「あんまし、おもしろくなかったなぁ」
借りた本を返却するために学校の図書館を訪れた私。
今日の部活は、先輩達の模試が明後日に控えてるためなくなった。
「ん……?」
そろそろ家に帰ろうかと思っていたら、
部屋の隅の方で、なにやら「う~ん」と
頭を捻るような声が聞こえてきた。
「う~ん、うぅ~~ん……」
「………」
正直………本当に頭を捻っているのかと疑問に思う声だ。
例えば、今夜のご飯はなにかなとか、家に帰って冷たいアイスが食べたいなとか、
そんなどーでもいーことに頭を悩ませているような………。
まあ、そんなどーでもいーことを考える先輩が、私の知り合いにいるわけですけど。
「唯先輩、こんなところでなにしてるんですか?」
「あ、あずにゃ~ん。なにって、見ての通りだよ」
机の上に散乱した参考書。
一体何から手をつけたのかわからなくなっている。
「順番に片づけていった方がいいと思いますけど……」
「いやぁ~、放っておくと可哀想だと思ったので、ついつい平等に」
「へ、へぇ~……」
おさえろ私!つっこみたい気持ちはわかる!
私は拳をぎゅっと握って、顔を引きつらせながらもなんとか堪えることができた。
が、そんな私の様子を不思議に思ったのか、
唯先輩が「もしかして」と声をかけてきた。
「
あずにゃん、おしっこ行きたいなら我慢しない方がいいよ……?」
「……………」
とりあえず、手近の参考書で殴った。
数分後……
「ここ、代入するんじゃないですか?ほら、この公式を使うと……」
「おおっ、さすがあずにゃん!魔法使いみたいだね!」
「褒めてくれるのは嬉しいですけど、先輩が後輩に教えられるって……」
「いつもギターのテク教えてもらってるじゃん♪」
「少しは自分で努力してください」
いつのまにか唯先輩の隣で勉強を教えている私。
どうせ家に帰っても暇だからと、唯先輩につきあうことにしたのだ。
もちろん、私の意志で……。
「おお、解ける!スラスラ解けるよ!」
「よかったです……って早!もう全部解いたんですか!?」
「うん♪あずにゃん大正解だよ。ホントにありがとね♪」
「ど、どーいたしまして……」
物覚えが人一倍いいという点は、欠点を補って余りある……か。
普段ギターを教えていても思うけど、唯先輩は要点さえ掴めば、
あとは、階段を二段飛ばしで昇って行くように上達する。
そういうところは私にとっても羨ましいと思えてしまう。
「あずにゃんあずにゃん♪勉強ってわかったら楽しいね♪」
「そ、そーですね……ハハ」
まるでゲームをプレイする感覚で問題をクリアしていく唯先輩。
『やるときにはやる』という言葉がまさにピッタリと当てはまる人だ。
「むっ……コレは……」
「……どうしたんですか?」
不意に唯先輩のペンが止まる。
先ほどの楽しげな表情からは一変、
深刻そうな表情で問題と向き合うソレに早変わりしていた。
が……しばらくすると、がっくりと項垂れて、
「わかりましぇん……」
「もうちょっと頑張りましょうよ……」
やっぱり、まだまだ道のりは長いようです……。
そんなこんなで、あっという間に時間は過ぎ……。
「唯先輩、そろそろ閉館時間ですけど……」
「ん~、もうちょい」
「でも、もう10分切ってますし、続きは家に帰ってからのほうが」
「ん~、わかった」
私は机に散らばった参考書を一緒になって片づけた。
一応やったところがわかりやすいように“しおり”を挟めばと提案すると、
唯先輩も「そうだね♪」と言って賛成してくれた。
ちょっと余計なお世話だったかも……。
「今日はあずにゃんのおかげではかどったよ。ありがとね、あずにゃん♪」
「いえ、私はほとんど隣にいただけですから……」
「そんなことないよ、あずにゃんが指導してくれなかったらここまではかどんないもん」
「大袈裟ですね。私はただ、要点に軽く触れただけで、
問題を解いたのは、ちゃんとした唯先輩の実力ですよ?」
「そうかな………そぉかなぁ~、えへへぇ♪」
「コラコラ……本番は明後日なんですから、気を緩めるには早いです」
遠くで、数人の生徒が私たちを見てクスクスと笑っていた。
おそらく図書係りの生徒だろうけど、これ以上迷惑をかけたら悪いと思い、
唯先輩を促すと足早にその場を去った。
相変わらず、唯先輩はのほほんとしていたけど……。
通い慣れた道を二人で歩く。
本来なら、今日は一人で帰るはずだったこの道。
でもどういうわけか隣には唯先輩が居て、
どういうわけか手なんか繋いで恋人のように歩いている。
「あ、そうだ!あずにゃんに鯛焼きくんを買ってあげよう!」
「ホントですか!?あ、いやでも……悪いですよ……」
「勉強に付き合ってもらったお礼だよ。素直に奢られておきんしゃい」
「 帰り遅くなっちゃいますよ?憂も心配するんじゃ……」
「連絡しておけば大丈夫だよ……あ~うい~?いまねーあずにゃんと……」
「…………」
私の意見もむなしく、憂に電話をかける唯先輩。
その最中も、唯先輩の手は私の手をしっかりと握って離してくれない。
電話する時ぐらい、手は離せばいいのに……。
私は内心でそう呟くけれど、
唯先輩は気にするそぶりも見せず、憂と楽しそうにお話ししていた。
「これでよしっと♪」
「じゃあ早く行きましょう。鯛焼き売り切れちゃいます」
「アレレ?ずいぶんと遠慮しないね」
「あまり遠慮しすぎるのも、せっかく奢ってくれるという
唯先輩の好意に失礼な気がしまして……」
「言うねぇ~、それでこそあずにゃん!」
「あはは、なんですかそれ……」
いつのまにか、繋いだ手の違和感は消えていた。
むしろ、それが当たり前のような気もしてくる。
唯先輩がひっぱり、私がついて行く。
時には私がリードして、唯先輩をサポートすることもある。
そんな関係の私たち……。
どうだろう……お似合いだろうか……。
「唯先輩……模試、頑張ってくださいね?応援してますから」
「ありがと♪当日はあずにゃんパワーで乗り切るつもりだから一杯パワー頂戴ね♪」
「まあ……そういうことなら、仕方ないですね」
「というわけで、あずにゃんぎゅー♪」
「わっ、もぉ……唯先輩ったら……」
それが唯先輩のためになるのなら悪い気はしない。
私が唯先輩の元気となり、支えになるのなら、
唯先輩が卒業するまでは、しっかりとその役目を果たそう……。
でも……叶うことなら……
「もう、いつまでそうしてるんですか!ちゃっちゃと歩いてください!」
「え~、もうちょっとこのままがいぃ~」
「駄々こねないでください!その…外じゃなきゃ、いくらでも……」
「ハイ!やめます!」
「心変わり早っ」
あなたの傍で……
END
- 参考書で殴るかフツウ?あずにゃんには猫ひっかきでしょ! -- (名無しさん) 2010-08-11 14:37:44
- ええお似合いです なので早く結婚してください -- (鯖猫) 2012-12-30 04:04:45
- ↑上の二人にそれぞれ同意。 -- (あずにゃんラブ) 2013-01-20 01:52:58
- にゃんあずかわゆい -- (名無しさん) 2015-09-05 02:57:23
最終更新:2010年07月07日 23:07