「あずにゃーん、クイズだよっ!」
「なんですかもう…」
いつものお茶の時間、いつものように目を輝かせた唯先輩が、いつも通り唐突なことを言う。
まったくこの先輩は、ちょっとは練習にもそれぐらいの熱意をもって…
「パンはパンでも食べられな…」
「フライパン」
「ええっ!?すごいよ
あずにゃん、即答だよ!」
…即答してしまうあたり、やはりだいぶこの雰囲気に染まってしまっているようだ。
「唯ちゃん、今のは結構有名な問題なんじゃないかしら」
「えっ、そうなの?」
「さすがに私でも分かったぞ」
「澪ちゃんまで!?憂は難しいねって言ってくれたのに…」
クラスメイトが満面の笑顔でクイズに悩んでいる様子が目に浮かぶ。
きっと唯先輩が出す限り、どんな問題でも解かれることはないんだろうな。
「まあいいじゃないか、せっかくだし、今からクイズ大会しよーぜ」
「了解であります、りっちゃん隊長!」
「おいおい、そろそろ練習を…」
「そうですよ、練習しましょうよ」
と、澪先輩に加勢する。
ほっておいたらきっと、唯先輩がかわいい珍答を連発して私はにやにやを押さえきれないに違いない、
そんな現場を押さえられては照れる私に唯先輩が、あずにゃーんと抱きついてくれていやでも、
もしそうなったらからかわれ倒されてしまう、それだけは避けねば!
…じゃなくって、れ、練習がはかどらないと、良くない、良くないよ、うん。
「私、クイズ大会って夢だったの~」
あ、だめだ、多数決の原理だ。
※※※
「下はぼーぼー熱くて、上はひんやり冷たいもの、わかるか?」
「お風呂!」
「じゃあ反対に、下がひんやりしていて上がぼーぼー熱いものは、なにかしら?」
「火事を起こした船!」
「光より早く旅するには?」
「循環小数36.7のFTLファクター付量子トンネルを利用するですっ!」
こうしてクイズ大会中、私は答えに答えまくった。
そうです、このタイムマシン・ターディスを操り、時空を自在に旅するタイムロード、ドクター梓に解けないクイズはないのです!やってやるです!
…何か地球人のレベルを超える問題があったような気がするが、あくまで気のせいだ。
「あずにゃんすごいね~」
「ふぇっ…」
こうやって抱きつかれると、思わず顔がにやけてしまうのも、あくまで気のせいだ。
「唯先輩は、もうクイズ出さないんですか?」
「うーん、さっきから考えてるんだけど…」
「どんな問題でも答えてみせますよ」
「うーん…あ、そうだ!」
と、唯先輩はホワイトボードに向かって何かを書き始める。
真ん中に大きな四角形を書いて、その周りに何かを書き込んでいる。あれは、五?矢?
「この前修学旅行に行ったときに見つけたんだけどね、なんて読むか分かる?」
参考画像(ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Ryoanjitemple.JPG)
「もちろんで…」
みるみる自分の顔が赤くなっていくのが分かる。
唯先輩ったらなんて大胆なんだろうというかそんなにディープなことをさらっというあたりさすがですというかでもけどわたしいがいのひとのいるまえでこれはあんまりにも
「唯ちゃんがみつけたのよねえ」
「律ったら昔のお金の形だって言い張ってたよな」
「うるへー!こんな形のお金だって絶対あったん…どうした梓?」
「は…」
「?」
「破廉恥ですー!!」
「「「「?」」」」
「こんなっ、確かにっ、唯先輩は凄いですけど!」
「そりゃスタイルもいいし体つきも魅力的ですけど!」
「でもこれはちょっと大胆すぎます!」
「あずにゃん、これ何て読んだの?」
にゃ?そんなの、きまってるじゃないですか、吾れ…
「吾れ唯だ足るを知る、だぞ、梓」
ほへ?澪先輩、何を言って…
「――私は『足る』ということを知っています、という仏教の教えらしいわ」
え、ムギ先輩、それじゃ…
「梓ちゅわんは、いったいなんて破廉恥な読み方をしたのかなー?」
「にゃああああああああああああああ!」
※※※
「あずにゃんや、いったい何て読んだのさ?」
唯先輩、フンスのどや顔全開で聞かないでください。
知らないです、私は何も知らないです。黙秘権は憲法上の権利です。
「そういえば唯がどうとか言ってたよな」
澪先輩、ほんと勘弁してください。
泣きっ面に朝青龍をぶちかまさないでください。
「梓ー、愛しの唯先輩でどんな妄想をしたんだよーププ」
黙ってろデコッパチ。
「たぶん、梓ちゃんこう読んだのよね?」
あ、だめだ、読心術の原理だ。
「きっと梓ちゃんは、吾『唯で』足るを知る、と読んだのよ!」
「…」
「あー、つまり、『私は唯先輩がいれば、他には何にもいらないの!』ってか。」
「…」
「いい、いいぞ梓、これは歌詞に使えるな!」
「…」
「わあー、あずにゃん、大好きだよー!」
結局一日中、からかわれるはめになった。
※※※
そして
帰り道。
唯先輩はよっぽど上気分とみえ、二人きりになっても、私をからかうのをやめてくれない。
まあ、本音がこぼれちゃったからしかたないんですけどね。
「あーずにゃん、機嫌なおしてよー」
「ゆ、唯先輩が悪いんですよ、あんな問題だすから//」
「顔真っ赤にして言い返すあずにゃん可愛い~♪」
「も、もう抱きつかないでください!」
「いーじゃん、減るもんじゃないんだし」
「それは…そうですけど…」
「でもね、あずにゃん」
ずるいです唯先輩。
「私も、あずにゃんがいれば、他には何にもいらないよ」
突然そんなかっこいい表情になって。
「だから、そんなにふくれないで、ね?」
耳もとでそんなに優しくささやかれて。
「はい…」
私は、唯先輩に体を預ける。
勘違いだったけど、唯先輩の声をこんな近くで聞けて、体温をこんなに感じられて、ほんとに、ほんとに良い一日だったな。
……そう、本当に良かったな、みんな勘違いしてくれて。
言えないもん。
「吾、『唯の』『足を』知る」と読んじゃったなんて。
――この私が、唯先輩の足を、太ももを、黒いニーソックスの下を、知るってことはつまり、
あの神秘の聖域を、傾国の美脚を、神のみわざを自由に操り、唯先輩という宇宙を自在に旅するということで、
くんかくんか・ぺろぺろ・うっふきゃははの桃源郷……
あはは…あはは…あは…ああ…唯せんぱーい……
おしまい!
- 多数決の原理ww -- (名無しさん) 2010-11-30 02:08:29
いいぞwwwもっとwwやwwwれwwww -- (名無しさん) 2011-10-25 13:55:31
- あずにゃん頑張れー。 -- (あずにゃんラブ) 2013-01-12 07:29:23
最終更新:2010年10月29日 02:17