Case4/真実―trues―
「待ちやがれこの野郎!」
「だ、だ、だ、誰が待つか!」
慌しく走る2台のD-ホイール。
1台は我らが探偵、天原葉鐘のクローム・ハウンド、もう1台は搭乗している小太りの男に盗まれた市販品だ。
「このままデュエル放棄で逃げ切られてたまるか…!<<青氷の白夜龍>>でダイレクトアタック!」
「う、うわあーッ!」
<<青氷の白夜龍>>の直接攻撃。
男LP 2300→0
「さあ、大人しく来るんだ!」
「ち、チキショォ~…」
男は停止したD-ホイール諸共、セキュリティに連行されていった。
「…助かったぜ、葉鐘。」
「何、いいってことよ。これも仕事だからな。」
「しかし相変わらず見事なライディング・テクニックだよな、この狭い路地でアレだけのスピードを出せるなんてよ。」
「大した事はねぇさ…昔取った杵柄って奴だ。」
「フーン…昔、ねえ…。」
「じゃあ、俺はそろそろ行くぜ?飯がまだだからな。」
「ああ、また何かあったら頼む。」
かつて犯した罪を胸に秘めながら、葉鐘は今日も街を往く。その傷跡を、忘れようとするかのように――
遊戯王Parallel Case4 真実―trues―
数分後、葉鐘は先ほどの報酬を手に『ピザパニッシュ』へ足を運んでいた。
「よう、いつもの奴な。」
「えーっと『ピリ辛ラヴァルシーフードピザ』のMサイズ、チーズ増量とコーラのセットでしたっけ?」
「そう、それそれ。」
「はーい、少々お待ちくださいね。ピリ辛Mのコーラ、チーズマシでーす!」
「はいよー、有り難う御座いまーす。」
「どういたしまして。」
「それにしても
天原さん…」
「ん?どうした?」
「暑くないんですか…?この気温でピリ辛
ラヴァルって…。」
「……。」
今や街は夏を控え、湿気と初夏の熱で一面サウナ状態である。
『ピザパニッシュ』としても本命のピザだけでなくサイドメニューのアイスやドリンクに力を入れ始めた頃だったのだが…。
葉鐘は相変わらず辛くて熱い、そんなピザを注文していた。疑問に思うのも当然である。
「……………発汗ダイエットだ。」
「そ、そうですか…。」
ダイエットならピザ以外のもの食べればいいのにと、リラは思った。
「・・・それに、アイスは余り・・・好きじゃあなくてな。」
「そうなんですか?」
「ああ。・・・ちょっとした気分の問題って奴だがな。」
「へえー・・・。」
「あいよっ、ピリ辛いラヴァルお待たせしましたー!」
「あ、はーい。お待たせしましたー、1100円です。」
「ああ。今日はサイフも忘れてないぜ。じゃ、また来るわ。」
「はい、ありがとうございましたー。」
葉鐘は店を後にすると、ふとした思い付きで昼食を近くの公園でとる事にした。
「んー、いい天気だ…これがこのクソ暑い中じゃなきゃあ完璧だったんだが…とりあえず食うか。」
予想外の炎天下に愚痴を零すと、葉鐘はピザを頬張りだした。
「確かにこの気温じゃあ地獄だが…ま、美味いからしょうがねえやな。…おほっ、相変わらず結構辛いぜ…。」
ピザを食べ終わり、コーラの残りを啜っていると、不意に聞き覚えのある声がした。
「あ、天原副主任…!?」
「!お前は――さてな、俺はただの探偵…そんなご立派な役職には覚えが無いぜ。」
そう言って葉鐘は立ち去ろうとした。
――ああ、嘘だ。俺はこいつも、こいつが何故俺に声をかけたのかも知っている――。
「待ってくださいよ!天原さん!」
「だから…知らねえってんだろ…?」
「いいや、知らない筈は無い!…答えてくださいよ…何故、仲間と研究所を見捨てて姿を消したのか…!」
「・・・・・流石にしつこいぜ、さっさと帰れ。」
「嫌だッ!貴方がどうしてもシラを切るというなら…!」
「嫌だッ!貴方がどうしてもシラを切るというなら…!」
そう言うと男は鞄から、葉鐘が生涯忘れられないであろう、あるモノを取り出した。
「・・・!それは…アイツのデュエルディスク!」
「僕とデュエルして貰う!これでも!逃げるというんですか…!」
「…強情な奴だ…。ったく、誰に似たんだか…。」
「行きますよ…!」
「――来い。城戸。」
「「デュエル!!」」
「僕のターン、ドロー!永続魔法、<<凡骨の意地>>を発動!ドローフェイズにドローしたカードが通常モンスターだった場合、続けて1枚ドローできる!」
「…【凡骨融合】か…変わらないな、お前は…。」
「貴方が勝手に変わってしまったんですよ…!更にモンスターをセットし、ターンエンド!」
変わったのは俺だけ…か。確かにそうかもな・・・。だが、それでも――それでも俺は――。
「俺のターンだ、ドロー!手札から、<<コアキメイル・ドラゴ>>を召喚!」
「!…<<コアキメイル・ドラゴ>>…!?」
「バトルフェイズ、<<コアキメイル・ドラゴ>>で守備モンスターを攻撃!」
<<コアキメイル・ドラゴ>>の攻撃。守備モンスターは<<ジェムナイト・ルマリン>>。
<<ジェムナイト・ルマリン>>撃破。
城戸
LP変動なし
「リバースカードをセット。<<コアキメイル・ドラゴ>>の維持コスト…手札から<<青氷の白夜龍>>を見せ…ターンエンドだ…。」
「またしてもドラゴン…何故…何故【アーキタイプ】を使わない!僕では貴方のデッキの相手をする資格すらないとでも言うか…!」
「違う!…ただ、今あいつらは俺の手元に無い…それだけだ。」
「クッ…馬鹿にして…!僕のターン!ドローしたカードは通常モンスター、<<ジェムナイト・サフィア>>!よって追加ドロー!」
「流石はデッキの半分近くが通常モンスターの【凡骨融合】…<<凡骨の意地>>が高確率でアドバンテージを回収する…そいつがお前の十八番だったな…。」
「黙れ…!僕は手札から、<<ジェムナイト・アレキサンドライト>>を召喚!」
<<アレキサンドライト>>…自身を生贄に、デッキから同属モンスターを呼び出すモンスター…。
記憶通りなら、ここで<<アレキサンドライト>>の効果で<<ジェムナイト>>を特殊召喚した後、融合を狙う筈…ならば…
「そうはさせない…罠カード、<<バーストブレス>>!<<コアキメイル・ドラゴ>>をリリースし、<<アレキサンドライト>>を破壊する!」
ここで、破壊させてもらう…!
「…やはり<<アレキサンドライト>>の効果を止めにきましたね…。」
「何?」
「手札から<<思い出のブランコ>>を発動!<<ジェムナイト・ルマリン>>を墓地から呼び戻す!」
「…ッ!しまった…。」
こいつ…!自分の手の内がわかっている事を逆手に取って俺をハメた…!?
「更に手札から<<ジェムナイト・フュージョン>>を発動!手札の<<ジェムナイト・サフィア>>と、フィールドの<<ジェムナイト・ルマリン>>を融合!現れろ…!閃光の輝石、<<ジェムナイト・プリズムオーラ>>ッ!」
「チィッ…出たか…<<プリズムオーラ>>…!」
「更に墓地の<<ジェムナイト・フュージョン>>の効果発動…!墓地の<<ジェムナイト・サフィア>>を除外し、このカードを手札に戻す!そして…再度<<ジェムナイト・フュージョン>>を発動!」
「!連続…融合…!」
「手札の<<ジェムナイト・ガネット>>、そして<<ジェムナイト・クリスタ>>を融合!燃え上がれ!<<ジェムナイト・ルビーズ>>!!」
高性能な融合モンスターが2体・・・これは…不味い…!
「更に、<<ジェムナイト・フュージョン>>の効果!墓地の<<ガネット>>を除外し、手札に加える…バトルフェイズ!<<プリズムオーラ>>の攻撃!」
「グッ…!」
<<ジェムナイト・プリズムオーラ>>の直接攻撃。
葉鐘LP8000→5550
「続けて<<ルビーズ>>の攻撃!」
<<ジェムナイト・ルビーズ>>の直接攻撃。
葉鐘LP5550→3050
「ヌ…ウッ…!」
「更にリバースカードを1枚セットし、ターンエンド…!」
「俺のターン…ドロー!<<トレード・イン>>を発動、手札の<<青氷の白夜龍>>を捨て…2枚ドロー。」
俺の虚を突き、融合モンスターを2体並べる…成長したな、お前は――それに比べて俺と来たら…だが、俺は…!
「フィールド魔法、<<死皇帝の陵墓>>!ライフを2000払う事で、手札の最上級モンスターを生贄無しで召喚する…来い、<<タイラント・ドラゴン>>…!」
<<死皇帝の陵墓>>ライフコスト。
葉鐘LP3050→1050
「更に魔法カード、<<スタンピング・クラッシュ>>だ。破壊する魔法・罠カードは…」
…フリーチェーンで損をするのは不味い…ならば、見えているカードから…!
「<<凡骨の意地>>だ。更に500ポイントのダメージ!」
「クッ…」
<<スタンピング・クラッシュ>>効果ダメージ。
城戸LP8000→7500
「バトルフェイズ、<<タイラント・ドラゴン>>で<<ルビーズ>>に攻撃!」
<<ジェムナイト・ルビーズ>>撃破。
城戸LP7500→7200
「ッ…<<タイラント・ドラゴン>>という事は…。」
「そうだ。2度目の攻撃、対象は<<プリズムオーラ>>…!」
<<ジェムナイト・プリズムオーラ>>撃破。
城戸LP7200→6850
「更にカードを1枚伏せて…ターンエンドだ。」
「僕のターン…ドロー!手札から、<<ジェムナイト・ガネット>>を召喚し…罠カード、<<ジェム・エンハンス>>!墓地の<<プリズムオーラ>>と、フィールド上の<<ガネット>>を入れ替える…!」
「…!」
「そして<<ジェムナイト・フュージョン>>をコストに効果発動…!<<タイラント・ドラゴン>>を破壊する!」
「…済まない、<<タイラント・ドラゴン>>…。」
「――済まない…?カードにはそう言えるというのに、何故僕には理由すら話してくれないんですか…貴方は…貴方は…!」
「・・・・・どうしても知りたいってのか。城戸。」
「当たり前です…!研究所が閉鎖された時、我々は――誰よりも貴方の口から理由を聞きたかった…!何故一方的に研究の行き詰まりによるチーム解散と研究所の閉鎖を決め、僕たちを置いて姿を消してしまったんですか!天原さん…答えて…答えて下さいよ……ッ!バトルフェイズ!<<プリズムオーラ>>の攻撃!!」
「リバース…いや…発動は、ない…!」
<<ジェムナイト・プリズムオーラ>>の直接攻撃。
葉鐘LP1050→0
「…俺の、負けだ。」
「…ちょっと待ってくださいよ、天原さん…今のカードは…!」
城戸が葉鐘の腕をつかみ、リバースカードを確認すると…
「<<聖なるバリア-ミラーフォース>>…!何故…何故発動しなかったんですか…!またそうやって馬鹿にしているんですか!?」
「――その辺にしておけ、城戸。」
城戸が葉鐘に掴みかかった時、二人の良く知る声が、城戸を制止した。
「リョウ…さん…。」
「…!藤堂…主任…。」
リョウ、こと藤堂亮次が、何時からか…其処に居た。
「主任…貴方は…知っているんですね…?あの時の真実を…!」
「ああ。表向きにあの発表をしたのも俺だしな・・・そして…そいつは――葉鐘は――あの一件にお前たちを関わらせまいとしていた…
それと同時に、あの事件と向き合う事が…出来なかった。だから頑なに話すのを拒んでいた。そうだろ?」
「・・・・・。」
「だが、お前の執念に負け、腹を括った。だから・・・そいつを発動せずに、あえて<<プリズムオーラ>>の一撃を食らった・・・。お前に全てを話し、過去と向き合う為に・・・直接攻撃を甘んじて受けたのさ・・・。」
「・・・チッ、相変わらず鋭いな、リョウさんは・・・。」
「伊達にお前と長い事チームを組んでいたわけじゃあないからな。」
「関わらせまいと・・・?どういう事です・・・!ただトラブルで研究が行き詰まったんじゃ・・・!?」
「いや・・・思い出したくも無いが・・・ある事件が起こっちまってな・・・俺たちは・・・。」
顔を伏せた亮次を見て、意を決して葉鐘が口を開いた。
「リョウさん、ここからは・・・俺が話すよ・・・。」
「・・・そうか。」
「天原さん・・・そ、そう言えば御二人は兎も角として、プラチナ・・・あっ、いえ、リリウムさんは・・・あの人は・・・?」
「死んだよ、あの事件でな・・・。」
「死・・・!?」
城戸が青ざめた。嘗て仲間として慕い、その後にただ去っただけだと思っていた人物が・・・自分の知らない所で死んでいたと知ったのだから、無理も無いだろう。
「だから何度も聞いたんだ・・・だが、それを知って尚・・・知りたいか?」
「・・・ええ。僕もデュエリストとしては共に走る事はありませんでしたが――チームの一員です。」
「そうか・・・それじゃあ始めよう・・・3年前の、あの事件の話を・・・。」
何時の間にかあれほど日差しが照り付けていた空は、今にも泣き出しそうな顔に変わっていた・・・喪ったものを、悼むように。
Case4・end
最終更新:2011年12月09日 05:21