その他 ゆっくりとは…

「ゆっくりしていってね!」
家に帰ると丸っこい人面饅頭が一個あった。
俺は饅頭が喋るという事実以上にその言い草に呆れた。
「はふぅ…ちみたち、ゆっくりしていってねだって?」
私はゆっくり溜息を付いて間を取りながら言った。
「ゆっくりしていってね!おじさんはゆっくりできるひと?」
すぐさま人面饅頭が喋った。
俺はあきれ果ててまた溜息を付いた。
「むっふぅ~ん、ちみたちそれでほんとにゆっくりしてるつもり…かい?」
私はゆっくりと饅頭に語りかけた。
「ゆ!?れいむはゆっくりしてるよ!あやまってね!」
「ふぉぅ…そんなに急いで喋って…君達のどこがゆっくりしているというんだい…?」
私はこれでも地元一ゆっくりした男を自負している。
だというのにこいつは家に入ってすぐさま「ゆっくりしていってね!」と叫んだのだ。
ゆっくり一を自負する私にはゆっくりを騙りながらそのせわしない動作にあきれ果てたのだ。
「ゆ!?れ、れいむいそいでないよ!ゆっくりしてるよ!」
私は懐からライターとタバコを出すと一本出して軽く口に咥えて
火をつけてぽぅっと燃えるタバコの先を眺めると軽く吸って一服した。
「ふぅ…だからゆっくりはなしてくれといっているんだよ
まったく…ちみはせわしない饅頭だね」
「れ゛い゛む゛ばゆっぐり゛ぢでるのおおおおお!!!」
「全く…急に泣き出さないでくれたまえ…」
突然涙を流す饅頭に軽く首を振ってこれは駄目だという意思表示をする。
それから軽く伸びをして欠伸をすると窓の外を眺めた。
「一体…ちみの何がゆっくりしていると言うんだね…?」
「ゆ゛っぅぅうう!!れいむのゆっくりしてるところ
みせてあげるからおじさんはちゃんとあやまってね!!!」
「ふぅぅんむ、いいでしょう…ちみがゆっくりしているのがわかったらきちんと謝罪しよう」
私は手を組んで、チェアーをリクライニングに倒すとそこでゆっくり饅頭の様子を眺めた。
饅頭はそこでぷくぅ、と顎を膨らまして目を細めるとじっとし始めた。
あれがあの饅頭のゆっくりなんだろう、ナルホド確かにゆっくりしているかもしれない。
私は読書でもしながら一緒にゆっくりし始めることに決めた。

三時間後。

「い゛づまでごうぢでればいいのおおおお!おなかずいだあああ!!!!」
私がチェアーを窓際に動かして一時間ほどゆっくりと日光浴をし始めたあたりで
突然饅頭がわめきだした。
私はやれやれと左右に首を振った。
「せっかくゆっくりしていたというのに…ゆっくりできない無粋な奴だな…」
「どおぢでええええ!!!どおぢでれ゛い゛む゛がゆっぐりでまげぢゃうのおおおおお!?」
「ちみのそのせわしない半生を見返して…ゆっくりとは何かをもう一度ゆっくり考え直したまえ」
私はそう言うと再び日光浴を再開しゆっくりした。
「ゆぐうううううう!ゆ゛っぐりい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!!」
すると饅頭は数分ばかり頭を悩ませると餡子を吐いて果てた。
なるほど、ゆっくりとは死ぬこととみつけたりか。
最後の最後で中々見所のある饅頭だった。
私はうとうとし始めそのままゆっくりと昼ねをはじめた。













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最終更新:2008年09月14日 09:39
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