今日は待ちに待った俺の誕生日。
手には買ってきたケーキが握られている。
ちゃんと歳の数だけローソクを立てて、発泡性の日本酒を飲んで、今日は楽しく自分の誕生日を祝おう。
一人で。
「ゆっくりしていってね!!」
あぁ、ゆっくり霊夢か、びっくりしたなぁ。
「おじさん、てになにもってるの?」
「ん? あぁ、これは誕生日ケーキだよ。今日は僕の誕生日なんだ」
「ゆっ! けーき! おじさん、たんじょうびってなぁに?」
「誕生日って言うのは生まれた日のことだよ、おじさんは今日生まれたんだ」
「ゆ! たんじょうび! たんじょうび!」
ピョンピョン飛び跳ねている
ゆっくり、何がそんなに楽しいんだろう?
「! そうだ一緒に食べないかい?」
一人で食べてもつまらないし、ゆっくりでも口が利けるだけマシだ。
「うん、たべるたべる! おじさんゆっくりしようね!!!」
その日はゆっくりと二人で誕生日を祝った。
翌日、昨日は楽しかったななどと思いながら庭の掃除をしていると。
「ゆっくりしていってね!!!」
どうやら昨日のゆっくり霊夢のようだ。
他にも沢山のゆっくり霊夢を引き連れてやってきた。
「おじさん、きのうはゆっくりできたね!」
「おかあさんにきいても、れいむのたんじょうびわからなかったから、きょうをれいむのたんじょうびにしたの」
「ごちそうをたべにきたの」
「ごちそうがたべられるね!」
「ゆっくりたべるね」
言うが早いか台所を荒らしまわる一家。
冬の為に準備していた沢山の食料に一斉に群がっていく。
「む~しゃむ~しゃ♪ おいしいね♪」
「こっちもおいしいよ!!!」
「きょうはれいむのたんじょうびだよ、みんなゆっくりたべようね!!」
その悪夢のような光景は一時間程で終わりを迎えた。
「けふ! おなかーーっぱい♪」
「ゆっくりできたね♪」
そう言ってその様子を眺めていた男の方に向き直り一言。
「おじさんゆっくりできたよ! でももうたべものがないから、このおうちはおじさんにあげるよ!!」
「たんじょうびってゆっくりできるね!!」
「ゆっくりできたから、あしたからふゆのためにたべものじゅんびしようね!!!」
あはは、という笑い声を発しながら、その一段は森の中へ消えていった。
ゆっくり霊夢、魔理沙、パチュリーの三人は今日も楽しく遊んだ後はしゃぎながら家に帰ってきた。
三人で一緒に暮らすお家。
宝物もいっぱい有る。
「ゆゆ!!!」
しかし、他のゆっくり一家によって中は無残に荒らされていた。
宝物は子供たちの遊び道具にされ既に壊れており、苦労して作ったぱちゅりーの棚は蒔きに成り果てていた。
「ゆっ? ここはれいむたちのおうちだよ。 ゆっくりしていってね!!!」
お母さん霊夢が挨拶する。
普通のゆっくりならここで喧嘩になるが、この三匹はこの人数とお母さん霊夢には適わない事を理解した。
「「「こんにちは!! ゆっくりしていくよ」」」
「いっしょにごはんをたべようね!!!」
そういって夕食を探しに出かけたお母さん霊夢。
どうやら今日の夕食はありつけそうだ。
ほっと一安心の魔理沙達。
「れいむあたーーく!!!」
「むぎゅーーー!!!」
一匹の子ゆっくりがパチュリーにタックルした。
本人は遊びのつもりだろうが、これを食らったパチュリーはたまらない。
「ゆっ!! ……おげぇーーー!! げぇーーーー!!!!」
口から大量の餡子を吐き出してしまい、意識が朦朧とするパチュリー、既に目の焦点は合ってない。
「ゆ……。むきゅ~~~……」
「ぱちゅりー!! まりさだよ!! まりさだよ!!!」
「れいむだよ!!! わかる? いっしょにゆっくりしようよ!!!」
「ゆっくり……ゆっくちじだがったよぉー!!!!」
それだけ言い残して絶命したパチュリー。
当然、魔理沙たちは怒り狂った。
「あやまってね!!! ぱちゅりにあy!!!」
「まりさ!! まりさ!!! まr……!!!」
子霊夢が全員で二匹の背中めがけてタックルしてくる。
「いだいよ!! なんで!! なんで!!」
「やめてね!! まりさたちいたいよ!!! ぱちぇりーにもあやまってね!!」
そう言って友の亡骸へと視線を移す。
そこには餡子を美味しそうに食べている子ゆっくりの姿。
「おいちいね!!!」
「おいちい、せなかおしたらとびだしてきたね!!!」
「もっとたべたいね!!!」
「ほかのふたりもおしたらべてくるかなぁ?」
「こんなあまいのがはいってるなんて、あのさんにんはにせもののゆっくりだったんだね」
「そうだね!! だったらいっぱいだしておかあさんにたべてもらおう!!」
そして何度も何度も背中にタックルを食らう霊夢と魔理沙。
幾ら丈夫なゆっくりと言ってもこれだけ食らえば話は別だ。
「ばじゃりーー!! ……まだいっしょにゆっぐりじようね!!」
「また、まりさとじどゆっくりじようね!!」
そうして仲良く餡子を吐き出し絶命する。
「いっぱいでたねぇ」
「はやくおかあさんかえってこないかなぁ」
紅魔館のメイド長は街の市場で買い物。
右側にはゆっくりれみりゃ。
嬉しそうに日傘を差しながらのお買い物だ。
「しゃくやー。れみりゃぷっでぃん欲しいの! ぷっでぃん!!」
ニコニコと微笑ましい笑みを浮かべながら咲夜に話しかける。
「はいはい、わかりました。それじゃあここでお待ちください。直ぐに買って来ますから」
「う~はだくかってきでね~♪」
遠ざかる咲夜の後姿を眺めながら声を上げる。
姿が見えなくなると興味は周りのモノへと向けられた。
「う~♪いいにおでぃ~♪」
意気揚々とそこまで歩いていく。
「うー!! たがぃー!!」
今度は背が届かなくて泣き出す。
「う~♪ れみりゃのはおはねがあったー♪」
まるでタケコプタ-をお尻につけたような飛び方で上昇するれみりゃ。
「う~れみりゃにははねがあるどぉ~♪」
そして、見えなかった屋台の上にご到着。
「う~? がぉお~た^べちゃ~うぞ♪」
山盛りお惣菜、その中のポテトサラダに手を突っ込んでグルグルかき回す。
粗方混ぜたベタベタの手で山盛りにつかみ口へ運ぶ。
口周りもマヨネーズ汚れがべっとりと付く。
「うーー!!! まずいーーー!! あまぐないーーー!!!」
自分の想像した味と違っていたため屋台の上で駄々をこねる。
尻を突き手足をばたばたさせている為、色々なものが落ちていく。
「うーーー!!! ぽいするの!! ぽい!!!」
そういってサラダの皿を落とす。
ガッシャーンと言う音と共に散らばったサラダを見てご満悦のようだ。
「うっう~♪ ほかもみ~んなぽいするの♪ ぽい♪」
周りの屋台から全ての食べ物を落としていく。
途中からは飛び上がって、出来損ないのタケコプターポーズで突っ込みながら落としていく。
「う~♪ れみりゃいらない♪ おいしくないからみ~んなぽい♪」
「おい! おれのやたいで……」
「やめろ! あれは紅魔館の中で飼われているゆっくりだ」
「そうだ、しかもメイド長が随分とご寵愛してるんだぞ」
「一家全員殺されても知らないぞ」
「ん……」
尻すぼみに覇気が無くなる男。
その間に、自分の周りにあるものは全て落とし終わったようで、近くにあった酒樽で手を洗うれみりゃ。
その後はさっきの場所で咲夜が来るのを待っていた。
「れみりゃ様、お待たせいたしました」
「うー。おぞーーい!!! あんまりおそいとた~べちゃうぞ~♪」
それだけ言ってひったくる様にプリンを奪い抱えながら食べ始める。
「う~ぷっでぃん♪ ぷっでぃんおいしい♪」
「ふふ、よろこんで貰えて何よりです。……それにしても喧嘩でもあったのかしら、随分ボロボロね」
「う~?」
「何でもございませんよ。それでは、咲夜は他用事がありますのでここでプリンを食べながらお待ちください。何か有ったら直ぐ駆けつけますので」
「う~♪ ぷっでぃんたべでまっでるぅ~♪」
咲夜が帰ってくるまで、人々は戦々恐々しながら、意気揚々としているれみりゃを見て過ごしたという。
散歩に出かけるとの前に三匹のゆっくりが歩いていた。
俗に言うゆっくりアリス、シャンハイ、ホーライという奴だ。
「こんにちは」
「コンニチィハァ」
「コンイチハー」
なかなか礼儀正しいゆっくりだ。
気分がよくなったのでポケットに入っていたお菓子をあげてみた。
「ゆっ!! おいしい!! とかいはのありすでもたべたことがないよ!!!」
「オイシィネ」
「オイシーネー」
喜んで貰えて何よりだ。
じゃあまたね、と立ち去ろうと思った矢先、ゆっくりアリスがズボンの裾を加えてきた。
「おじさん!! しんせつにされっぱなしじゃとかいはとしておおはじなの!!! おれいにおじさんのおうちをきれいにしてあげるよ!!!」
「アゲルヨォ」
「エゲルー」
なんだかこのゆっくりの気持ちを裏切るのも悪かったので家まで案内することにした。
「ここがおじさんのおうちだよ」
一人身の俺には大きすぎる一軒家だ。
「ゆ~。なかなかのおおきさだね! でもこのくらいのおおきさだったらすぐおわるよ! ありすにまかせて、おじさんはおさんぽのつづきをしてきてね!!!」
「でも、きみらだけじゃ重いものは動かせないだろ?」
「だいじょうぶたよ!! とかいはのきゅうじつはみんなさんぽにいくんだよ!! おじさんもさんぽにいって、ありすといっしょにとかいはになろうね!!!」
そういって三匹揃って家の中に駆け込んでいく。
しょうがない、散歩に行ってくるか。
直後にガッシャーンという物音が聞こえたような気がしたが気のせいだろ。
のんびりと散歩を満喫して家に帰ってきた。
玄関の、前にはゆっくり三匹の姿が確認できた。
「やぁ、掃除は終わったのかい?」
「おわったよ♪ ありすがとかいはのおうちにしてあげたよ♪」
「アリィスガカッコヨクシテゥレタヨォ」
「トカイハノオーチダヨー」
「そうかい。どうもありがとうね」
「おれいだからきにしなくていいよ、それよりおじさん!!」
おそらく怒っているのだろう、プンスカしながら言葉を続けてきた。
「あんなのみずがはいったいしをうえにおいてちゃあぶないよ!!! それにくろーぜっとはおようふくをいれるんだよ。あと、いらないものはひのなかにいれておいたから、もえていなかったらちゃんともやしてね!!」
「うん、わかったよ。どうもありがとうね。家でご飯食べてくかい?」
「いいよ、きょうはほしをみながらしっくにたべるってきめてたから。またこんどおよばれするね」
珍しいな、霊夢や魔理沙は喜んで食べていくのに。
もう一度お礼をいって家の中に入る。
そこには、割れた花瓶や壷が庭に出されて、仏壇の位牌、仏像、肩身の品などが囲炉裏にくべられ燃え上がっており、家中の衣類が仏壇に押し込まれ、灰まみれになっていた。
台所の食料もすべて床にぶちまけられ、そこ一面、いや家中にに砂が敷き詰められていた。
「おじさんよろこんでくれるかな? いなかのひとにはきばつすぎたかもしれないね?」
「ソンナコォトナイヨォ」
「アリスノコーディネートハカッコイイヨー」
「うん!! だってありすはとかいはだもの!! はやくかえって、でなーにしようね!!!」
「「「ゆっくりでなーにしようね!!!」」」
紅魔館近くで山菜を取っていると、屋敷で飼われているゆっくりれみりゃが飛び出してきた。
大方、また勝手に抜け出してきたんだろう。
豪華そうな日傘をさして本人はセレブのつもりなのかねぇ?
「う~♪ うー!! それにがいからだめー!! ぽいするの!!! ぽい♪」
「はぁ、何を言っているんだこいつは? 煩いよ肉まん」
傘を畳んで駆け寄ってきたれみりゃ.
その傘を取り上げて額に突き刺す。
「う゛あ゛ーー!!! れみりゃのがさがぁー!!! れみりゃのあだまがーー!!!」
両手で必死に抜こうとしてるけど完璧に貫通してるんだから抜けはしない。
粗方山菜も取り終えたので、肉まんを担いで家へ戻る。
「うー? はなじでー!!! おうじにがえるー!!! さくやにいいつでげおまえをいじめてもらうのー!!! そのあとでぷっでぃんをもらうの!!!」
「ぷっでぃん、ぷっでぃんやかましいなぁ。そんなモンばっかり食ってるから頭まで柔らかくなっちゃったんじゃないのか?」
「れみりゃはばがじゃないもん!!! おねえざんのばぁ~が!!!!」
これ以上は我慢我慢、どうにもこれは美味しいらしいから今日の夕飯にでも出してみよう。
他の調理をしている間は橙にでも遊ばせておこう。
「うーざぐやー!! はやぐごいつやっづげでよー!!! ぷっでぃんもだべだいよー!!!」
家に帰って(主に紫様に)食べられる直前まで。
「ざぐやー!! こいつらやっづげてよー」
「うっぎゃーーー!! いだいどーーー!! さぐやーーー!! たすけるんだどぉーーー!!!」
と呟いていた肉まん、叫び声がたいそう気に入った紫様はまた取ってきてねと仰られていた。
最終更新:2008年09月14日 09:25