Walking Together Under an Umbrella
◆yuri0euJXw
「かなちゃん。どうですか~?」
「っ何が?」
「何って,コレしたかったんでしょ?相・合・傘♪」
「~~~!!!」
雪乃はしばらく間を置いては同じ質問を嬉しそうに繰り返す。
はじめは仕方なく答えていた奏だったが,何度目からか,頬を染めプイっと視線をそらすようになった。
何気ない会話を交わす,頬を少し染めた二人の姿が並んでいた。
昔は素直に一緒の傘に入っていたけど,いつの間にかそんなことも少なくなって‥‥。
数日前から天気予報を見てそわそわしている奏を見ながら,雪乃も同じことを思っていた。
帰り道,昇降口で待っていた奏の本当に申し訳なさそうに雪乃に謝る姿を見て,雪乃は少しだけ嬉しくなる。
それは,きっと予想以上に奏が喜ぶと,その様子が目に浮かぶからだった。
実行に移すと,案の定,ばつが悪そうにしてる奏が雪乃には堪らなく可愛く見えていた。
本当は,雪乃も同じ思いなのに奏の喜ぶ姿は雪乃を温かくさせた。
冬の雨は刺すように冷たい。
白い吐息がその冷たさを強調して,赤くなった指先が少しだけ痛々しい。
傘をさす奏の手を見て,ふと視線を奏へ向ける。
すると濡れた上着が雪乃の視界に入った。
雪乃が濡れないようにと,奏は自分が濡れているにもかかわらず
雪乃に傘を添えていることに雪乃は気付く。
奏の優しさが嬉しくて,雪乃は奏をきゅっと抱きしめるのだった。
寄り添う距離で,そっと奏の手に雪乃は自分の手を重ねる。
冷たくなった奏の手は少しずつ温かみを取り戻していく。
重ねた手のぬくもりと,雪乃の想いに包まれて。
「ゆきちゃん‥‥手‥‥温かい。」
白い息がほこほこと奏の口から漏れる。雪乃は,遠くを見ていた。
「小さい頃はよくこうして一緒に傘に入ったね。」
二人に甦る幼い記憶。
小さかった二人には普通の傘は十分すぎて,長靴で歩く水溜りが楽しくて。
「かなちゃん,よく水溜りでジャブジャブって‥‥,えへへ。」
雪乃が水溜りをよけながら,楽しそうに笑った。
「ゆきちゃんも‥‥さ。」
足を止める奏に,雪乃は視線を向けると奏は真摯な視線を雪乃に向けていた。
「ゆきちゃんも‥‥したかったの?」
「‥‥‥うん。」
雪乃は返事と同時に奏の手を強く握った。
赤く染めた頬が,奏の視界に入った。
「‥‥‥結構ヤバかったんだ。ずっと‥‥。」
「ずっと?」
「ずっとそればっかり考えてて,考えすぎなんだと思うんだけど,でもっ!」
「‥‥うん‥‥わかってる。」
奏に向ける雪乃の笑顔はとても優しく,穏やかだった。
奏も頷くと,歩みを進めた。
もう‥‥いつからか分からない‥‥この気持ち。
ずっと一緒だと,ずっとそばにいることに疑問を感じなかった。
ずっとずっとこれからも傍にいる‥‥って。
少しずつ変わっていく心のかたちが二人の関係を少しづつ変えていく。
抱き締めた腕が,重ねた手が,変わっていく心のサインを少しずつ伝えていた。
求めあう存在と温もりは,もう親愛からだけではないのだと,絡み合う視線と温もりがそれを伝えていた。
でも‥‥。
もう少しだけ‥‥。
「雪姉。髪洗うって言ってたよね?」
「うん。可愛いかなちゃんの髪はお姉ちゃんに任せなさい♪」
満足げに微笑み合う二人は足早に寮へと向かった。
何気ない,‥‥‥雨の日の出来事。
二人にとってそれは‥‥‥大切な日常。
最終更新:2010年11月18日 22:52