんな事があったって尽きる事はないんだもん」

 「はい…私も唯先輩への想いは止まらないです」

 「うん、ちゃんとずっと感じてるよ あずにゃんの想いはしっかりと私に注がれ続けてるよ
  だから私、いつだって、どんな時だって、満たされているんだからね」

 「…私…ずっと不安だったんです…
  だっていつも私が先に蕩かされちゃうから、唯先輩、物足りないんじゃないかって…
  私だって唯先輩をトロトロに蕩かしてあげたいのに…」

 「そんなことないよ?
  だって大好きなあずにゃんが私の愛情で蕩けてくれるだけでも、すっごく満足だよ?
  それにちゃんと私も、あずにゃんに蕩かされているよ」

 「…ほんと?」

 「うん、 ほんとのほんと
  さっきあずにゃんは私のタンクは200って言ってたけど、それは違うくて、
  実はあずにゃんと同じで100なんじゃないかな?」

 「え、でもそれだと…」

 「…う~ん、別のタンクがあるんじゃない?」

 「…別?」

 「欲望のタンクかな?
  だ~ってさ、私、蕩けてても、もっともっともっとあずにゃんに触れていたいんだもん
  私がぐったりと参ってちゃもったいないじゃん!」

 「…えと…それって…///」

 「言ったでしょ? 私のほうが欲張りだ って!
  だから私は今のままでも全然不満なんてないよ?
  むしろ蕩けきった可愛いあずにゃんを、心行くまでい~っぱい堪能できるんだし!」

 「…ゆい先輩…」 

 「ん?」

 「結局私の悩みの答えって、つまりその…
  …私より唯先輩のほうがはるかに ”えっち” だったって事ですか?」

 「えへへ~ そうなっちゃうね~」テレテレ

 「もーーっ! 唯先輩のバカ! 悩んで損したじゃないですか!」ガー

 「いや~ん! あずにゃんが怒った~」キャー

 「もうっ!」

 「…ねぇあずにゃん?」

 「な、なんですか?」

 「あずにゃんももっともっとえっちになっちゃえばいいんだよ」ボソ

いいつつ唯先輩は顔をちかづけ、私の耳元でささやいた。
その声は艶っぽく、私の欲望を駆り立てるには充分だ。

 「な!///」

 「蕩けた”その先の私”を見れるよ?」

 「…その先…」ゴクリ

 「ねぇ? …みたくない? あ ず さ 」

唯先輩の誘うような声音を聞いたのを最後に、私は考えるのを止めた。


*

*

*


再び気が付いた時に私の目の飛び込んできたものは…

今まで見たことないくらい、蕩けきって乱れきった唯先輩の姿だった。

 「…あ、あずにゃん…す、すごすぎだよ…///」

…わ、私一体、何やったのーーーーっ!!



FIN?


  • なにしたんだw -- (名無しさん) 2012-09-24 22:30:09
  • なんかすげー!! -- (あずにゃんラブ) 2013-01-07 04:15:43
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最終更新:2012年03月25日 00:12