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SS-30

咲ちゃんと雫の関係性

名無しさん


「奏先輩,雪乃先輩おはようございます!!」

なにやらいつもとは違う勢いで咲ちゃんが挨拶をしてきた。
投げかけてきたんじゃなくて,投げつける感じに近い。

「はぁ,今日も朝からおはよう‥‥(朝から一緒か‥‥)」
「おはよう,咲ちゃん」

悪いとは思いつつもげんなりとしてしまう私を尻目に,雪ちゃんは相変わらずほんわかとした笑顔で返事をしている。
咲ちゃんの朝のホームでの待ち伏せは一向に無くならない。
ちょうど乗る電車が滑り込んできた。その騒々しい音に負けないぐらいのボリュームで咲ちゃんが叫んだ。

「メアドを教えてください!!」
「え,わ,私のはちょっと,」
「カナちゃんのは勝手に教えられないけど,私のは,知ってるよね?」
「違います!妹ちゃんのです!!」
「「ぇえっ?」」

綺麗にハモった声が辺りに響く。

「妹って,雫だよ,ね?」
「じゃなかったら誰がいると言うんですか!まさか,まだ隠し子がいるんですか?」
「う‥‥,って,そもそも妹だし!なんで私が作ってるみたいな言い方されないといけないのよ!」
「カナちゃん,浮気は駄目~」
「雪ちゃんまでっ!‥‥‥‥そっか~,私ってそんな信用ないんだぁ‥‥そっかぁ‥‥‥‥」

電車に乗り込んでからも分かりやすくしょぼくれる奏先輩を視界の片隅に留めながらも,
私は雪乃先輩との赤外線通信を優先した。
いつもなら,優しくねっとりじっくりと慰めてあげる方法がいくつも頭に並ぶところだけど,今はそれどころじゃない。

「‥‥‥‥で,なんで雫のメアド知りたいの?」

いじけていても構ってくれないことに気付いたのか,奏先輩が尋ねてきた。

「それはですね。じt」
「咲ちゃん,ちょっといいかな?」
「え,雪ちゃん何?なんで咲ちゃん連れてっちゃうの?」

言葉の途中で雪乃先輩の手で口を塞がれたまま隣の車両に連行された。

数分後,戻ってきた二人にいくら聞いても教えてくれなかった。
咲ちゃんはあからさまに違う話題にしようとばかりしているし,雪ちゃんのはぐらかしはいつものこと。
結局そんなこんなで学校に着いてしまい,時間切れとなった。

むぅ,なんだか面白くない。

翌朝もすっかりおなじみとなった三人での電車内。

「ん,咲ちゃん,メール?」
「はい,そうです」

普段なら隙あらば抱き付く,またはシャッターチャンスを窺っているはずの咲ちゃんの様子が今日は変だ。
携帯を開いてなにやら考え込みながらキーを操作している。

「‥‥雫?」
「凄い!一回で当てるなんて奏先輩は天才か,はたまた私と同じ時間を過ごす内に互いの気持ちが読めるぐらいに一体化,え,合体だなんてそんなこと言ってないですよー。でも~,奏先輩がそう言うなら‥‥」
「うん,誰も,言ってないね‥‥(合体なんてどこから出てくるの)」
「咲ちゃん,しーちゃんはなかなか手ごわいでしょ?」
「そうなんですよー,まさかこんなに落ちないなんて‥‥」
「えっ,ちょ,ちょっと!落ちるとかって何の話よ!」

大事に思っている妹が関わっているだけに,聞き捨てならない。
相手が相手でもある。

「あ,カナちゃん着いたよ~。降りよ」
「お二人と話してるとあっと言う間ですね」

再びタイミングを逃し,今度は咲ちゃん一人の時に聞きだすことにした。
そして,会いたい時にはいない咲ちゃん。
‥‥私が咲ちゃんと会いたいと思うことがあるなんて,思いもしなかった。
ようやく絶好の機会を捉えたのは昼休み。
咲ちゃんはイチゴミルクの紙パック片手に,やっぱり携帯をいじっていた。

「さーくちゃん。何してんの?」

警戒されないよう,わざわざ真後ろから画面を少し覗き見る。
ん?やたら短い,暗号みたいな印象を受けた。

「あっ,奏先輩!好きです!」
「いや,なんでここでいきなり告白になるかな‥‥」
「だって~,奏先輩から私の所に来て二人っきりだなんて,滅多に無いチャンスを逃してはいけないと」
「‥‥生き急ぎすぎじゃないかな」

そんなことないです~,というセリフとその後の妄想の類の言葉は聞き流して,もう一度質問した。

「で,何やってたの?」
「これですか?妹ちゃんとメールしてるんです」
「や,それは‥‥」

分かるんだけど。何をそんなに雫とメールをすることがあるんだろう。
いつの間にか二人の関係が気になって仕方ないことに気付いた。

「これですよ」

差し出された画面を見てもさっぱり分からない。
やっぱり単なるランダムな数字の羅列にしか見えない。

「‥‥何か犯罪行為,テロ的なこととか企んでないよね?」
「何言ってるんですか,奏先輩。これ,ゲームですよ」
「え,これが??」

咲ちゃんの説明によると,1~9までの数字を使って互いが設定した複数桁の数列当てをするゲームらしい。
携帯ゲーム機全盛,しかも携帯電話にまで色んなゲームがあるというのに‥‥。

「先輩,こういうのはお好きじゃないんですよね?」
「うん,パズルとかすっごいキライ」

そもそも数字を使う時点でアウトだ。

「ですよね。‥‥それで,何となく言いそびれちゃって」

咲ちゃんも気になっていたらしい。

「というかさ,それでもなんで雫と?」
「え,あ,え,えーとですね,‥‥‥‥まあ売り言葉に買い言葉で,勝負をつけようということになりまして‥‥」

一体何があったんだろう。あれ,でも実家から戻ってから 大分経ってからだし,そこが引っかかる。
その点を聞くと,どうやら雪ちゃんのブログに咲ちゃんがコメントをつけて,更に雫がコメントをつけて,
元から相性が良いとは言えない二人は遠距離ゲンカを始めたらしい。

「ということで,打倒,妹ちゃん!が目標です!!」
「‥‥なんか,傍から見てると仲良しになったのかと」

そんなに負けてるの?とはさすがに聞けず,お茶を濁した。
実際,メールをやり取りする咲ちゃんは楽しそうだし,きっと雫も表立っては認めなくても,咲ちゃんからの
メールが着たら顔を明るくさせているに違いない。
それにしても,そんなことだったんだ。
くだらないことを気に病んでいた自分が恥ずかしい。

「そっか,じゃあ咲ちゃん,雫よろしくね」

雫は気難しいところがあるし,人から見たら扱いにくい子だとは思うけど。
でも咲ちゃんは良い意味で雫と同じ目線で,対等に接してくれているのが分かるから,心からそう思って咲ちゃんにお願いした。

「‥‥そのお姉様とよろしくするにはどうしたら良いでしょうか?」
「‥‥‥‥そんな攻略法はありません」
「じょ,冗談ですよー,ヤダぁ奏先輩ったら~。私こそ妹ちゃんと仲良くさせていただいて光栄です!」

そんな咲ちゃんに一抹の不安を覚えつつ,二人のこの先がどうなるのか,今から少しだけ楽しみになった。


長編に考えてたネタだけど小ネタってことで。
ちなみに雪乃はブログに奏に見られたらまずいことを書いていたため,最初の朝はブログが火種と知られたくなかったから口封じをしたという設定(ブログ手直しした後は天然だけにすっかり奏へのフォローを忘れてる)



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最終更新:2010年11月11日 17:50
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