軽音部の合宿。私はとうとうおかしくなってしまった。
練習を終えて、みんな部屋に帰って就寝したのだが私はあることで頭がいっぱいだった。
午前二時。
みんな個室で寝ているからばれる心配は無い。布団を抜け出し、目的地に向かう。
廊下を歩いている時もあることで頭がいっぱいだった。どうにかなりそうだった。
どこをどう行ってここまで来たのかあまり覚えていない。いつの間にか部屋の前に立っていた。
軽く深呼吸をし、こっそりくすねた鍵を差し込む。
錠が外れる音が響く。あまりにも大きく聞こえたので少し背筋が冷えたが、そんなことを気にしている余裕はなかった。
ドアを押しやり、中に入る。
「すぅ……、すぅ……」
部屋の端の方で、規則正しく揺れる布。それを見た瞬間あふれ出る何かを感じた。
達成感に近い高揚感。興奮しているのだ。しかし、まだ目的のほとんどは達成されていない。
近づくと、枕の上に綺麗な寝顔がある。髪は解かれていて、白いシーツの上に黒く、艶めかしく流れている。
いつものツインテールがこんなにも広がりを見せるもなのだろうか。
息が上がっているのに気付いた。汗が滲んでいる。今すぐにでもこの手に掻き抱きたい衝動に駆られた。
だが、そんなことをすればすべてが水の泡になる。何とか抑え、震える手でゆっくりと布団をはがしていく。
「あっ……」
思わず声を漏らしてしまった。
シーツに負けないぐらい白く、そして華奢な四肢が、月光で輝いていた。綺麗な顔から首へ降り、肩から腕へ流れ、指先で飛び上がる。
薄着のシャツの下の腰の細い流れを見つけ、長い脚へと滑り落ちていく。
綺麗だ……。
そうとしか言いようがなかった。
小さなその体は薄着のせいか、体の形を浮きださせていた。
我慢が出来なかった。
今まで何回も頭の中で思い描いていたが、その先を考えると踏み出せなかった。だが、もう我慢が出来なかった。その後どうなっても知ったことではない。
今、この感情の高ぶりに身を任せたい。欲望をぶつけたい。目の前の女の子をめちゃくちゃししてやりたい。
そんな感情が湧いていた。
そして、ついにベッドに入り込んだ。
間近で感じる香り。いつも抱きついているが、この香りは慣れるものではなかった。脳髄を揺さぶり、あらぬ感情を抱かせる。
最初の頃は抱きつくことをやめようとも思っていた。これ以上すると、おかしくなってしまうから。
だが、やめたら他の人にとられるのではないのか? ここでやめたら、このかわいい人が他の人の腕の中に収まり、笑っているのだろうか?
そんなことがよぎったがために、今まで抱きついていた。
向かい合わせで寝転がる。寝顔を独り占めしたことが妙にうれしい。今までも合宿をしていたが、こんなに高ぶった夜は無い。
熱が体を陶酔させ、その夢のような心地で頬に手を沿わせ、口づけをする。
「んっ……」
軽くするはずが、いつのまにか激しく、そして深くしていた。
「んんっ……! ふぅん……!」
頭の中がぼんやりと、だが欲望だけははっきりとしていた。
これで起きてしまっても後悔は無い。そのまま押さえ付けて続けるだけだ。
どす黒い感情が湧いた。それが正しいのかさえ判断がつかなかった。
ただ、自分の欲望に従う。
ゆっくりとシャツの中に手を入れる。衣擦れの音と、肌の触れ合う音。
そして、手から伝わる体温と感触。すべてが麻薬のように快楽を与え、自分をおかしくする。
ブラジャー、していないの……?
ゆっくりと腰から、膨らみへと手を滑らせる。そして突起物を見つけ、なでる。
甘い吐息がかすかに漏れた。夢中でなで続けると、甘美な声を伴って、自分の耳をくすぐる。
この目で確かめたい。
なぜかそんな感情がふと湧いた。一緒にお風呂に入っていたから、見たといえば見た。
だが、そんな友達のような感じではなく、自分の行為で高揚して赤く染まった肌を見たいのだ。
「……」
大きく息を吸った。そして意を決し、シャツに手をかけた。
「は、は、は……////」
「こ、これは……////」
「え……、えっちな小説というやつでは……」
「そうだよね……」
軽音部、部室。
澪が謎のノートを見つけ、中身が気になったので律が出来ごころで見てみようと言いだした。
梓が止めに入ったが、唯に押し切られ、紬を待つ間、ノートを見ることになった。
しかし、ここまできて見るべきではなかったとみんなが思っていた。
ガチャッ
「みんな、ごめんね。掃除当番で遅くなっちゃって……」
「「「「うわああぁ!」」」」
桃色空間を壊す現実の音に飛び上がる四人。
「ど、どうしたの!?」
「い、いや。何でも!」
「そう、何でも無いぞ!」
明らかに挙動不審の四人を不思議そうに眺めてみると、机の上のノートに目が止まる。
「あっ……。それ、見たの?」
「へ? な、何のことやらさっぱり~」
「昨日、あれだけ探して無いと思ったらこんなところに……」
そのセリフを聞いて、四人が固まった。
「「「「む……」」」」
「む?」
「「「「ムギちゃん(先輩)のものだったのぉ!?」」」」
「ごめんなさい。私が忘れたばかりに……」
「いや……、勝手に見た私達も悪いし……」
律はバツの悪そうな顔をしている。
「でも、あまりそういうのは忘れないほうが……」
澪が顔を真っ赤にして、つぶやく。
「そうね、
これから気をつけるわ」
「そうですよ。第一どこから覘いていたんですか!?」
「「「え?」」」
「あっ!」
ここまでいって、しまったと梓は口をふさいだ。だが、もう遅かった。三人の顔が一斉に梓に向けられる。
「こ、これは私が個人的な趣味で勝手に書いたんだけど……」
「ま、まさか……」
「あっ! いや、別にそういう意味じゃなくてですね……、あの……何と言いますか」
真っ赤な顔で俯く唯と、あたふたと弁論を続ける梓。
「……、なぁ、律」
「何?」
「今日は帰ろう」
「そうだな」
「話を聞いてください!」
「いいわ、その話、もっと続けて?」
「だからその話じゃなくて……。というか、ムギ先輩は自重してください!」
「あ~、今日もいい天気だな~」
「そうですわね~」
「律先輩と澪先輩、戻ってきてください!」
「それで、この後どうなったの? まだ書いていないのよ……」
「だああああぁ! 唯先輩も何か言ってやってくださいよ!」
「わ、私は関係ないよ!?」
「やっぱり唯ちゃんとあんなことやこんなことを……!?」
「あああぁ!
あずにゃんが話かけるから!」
「何ですか! 自分だけ逃げようたってそうはいきませんよ!」
「だってあの時はしょうがなかったんだよ!」
「無理矢理したくせにぃ!」
「だから責任はちゃんと取るっていったじゃん!」
「だったらしっかりと私を弁護してくださいよ!」
二人が言い合っているのを顔を輝かせて見守る紬。そして、それを遠くの方で紅茶をすすりながら眺める律と澪。
「弁護すればするほど墓穴を掘るだけなのに……」
「若いっていいですわねぇ……」
「もう、唯先輩がこんなことしなきゃよかったんです!」
「何さ! あの時は”もっと、もっとぉ!”とかいってたくせに!」
「それは言わないでくださいぃ!」
「はぁ……、いいわぁ……」
今日も軽音部は平和です。
END
- うん、もっと聞きたいぜ!! ボタボタ -- (4ℓの噴水(赤)) 2010-11-04 22:12:08
- 続き! 早く話の続きを! -- (柚愛) 2010-11-04 23:53:30
- 詳細はR18にて…ということか -- (名無しさん) 2011-01-05 01:02:48
- いろんな意味で平和だ -- (あずにゃんラブ) 2013-01-12 07:48:32
最終更新:2010年11月04日 13:53