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  • 真 避難用「機動戦士GUNDAM SEED―Revival―」@ ウィキ
  • 第10話「手負いの獣達」アバン

真 避難用「機動戦士GUNDAM SEED―Revival―」@ ウィキ

第10話「手負いの獣達」アバン

最終更新:2022年03月29日 20:26

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 ――広大な宇宙の中、ぽつりと浮かび上がる光点がある。
 地球と呼ばれる、世界の中の一つの奇跡。そして、その中で育まれた生命の中で最も繁栄した者達――それを、人類と呼ぶ。
 だが、人類――人は、いつしか自らを創りたもうた創造者達に対する畏敬の念を忘れ、我の繁栄を求め、醜く争い合う者達へと変貌していった。
 そして彼らは――地球を飛び出し、宇宙へ居を構えたとしても――変わらず、我を求めて争い続けていた……。


 CE78、 2月12日。リンカーン・バースデイ。
かつて奴隷解放を訴えた、旧世紀の大統領生誕記念の日。
その彼も見詰めただろう満天の星空――そう評するにはその光景は殺風景な暗黒の世界だった。
 ラグランジュポイントに程近い、デブリ帯が多数存在する宙域“エルジュ=パナンサ”――かつて、“ユニウス7”と呼ばれた場所。そこは様々な災厄の始まった聖地であり、人々が懸命に目を背ける原罪の地である。民間のシャトルバスや輸送船団は決して通ろうとしない所だった。
目に付くものは、星空ではなく、デブリ――かつてコロニーであった外壁やそこで廃棄された戦艦の残骸、及びそれらの破片。更にコロニー内に存在した様々な物質――家や車、土砂や山、そうしたもの――それらは、等しくこの場所の事を声高に宣言していた。
墓場――解りやすく言えば、そういう事。
そして、この場所は雰囲気だけでなく実際に危険な宙域であった。何度かの使節団などの派遣、調査隊等により、どの程度の被害があったのか、そしてデブリがどのくらいあるのかは調査されている。だが、デブリのもっとも恐ろしい点は“増殖する”事だ。デブリとデブリが不規則に動き、互いにぶつかり合う事によってそれらは数を増やしていく――小さな破片一つでも運動エネルギーは無重力空間に置いては恐怖の対象だ。いつ、どこで、どこからデブリが発生して、どこへ飛んでいくのか――誰も解らない。そんな場所は危険でしかないのだ。
 ところが、そうした危険な地域であるにも拘わらず、そこを好んで通行する者達も居る。それらは二種類のタイプが存在しており、一種類目は俗に“宇宙海賊”と呼ばれる連中である。彼らにとっては“航行上の危険”より“住み処を襲われる危険”の方が遙かに危険だった。確かに航行中にデブリと衝突する事も無くは無いが、その程度で済むのなら、という事だろう。
 そして、もう一つのタイプは。
 この時代であれば、もう一つのタイプに分類される者達は、彼らの事を指す。“統一地球圏連合宇宙軍艦隊”――現在、宇宙空間の秩序を一手に担う“法の側の権利執行者”達である。


 「……また、厄介な場所に逃げ込んでくれるもんだ……。」
 統一地球圏連合宇宙軍艦隊総旗艦“ミカエル”のマストブリッジ、司令官席にどっかと座ったムゥ=ラ=フラガは溜息を漏らす。肘掛けに頬杖をつき、物憂げにブリッジ前面全体に展開された星の海を見据える。――そこには、雑然としたデブリの群れしか見えず、彼らの目的とする“敵性艦”の影も形も見えない。
 「わざわざ“革命軍”を号するだけあって、準備は万端であったんでしょうね。……忌々しい連中。ゴキブリの様に、逃げ足だけは速い事……!」
 同艦長にして同艦隊副司令、ミラ=フェオファーンは綺麗な唇を憎々しげに歪める。きつめの瞳が、更に釣り上がる様は少々ヒステリックだ。口元に寄せた右手親指を噛みたい衝動に駆られて居るらしく、何度も指を口元に寄せている。その度にそれに気が付き、出来る限り直立不動の姿勢を取っていた。隣でその様を見ているムゥにしてみれば何ともどうでもいい話だが。
 “ネェル=ザフト”――彼らはそう名乗り、統一地球圏連合に堂々と宣戦を布告した。彼らの大多数は直ぐに誰だか知れた――よりによって彼らの殆どは旧ザフト軍人だったのだ。親ザラ派と呼ばれた、武闘派の一派……統一地球圏連合の発足当初から彼らは現政権に不満を持っていた。ラクス=クラインという、元々ザラ派とは相容れない存在。それでも国のため、人々のため、平和のため……彼らはそう、己に言い聞かせていたのかもしれない。だが、彼らの思いも空しく、彼らの愛した祖国は“統一地球圏連合”と名を変え、そして二度の対戦の最中に彼らに繰り返し刷り込まれた“ナチュラル達への侮蔑衝動”――。彼らにとって、その決起は衝動的であったにせよ、納得出来るものであった。
 「我々は、一体何を得るために戦った!? これを、真に平和だと言うのか!?」
 ――彼らのスローガンは、確かに万人に向けてのものではない。彼ら自身に向けてのものに間違いはない。だが、彼らにとってそれは正論であり、彼らが命を賭けて守るべきものであった。
 対するラクス陣営は、あっさりとそのスローガンを否定した。否定出来すぎるのだ。
 「どんな理由であれ、武器を取り、人々を恫喝する。……それは、私達が求める平和の対極。皆様、願わくば直ちに全ての武器を捨て、平和な世の中を創りましょう……。」
 彼ら――ネェル=ザフトと名乗った者達――は、世間から孤立した。元々が武闘派でしか無かった集団が中核となったものである。政治的な根回しなどには縁の無い集団が、何時までも戦争が出来るわけがない。あっという間に彼らは敗北に次ぐ敗北、敗走に次ぐ敗走を繰り返し――そして今、残ったネェル=ザフトの艦隊はここ、エルジュ=パナンサへ逃げ込んだのである。
 「さて、どうすっかな……。」
 頬杖を止めて、大袈裟に伸びを打つと、ムゥは肘掛けにあるコンソールに向き直る。手慣れた手つきでコンソールを操作すると、ムゥの目の前に立体ホログラフでエルジュ=パナンサの宙域図が浮かび上がった。――それに暫し見入り、ムゥはまたも溜息を漏らす。
 「……とても戦艦では入れないな。」
 「何故です? 一応当艦でも航行可能なルートは5つは準備出来ますが……。」
 確かにデブリ帯は宙域艦には驚異である。……だが、ミカエル貴下の艦隊はそのどれもが新鋭戦艦であり、この程度のデブリ帯など物ともしない。しかし、そんなミラにムゥは重々しく言う。
 「連中にはもう、後が無い。……この程度の距離しか取れないのでは、艦隊特攻をみすみす許す事になる。――こんな事で、将兵を失いたくはない。」
 艦隊特攻――それを聞いて、ミラも青ざめる。
 ムゥは、また溜息をついた。
 (……今の軍人達は皆、新しい世代。言い換えれば、実戦経験に乏しい連中ばかり。まともな連中は皆、今はデブリの向こう側――か。“平和な時代”……何もかもが上手くいく時代でもないという事か……。)
 ミラはまだ良い方だ。今士官になっている者の中には、戦争をコンピュータ上でしか体感して居ない者もいる。どうしてもコーディネイターが軍隊の中核となるのが主流の現在――反応速度や適応性に秀でた者達が前線勤務になるのは当然の流れだろう――こうした世代交代による弊害は起こり得るものだった。なればこそ、ムゥの役目は重大なのだ。
 (こいつらを少しでも長く、生きさせなければ……。)
 ムゥは、顔の傷をつつ、と撫でる。知らず知らず、それはムゥの癖になっていた。……考え事をする時の癖。消す気の起きない、己が犯した罪の残滓。決して、忘れてはならない記憶の形。――今のムゥを構成する、大事な要素。
 しばし考えた後、ムゥは決意する。
 「追撃のメインはMS隊で行う。指揮は俺が執る。――艦隊指揮はミラ、お前がやれ。」
 「はっ……? し、しかしそれではフラガ司令の御身が……。」
 予期せぬムゥの命令を聞き、ミラは蒼白だ。……それはそうだろう、艦隊司令がその任務を放り出してMS隊を率いると言ってるのだから。しかも、“囮部隊”という危険な任務で、だ。
 しかし――そんなミラに、ムゥはにやりと笑って、
 「そう心配するな。……ちょいと連中の度肝を抜いてやるだけさ。」
 そう言うと、心配そうなミラの額を人差し指で突く。……その悪童な雰囲気は正に“エンデュミオンの鷹”と呼ばれた男のものだ。
 「……こ、行軍中です! そういう真似は止めて下さい!」
 からかわれた気恥ずかしさか、ミラ。しかし、その声の方がブリッジクルーに良く聞こえたらしい。クスクスと、忍び笑いがミラにも聞こえる。
 「………~~~~ッ!」
 もはや、黙って堪えるしかない。そんなミラに、ムゥは「まあ、みんな仲良くやれよ。」と軽く手を振り、さっさとマストブリッジを出て行った。
一人残されたミラは、八つ当たりの様にブリッジクルーに指示を飛ばし始めた。仮にも出撃をするのだ。やる事は山の様にある。……だが、それはやっぱり八つ当たりの様に見えた……。


 ――ムゥはふと、出航前の事を思い出していた。

 「……“イグ”?」
 「そう。その機体がこないだの基地襲撃のドサクサで強奪されたって事らしい。」
 ムゥの目の前に座る男――アンドリュー=バルトフェルド。今、ムゥは出航前の貴重な時間を縫ってバルトフェルドに挨拶に来ていた。二人は良く、仕事の暇を縫ってこうして二人で語り合う。……お互い、妙に気が合うのである。双方が歴戦の軍人である、という事かもしれない――または、一人の女性を良く知る間柄であったからかもしれない。ともかく、彼らはバルトフェルドの秘蔵のコーヒーを味わい合う同好の士であった。
 室内にほんのりとしたコーヒーの香りを漂わせながら、彼らは談笑する。……とはいえ会話の内容は到底“談笑”などと言えるものでは無かった。
 「……“秘密裏”に軍部が製作した“最新鋭MS”っていうのは、どうしてこうも“強奪”される運命にあるんだ?」
 「知らんよ。――まあ、それこそ運命って奴なんだろうがね。」
 呆れ顔のムゥ、どうでも良いという風情のバルトフェルド。
 「強奪されたイグは、イグ=フォース、イグ=ブラスト、イグ=ソードの計三機。……まあ要するに、“全部強奪されました”という事らしいね。」
 「余程楽しい警備体制だったんだろうな。……ダンスパーティでもやってたのか?」
 ムゥはコーヒーを一口啜る。芳醇な香りが鼻を打つ。
 「いや、警備は割と普通だった。……つまり、」
 「――警備についた者、または警備状況に深く携わる者。――無いし、MSに乗る事が不自然でない者が居たって事か。」
 ご明察、とバルトフェルド。
 「その通り、イグを盗んだのは内部の者だ。……といっても、今回の騒動の殆どの連中が内部の者であったのだがね。盗んだのは、三人の見目麗しい女性達さ。」
 「女性?」
 「シホ=ハーネンフース、リュシー=マドリガル、ユーコ=ゲーベル………将来を渇望された、ザフトレッド達さ。」

 自らの専用MS『黄昏』のチェックをしながら、ムゥはバルトフェルドに言われた事を思い出していた。
 『――出来れば、イグは必ず破壊してくれ。アレが大西洋連合の手に渡ったら、現状の統一地球圏連合のMS技術の殆どが流出してしまう。……そいつは、不味い。』
 確かに不味い――只でさえ不透明な現状で、更に大西洋連合を活気づかせる訳にはいかない。また、ネェル=ザフトに大西洋連合とのパイプを創らせる訳にもいかない。強奪された以上、部分的な流出はある程度は止むを得ない。……が、機体を丸ごと奪われて解析されては目も当てられない。
 「やれやれ、どうして女ってのはこう面倒な事ばかり……。」
 愚痴りたくもなる。……とはいえ、やるしかない。
 「ムゥ=ラ=フラガ、『黄昏』出るぞ!」
 ――黄昏が虚空に躍り出る。黄金の肢体を晒す様に。


 目の前に、流星――スラスターの噴煙を靡かせ、三機のMSが視界に映る。
 『敵機照合……ルタンド三機、来ますわ!』
 イグ=ブラストに乗るリュシーの声が響く。
 『どうするのー? たいちょー。』
 緊迫感の無い、間延びした声。……これは、ユーコのものだ。
 イグ=フォースを駆るシホは、余裕を持って敵機の動きを見据える――落ち着いて敵のリズムを読む。それは、どんな戦場でも共通の大事な事だ。
 「各機、散開。……いつも通り、仕留めるわよ!」
 固い声音で、シホ。彼女には、自分が“隊長”なのだという自負がある。二人の部下を持ち、そして――彼らに戦えという任を果たさなければならない。自らの命令で人が命を落とし、人が命を奪う――それは、シホにとっても覚悟が無くては出来ない事なのだ。
 彼女たちはスラスターを絞り、噴煙を敵に悟られない様に動く。デブリの影に隠れつつ、敵部隊に近寄る――障害物の多い場所での効果的な戦術。簡単な様で非常に難しい事である。彼女達は元ザフトレッド、ネェル=ザフトでも彼女達はやはりトップエースだった。
 「……ここより先に、行かせる訳にはいかない!」
 エルジュ=パナンサ内はデブリで構成された迷宮、と言って良い。……だが、戦艦や大規模な部隊を隠せるデブリは、実際の所そう多くは無い。現在、それを虱潰しにする連合軍側、そしてそれをひた隠しにするネェル=ザフト側の散発的な遭遇戦が展開されていた。
 そして、シホ達の任務は補給部隊を守る事である。……ネェル=ザフトの最後の砦と言って良い、貨物船。失われる事は、外交面で唯一使い物になる宇宙船を失うと同時に、明日の食事にすら事欠く有様になる事を意味する。彼女達の様な単機での戦闘能力が高い者達を配置したのも、ネェル=ザフト司令部がその重要性を良く認識していた事が伺えるだろう。
 シホ達は、ルタンド隊を大きく迂回する様に動く。攻撃方向から輸送艦隊の位置を悟られる訳にはいかないからだ。……十分な距離と位置を取れたと判断したシホは、今度は一転してスラスターを思い切り噴かす。敵に位置を悟らせるのだ。
 『――来ますわ!』
 リュシーの誰何が飛ぶ。三機のルタンドはトライアングルを組み、揃って制圧射撃を行いながらシホ機をターゲットする。
 (基本通りの動き。――なら!)
 シホは、スラスターを駆使し、小惑星群を縫う様に飛ぶ。右から左、左から右――あっさりとルタンド達は幻惑され、散開した。
 と、その時――隠れていたリュシーのイグ=ブラストの砲撃が走る!
 紅い光状が走り、一機のルタンドがそれをもろに浴び、貫かれる。
 『一つ!』
 リュシーの声が伝わる――それを合図として、更にユーコ機も動く!
 『二つめー!』
 こちらも物陰に隠れていたイグ=ソード――それは、まるで引き絞られた矢の様に一機のルタンドに突貫し、手にした対鑑刀でその胴体をあっさりと切り裂く!
 残るルタンドは、一瞬の内に僚機を撃墜されたショックから、直ぐに立ち直れない。……そして、それはそのまま彼の運命を決定した。囮になる、という事は――当然、相手の状況は見ようと思えば見えるものだ。対して、シホはその程度の余裕は持ち合わせていた――その位、相手とシホ達の技量差は歴然だった。
 何気なく放たれたビームライフルの光――それが、最後のルタンドを貫くまで、彼はずっと動揺し続けていた。


 輸送船“イス=ラフェル”。その一室では、ネェル=ザフトの方針を決定せんとする会議が行われていた――正確には行われ続けていた。
 「……だから、もはや決戦も止む無し! 全員で突撃して我らの意志を世界に示すべきだ!」
 「あたら将兵の命を散らし、自己満足をするだけだ! それで我らの大志が現せるものか!」
 追いも若いも関係なく、士官達が火花を散らす。……問題としては、彼らの会話は『具体的にどうするか』ではなく、『思想的にどうするか』で火花を散らしている所だが。
 「――『会議は踊る、されど進まず』か。昔の人は良い事を言ったものよ。」
 彼らに聞こえない様、ヨアヒム=ラドルは壁にもたれてそっと呟く。
 「彼らには、勝ち負けはもう興味は無い。『どのように死ぬか』――それが論拠なのだから仕様の無い事だ。……死ぬのは我々の様な戦争屋だけで良いというのにな。」
 ラドルと、その恩師メイゼル=ハーネンフースは互いに苦笑する。彼らは士官学校での生徒と師の仲であり、轡を並べて戦った戦友でもあり、良き友人としても関係を築いた仲であった。共にザフトを憂い、ザフトを愛し、ザフトのために戦おうと誓った間柄でもあった。
 「お互い、良く戦ったものだ……。」
 メイゼルはぽつりと呟く。なるほど、彼らの生涯は常に戦場であった。ラドルもメイゼルも、家族と呼べる人々は皆死んだ。或いは病死であったり、或いは戦禍に巻き込まれてであったが――戦争の連続であったこの時代が実際の実行犯の様に、二人には思えてならない。結果としてラドルは天涯孤独の身の上となり、メイゼルに残されたのは孫娘、シホだけだった。
 「もはや、死など恐れるものではない。年功序列から言えば、儂が一番最初にくたばるべきだったのだ……。」
 二人で飲んだ夜――メイゼルがそう嗚咽したのをラドルは良く覚えている。それは、我が事の様にしか思えなかったからだ。愛した妻も、己の後を継ぐべき子供達も失い――その後の人生に何の未練があるだろうか。ただ老いて、朽ち果てるのなら、それは拷問でしかない。
 だからこそ――彼ら二人は死を恐れない。それ故、今回の蜂起に参加したのだ。とはいえ、彼らから見て、他の参加者達ははっきりと命を惜しんでいる。『尊厳ある死』――そんなものを唱えた所で、『死』とは『死』でしかない。その事を理解していないという事は、単純に『生きたい』というだけの事なのだ。
 かといって、メイゼルには心残りがある。ラドルも、それは知っている。だから、前触れ無くこういっても、メイゼルは驚きはしなかった。
 「若い者は、逃すべきです。こんな所で、全滅する事はありません。」
 「……アテはあるのか? ヨアヒム。」
 一瞬、ラドルは言い淀んだ。だが直ぐに思い直し、言う。
 「可能性――そういうものを感じた事があります。……私は、それに賭けてみたい。」
 かつてのローエングリン攻略戦――あの時、自分は無理だと思った。だが彼ら、戦艦ミネルバの若きクルー達はそれをあっさりとクリアして見せた。それも、たった一機のMSが奇襲をかけるというもので、戦術論から言えば暴論以外の何者でもないもので。その時思ったのだ――本当に諦めないのなら、人はきっと何かが出来る。全ての灯火を何も吹き消す事は無い。未来は、可能性は、無数にあるのだから。
 「お主がそういうのなら、儂も賭けてみよう。……どれ、議論を終わらせるかね。」
 そう言って、二人はテーブルに向かう。結局の所、この議論は経験が圧倒的に豊富なラドルとメイゼルの二人が納得しなければ収まらない類のものだった。要するに、彼ら二人以外は只の意見しか述べられない場だったのである。


 「……撤退? どこに?」
 シホ達はようやくパトロールを終え、他の部隊と引き継ぐと、イス=ラフェルにあるパイロット用のリラックスルームで“お茶会”と洒落込んでいた。……なんで“お茶会”等と言うかと言うと、リュシーが居ればどんな飲食でも“お茶会”になってしまうのである。
 「はい、隊長。――オレンジペコの四十二番ですわ。」
 リラックスルームとはいえ、無重力ブロックである。パックにストローで飲む代物に貴賤など無い、としか思えないシホに『オレンジペコの四十二番』と言った所で、只の紅茶とどう違うのか理解出来ない深淵である。……とはいえ、世間様で“美味しい”と言われているものを無下に扱える程の人格者でも無い。「あ、アリガト……。」と微妙な顔をして受け取る。
 「ユーコには、バニラミックスね。――紅茶は何が宜しくて?」
 「てきとーで良いよー、ボクは。」
 それに、ちょっとムッとしたようにリュシー。
 「……宜しくて? 紅茶というのはとても深い歴史があって……」
 「ゴメンー! アールグレイお願いしますっ!」
 おそらく咄嗟に思いついた銘柄を慌てて出すユーコ。……これが、“お茶会”と呼ばれる由縁である。リュシーの機嫌を損なったが最後、延々と“マドリガル家に代々伝わる紅茶の正当な歴史”だか何だかをきっかり一時間は聞かされてしまう。それ以降、シホはこの問題についてリュシーに逆らった事は無い。……より良い交友関係を作るための秘訣?である。
 ようやくお茶が行き渡ったのを確認して――そうでないとリュシーがうるさいので――シホは改めてリュシーに切り出す。
 「どこに撤退するって通達だったの?」
 エルジュ=パナンサは通商航路からは大きく外れた位置に存在する宙域だ。裏を返せば、追撃さえ無ければ殆ど発見される事無く移動出来る。こうした“反乱軍”の場合、一般市民は通報される恐れのある敵勢力に他ならないのだ。それ故に、撤退の場合はMS隊に課せられる任務は非人道的なものも追加される場合もある。――民間シャトル撃墜という場合も、ありうるのだ。それは、シホとしてもやりたくない任務である。
 「地球方面らしいですけれど、詳しくは秘匿事項だそうです。イス=ラフェルには大気圏突入機能は無いから、積載された連絡艇で降りるんでしょうけど……。」
 リラックスルームに据え付けの端末を操作しながら、リュシー。
 「…………。」
 シホは考え込んだ。――とはいえ、情報が少なすぎてまとめる事は出来そうもない。
 (御爺様は何を考えているの? ……そりゃあ、全滅は避けなくてはいけない。けれど、地上に私達の味方が居るとでも言うの?)
 シホは知らない。そう遠くない未来、たった一機で“驚異”となりうるモノが地上に存在しうる事を。……だが、それとは関係なく、彼らとしても全滅は避けねばならない。それ故の決断なのだろうと、シホは強引に納得する。
 「でもさー、こうなってくるとボクら、どこまで逃げるんだろうね……?」
 ユーコが心配そうに呟く。それは、この場にいる全員の心配でもあった。
 ……折角の『オレンジペコの四十二番』は味がしなかった。


 『第四MS隊消滅。――これで、斥候に出した部隊は全て全滅しました。』
 淡々とした報告に、黄昏を駆るムゥは別段驚いた風でも無かった。……ただ、眉根を寄せて少しだけ目を瞑る。そして報告してきた部下、アゼルドの紅いルタンドに通信回線を開く。
 「敵機発見の報から全滅までの、それぞれの時間を言え。」
 斥候任務に就いていただけあって、ルタンドは通信能力が強化されていた。短波通信ならば、ジャマー化でも効果的に運用出来る。それ故にそうした事をムゥ達が知るのは容易なのである。……とはいえ、言われた方はイマイチ理解出来ない。アゼルドは「なんでそんな事を?」と言わんばかりだ。だが、別に言いたくない訳でも無い。命令ならば、と自らを納得させて報告する。
 『はっ。第一分隊が四分三十四秒。第二分隊が三分五十六秒。第三分隊が一分二十秒。第四分隊が六分十五秒です。』
 それを聞いたムゥは「……ご苦労。」と言って、また考え込む。その様は悩んでいると言うより、苦痛に耐えている様な表情だった。
 ――しかしそれも一瞬だけで、ムゥは部下に指示を出す。
 「全部隊を第三分隊が全滅した方に集合させろ。その辺りに敵本隊、又は主力軍が居るはずだ。」
 ムゥの言葉に淀みはない。だから、アゼルドも一瞬気押された様に頷く――が、直ぐに疑問が浮かんだ。そして彼は疑問を持ったら解決しないと気が済まないタチだった。それは、兵士として納得して戦いたいという思いからだ。
 「……何故、そちらに敵本隊が存在すると?」
 ムゥの返事は素っ気なかった。……だから、アゼルドはムゥの苦悩が解らなかった。
 「簡単だ。斥候部隊は殆ど新兵――技量にそれ程差は無い。ならば、倒すまでの時間が少ない程、相手側が高い技量の持ち主。そしてこうした部隊を分散させている場合、技量の高い連中がいる場所ほど重要だという事だ。」
 「……なるほど、理に適ってます。」
 「以上だ。――行け。」
 ムゥは一方的に通信を切った。それ以上の反論は許さない――そういう事だ。
 去っていくアゼルドのルタンドを見ながら、ムゥは考える。
 (……新兵を犠牲にしても、何とも思わない非道な指揮官だと思われただろうな……。)
 ムゥにしてみれば、犠牲を増やさないために敢えて斥候部隊を犠牲にする必要があった。それは指揮官として必要な事で、どうこう言われる筋合いは無い。
 だが――それに慣れるというのは、人としてどうかと思ってしまう。
 戦争だから仕方が無い。
 戦争だからそうするしかない。
 ――人は、それを免罪符にするしかない。
 ムゥは、黄昏のコクピットに貼り付けた妻マリューと長女アンリの笑顔に見入った。それだけが彼を狂気から救い出してくれる存在だと、固く信じて。


 散発的だった虚空の流星が、今や群れとなりこちらに向かってくる。スラスターの曳光が産み出す流星は、願い事など叶えてくれはしない――あるのは、敵ならば倒す。それだけだ。
 メイゼルは自分の艦“ヘラ”のスクリーンで、しかめっ面でその光景を眺めていた。それから読み取れる事は、「敵はこちらを発見した」事と、「集結してこちらに向かってくる」という事だ。――その数、敵MSの7割強。
 「随分とカンに頼る若造だ。……エンデュミオンの鷹。」
 おそらく、ムゥは何らかの確信でこちらを発見したのだろう。だが、こうも思い切られるのも意外だった。この様な索敵殲滅を行う場合、恐れるものは“補給線の分断”と“伏兵の存在”だ。退路を断たれれば指揮は総崩れとなるし、敵より少数であっても包囲戦は行える。それ故にこうした状況下なら全軍に動員をかけず、四割の兵力等で当たる。そしてその方面が本隊ならば、順次兵力を回せば良いのだ。……だが、ムゥは思い切り良く全軍を差し向けてきた。メイゼルならば打てない手である。「もしこの場所に敵本隊が居なかったらどうするんだ」と考えてしまうからだ。
 メイゼルは微笑む。若い世代が己に立ち向かってくるのなら、胸を貸すのが年長者の礼儀だ。
 「発光信号を出せ。『総員突撃』だ。」
 「はっ。……宜しいので?」
 「構わん。既に奴らは我らの位置を知った。戦局は決戦を望んだという事だ。……我らとして、意地の張り場所という事だ。」
 既に歴戦の供である副官、バリスに厳かに言う。直ぐに通信兵へ伝達するバリス。
 ふと、メイゼルは別のモニタに目を移す。そちらには輸送船イス=ラフェルが映っていた。そこで忙しく指揮を執っているであろう友人に、心の中で語りかける。
 (頼むぞ、ヨアヒム。希望の光を残してくれ……。)
 イス=ラフェルには既に多数の士官を移送させていた。主にメカニックや一般業務に携わる人々だ――戦争をするために必要な一般人というのは、やはり大勢居るものだ。イス=ラフェルは元々ラドルがザフト地上軍の基地司令となっていた事もあり、地上はコーカサス地方へ向かう事になっている。
 今や、各艦に搭乗している兵士達は行き場の無い者達――ザフトの魂を忘れる事の出来ない者達だ。既に、各員には通達している――今回の作戦が、己の命を賭けて勝利をもぎ取る類の、決して褒められない作戦であるという事を。それでも、逃げない者が居る。それは愚かだ――と同時に誇らしくもある。
 「全艦に通達。――『ザフトのために』」
 通信兵が読み上げる。
 「攻撃開始! MS隊の防衛ラインを越えて、攻勢をかける!」
 メイゼルが吠える。それは、ザフトという今は無き群狼達の咆哮であった。


 雲霞の如く押し寄せる――それは、黄金の騎士に率いられた側も同じ思いだった。
 「うひょ……居る居る、居やがる! 鷹の旦那、大当たりじゃねぇか!」
 ムゥに同行する蒼いルタンドのバッシュが呟く。軽薄な男だが、腕は立つ。とはいえ、素人集団に近い宇宙軍の中では、だが。
 「口を慎め、バッシュ。――通常会話で言う内容ではないぞ。」
 そんなバッシュを窘めるアゼルド。全機揃うと金、紅、蒼と悪目立ちしまくりである。とはいえ、これがムゥ=ラ=フラガ率いる第一宇宙艦隊MS隊のブレーンに間違いは無い。
 「数ではこちらの方が上だ。一気に包囲して殲滅を図る。……アゼルドは右翼、バッシュは左翼。それぞれ部隊を率いて当たれ。呼吸を合わせて進撃しろ。突出するなよ。中央からは俺が攻める。……以上だ、散開!」
 「了解!」
 「はいよ、了解!」
 ムゥがそう指示を出すと、アゼルドとバッシュはそれぞれの隊を率いて左右に展開する。多少おぼつかない動きだが、その内慣れるだろう――慣れるまで、生きていれば。
 (何とか、生き延びてくれよ……。)
 ムゥは内心、そう思う。だが、それを口に出すのは躊躇われた。……一方では見捨て、一方では偽善に振る舞う――そこまで出来た人間では無いと思うからだ。
 砲火が始まる――光の矢が宇宙を奔り、それは奔流となる。それらの一つ一つが莫大なエネルギーとなって、MSに襲いかかる。
 「全軍突撃! 俺に続け!」
 ムゥは、その渦中に黄昏を飛び込ませていく。黄金の騎士に率いられた巨人兵士達は、何機かはその奔流に飲み込まれながらも、その後を追っていった。


 光が交錯する度、爆発が起きる。その度に、命が失われていく。
 ルタンドとザクウォーリア――共に量産機として作られ、前者は最新鋭、後者は人々に今も愛される傑作機。それらは今、敵味方に分かれひたすらに殺し合う。それは全く持って良心の呵責など交えないもので、今しもルタンドをビームサーベルで貫いたザクウォーリアを、別のルタンドが味方機ごとビームライフルで撃ち抜く。それは、味方機が生きているかどうかなど問うては居ない――次の瞬間自分が死んでしまうのを避けるために、どんな事をしても敵を倒す以外に無いのだ。それは、確かに狂気の世界であった。狂乱と怒号が渦巻く――およそ、“良識”などなんの価値も見いだされない世界。人が創り上げた地獄の様相である。
 そんな戦場を駆けるムゥの胸に去来するものは何か――何もない。戦場でセンチメンタルになるほど純粋でもなく、子供でもない。敵ならば殺す――それが戦場の習いだ。
 「……子供の喧嘩をしに来た訳じゃない!」
 ムゥは黄昏をひたすら駆り立てる。宇宙空間での戦闘では、一撃離脱がもっとも基本となる。前後左右、どの空間からも攻撃も防御も行える三次元空間戦闘においては常に『どの位置からでも攻撃をかけられる』事を念頭において動かなければならない。どれ程反応速度が速くても、気が付いていない位置からの攻撃は致命傷となる。常に全方位に感覚を尖らせる事は理想論であり、常にその状態を維持出来るパイロットは希だ。そのため、どんな位置から攻撃されても良い様に、常に動き回るのだ。それならいつ誰が攻撃を仕掛けてきたとしても、相手の射撃を外させる事が出来る。それが出来なくなった時、自機は被弾する。攻撃の際であろうと、移動の際であろうと一瞬の油断が死に繋がる。……それを、ムゥは骨の髄まで知っていた。
 ムゥは、己の黄昏に装備されたガンバレルを射出する。肩に二機装備されたそれは、ワイヤーで自機と結ばれており、ムゥの思惟通りに動く。それを縦横に動かし、敵を誘い、或いは追いつめ、一機づつ屠る。それはムゥの得意戦法であり、基本通りの戦法。だが、そうした基本をもっとも大事にする事が戦場では一番必要な事だ。英雄などになる必要はない――数々の戦場を何とか生き延びれたというだけの存在が“英雄”と呼ばれて褒め称えられる――それだけの事だとムゥは思う。
 「動きがトロいぜ、ザフトの御老人方!」
 ムゥは一機のガンバレルが追いつめたザクウォーリアを手持ちのビームライフルで仕留める。それは無造作な射撃で狙いを付けて撃ったとは思えない。だが、きっちりとコクピットを撃ち抜いている。――ムゥの得意技“空間把握能力”だ。
 “空間把握能力”とはある種のパイロット達が宇宙空間という過酷な環境において編み出した技術だ。コーディネイターの様な生まれ付きの能力ではない、歴とした技術――だが、パイロットのセンス如何では習得は不可能とされる技術である。
 要点は『いつ、どこに、何が存在するか把握する』――それだけだ。武道用語で言う所の『心眼』にもっとも近い。例えばこの能力を習得したものは、目を瞑っていてもある程度MSを動かせる様になる。“どこに”“なにが”あるか把握していれば、そしてそれを想像出来るのなら、目視だけではない知覚を総動員する事が出来れば――それは成し遂げる事が可能となる。転じて、それをMSの操縦技術に置き換えると『モニタや計器に頼ることなく敵の位置が把握出来る』という事になる。ならば、ガンバレル等の空間浮遊砲台兵装といった特殊武器も配置を理解する事が出来るし、敵の位置も把握出来る。ムゥは、この様な技術を体得しており、また当代随一の熟練者でもある。それこそが彼を“エンデュミオンの鷹”とまで呼ばせているのだ。
 ムゥ率いる隊は、ムゥの存在も手伝ってか破竹の勢いで突き進む。それはそうだろう、司令官が部下達を率いる――それで志気が上がらないはずがない。誰もが必死に追従し、懸命に敵を倒すのならば、それは敵にとって見れば驚異以外の何者でもない。……だが、当のムゥは焦っていた。事前の報告より敵艦隊の数が少なかったからだ。
 (この状況で、艦隊を更に分散させた? もはや総力戦という時にか? ……くそ、嫌な予感がする……。)
 不気味な鳴動――相手が自分が生まれる前から戦争をしていた、生粋の軍人だからか。遠くに居るはずの敵司令官のほくそ笑む顔が見えた様な気がして、ムゥは次第に膨れ上がる疑念を晴らせずに居た。


 戦線右翼側は輸送艦イス=ラフェルを中心とした所謂“撤退部隊”である。その指揮を執るラドルは、中央から攻めてくるムゥ=ラ=フラガの堂々とした戦いぶりに賞賛を禁じ得ない。
 「あれが、噂の“エンデュミオンの鷹”――黄金の鷹、か……。」
 ぼそりとラドルは呟いてしまい、慌てて口をつぐむ。隣で副官のカンザスが聞いていたが、聞かなかった事にした。……不謹慎な事だが、カンザス自身もその見事な戦いぶりに驚いていたのだ。
 (この様な危険な戦場に、司令官が出てくるのはどちらかといえば愚策だ。――だが、奴の戦いぶりはそれを“愚”と言わせぬ何かがある。惜しむらくは、奴が敵であるという事か……。)
 そう言わしめる迫力が、ムゥにはある。閃光の様に場を圧する何か――。
 とはいえ、ラドルとしてはそれをいつまでも褒めている訳にもいかない。想定通り、敵軍は全域攻撃を仕掛けてきた。そして戦線中央では我が方が押されている――ここまでは、想定内だ。ラドルは武者震いする――メイゼルは、戦局を完璧に読んでいた。だからこそ、自分が駒となって動くのは愉しみな事だ。それゆえの武者震い――結局の所、軍人とは勝利するために戦うのである。
 「全隊に通達。我らは撤退行動を取りつつ、MS隊に防衛に当たらせる。――せいぜい派手にやるぞ。」
 それは、奇妙な命令である。撤退部隊ならば前線部隊が敵部隊を引き付けている内に速やかに撤退するのが常だ。だが、ラドル隊は撤退どころか後退防衛を行おうとしている。殆どの乗員が非戦闘員にも拘わらず、だ。だが、カンザスは疑いもせずに発令する。
 「これより作戦B行動に移る。MS隊は進撃せよ!」
 その命と共に、引き絞られた矢の様にMSが虚空を突き進む。その中にはシホ達の姿もあった。カタパルトから射出され、シホ達はトライアングルを組む。
 (私達は、何処へ行くのだろう。どんな運命を辿るのだろう……?)
 そう思っても、星空は何も語らない。語られるのは、生と死の狭間だけだった。


 右翼を攻めているアゼルドは、更に敵軍が増えたのを見て動揺した。
 「くそっ……敗軍ならば敗軍らしく遁走すれば良いものを!」
 毒づいても敵軍は消えない。やむなく指示を――と思うが、この状況は多少の戦術などで覆る様な状況ではない。ひたすらな泥仕合をして、両軍共に消耗し続け、根負けした方が負ける――それがこの戦場でのルールであり、流れであった。優等生で名の通っていたアゼルドにしてみれば堪えられない戦場には違いない。アゼルドは確かに腕の立つパイロットであったが、ムゥとは違い後方に位置するタイプだった。前線に切り込む度量が無い――そう言うのは厳しいが、その点がムゥとは雲泥であったのだ。それゆえに戦線は膠着状態に陥っており、更にアゼルドは混迷していた。もっとも、ムゥにしてみれば『何とか戦線を支えてくれればいい』と思っていただけなので、その点では十分に活躍していたといえる。
 だが――敵の動きが変わった。というより、新たに参加した三機のMSの動きが段違いなのだ。
 「なんだ? あの機動性は……?」
 武装は他のザクウォーリアと大差ない――だが、動きが段違いだ。パイロットの腕もあるだろうが、機体そのもののスペックがこの場のMSと次元が違うのだ。ニューミレニアムシリーズの開発理念を更に突き詰め、かのインパルスの後継機たるもの――イグ。
 それまでのザクウォーリアに慣れた兵士達は、それより明らかにスピードが速いイグに戸惑いを隠せない。それまでは当たっていたはずの射撃が外され、更にどんどん懐に飛び込まれる。その度にルタンドが切り裂かれ、或いは撃ち落とされていく。
 アゼルドは、その部隊に流れる“戸惑い”を止めなければならなかった。だが、彼もまた立ち直れる機会を与えられなかった――ムゥならばすぐさま彼らを止められたろう。だが、アゼルドはまだまだ、戦場慣れしていなかった。
 『大将首、みーっけ!』
 そんな軽薄な声が聞こえてきた――そう思った瞬間、機体に対鑑刀がねじ込まれた。いつの間に背後に、とか相手が女なのか?とか思う暇も無かった。一瞬でアゼルドの機体は両断され、次の瞬間爆散した。走馬燈すら見る機会も無かった。


 「……アゼルド隊が敗走しただと!?」
 ムゥは不機嫌に怒鳴る。とはいえ、「やはり、こうなるか……。」とも思う。必ず勝てる戦場など無い、負ける事も考えておかねばならない――そう考えを切り替え、ムゥはすぐさま判断する。
 (右翼方面に主力を配置しているという事か? どのみち、右翼が敗走すればこちらは半包囲状態となる。――右翼を支えなければならん、という事か。)
 こうなるとムゥが中央を切り崩せたのも相手の策だったのではないかと思えてしまう。穿ち過ぎになりそうな思考を無理矢理まとめ、ムゥは直ぐに指示を出す。
 「カール、お前はこのまま進撃しろ。俺は右翼に向かう。……後は任せたぞ!」
 『りょ、了解であります!』
 返事も聞かず、ムゥは黄昏を疾駆させる。頼れる者が少ない――その思いはムゥを遣り切れないものにさせていた。


 「……黄金の鷹が右翼方面へ向かった模様です。」
 総旗艦ヘラ――副官バリスがメイゼルに報告する。
 「思惑通り動くものだ。……まだまだ青い。」
 メイゼルはつまらなそうに呟く。それは将棋を若者と指している年長者、といった面持ちだ。
 しばし――ほんのしばし、メイゼルは黙祷する。静かに目を開き、メイゼルは厳かに言う。
 「皆、退艦しろ。……今ならまだ間に合う。」
 そう言い放つが――周囲の反応は淡々としたものだった。
 「今更、何をおっしゃいます。」
 「もはや行くべき所もありません。……お供致します。」
 メイゼルはクルーの顔を一人一人眺める。誰の目にも迷いがない――それを確認して、メイゼルは敬礼した。クルー達もそれに習う。
 「全艦に通達せよ。『我らは先に逝く』とな。」
 「……了解。見事、死に花を咲かせましょうぞ!」
 総旗艦ヘラが動き出す。それは、ムゥの思惑が外れ始めた瞬間でもあった。


 黄昏はそれ程の時間も掛からず右翼方面に到着した。そして直ぐにイグ達を見つける。それはそうだろう。彼女達がこの戦場を支配していたのだ――先程のムゥの様に。
 「これ以上、好き勝手にさせるかっ!」
 ムゥが吼える。肩のガンバレルを射出し、目に付いたイグ=フォースに攻撃をかけようとして――
 『そこの金ピカぁ!』
 ……おおよそ悪口だか何だかの裂帛の気合いと共に、ユーコのイグ=ソードが突貫してくる!
 「くぅっ!」
 すぐさまムゥは黄昏のスラスターを全開、距離を取ろうとする――が!
 「こっちのスラスター出力と互角だというのかっ!」
 距離が離れない――対鑑刀の斬撃が来る!
 ムゥは射出したガンバレルを操って、イグ=ソードを射撃する。慌ててシールドで防ぐユーコ。対鑑刀を振り下ろす機を逸したのを察し、直ぐに離脱する。ムゥは、追撃しようとして――今度は、最初のイグ=フォースがビームライフルを射出しつつ距離を詰めてくる!
 「ビームライフルなど効くか!」
 正確な射撃――それは見事黄昏に命中する。それはムゥにしてみれば屈辱でもある――だが、黄昏の売りの一つである鏡面装甲“ヤタノカガミ”が直ぐにビームを弾き返す。今度はそれをシールドで防ぎつつ、イグ=フォースも離脱する。
 「…………?」
 (なんだ、コイツ等。妙に動きが……。)
 ――洗練されている。そう思ったからこそ、次の攻撃を避ける事が出来た。
 視界の隅に、紅い光が映る。それが直ぐに高収束ビームカノン“オルトロス”だと気が付く間もなく避けられたのは、戦士としてのカンであろうか。……オルトロスクラスのビームでは如何に鏡面装甲であろうと反射など出来ない。直撃すれば、一瞬で撃墜される。
 (初めから、これを狙っていたのか! コイツ等は!)
 連続した攻勢は最後のオルトロスの隙を隠すため。だからこそ、離脱が早かったのだ。それと同時にムゥは悟る。
 (……徹底した一撃離脱。更にこのコンビネーション――コイツ等がイグを奪ったザフトレッド達か!)
 黄昏に匹敵する機動性、そして相手は三機。……ムゥは我知らず、冷や汗をかいていた。


 (――強い!)
 黄昏に対峙するシホ達の、疑いようのない感想である。“エンデュミオンの鷹”と呼ばれ、持て囃されている男――眉唾物の伝説ばかりだとは思っていないが、全てが的を射ているとも思えなかった――今、この時までは。
 シホ達とムゥは、互いに有効打を打てずにいた。シホ達が攻め立てようとガンバレルを絡めた連携で凌がれ、逆にムゥの攻撃はイグ三機の連携で崩す。どちらも攻撃を命中させるためには、もう一歩踏み込まねばならなかった――被弾するリスクを冒して。熟練者同士の戦闘とはそういうもので、リスクマネジメントが勝敗を左右する。常に冷静である方が勝利に近いのである。
 他の部隊は黄昏やイグの機動性について来れず、どちらも己の戦力だけで戦わなければならない――そうなると不利なのは黄昏の方なのだろうが、ムゥの戦いぶりはとてもそうとは思えない。イグを駆るシホ達の方が慎重で、ムゥの方が大胆であった。それもそのはず、鏡面装甲ヤタノカガミを無効化出来るのは対鑑刀とオルトロス、後はフラッシュエッジとビームサーベルだけ。オルトロスにさえ気を付ければ後の二機は白兵戦を挑まざるを得ないのだ。フラッシュエッジは高速で動き回る黄昏を追い切れないという事もあり、尚更それは顕著となる。大胆である方がムゥとしては安全なのだ。
 既に戦闘開始からかなりの時が流れている。こうなると勝負の趨勢はパイロットの持久力の問題も出てくる。シホ達もムゥもお互い疲れていた――が、それを気力で押し留め、眼前の敵に集中する。ほんの一瞬気を抜けば、それで全てが終わってしまうからだ。
 (ガンバレルが厄介。アレをどうにかしなければ……。)
 シホはそう思う。なるほど、ガンバレルとは非常に厄介な武装である。ほぼ全周囲に瞬時に攻撃をかけられる上に、被弾すればそれなりのダメージ。更にガンバレルのせいで眼前の黄昏のみに集中出来ない――早い話、ガンバレル搭載機と戦うという事はその装備分の数の敵と戦う事の様にすら思える。
 逆に、これ程の苦戦はガンバレルの存在に寄るもの――そう考えたシホは、リュシーとユーコに短波通信(文章通信)でこう伝える。
 <ガンバレルを叩き落とす>
 それだけで十分だ。あの娘達ならやってくれる――そういう信頼はシホは持ち合わせている。
 (狙うはガンバレル――なら!)
 シホは、ビームサーベルをイグ=フォースの両手に握らせる。あまりやった事は無いが、上官のイザーク=ジュールが得意とした二刀流。少々心に引っかかるものはあるが、この際仕方が無い。
 「……行くわよっ!」
 気合いと共に――シホ!
 『おっけー!』
 『併せますわ!』
 それぞれの声が聞こえる。死線を越えた、家族の様な仲間達。――今では誰よりも大事な、心許せる部下達。彼女達の存在が間違いなくシホを強くしていた。
 「はああああっ!」
 シホが双刃を振るう。ムゥはビームライフルを牽制射するが、シホの気迫に押されたかライフルを捨て、サーベルを構える。
 (打ち合えば、次の瞬間ガンバレルが来る――けれど!)
 逆に言えば、その瞬間がチャンスなのだ。直ぐ後ろを追従してきているユーコ機の対鑑刀なら、ガンバレルと黄昏を結ぶワイヤーなど間違いなく両断出来る。そして、それだけでガンバレルは無力化出来るのだ。そして、リュシーもガンバレルを狙ってくれている――オルトロスならば、掠めるだけでガンバレルを無力化出来る。シホはガンバレルから己の身を守る術は無い――が、仲間が守ってくれるという安心感がある。
 肉を切らせて骨を断つ――シホ達が採用した戦法はそのようなものであった。
 イグと黄昏、二機のビームサーベルが火花を散らす! ……そして、ガンバレルが動き出す!
 (今――ユーコ、お願い!)
 『もらったぁー!』
 ユーコの裂帛の気合いが聞こえる。そして、後方からオルトロス。オルトロスは片方のガンバレルを掠め、そしてもう一機のガンバレルワイヤーを対鑑刀が両断する!
 (やった! これで――!)
 黄昏のガンバレルは事実上破壊した。そして、次の三位一体攻撃は黄昏は防げないだろう。意気上がるシホ達。
 しかし、次の瞬間――シホ達は凍り付いた。
 『……ガンバレルを奪った程度で、俺が倒せると思うか?』
 そう聞こえた――機体が肉薄しているからか。そして、見た――破壊音と共に、ユーコ機のイグ=ソードの頭部が撃ち落とされた。ワイヤーを断ち切られ、無力化した筈のガンバレルがユーコ機の頭に衝突し、叩き落とした――そう理解出来た。
 そして、更に次の瞬間、オルトロスで撃ち落とした筈のガンバレルのワイヤーがシホ機に絡みついていた――ガンバレルの残骸を錘にして、シホ機に絡みつかせたのだ。
 「そんな……!?」
 慌てた――ワイヤーをビームサーベルで断ち切ろうとして――そしてそれがそのままシホ機の命運を分けた。
 両手足があっという間に寸断され、シホ機は黄昏に捕まえられた。


 『――お嬢ちゃん達が仲間思いなのは、戦ってりゃ嫌でも判る。そこの二機、状況は解るな?』
 黄昏の接触回線が開かれ、シホ機を介してリュシーとユーコにも声が伝わる。リュシーもユーコも、動きを止めた――敵を倒す使命より、彼女達にはシホという優しい上司が大事だった。
 まず、リュシーのイグ=ブラストが持っていたオルトロスを投げ捨てる。そして、ユーコのイグ=ソードも対鑑刀を投げ捨てた。
 「貴方達、何をしてるの!? このままじゃ……!」
 シホは慌てた。この様な時、シホは五月蠅く『私を見捨てて、生き残る術を探しなさい』――そう言い続けた筈だ。なのに……。
 『良い子だ。――機体を捨てろ。』
 言う通り、リュシーとユーコはコクピットから出てきた。……シホはもはや、償いきれない失態をしてしまったのだと痛感する。
 (――何が隊長、何がザフトレッドか! 私は、良い部下に恵まれても、良い上司たり得なかった……!)
 ハッチが開き、リュシーとユーコが大破したイグ=フォースに乗り込んでくる。三人とも何も言わなかった――ただ、お互い抱き合っただけだ。涙だけが流れた――敗北した悔し涙だけが。
 『……おい、お嬢ちゃん達――もう二度と戦場には出るな。次は無いぞ。』
 その言葉が、何を意味したのか一瞬解らなかった。ただ黄昏が動いて、思い切りイグ=フォースを蹴飛ばした――イス=ラフェルの方に向けて。
 遠ざかっていく黄昏が、イグ=ブラストとイグ=ソードを撃墜しているのが見えた。大破したイグ=フォースを揺りかごに、彼女達はイス=ラフェルに回収された。


 その頃、戦線中央――
 「敵旗艦ヘラ、突撃してきます!」
 「光波防御帯のせいで、MS隊が攻めあぐねています!」
 戦艦ミカエルのマストブリッジでは、状況が事細かにミラに届けられていた。とはいえ、ミラとはいえばどうすれば良いのか判断が出来ないというのが偽らざる心境だった。
 (どうすれば良いのですか、ムゥ司令――!)
 元より実戦経験の乏しい艦長である。それは、他のクルーも大して変わらない。だが、今判断を求められているのは紛れもなくミラなのだ。ミラは艦長として、悠然と判断しなければならなかった。
 (ヘラの光波防御帯は、ミカエルの陽電子砲クラスで無ければ貫けない……!)
 それは、誘惑だった。甘く、ミラには手が届いてしまいそうな。そしてミラは、その裏の選択肢が読み取れなかった。
 「ミカエルの陽電子砲でミラを撃沈します。MS隊を斜線からどかして下さい。」
 メイゼルの罠――それは、ミラの様な新参の者は気付く事すら不可能だった。


 シホ達を倒した所で、右翼戦線は集結した――正確にはそれどころでは無くなっていた。
 「……艦隊特攻か!」
 総旗艦ヘラは光波防御帯を全開、そして随伴するMS隊は決死の動きでカール率いるMS隊と交戦を繰り広げていた。更に、ムゥを愕然とさせたのは――
 「……ミカエル? こんな場所まで! 馬鹿なっ!」
 戦艦ミカエルの位置は、ムゥの思惑より遙かに前線に出てきていた。確かに艦隊特攻をするには、ミカエルの位置は未だ最後尾だ。だが――それは、やり方次第でどうとでもなる。その事をこの段階で理解出来たのは、他でもないムゥだけだった。
 (違う! ミラ、気が付いてくれ! コイツは囮だ! ジジイ共が狙っているのは……!)
 ムゥは黄昏をもう一度疾駆させる。傷ついた鷹は度重なるフルスロットルに悲鳴を上げながらも、ムゥの意志と共に宇宙をひた走る――。


 その頃、左翼方面。
 特に今まで話題に上らなかった左翼方面は、実際の所全く危なげなく統一軍側が勝利を飾っていた。……とはいえ、中央と右翼が苦戦している以上、無理をおして攻勢をかけられなかった辺りが練度の差であろう。とはいえ、命を預かる側のバッシュとしてみればそうそう無理も言えないのだった。
 そして、現在――中央部から敵艦が前進してきて、味方部隊が後退し始めれば、バッシュとしては部隊をある程度中央部に差し向ける事くらいはする。
 「リード、中央の連中を支援しろ。ったく、どいつも役立たずが……。」
 『了解、まあのんびりしてて下さい。』
 とはいえ、左翼方面でもまだ散発的に戦闘は行われている。バッシュが一応でも居ないと不味いのだ。
 よもや中央が突破される事はないだろう――バッシュですらそう思う。そしてそれは結果的に間違いではなかったのである。


 「十分、部隊を引き付けたな。――この老体の首に、それ程の価値があるとは光栄な事だ。」
 既にヘラはかなりの被弾をしていた。如何に光波防御帯があるとは言え、それだけで防ぎきれる攻勢ではない。あちこちのブロックで炎上が確認され、ここブリッジにおいても負傷者は続出していた。メイゼルも頭に包帯を巻きつつ指揮を執り続ける。
 「敵艦、陽電子砲の発射態勢に入りました。――目標、当艦。」
 副官であるバリスも、既に血塗れだった。しかし、その瞳は力を失わず、最後までこの場に残ろうとする。どいつもこいつも、いくさ馬鹿であった。
 「敵陽電子砲の発車直前、本艦は自爆する。……皆、ご苦労だったな。」
 メイゼルは微笑む。その目に映るクルー達は、メイゼル生涯最高のクルー達。最後の瞬間まで意地を張り通した人々の姿。
 互いに、微笑み――頷く。その共有した時間が、得がたいものだから。
 メイゼルは、自分のコンソールに目をやる。そこに、強化ガラスに守られた赤いボタンがある。……この艦ヘラの、自爆スイッチである。
 「艦長、今です!」
 バリスの声が聞こえる。その瞬間、辺りが静かになった様にメイゼルは感じた。
 何事か叫んだ様な気がする。ザフトのために、だったか。栄光あれ、だったか。
 叩き割った後のボタンの感触だけが、リアルに手に感じられた。


 ――爆風が、周囲に広がっていく。
 「……やりやがった!」
 黄昏――ムゥはその様を横目で見ながら、爆風吹きすさぶ中をフルスロットルで駆け抜けていく。おそらく何機ものMSが巻き込まれたはずだ。ムゥの心に暗澹たる思いが浮かぶ。
 (これで終わりじゃない! くそ、これが経験の差だっていうのかよ!?)
 ムゥには解る。これで終わりではないという事が。しかし、懸命に距離を詰めて通信しようとしても、この爆発で乱れた粒子下では短波通信で
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