紬「そのパーティーには父の友人や仕事上付き合いのある人、後は会社の部下の人達が主に出席しててね、
私にとっては同世代の話し合い手もいないから毎年あまり面白いものでもないのよ。
けど今年は若い男性が何人か話しかけてきてくれてね」
私にとっては同世代の話し合い手もいないから毎年あまり面白いものでもないのよ。
けど今年は若い男性が何人か話しかけてきてくれてね」
私は彼女のパジャマの袖をすがるように握る。さっきあんな大見得きっておいてもう不安になってしまった
紬「ん?……ふふっ大丈夫。当たり障りない会話よ、学校の事とか部活の事とか聞かれたわ
まあそうやって時間を過ごして、そのまま無事にパーティーは終わったのだけど、
部屋に戻った時にそういえば父にプレゼントを渡してないことに今更気づいたの。
やっぱりこういうのは当日中に渡したくて書斎に届けに行ったら、部屋には斎藤と父がいて話をしていたわ。
まあそうやって時間を過ごして、そのまま無事にパーティーは終わったのだけど、
部屋に戻った時にそういえば父にプレゼントを渡してないことに今更気づいたの。
やっぱりこういうのは当日中に渡したくて書斎に届けに行ったら、部屋には斎藤と父がいて話をしていたわ。
その時斎藤が聞いていたの、
パーティーの時、お嬢様に男性が何人か話しかけてたみたいですがって。
私はなぜそれを父に聞くんだろうって思って、部屋には入らず父の返事を待った。
そしたら父が言ったの……あいつらは会社の後継者候補だって」
パーティーの時、お嬢様に男性が何人か話しかけてたみたいですがって。
私はなぜそれを父に聞くんだろうって思って、部屋には入らず父の返事を待った。
そしたら父が言ったの……あいつらは会社の後継者候補だって」
それがどういう意味か私にもわかった。
袖を握る力を強める、彼女がどこにもいかないように。そんな私の手を彼女も上から包むように握ってくれた
袖を握る力を強める、彼女がどこにもいかないように。そんな私の手を彼女も上から包むように握ってくれた
紬「父は軽い気持ちだったみたい。
別に今すぐ結婚とかではないし、本人達の意志は尊重するって言ってたわ。
ただ一度会わせたかったみたいで、彼らに少し娘と話してみないかって言ったようなの」
別に今すぐ結婚とかではないし、本人達の意志は尊重するって言ってたわ。
ただ一度会わせたかったみたいで、彼らに少し娘と話してみないかって言ったようなの」
つまりムギちゃんのお父さんは彼らのうち誰かとムギちゃんが結婚して、会社を継いでくれる事を望んでるんだろう
紬「私の知らないところでそんな事をしてるなんて正直頭にきたわ。けど同時に思ったの、やっぱりそれが父の願いなんだって」
彼女の体に手を回す。少しでも彼女が安心できるように
紬「もっと普通の家に生まれたいって思った時もあったけど、私は父も母もこの家も大好き。 だから…」
唯「分かるよムギちゃん」
ムギちゃんに悲しい言葉を言わせたくなくて、我慢できなくなり声をかける。
彼女と付き合ってるのは誰かを喜ばしたいからじゃない
ただ私が彼女を好きで、彼女も好きって言ってくれたから。
けどもし私達が付き合っているせいで誰かが悲しむのもイヤだった、特に私達にとって大事な人が悲しむのは……
ただ私が彼女を好きで、彼女も好きって言ってくれたから。
けどもし私達が付き合っているせいで誰かが悲しむのもイヤだった、特に私達にとって大事な人が悲しむのは……
紬「そうよね……唯ちゃんも一緒だもんね」
悲しく微笑む彼女の顔が見える。
そして私は今日一番聞きたかった質問をした
唯「……何で私をお家に招待してくれたの?」
彼女はゆっくりと目を閉じる。まるで何かを覚悟したように・・・
紬「父の話を聞いて、唯ちゃんに私の住んでる家の事とか家族の事を知ってもらうには来てもらうのが一番だと思ったから。
・・・きっとこれから先、私達の間にずっと付きまとう問題だし」
・・・きっとこれから先、私達の間にずっと付きまとう問題だし」
唯「そっか…」
私が男の子だったら違っていたんだろうか?
でも結局のところ私が男の子でも、桜ヶ丘には入れてずムギちゃんとも出会えなかったから、私達は最初からこうなる運命だったんだろう
でも結局のところ私が男の子でも、桜ヶ丘には入れてずムギちゃんとも出会えなかったから、私達は最初からこうなる運命だったんだろう
紬「本当はもうひとつあったんだけど……」
唯「何?」
紬「まあそれは後でね」
何だろ?
紬「それでさっそく唯ちゃんに電話したんだけど、唯ちゃんは和さんと……」
また含みのある言い方をする彼女
唯「だ、だから私和ちゃんとは!!」
紬「ふふっごめんなさい、ちゃんと分かってるから……今はだけど」
今は?
紬「けどね、その時は違ったの……
もし唯ちゃんの相手が和さんだったら、そっちの方が唯ちゃんにとっては幸せなんじゃないかって考えてしまった」
もし唯ちゃんの相手が和さんだったら、そっちの方が唯ちゃんにとっては幸せなんじゃないかって考えてしまった」
唯「えっ?」
紬「だって和さんとは幼なじみで家族ぐるみで付き合ってる訳だし、少なくてもそういう問題はでなかったんじゃないかって……」
唯「……バカ」
彼女を抱く力を強める
紬「そうね、バカだった……けどその時心がぐらついていたから、普段なら一蹴できるような考えにずっと捕らわれていた」
ムギちゃんを不安にしたのは私なんだ。
私がまだまだ頼りないから、彼女が少し揺れただけで私達の関係自体もすぐにおかしくなってしまう
私がまだまだ頼りないから、彼女が少し揺れただけで私達の関係自体もすぐにおかしくなってしまう
紬「実はね、今日母にだけは唯ちゃんを紹介したかったの」
体がビクッと揺れる、これがさっき言っていたもうひとつなんだろう
唯「それは……どういう意味で?」
紬「大切な人って意味で」
暗闇の中でも分かってしまうくらい、自分の顔が赤くなってる気がする
紬「母はどちらかと言えばそういうのに寛容だと思うから……
結局帰って来なかったのだけど、だから私今日はずっと緊張しててあんまり和さんの事は考えていなかったの。
結局帰って来なかったのだけど、だから私今日はずっと緊張しててあんまり和さんの事は考えていなかったの。
だけど……唯ちゃんが普段飲んでる紅茶の方が美味しいって言ってくれた時、すっと緊張が取れた。
こんなに可愛くていい子なんだからきっと大丈夫だって、母も許してくれるって」
こんなに可愛くていい子なんだからきっと大丈夫だって、母も許してくれるって」
私はムギちゃんの胸に顔を埋める。
そうしていないと嬉しくて泣いちゃいそうだったから
そうしていないと嬉しくて泣いちゃいそうだったから
紬「今日唯ちゃんを呼んで良かったって思った。きっと母にも、そのうち父にも認めてもらえる。それで思ったの……
……これで和さんに近づけるって」
近づける……私は埋めていた顔をあげる。
ムギちゃんは目を開けボーっと上を見ているばかりだった。
ムギちゃんは目を開けボーっと上を見ているばかりだった。
紬「おかしいわよね……近づくなんて。
唯ちゃんと付き合ってるのは私なのに……
唯ちゃんと付き合ってるのは私なのに……
だけど多分ずっと考えていたんだと思う。だって和さんは昔から唯ちゃんの事を知っていて、私なんかより唯ちゃんの事をわかってる人で……
だからずっと彼女になりたかった。
だって唯ちゃんの事で知らない事があるのが怖かったから
だって唯ちゃんの事で知らない事があるのが怖かったから
自意識過剰かもしれないけど、和さんだけが私にとっては唯ちゃんを奪う可能性のある人だった。
他の人になら絶対負けない。
けどもし彼女に……私の方が唯を幸せにできるって言われたら私勝てないから。
他の人になら絶対負けない。
けどもし彼女に……私の方が唯を幸せにできるって言われたら私勝てないから。
だから母に紹介する前にはっきりさせようと思ってあんな事したんだと思う。
ごめんなさい、私はずっと和さんに対してかなり失礼に思っていたの、唯ちゃんの親友なのに」
きっと今まで彼女は悩んでも全部自分一人で解決してきたんだろう、それはとても強いことだけど、とても寂しい。
私は今まで何回もムギちゃんの前で和ちゃんの話をした。
私達にとっては唯一付き合ってる事を知っている人だったし、私にとっては昔からの親友だったから。
それが彼女をずっと苦しめていたんだ。なのにそんな時でも彼女は笑っていた
私達にとっては唯一付き合ってる事を知っている人だったし、私にとっては昔からの親友だったから。
それが彼女をずっと苦しめていたんだ。なのにそんな時でも彼女は笑っていた
紬「……許してくれる?」
だから今は私が……
唯「……今度三人で遊ぼっか?」
脈略のない私の言葉にムギちゃんは当惑の顔を浮かべる
紬「三人……和さんとって事?」
抱きついてた体を離し彼女を上から見る。うっすら悲しみを浮かべている彼女の顔はやっぱりきれいだった
唯「うん。私、和ちゃんの事は親友だと思ってる。
今までいろいろ助けてもらって、こうやってムギちゃんと付き合えてるのも和ちゃんのおかげだから。
和ちゃんとは和ちゃんとのたくさんの思い出があって、やっぱりそれはこれからも大切にしていきたい。」
今までいろいろ助けてもらって、こうやってムギちゃんと付き合えてるのも和ちゃんのおかげだから。
和ちゃんとは和ちゃんとのたくさんの思い出があって、やっぱりそれはこれからも大切にしていきたい。」
紬「うん……」
唯「けど……私はそれもムギちゃんに知ってもらいたいの」
紬「……思い出を?」
唯「うん。私が今まで生きてきた17年分全部。もちろん和ちゃんとの思い出も。
私もムギちゃんの全部を知りたい。どんな子供だったのかとか、小学校仲良かった子の話とか
だってそれのおかげで今の……私の大好きなムギちゃんがいるから」
私もムギちゃんの全部を知りたい。どんな子供だったのかとか、小学校仲良かった子の話とか
だってそれのおかげで今の……私の大好きなムギちゃんがいるから」
彼女が全て、後は全部いらないとは言えなかった。
もしかしたらそう答えるのが正解なのかもしれないけど、きっと彼女がそういう事を望んでるわけじゃないと思ったし、
私は強欲だから恋人、親友、仲間、家族、どれかひとつなんて決められない。
もしかしたらそう答えるのが正解なのかもしれないけど、きっと彼女がそういう事を望んでるわけじゃないと思ったし、
私は強欲だから恋人、親友、仲間、家族、どれかひとつなんて決められない。
唯「欲張りでごめん……」
けど信じてほしい、その中でこれから先も一番はずっとあなただから。
私は言葉にはださず、そう思う。
きっと言葉にしたら嘘臭く聞こえちゃうから……だから変わりに思いが伝わるよう彼女にキスをした。
私は言葉にはださず、そう思う。
きっと言葉にしたら嘘臭く聞こえちゃうから……だから変わりに思いが伝わるよう彼女にキスをした。
紬「……じゃあもし私が和さんと、唯ちゃん以上に仲良くなっても嫉妬しないでいてくれる?」
唇が離れて、一番にそう言う彼女の顔はいつものように悪戯っぽい笑顔だった。
私はその場面を想像してみて、彼女のわき腹を結構本気でつねる
私はその場面を想像してみて、彼女のわき腹を結構本気でつねる
紬「もう、言ってること違うじゃない」
私達の間に柔らかい空気が流れ、ケンカでできた距離も今はもう完全になくなっていた。
唯「……教えてよ、ムギちゃんの事全部。」
知りたい、こんなに素敵な人ができるまでを。
紬「……名前は琴吹紬」
唯「知ってる」
紬「桜ヶ丘高校の二年二組に在籍」
唯「席は私の斜め前」
彼女と同じクラスになってどれほど嬉しかったか、けど今でも授業はなかなか集中できない
紬「軽音部でキーボードをしてます」
唯「けっこう上手いよね」
演奏中は優しい音がいつも後ろから聴こえてくる
紬「実は桜ヶ丘高校にくる予定ではなかったの」
唯「本当!?」
紬「はい、実は……」
それから彼女といろいろな事を話した。
まだまだ彼女について知らないことばかりだった事がちょっと悲しくて、けど彼女の新たな一面を知ったことが何倍も嬉しくて、
私の話を聞いた彼女もきっと同じ気持ちだったと思う。
まだまだ彼女について知らないことばかりだった事がちょっと悲しくて、けど彼女の新たな一面を知ったことが何倍も嬉しくて、
私の話を聞いた彼女もきっと同じ気持ちだったと思う。
そうして幸せな時間を過ごす内に、私達はいつの間にか眠りについていた。
――――――
――
――
「………ン………ええ………だ…ぶ………」
遠くから彼女の声がする
せっかく昨日近づいたのに、また離れてるのが寂しくて手を動かして彼女を探すけど見つからない。
せっかく昨日近づいたのに、また離れてるのが寂しくて手を動かして彼女を探すけど見つからない。
声は聞こえるのに
呼べば気づいてくれるかな?
目を開けると普段とは違う真っ白な枕が目に入る。
そっか……ムギちゃんのお家に来てたのか。
夢から覚めても、寝る時は隣にいてくれた彼女の姿がない。
昨日の今日で不安になった私が体を起こそうとすると、ドアの閉まる音が聞こえてきた。
そっか……ムギちゃんのお家に来てたのか。
夢から覚めても、寝る時は隣にいてくれた彼女の姿がない。
昨日の今日で不安になった私が体を起こそうとすると、ドアの閉まる音が聞こえてきた。
紬「あら?起こしちゃった」
柔さかな笑顔を向け、窓から差し込む光にうつされる彼女は本当にキレイで、私はまだ夢の中にいるのかと疑ってしまう
彼女はそのまま私の横に滑り込むように入ってきたので、私は我慢できなくて彼女の体にキツく抱きついてしまった。
紬「朝から甘えん坊ね」
そんな事言いつつ抱きしめ返してくれる彼女からはとても甘い匂いがして、私は鼻を押し当て思いっきり吸い込んだ
紬「いつもこれだけ素直なら嬉しいのに」
彼女の手が頭に置かれる。
本当に幸せだと思ったけど、私は彼女の前ではひねくれ者になってしまうのはやっぱり変わらないよう
本当に幸せだと思ったけど、私は彼女の前ではひねくれ者になってしまうのはやっぱり変わらないよう
唯「……うるしゃい」
紬「ふふっ唯ちゃん可愛い」
唯「……可愛くないし、うるさい」
そう言ってそのまま甘えるように足を絡ませる
紬「ふふっ、そういえば唯ちゃん昨日の約束覚えてる?」
和ちゃんと三人で遊ぶ事だろうか?
そう考えてると彼女の口が私の耳に近づいてくる
そう考えてると彼女の口が私の耳に近づいてくる
紬「……めちゃくちゃにしていいんでしょ」
体がビクッと震えた
唯「あ、あれは……」
紬「痛いこともしていいんでしょ?」
確かに言ってしまった……
痛いことって私は何をされてしまうんだろうと考えてえ、体が震える。
けど……少しだけ期待している私は本当にどうしようもない人間らしい
痛いことって私は何をされてしまうんだろうと考えてえ、体が震える。
けど……少しだけ期待している私は本当にどうしようもない人間らしい
紬「唯ちゃん耐えられるかしら?」
触れ合ってるせいか、言葉だけで朝から私はすっかりその気になってしまった。
こんなにも欲求に忠実なのは彼女と付き合ったせいなのか、もともと私が最初からそうなのか分からなくなる
こんなにも欲求に忠実なのは彼女と付き合ったせいなのか、もともと私が最初からそうなのか分からなくなる
そんなことばかり考えてると、彼女の震えが伝わりしだいに笑い声が聞こえてきた。
ああ、またやられたんだと遅ればせながら気づいたので、絡みついた足を締める
紬「ごめんなさい、けど唯ちゃんも悪いのよ。
あの時私が言ったのは別にそういう行為でって訳じゃなくて、
ヒドいことを言ったりしてあなたを傷つけてしまうかもしれないから言ったのに、あれじゃあまるで私が変態みたいじゃない」
あの時私が言ったのは別にそういう行為でって訳じゃなくて、
ヒドいことを言ったりしてあなたを傷つけてしまうかもしれないから言ったのに、あれじゃあまるで私が変態みたいじゃない」
唯「……変態じゃん」
紬「そんな事ないわよ?」
唯「自覚持ちなよ」
キョトンとしている彼女に、ため息混じりで答えてやった
紬「変態だったら……本当にめちゃくちゃにしてもいいわよね?」
彼女の手がゆっくりとお尻をなでる
唯「……ふぁ」
紬「唯ちゃん、大好き」
返事の変わりに、彼女の胸元につけていた顔を子犬のようにクリクリと動した
紬「そういえばね……」
唯「ん?」
紬「母がお家に帰ってきてるのよ」
一瞬にして動きを止まる
紬「さっきドアのところで話したら、唯ちゃんと一緒に朝食食べたいって」
ああ……今日も大変な1日になるだろうなって思った。
だけどきっとどうにかなる。
だって私の隣には、意地悪で可愛い……大好きな強い味方がいてくれるから。
だけどきっとどうにかなる。
だって私の隣には、意地悪で可愛い……大好きな強い味方がいてくれるから。