今日は4月1日、エイプリルフール。そう、嘘をついても許される日です!
ふふふ、あずにゃんにどんな嘘ついちゃおっかな~?そうだ、こういうのはどうかな…

「唯先輩、今日も一緒に帰れますよね?」
「うるさいよあずにゃん。私お菓子食べてるんだから邪魔しないでよ」
「え…?」
「高校生にもなって一人で帰れないの?小学生じゃないんだからちゃんとしなよ」
「あ、う…」

ぷぷぷ、あずにゃんたら困ってる困ってる!
ちょっとかわいそうだけど、後で謝れば大丈夫だよね。もうちょっといぢめちゃおっと!

「べ、別にいいじゃないですか。私たちはその、お付き合いしてるんですし…」
「えー、そうだっけ?私はそんなつもりなかったんだけどなぁ」
「そんな…唯先輩、言ってたじゃないですか!私のこと大好きだって!」
「うーん、記憶にないなぁ~?」
「うぅ…」

あらら、ちょっと調子に乗りすぎちゃった。あずにゃん泣きそう…
まったく素直なんだから。まぁ、そこがかわいいところなんだけどね。
とりあえず、この辺で謝っとこうかな…

「あはは、ごめんあずにゃ…」
「…わかりました。唯先輩がそういうなら…もういいです」
「え?な、何が?」
「…お別れです」

え?お、お別れって?何言ってんのあずにゃん。もしかして私の嘘を本気にして?
そんなんじゃないんだよ!待っててね、今すぐギューってしてあげる!

…いや、待てよ…?これまでのパターンから考えれば…

「そっかー、お別れかぁ」
「!?…そ、それじゃお世話になりました」
「うん、わかったよ。ばいばいあずにゃん」
「…こ、これからは澪先輩にアタックするかもしれないです」
「それで?」
「……!」

部室の扉の手前で驚いたように私を見つめるあずにゃん。
まさしく計算外、といった感じなのかな。さっき一瞬見せたしてやったり!な表情は消え失せ、みるみる不安そうになっていく。
そりゃそうだよね。今までの勝ちパターンが通用しなかったんだから。
多分、あずにゃんの作戦はこんな感じ。

『さよなら、唯先輩…』
『違うんだよぅ~!』ギュッ
『離してください!私はもう…』
『私はあずにゃんのこと嫌いなんかじゃないよ~!大好きだから、だから行かないで~!』
『…ふふふ、騙されましたね?』
『え?』
『何もエイプリルフールは唯先輩だけのイベントじゃないんですよ!』ギュッ
『きゃあ!騙された…』
『ふふふ、唯先輩のおばかさん♪』
『ふええ~!』

そして結局最後は抱きついてチュー…もう、あずにゃんたらワンパターンすぎだよ。
こんなんじゃ刺激が足りないでしょ?だから…

「何ボーッと突っ立ってんの?早く澪ちゃんにでも会いに行けばいいじゃん」
「い、いえ、あの…」
「あれー、行けないんだぁ?お別れって言ったのはあずにゃんなのにね」
「う…」
「あーずにゃん?」
「……!」

表情を確認しようと近づいてあずにゃんの顎を指先でクイッと上げてみると、その目には涙が浮かんでいた。
それをそっと拭ってあげて、意地悪に聞いてみる。

「今さ、どんな気持ち?」
「どんな…って…」
「わざと突き放したら、私があずにゃんに抱きついてくるって思ってたんでしょ?」
「……」
「それが通じなくて逆に突き放されちゃったけど、今どんな気持ち?って聞いてるの」
「…完敗です…ぐぅの音も出ません」
「だよねー?でもあずにゃんが悪いんだよ。いつまでも同じやり方が通じると思ってたら甘いんだよ?」
「…はぃ」
「でも大丈夫だよ。私がさっき言ってたことは全部嘘だから」
「ホント…ですか?」
「うん。でも今日はチューしたり抱きついたりしないよ。それは全部あずにゃんがするの」
「…わかりました」

今日はなんだか新鮮な日だ。
だってそうでしょ。あずにゃんの方から私に抱きついて、あずにゃんの方から私に唇を重ねてきたんだもん。
あ、それだけじゃないよ。あずにゃんのキス、なんだかいつもよりえっちだった。普段よりも強く絡み付くような、そんなキスだった。
だから…つい、油断しちゃったんだ。
勝利は目の前、野球で言えば9回裏ツーアウト、ツーストライクまで追い込んだような、サッカーで言えばロスタイム残り30秒を切ったような…そんな状況だったのに。

「ん…はぁ…どう、ですか、唯先輩…?」
「…今日のあずにゃん…なんだか、すごいや…頭がボーッとしちゃった」
「えへへ…そうですか」
「じゃあ…服も脱がせて?」
「……」
「あずにゃん…?」
「なんで私が?」
「な…っ!?」

あずにゃんは再び私にえっちなキスをして、さらに胸をまさぐった。もちろん、制服の上から。

「はぁ、はっ…あ、あずにゃ…」
「唯先輩言いましたよね?さっき言ってたことは全部嘘だから…って」
「え…?」
「私も同じです。さっき言ってたことは全部嘘です。具体的には、完敗ですってところ」
「そ、そんな…」
「私はまだ負けてませんよ」
「…!」

何言ってるのあずにゃん。もう私の勝ちは確定してるんだよ?
だってあずにゃんはさっき私に抱きついたりキスしたりしてたんだから。
だからもう、あずにゃんに逆転の目なんてない。後はもう、私と最後まで…

「あ……」
「ようやく気付きましたか?」
「ず…ずるい…こんな…こんなことして…」
「唯先輩…私と最後までしたいですよね?したくないなんて言わせませんよ。そんなに顔赤くして、息荒げて…」
「わた…私…」
「私にキスされて胸触られて、興奮しちゃったんですよね。しないとどうしようもないくらいに」
「は…はぅ…んぁ……」
「キスはしてあげます。こうやって胸も触ってあげます。だけど絶対にそれ以上はしてあげません。唯先輩が負けを認めるまでは」
「ひ…ひどいよ…ふぁ…ぅっ…」
「さ、どうします?」

ダメだ。あずにゃんにはかなわない。どんなに工夫しても、いつも一つ上をいかれる。いつだって、一発逆転の手を持ってるんだ。
それは私が甘いから…いや、もしかしたら私は、こういう状況を望んでるのかもしれない。

「…私の、負けだよ」
「いいこですね唯先輩。自分に正直になっていさぎよく負けを認めるのは、とてもいいことですよ」

力なく床にへたりこむ私のブラウスのボタンをリズミカルに外していくあずにゃんは、完全に私を見下ろしていた。
私が勝って、あずにゃんが負ける…やっぱりそれは、嘘なんだ。エイプリルフールだからって、それがひっくり返ることはない。
あるべきなのは私の負け。あずにゃんの勝ち…それでいいんだよね、あずにゃん。だって――

「唯先輩にしては、なかなかよくやった方だと思います。あの突き放し作戦を切り抜けたのには驚きました」
「…あれで、勝ったと思ってた」
「私も一瞬だめかな…と思いましたが残念です。唯先輩は我慢ができないんですよね」
「…あんなキス初めてだったし、胸だって…うぅ」
「さて唯先輩…どこから舐めてほしいですか?」
「…ここ」
「いきなりですか?そこは最後に…あ、まさか」
「えへへ、うっそー♪」
「むむ…この期に及んで!いいです、そこから舐めてあげます!!」
「あ、だっ、だめ、まだ…やーん!」

――だってあずにゃんに負けると、こんなに気持ちいいんだもん。

おわり


  • 二人の策見事。 -- (あずにゃんラブ) 2013-02-13 18:59:57
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最終更新:2010年04月04日 17:46