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ある放課後の部室、私と唯先輩は二人きりで、他の先輩たちが来るのを待っていた。

唯「はぁ…」

唯先輩がため息をついて物思いにふけっている。珍しいこともあるものだ。

梓「どうしたんですか先輩?ため息なんてついて」

唯「…ねぇ、あずにゃんってさ、彼氏いる?」

梓「え?い、いませんけど…」

唯「ホント?じゃあ今までいたことある?」

梓「ないです!ていうかなんでそんなこと聞くんですか?」

唯「うん…今日クラスの子と色々話してたんだけど、皆普通に付き合ったことあるらしいの」

梓「はぁ、そう…なんですか」

私は正直驚いていた。
いつもはお菓子を食べてぼんやりしている唯先輩も、恋愛について悩むことがあるのだ。

唯「私っておかしいのかな…この年で一度も付き合ったことがないなんて」

そりゃ健全な女子高生なら彼氏の一人や二人、いてもおかしくはないだろう。でも…

梓「…先輩は、男の人と付き合うのはやめた方がいいと思います」

唯「え?どうして?」

梓「その…軽音部のこともあるし…それに皆とお茶飲んだりしてる方が楽しいですよ」

唯「そうかなあ…」

自分でもなんでこんなことを言っているのかよく分からなかった。
でも確かに言えるのは、唯先輩が誰かと付き合って、私から離れていくのは嫌だ、ということだ。

梓「そうなんです!だからそういうことは考えないで練習を」

唯「でもやっぱり高校生なんだし、一回くらいは恋してみたいよねえ」

梓「先輩…」

この気持ちはなんだろうか。焦りと不安が入り交じったようなモヤモヤした気持ち。
唯先輩の容姿を考えれば、作ろうと思えば彼氏なんてすぐに出来てしまうだろう。そんなのは嫌だ。

梓「じゃあ…」

唯「ん?」

梓「じゃあ、私と付き合ってみませんか?」

私はなにを言っているんだろうか。今すぐにでも逃げ出したい衝動に駆られる。
でも唯先輩への想いが、それを許さなかった。

唯「え?あずにゃんと付き合う?私が?なんで?」

梓「その…何も付き合うのは男じゃいけないってわけでもないですし」

唯「でも女同士だよ?そんなの変だよー」

ごもっともな意見だ。でも私の脳裏に引き下がるという選択肢はなかった。

梓「付き合うって言っても、一緒に遊びに行ったりおしゃべりしたりするくらいですよ。
 こういうのは気分なんです」

唯「そ、そうなのかなあ」

梓「そうですよ!私と付き合いましょう唯先輩!きっといい経験になります!」

唯「そう…だね、いきなり男の人と付き合うのも不安だし、
 まずはあずにゃんで慣れるってのも悪くないかあ」

我ながらかなり無理のある理論だが、唯先輩は納得したようだった。
こういうところもまた、魅力の一つなのだろうか。

梓「じゃあ…よろしくお願いします。唯先輩」

唯「ねえねえ、一応恋人なんだから唯先輩じゃなくて唯って呼んで?」

梓「え…でも…」

唯「いいからいいから!恋人は年上でも名前で呼ぶものでしょ?」

まったくなんの少女漫画の受け売りだろう。私は困惑しながらもおずおずと言った。

梓「ゆ…唯…よろしく…」

唯「もっと大きな声でー!」

梓「唯、よろしく!」

唯「よろしい!じゃありっちゃんたちが来たら恋人宣言しよっか!」

梓「ええ!?別に内緒でも…」

唯「だーめ!軽音部公認のカップルとして皆にも知らせるの!

梓「ええー…」

なんだかんだでノリノリである。でも、こうして一緒にいられるのなら悪くはない。
どうせならもっと積極的になってみようか。

梓「あの…」

唯「ん?なあに?」

梓「…手、つなぎましょう」

唯「ああ、そだね!やっぱり恋人ときたらこれだよね!」

ギュッ

いつもと変わらない、唯の手。温かくて、少し湿った指が私の指と絡む。

唯「えへへ、あったかいね、あずにゃん♪」

梓「はい、唯せんぱ…唯」

私は唯のことが好きなんだろうか。この感情の正体は正直分からない。でも

梓「あの、唯?」

唯「なあに?」

梓「ずっと、私から離れないでくださいね?」

唯「うん、ずっと一緒にいようね!あ、足跡だ…皆くるよ!」

梓「はい♪」

ただ一つ言えることは、私は唯から離れたくないということだ。
だからこの手は絶対に離さない。
手をつなぐ私たち二人をぽかんと眺める律先輩たちを見つめながら、私はそう心に決めた。



おわり


  • その繋がれた愛ある腕はしばらく離れない。 -- (あずにゃんラブ) 2013-01-25 00:30:58
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最終更新:2009年11月14日 02:50