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Case5/追憶―memory―


「思えばあの事件が起きたのも、丁度今みたいな暑さの時期だったな――あの時は夏だったが。」

――3年前。
ネオドミノシティ・科学アカデミーを卒業した俺は、先輩だったリョウさん、そしてアイツ――リリウム・ウォルコットと共に、
事故でデュエルが出来なくなった人々の力になりたいと・・・義体、つまり機械式の義手や義足なんかの研究をする為に、
研究機関としてネオドミノシティ・義体科学研究所・・・通称、NABを設立した。

俺や集まってきた他の仲間達は自分の研究に誇りを持っていたし、どれだけ時間が掛かろうとも、人々が皆デュエルを楽しむ為に尽くすつもりでいた。

――そう、あの日までは、そんな毎日が・・・ずっと続くと思っていたんだ――。

遊戯王Parallel Case5 追憶―memory―

ある日のNABラボ。各所で研究員たちが義体のチェックを行っていた。
その中には、俺とリョウさんの姿もあった。

「リョウさん、そっちのデータは?」
「問題ない。ただ、向こうで脚の調整をしてるチームがちょっとトラブってるみたいだな。」
「判った、見てくる。」
「頑張れよ、副主任。・・・可愛い彼女も応援してるぞ。」
「・・・っ、茶化すなよ!」
「ハハハ、ま、行って来い。」
「ったく・・・。城戸!一体どうした?」
「あ、副主任!・・・実は、ここの所のバランスが・・・。」
「そうか・・・こっちのギアに変えてみるか?」
「そうですね、やってみます。」

城戸と二人してコンピュータに向かって顔をしかめていた時、突然ラボのドアが開いた。
・・・来客だ。

「やあ、ハガネ。精が出ますネ。」
「?・・・シリウス!一体どうしたんだ、こんな所まで。」
「いえ、研究の御見舞いも兼ねまシテ・・・いつもの『おシゴト』のお願いを、ネ。」

シリウス・R・クロフォード・・・I2社の二代目社長であるこの男がラボを訪れたのは、単に俺と同級生だったから見舞いに来た、という訳ではない。
アカデミーを卒業後、独自研究の為の機関設立までこぎつければ、ネオドミノシティからの援助が受けられる。
だが、俺達の研究は高価なパーツを常備する必要があった為に、それだけでは厳しい状況下にあった。

そこで名乗り出たのが、このシリウスだ。
同級生が頑張ってる時に食いっぱぐれるのは見てられない、との事だ。
・・・但し、これには条件があった。

I2社の試作カードを使い、D-ホイーラーのチーム『スティールハーツ』として活動し、デモンストレーションを行う事。
それが条件だった。

そこで俺達の中でデュエルに長けた俺とリョウさん、そしてリリウムがメンバーとして活動する事になった訳だ。

しかし・・・。

「そういう事か。だが今は俺とリョウさんしか居ないぜ?リリウムは今日非番だからさ――」
「そうですか・・・フム、困りまシタね。」
「――あら、丁度いいタイミングだったみたいね。」

振り返ると、入り口になにやら袋を下げたリリウムの姿があった。――いつもの白衣ではなく、ワンピースにサンダルという夏らしい格好で。

「リリウム?お前は今日非番じゃなかったか?」
「ええ。でも街に行ったついでにね、差し入れを持ってきたの。今日は・・・凄く暑いし。」

ね?と笑うと、袋の中からアイスキャンデーの束を取り出して見せた。

「そっか、ありがとな。・・・おーい皆ー!リリウムが差し入れにアイス持って来てくれたから、ここらでちょっと休憩なー!」
「休憩だってさー!」
「ヒャッホー!アイスだアイス!」
「リリウムさーん、グレープ味あるー?」

アイスと聞いて、皆が次々と集まってきた。冷房が効いているとは言え、外が夏だと気分的に欲しくなるようだ。

「はいはい、順番にねー。・・・ところで、シリウス君がここに来たって事は・・・。」
「ああ。例によってアレだ。」
「そう。じゃあ私と葉鐘、それにリョウさんは応接室ね。・・・あ、シリウス君もアイス食べる?」
「頂くとしまショウ。ボクはチョコミントが好きでしてネ・・・ンー、デリシャス。」
「フ・・・うちのスポンサー様もアイスには目がない、か。・・・時に葉鐘、お前レモンとマスカット、どっち食べる?」
「何だかんだでリョウさんも目がないんじゃねーか・・・俺がマスカットな。」
「OK。じゃ、応接室行こうか。」

―数分後。NAB応接室で、俺たちはシリウスからのブリーフィングを受けていた。

「―というワケでして、今回のお相手は中々手ごわい様デスが・・・。」
「俺は問題ない。葉鐘、リリウム、お前達も行けるな?」
「ああ。バッチリI2社の宣伝塔になって来るぜ。」
「もう、すぐ調子に乗るんだから。この間も<<古代の機械獣>>にアーキタイプの効果を無効にされて焦ってたじゃない。」
「あれはその・・・相性だって。」
「フフッ、そういうことにしておくわ。・・・ともかく私も大丈夫よ、守りなら任せて。」
「頼もしい限りデスネ。皆さんの様な腕の立つデュエリストとフレンドで良かったデス。」
「そりゃあ御互い様さ。俺達だってシリウスの申し出が無ければ途中で財布がスッカラカンになっちまってたかも知れないしな。」
「・・・葉鐘の財布で足りるの?」
「俺の予想じゃ、0を2、3個足しても無理だな。」
「アナタは良くやっていますが・・・無理でしょうネ。」
「何だよ皆して・・・どーせ薄給ですよ俺は!」

俺がそっぽを向くと、皆に笑いが起こった。釣られて・・・俺も笑ってしまった。

「ハハハ・・・それでは、ボクはこの辺りでお暇しまショウ。次のデュエル、楽しみにしていますヨ。」
「ああ、またな。」
「帰り道、混んでるから気をつけてね。」
「執事のジョルジュさんにも宜しくな。あ、あとこの間のローストビーフ美味かったって言っといてくれ。皆喜んでたってな。」
「ええ。では、マタいずれ。アイスキャンディ、ご馳走様でシタ。」

そういうと、シリウスはNABを後にした。――さてと。

「それじゃ、今日の分一段落したら博士にデータ送ってから次の相手に備えるか。」
「そうだな。シリウスはともかく、他のお偉方は是が非でも勝ちつづけて欲しいだろうしな。」
「私もちゃんとデッキ持ってきてるわよ。備えあれば憂い無し、って奴ね。」
「よし、じゃあラボに戻ってキリキリ働くとしますか。」

――数時間後。丁度リョウさんがラボのチェックを終えた所だ。俺はというと・・・

「――で、これが今日の分のデータ。どう思う?博士。」
「どうも何も、実際に試してみなけりゃあ分からん。・・・だが、お前さんとこの連中のテスト結果を見るに・・・完成品まで行き着きゃあ特に問題なく手足の代わりとして動きそうじゃな。」
「そっか。ま!まだ試作段階・・・気長にコツコツやるとするさ。」

本日分のデータを博士――俺達のアカデミーでの先生でもあった、牧島博士。医師であり、人体に直接装着するという代物の為、義体が医学的に問題を起こさないか、装着した際に過負荷が掛からないかなどのチェックをしてくれている――に送った所だった。

「そうじゃな。時に人の命に関わる重要な研究でもある・・・焦らずしっかりやれよ。」
「判ってるさ、博士。それじゃあこれからD-ホイールとデッキの調整があるから、またな。」
「おう。ご苦労さん。」
「・・・終わったか?」
「ん、リョウさんか。丁度今終わった所さ。・・・アイツは?」
「着替え中。・・・覗くなよ?」
「覗かねーよ!」

そうこうしてるうちにリリウムの着替えも終わり・・・俺たちはラボに併設されたサーキットへ向かった。

「走行順はいつも通り、フォワードが葉鐘、次鉢でリリウムがガードを固め、最後に俺が火力で押すパターンで行くぞ。良いな?」
「OK!葉鐘、出だしでスベらないでね?」
「判ってるって。それじゃ、行くぜ!」

[テストモードオン.ライディング・デュエル、アクセラレーション]

「行くぜ、俺のターン!モンスターを1枚、リバースカードを2枚セットし、ターンエンド!」
「ワタシノターンデス。ドローフェイズ、スタンバイ、メインフェイズ1。ワタシは<<サイバー・ドラゴン>>ヲ特殊召喚、更ニ<<D.D.アサイラント>>ヲ召喚。」
「アサイさんかよ・・・。除外は相性悪いんだよな・・・。」

「・・・アイツ、ホント良く貧乏クジ引くよな。」
「最早運命ね・・・。」

「バトルフェイズ、<<D.D.アサイラント>>ノ攻撃。」
「モンスターは<<アーキタイプ―マーク・リコーラー>>だ。破壊される。」

<<アーキタイプ―マーク・リコーラー>>破壊。
LP変動無し。

「そして、戦闘破壊により<<マーク・リコーラー>>の効果発動、デッキから攻撃力1500以下のアーキタイプを特殊召喚できる!俺は、<<アーキタイプ―シャープシューター>>を守備表示で特殊召喚!」

『アーキタイプ』。破壊される事で能力を発揮し、後に続く仲間へ戦況を託すモンスター群。
それが、シリウスから俺に渡された試作カードだった。

「<<サイバー・ドラゴン>>ノ攻撃。」
「リバースカードオープン!罠カード、<<くず鉄のかかし>>!攻撃を無効にし、再びこのカードをセットする!」
「メインフェイズ2ニ移リマス。カードヲ1枚セットシ、ターンエンド。」
「このエンドフェイズにリバースカードを発動!速攻魔法、<<試行炸誤>>。俺の場のアーキタイプ1体を破壊し、デッキから1枚ドローする!<<シャープシューター>>を破壊!そして<<シャープシューター>>が効果によって破壊された時、手札を1枚捨て、場のモンスター1体をデッキの一番上に戻す事ができる!・・・手札からは<<アーキタイプ―テストフレーム>>を捨て・・・効果対象は<<アサイラント>>だ。『ラスト・スナイプ』!」
「カードノ発動ナシ。効果処理ヲ行イマス。」

「早速出たな、葉鐘の『スーサイドコンボ』・・・。」
「自分で態々出したモンスターを破壊なんて・・・良くやるわね、ホントに。」
「その点お前のモンスターとは正反対だな。破壊されて得をするか、そもそも破壊され難いか・・・全く、シリウスの奴も面白い組み合わせにしたもんだ。」

「俺のターン、ドロー!手札から魔法カード、<<サイクロン>>を発動!伏せカードを破壊する!」
「チェーン不可。<<次元幽閉>>ヲ破壊シマス。」
「そして、俺は墓地の<<アーキタイプ―テストフレーム>>の効果発動。手札のアーキタイプ1体を除外し、自身をフィールド上に特殊召喚する!俺は手札の<<アーキタイプ―パワードブースター>>を除外!来い、<<アーキタイプ―テストフレーム>>!」

<<シャープシューター>>による<<テストフレーム>>の仕込み、伏せカードの除去、条件は整った・・・!

「更に、手札から<<アーキタイプ―アサルトブレード>>を召喚!LV4の<<アサルトブレード>>に、LV1の<<テストフレーム>>をチューニング!継ぎし力よ、孤高の戦士の刃に宿れ!シンクロ召喚!<<アーキタイプ―マーセナリー>>!!」

<<アーキタイプ―マーセナリー>>。攻撃時に味方が居ると巻き添えに破壊してしまうが・・・1体だけなら問題無く戦闘できる。
・・・尤も、アーキタイプは破壊してなんぼのモンスターである以上、寧ろ破壊した方が良い局面もあるのだが。

「そのままバトルだ、<<アーキタイプ―マーセナリー>>で、<<サイバー・ドラゴン>>に攻撃!『サバイバーズエッジ』!」

<<サイバー・ドラゴン>>撃破。
コンピュータLP 8000→7700

「ターンエンドだ。このままガンガン行かせて貰うぜ・・・!」

・・・そうして俺達が調整を終える頃には、すっかり深夜になってしまっていた。
そのまま翌日の対戦に備え、各自解散して休む事となった。

―その試合が、チームの最後の試合になるとは、この時はまだ誰も予想し得なかった。

Case5・END



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最終更新:2011年12月09日 05:22