280 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2009/08/05(水) 15:23:17 ID:CpA5jry+
…ムカつく…
今の気持ちを言葉に表すとこんなカンジ…かな
私は自分の部屋のベットに寝転がった。
なんで…なんでこんな事にになっちゃたんだろう…
深くため息をついた。このため息の理由はー…
部活が終わった
放課後、唯先輩に誘われムギ先輩と私で
唯先輩の家に練習をしに行った。
みんな唯先輩の部屋で練習をしていた
「あずにゃーん、ここはどうやるのー??」
「えっと、ここはですね…」
「唯ちゃん、梓ちゃんちょっと私のキーボード聞いてくれる?」
「あっはいー…」 その時ガチャという音がして、
「ただいまー…」という自信が無さそうな元気のない憂の声が聞えた。
「憂、おかえりー!」と唯先輩が憂を励ますように部屋を出て行った。
私たちもつられて部屋からでた。すると…「にゃあ」と言う声が聞えた。
一瞬、時間が止まった
「え…?」私は思わず声を出した。むぎ先輩も
「あら?猫…??」と呟いた
「ええええ!?」階段の下の方から唯先輩の大声が響いた。
…何があったんだろう…
パタパタ…と唯先輩が階段を上がってきた。
「どうしたの?唯ちゃん」ムギ先輩が尋ねる
「あっあのね憂が子猫拾ってきちゃったの!!」
そう言った唯先輩の腕の中には小さな黒猫が丸くなっていた。
281 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2009/08/05(水) 17:33:10 ID:DxiLVq7c
「でも可愛いわね。この猫ちゃん。」
ムギ先輩が唯先輩の抱いている猫を受け取りなでる。猫は気持ち良さそうにゴロゴロと喉をならした。
「ですよね~。かわいそうでついつい拾ってきちゃったの。」
部屋に飲み物を持って上がってきた憂が言う。
「これじゃあ私でも拾ってきちゃったと思うよ~。
クロちゃん可愛いねえ~♪」
「お姉ちゃん早速名前着けちゃったの・・・。」
憂が苦笑いをする。
「先輩、練習はどうしたんですか!」
子猫の登場に何故かムッとした私はちょっと怒り気味に先輩方に言った。
「ええ~。こんな可愛いクロちゃんをほっといて練習なんて駄目だよ~。」
唯先輩が満面の笑顔で答えた。ムギ先輩も練習を再開する気はないようだ。私は憂が持ってきてくれたジュースを飲みながら唯先輩達が子猫をかわいがっているのを眺めていた。
「
あずにゃんもナデナデしなよ~。可愛いよ~♪」
私が一人でむくれているのを見た唯先輩が私に子猫を差し出してきた。子猫はうれしそうに私に近寄ってくる。
その時私の中で何かが崩れた。無意識のうちに私の膝の上にいる猫をはねのけ、唯先輩の部屋から飛び出した。
- 正直言って自分でも何をしているのか分からなかった。私を呼び止める声を聞こえない振りをしてそのまま逃げる様に唯先輩の家を飛び出した。
そんなこんなで私は今猛烈に
後悔している。家への途中で何回か足を止めて唯先輩達に謝ろうかと思ったけど、その時のやるせなさを思うとどうしても足が動かなかった。
「はあ・・・。」
唯先輩の事を思うと本日何度目か分からないため息が自然に出た。
283 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2009/08/06(木) 02:17:59 ID:FIACGaE/
281続き。頑張る。頑張った。
――ふと、聞きなれた電子音が耳に入った。
伏せていた顔を上げる。携帯の着信音だ。
正直、誰かと話をする気にはなれなかったし、メールだとしても、返す気にはなれない。
けれど、なんとなく、取らなければいけないような気がして、携帯に手を伸ばした。
『着信 唯センパイ』
どきり、とした。
たった数文字で、こんなにも動悸が激しくなるものなのだろうか、というほどだった。
今日何度目かの溜息の理由。その原因。私の行為。猫の声。全てが頭で再生される。
どうしよう。
どうしよう。先輩。私悪い子です。だから、きっと先輩怒ってますよね。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
その言葉達を、電話機の向こうのあの人に言うべきなのに、指が通話ボタンを押さない。
胸が、痛い。
――と、電子音が途切れた。
瞬間、私は何かに解放されたように、起こしていた体をドサリとベッドに預ける。
何やってんだろう、私。
こんなんじゃ、ホントに唯先輩に――
携帯の画面見る。軽音部の皆さんの集合写真。その待ち受け。
画面の唯先輩は、笑っている。
先輩。
話したいです、先輩。
謝りたいです、先輩。
唯先ぱ――
ピリリリリリ♪
携帯が、鳴った。
私は、先ほどの私とは打って変わったように、即座に通話ボタンを押した。
『あずにゃん!?』
電話機の向こうのあの人は、予想に反して、ものすごく嬉しそうに、かつ、ホッとしたように、私のあだ名を呼んでくれた。
その声だけで、なぜだろうか、ひとつの雫がポトリと、私の瞳から零れ落ちた。
『よかったぁ~。あずにゃん、今日急にいなくなっちゃうし、電話にも出てくんないしで、私、完全に嫌われちゃったのかと思ったよ~』
唯先輩の、えへへと苦笑交じりの表情が浮かび上がる。
「そ、そんなことありません!!」
私は、自分でも気づかないうちに大きく否定していた。
『え?』と先輩は不思議そうに呟く。もういい。今日は私のせいで迷惑をかけた。私のせいで唯先輩にも、ムギ先輩にも、憂にも、そしてあの猫にも迷惑をかけたのだ。
なにより、私は唯先輩に「嫌われた」と思わせてしまった。
なら、今ここで、全部言ってしまおう。
さっき、自分の中にしまってしまった言葉達を。
「わた、私は、唯先輩を嫌いだなんて、そんなこと思ったの、一度もありません!!
ただ、ただ私は、唯先輩のこと取られちゃうって……、ネコさん相手に、思っちゃっただけです!!
本当に、本当にごめんなさい!!わ、私、やです。取られちゃうことよりも、何よりも、唯先輩に嫌われることが、一番嫌です!!
なのに、なのにあんなこと……。グスッ、す、すいません。自分でも何言ってるのか……。と、とにかく、ごめんなさい。ムギ先輩達にも……、ごめんなさいって、あの」
『あずにゃん』
電子音交じりの、だけれど、変わらずあたたかい唯先輩の言葉が、私の言葉を遮った。
私は、いつの間にか涙でボロボロな顔を戻すため、ゴシゴシと顔を手で拭って、聞き返した。
「なんですか?」
気付かない内に、声は涙声だ。
『私はね、あずにゃんのこと、嫌いになったことなんて、一度もないよ』
それなのに、唯先輩は、
『確かに、今日のことは、びっくりしたけど……。でも、ちゃんと理由、分かったもんね。やきもちだって。私、あずにゃんに、嫌われた訳じゃないって。それだけで、十分だよ』
いつもと変わらない声で――見えないけど――表情で。
『私もごめんね、あずにゃん。あと、やきもち焼いてくれて、ありがとう。なんか、嬉しかったよ。えへへ』
私のことを、優しく、包んでくれた。
通話を終え、画面を見ると、私の隣で唯先輩が、優しく笑っていた。
翌日。
まず、私がおずおずと部室に入ると、唯先輩が私に愛情表現という名の抱きつきをお見舞いしてくれた。
続いて、ムギ先輩が、昨日の子猫は家で飼うことにした、との報告を変わらぬ笑顔でしてくれた。
私は、どうしよもなく申し訳なく、かつ恥ずかしくなって、ごめんなさい!、とムギ先輩に大声で謝ってしまった。
部室に響くその声は、律先輩、澪先輩の興味を不本意にも注いでしまったらしく、私はその2人から怒涛の質問攻めを食らうことと相成った。
ムギ先輩は、まぁまぁ、といつものようになだめモード(両手にティーセット)。
律先輩は、うるさい……、こほん、騒がしいほどに一方的なインタビュー。
澪先輩は、そんな律先輩の唯一の止め役という名のオアシス。
そして、唯先輩は、私のことを苦しいくらいに、けれど、嬉しいくらいに、抱きしめて、微笑んでくれる。
そんな、日常の風景。
おわり
最終更新:2009年11月14日 02:24