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SS-47

奏 ×雪乃

名無しさん


それはある日のお昼の出来事。

「奏先輩!」
「ん?何?咲ちゃん」

「たまにはメガネかけた奏先輩を見たいですぅ~!!レアなお姿はレアだからこそ貴重なのかもですがしかしレアを通り越して裏技って言うか隠しキャラみたいな奏先輩にもっと会いたいって言うかあのインテリジェンスあふれるクールな瞳で『咲ちゃん、めっ』って優しく叱ってほしいと言うかああ…そんなシーンを想像するだけで私は軽くどんぶりで3杯食べられ

「あ~はいはい。そんなに食べると太っちゃうから止めておこうね~」

相変わらずのハイテンション妄想にうんざりしながら適当にストップをかける。

「はぅ…そうだ!…雪乃せんぱ~い。まるまるバナナ一週間分で…」

め、めげない子だね…この子は…

「持ってないよ?」
「え?」
「ごめんね咲ちゃん。まるまるバナナ十日分は惜しいんだけど…メガネかけたカナちゃんだけはないの」

いや、増えてる増えてる。

「そんなぁ~……雪乃先輩だけが頼りだったのにぃ~」

無念極まりなく涙を流す咲ちゃんを見ながら思い出す。
私がメガネをはずした日の事を…


中学に上がったばかりの頃だった。
当時の私はユキちゃんに対してコンプレックスを抱えていた。
綺麗で、運動神経もよくて、なのにそれを鼻にかけずに誰からも愛されて。
一方の私は同じ顔だけど野暮ったいメガネのせいか地味な顔で、全てにおいて人並みで、ただ絵を描くことが好きなだけ。
そんなネガティブな思考だから、自然と態度もネガってた訳で。
そんな自分を見せるのも、見られるのも嫌で…ユキちゃんと心の距離を取っていた。

「姉ちゃん達、もしかしてケンカしてる?」

しーちゃん…雫が私達を見ながら恐る恐る聞いてきた。

「え?何で?け、ケンカなんてしてないよ!ねぇユキ姉」
「うん、してないよー?何でしーちゃんはそう思うの?」
「だって…何かカナ姉ちゃん、ユキ姉ちゃんのこと避けてるっぽい…」

やば…この子、かなり鋭いわ…

「避けてなんかないよ。でも、しーちゃんに心配させるような態度を取ってたってことだよね…ごめん、しーちゃん」
「うんうん、カナちゃんも反省してるからね?このケーキは二人で食べようね~♪」

ピキッ

「調子にのるなこのバカ姉~!!!」
「いひゃいいひゃい!ふぉめんなひゃいひゃなひゃんひゅりゅひへ~!!!」



その日の夜、ベッドに入って寝ようとした時だった。

「ねぇ、カナちゃん」
「ん~?何~?」
「しーちゃんが言ったからじゃないんだけど…私も何かカナちゃんに避けられてるって思ってた…」
「………」
「私、何かしたかなぁ…?もし私が何かしたなら…
「違うよ!ユキ姉のせいじゃない!」

嗚咽混じりになった声に、慌てて否定を被せた。

「ごめん…ユキちゃんのせいじゃない…私がっ!私が悪いから!…」

それから私は全てを白状した。
ユキちゃんにこの気持ちを知られるのが恥ずかしくて、情けなくて…私は叱られた子供のように泣いていた。

「ひっ…ひっ…わたしはっ…ゆきちゃんの、となりをっ…ど、うどうと…ある、けるっ…ゆき、ちゃんが…はずかしくないっ…にん、げんに、なりっ…たかったのっ!…でもっ、わたしっ…じぶんで…じぶんをっ…かえ、られなくてっ…」
「うん…うん…」

私を抱きしめ、背中をポンポンと優しく叩いてくれるユキちゃんにしがみついたまま私はいつしか泣き疲れて眠ってしまってた。

「ほらほらカナちゃん早く早くぅ~」
「ちょっ…待ってってば!」
「待たないも~ん♪ほら、開店ガラガラ~」

その次の日曜、眼鏡屋で少ない小遣いをはたいて買わされたコンタクト。
ユキちゃんが鼻歌まじりにアップにセットしてくれた髪。
うん、まぁ…その…いわゆるイメチェンって奴。もちろん発案はユキちゃん。
これがね?いざ教室の前までくると妙に恥ずかしいのよ!

「おはよ~!」
「オ、オハヨウゴザイマス…」
「おはよ~……って、もしかして奏!?」
「うそ!?」
「すごいすごい!メチャイケてるって!!」
「ユキと並んで~!!」

写メとかデジカメの音が鳴り響く中、ユキちゃんを見ると……あれ!?不機嫌!?何で!?

帰り道。
不機嫌なままのユキちゃんと、やっと二人になったので恐る恐る聞いてみる。

「ユキ姉、何かあった?」
「………変えすぎちゃったなぁ」
「え?」
「だってだって~!これでカナちゃんの魅力にみんなが気が付いて、それでカナちゃんがみんなに取られちゃうかもしれないじゃない!」
「はぁ?ないない!あり得ないから!」
「と~に~か~く!!絶対にヤだからね!」

私の手をギュ~っと握ってくるその手を握り返し、私はユキちゃんに囁いた。

「私はユキ姉のそばから離れないから…ユキ姉が嫌だって言っても離れてやらないんだから!」
「カナちゃん!」
「奏先輩!」
「え?な、何?」
「予鈴、鳴っちゃったよ?」

げ、マジ?慌てて携帯を見ると…

「うわ!?やばいって!!それじゃまたね、咲ちゃん!」

二人早足で歩き出す。
ユキちゃんの隣を、堂々と歩ける幸せを感じながら。

「…ありがとね、ユキちゃん」
「え?何が?何で?」
「いいのっ!ほら、遅れちゃうよ!いそご!」
「も~!変なカナちゃん!」



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最終更新:2010年11月11日 20:46
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