352 軽音部員♪ [sage] 2010/07/15(木) 19:21:46 ID:En43M2/kO
「お姉ちゃん…あ、あのね…」
唯の手を自身の胸に押し付ける憂。
「わー、おっきー」
「そうじゃなくて…」
「?」
「…鼓動を聞いて…」
唯は手のひらで感じ取る。
「…速い?」
「うん…これね、お姉ちゃんのせい」
「…わたし?」
はて、私がなんで…と疑問符を浮かべる唯と、涙を浮かべる憂。
「お姉ちゃん…私…もう、だめ。ごまかせないの」
「…なにに?」
すっと手を離す唯…唯は憂の方を見ない。
「それはもう…お姉ちゃん、気付いてるんじゃ」
「き、気付いてないよー。別に知らんぷりしてる訳じゃ」
「…私がごまかせないのは、自分のきもち…だよ」
唯は憂の瞳を見ることができない。
「お姉ちゃん…私、おねえ「ねぇ、うい」
唯は憂の発言を遮る。
「…」
「……私は…告白さえ、させて…もらえないんだね…」
「…っ!ち、ちがうよ…」
「…もう、いいや…。ばいばい、お姉ちゃん」
「う、ういっ…!」
唯の部屋を出る憂を、唯は追いかけようとした。
でも…自分は何て言えばいいの?
ういの告白を聞くのが怖い。
そう感じてしまった唯は、憂を追いかけることができない。
362 続かせる [sage] 2010/07/16(金) 20:58:27 ID:gYClkAY.0
部屋に戻った憂は布団に飛び込んだ。
枕に顔を押し付け、懸命に泣き声を抑えようとする。
「ふぐっ、ひぐっ…うぇぇぇえん…」
どれだけ流れ落ちる涙を抑えても、
一度切れてしまった憂の涙腺は止まらない
どれだけそうして自分の感情をもう一度抑えようとしていただろうか…
さすがに泣き疲れてうとうとし始めた憂の耳に、
扉を叩く音が聞こえてきた。
コンコン
「うい?入るよ」
「だめ…」
「どうして?」
「こんな顔、お姉ちゃんに見せたくない」
泣き顔を見られたくないと入室を拒む憂
しかし無情にもドアの開く音がする
「ダメって言ったのに…」
「ごめんね」
ベッドに突っ伏している憂に、唯は言葉をかける。
「ねえ、憂」
「…なあに?」
「本当にごまかせない気持ちなら、逃げずに言わなきゃダメだよ」
自分に本当はそんなことを言う資格がないと、唯は思っていた。
憂がごまかせないと言った気持ちをごまかそうとしたのは、自分自身。
それでも、一生懸命考えて出した答えを、紡いで行く。
「ごめんね」
もう一度謝る唯。
「さっきは私が逃げようとした。その事は私のせい。
だけど、最後に逃げたのは憂いだよ。
あのまま逃げずに言う事もできた。
本当の気持ちなら、どんな事があっても伝えられるはずでしょ?」
自分が残酷な言葉を発しているのは自覚していた。
それでも憂は振り向いてくれるのだろうか。
唯は自責の念に駆られながらも、最後までやり遂げる。
「泣くな。笑って。」
唯はベッドに泣き伏した憂の横に添い、憂いの顔を優しく持ち上げ、
自分の手を憂の両頬に優しく当てて、泣き顔と正面から見つめ合った。
「私はもう、逃げも隠れもしない。さあ」
憂は、自分の中から溢れ出る熱い気持ちを、必死に抑えようとしていた。
最後まで残っていた理性を振り絞り、言葉を絞り出す。
「わ、私…ひっく、おねえ、ちゃんの、こと、
おねえちゃんの、こと、好き…」
気持ちを伝え切った憂の両目からは、
安堵感から来る涙がとめどなく溢れていた。
唯はその顔を、優しく胸に抱きとめた。
泣きじゃくる憂。
暖かい唯の胸の中。ずっとそばに居たい。その気持ちをまっすぐに伝える。
「こんや、一緒に…ううん、ずっと、そばに、いて。」
「うん、ずっと…ずーっと一緒にいるよ」
そっと憂の髪をなでる唯。
ようやく泣き止んだ憂に、唯が言葉をかける。
「うん。やっぱり憂は泣いてる顔より、笑ってる顔の方がいい!」
「…えへへっ!」
笑顔になる憂。その顔にもう、涙の跡はない。
「さ、ちょっと失礼して…」
唯は憂が開けた、ベッドの横半分に滑り込む。
そして憂にぎゅっと抱きつき、囁いた。
「ずっと、ずっと、一緒にいようね。」
おしまい
最終更新:2010年08月01日 11:30