春休みの昼下がり。
うららかな日差しが降り注ぐ中で、私は爽やかな風を浴びつつ高原を走っていた。
――というようなことはなく、寝巻きのままだらしなくベッドに横たわっていた。
ああ、窓の外から聞こえる子供の声を聞くたび罪悪感に駆られてしょうがない。なんでこんなぐだぐたになってんだろ私。
小学生の頃から、どんなに長い休みでも昼過ぎまでこんなことしてるなんてほとんどなかったのに…
「う~ん…むにゃむにゃ…」
それもこれも全部、私の横で寝息を立てるこの人が悪いんだ。
人の生活リズムを物の見事に狂わせておいてなんですか、このかわいい寝顔は?
絶対許しませんよ。ここは一つお仕置きをしてあげましょう。
「…えいっ」
「ふがっ…んが…んっ…くっ…」
鼻をつまむと、とてつもなく苦しそうに顔を歪ませる唯先輩。ふふ、もうちょいだけ…
「ふごっ…んが……ぶっはー!」ゲシッ
「いたっ!」
「はぁはぁ…ムギちゃんにケーキ口に突っ込まれる夢見たよ…あれ、
あずにゃんどうしたの…?」
「見事な右ストレートです…何でもありません。それより早く起きましょう?さすがにまずいですよ」
「んー、まだ寝てようよー?」
「きゃ、ゆ、唯先輩?」
せっかく起き上がっていたのに、唯先輩に抱きつかれて再びベッドに横たわる私たち。
ホント、だらけすぎ。…でも不覚にも、悪くはないと感じる。むしろ、幸せなくらいなんだ。
「もっとこうしてあずにゃんとくっついてたいな~♪」
「…まったく、だらけすぎですよ?」
「だって幸せなんだもーん♪ぎゅー♪」
「…その、そんなに体を密着させられるとまずいですよ」
「なんで?昨日だってくっついて寝てたじゃん」
「だ、だから!…我慢するの、大変なんですよ。唯先輩に変な気持ちになっちゃいそうで…」
「我慢なんかしなくていいんだよ?私あずにゃんのこと大好きだから、何されても平気だよ♪」
「…さらっとそういうこと言わないでくださ…ふにゅ」
唯先輩は私の顔を胸に押し付けた。抵抗しようとしたけど、時既に遅し。
甘い匂いと柔らかい感触に包まれて、私の理性はもう完全に吹き飛んでしまった。
「…唯先輩」
「なあに?」
「たまには私が甘えてもいいですか…?」
「いいよー。今日は私があずにゃんのお姉ちゃんになってあげる♪」
「でも、憂に悪いような…」
「大丈夫だよ。憂は憂で、あずにゃんはあずにゃんだから!」
「そ、そうですか?」
まぁ、憂は毎日唯先輩のそばにいられるんだから今日くらいは多目に見てくれるよね。
それに私は単なる妹ってわけじゃないし。だって
これからすることは、憂は絶対にしないことだもんね。
「唯…お姉ちゃん、抱きついてもいい?」
「ふわわ、お、お姉ちゃんなんて…なんか快感!」
「…大げさです」ギュ
「んは~♪あずにゃんかわいいな~♪」
「…かわいいのはそっちも一緒ですよ」
「もー、照れないでお姉ちゃんって呼んでよー?」
「お、お姉ちゃん…き、キス…してもいい?」
「え!?あ、うん…いいよ」
「……」
チュッ
一度。二度。三度。口づけの数を重ねるたびに、私と唯先輩の舌の動きは激しさを増していく。
そして唯先輩は私の体に覆い被さると、強く抱きしめてきた。
…どうやら我慢できないのは、唯先輩の方みたいだ。
「…あず…にゃん…?もう、ダメみたい」
「私も…です」
「あのさ…今日は何時まで家にいれる?」
「気にしないでいいですよ…?また泊まればいいですから」
「…よくばりだね」
「いいじゃないですか。朝だらけた分、午後に取り戻しましょう」
「あずにゃんったら…よし、がんばるぞー!」
「やってやるです!」
ガバッ
おわり
- 尊し -- (名無しさん) 2020-08-12 02:12:52
最終更新:2010年04月04日 17:46