ある所にお兄さんとお姉さんが住んでいました。
お兄さんは芝刈りに、お兄さんは川へ洗濯へと大忙しな毎日を送っていました。
二人は血のつながりはありませんが、とても仲の良い家族でした。
では、なぜ、お姉さんは働かないのでしょうか?なぜならそれは、お姉さんはきめぇ丸だったのです。
第1羽 きめぇ丸との出会い
ある雨の振る夜に夜道を歩いていると、どこからとも無く猫の声が聞こえて来ました。
普段なら気にせず通りすぎてしまうところですが、その時はなぜかその声が気になって仕方ありませんでした。
「にゃ~ん…にゃ~ん」
声のしたほうを見ると草むらの中に、一人の少女の姿を発見しました。
青年は少女を抱きかかえると慌てて自分の家へと帰っていきました。
うちに帰りぬれた着物を脱がせ、体を拭いてから布団に寝かせると少女の額に手を当て熱を測りました。
特に異常が無いことが判りほっと一安心した少年は、改めて彼女の顔を見つめてみました。
雨の隙間から差し込んだ月の光が少女の顔を綺麗に映し出しました。
その時、青年のフラグは無残にもへし折られました。
月の光に映し出されたその顔は少女と呼ぶにはあまりにも無骨でした。輪郭は大きくゆがみ、頬は分厚く、目は細く、
そして何よりも顔をかたどる全てが不細工、それはまさにきめぇ丸でした。
第2羽 きめぇ丸大地に立つ
きめぇ丸に出会った次の日の朝、青年が目覚めるときめぇ丸は、まだすやすやと寝ていました。
朝日に照らされたその顔は、昨日よりいくらかましに見えました。
青年はきめぇ丸の為に、朝食の準備を始めます。庵に火をつけ鍋を掛けそこでおかゆを作りました。
仕上げに醤油をたらし、味を調えます。同時に醤油のいいにおいが家の中に広がっていき、完成と同時にきめぇ丸が目を覚ましました。
「お、起きたか?体の調子はどうだい?」
青年の呼びかけにきめぇ丸は首を横に振って答えました。
「そうか…良くないか、とりあえずおかゆ位は食べれるよな?」
きめぇ丸はその声にも首を横に振ってこたえました。
「大丈夫か?まあ、つらいならそのまま寝てていいぞ。水はのむよな?」
青年が水の入った湯飲みを差し出すと、きめぇ丸は一言だけ「にゅ~ん」と答えました。
青年が一人でおかゆを食べ始めると、きめぇ丸は物欲しげにその様子を見つめました。
しかし、青年が食べるかと聞いても首を横に振るばかりで、結局きめぇ丸は一口もおかゆを食べませんでした。
そのなやり取りが2日ほど続くと、青年はおかゆは嫌いなのかも知れないと思い始めました。
青年はきめぇ丸の為に様々な食事を用意しましたが、きめぇ丸がたべる事はありませんでした。
それどころか、青年が豪華な食事を用意するほど首を大きく横に振り、食べる事を拒否するのです、
ついに心が折れた青年は、きめぇ丸は水以外なにもいらないのだと納得しそれからは食事の変わりに飲み水を沢山用意していきました。
すると、きめぇ丸は「にゃ~ん、にゃ~ん」と大喜びで声を上げました。
第3羽 きめぇ丸と○○なことや××なことする!
きめぇ丸と心が通じ合ったと感じた青年はきめぇ丸をお風呂に入れてやることにしました。
拾ってきた日から一度もお風呂に入っていないきめぇ丸、まるで洗ってないオルゴーモンのような匂いを放っていました。
青年はきめぇ丸の為に熱いお風呂を沸かしてあげましたが、きめぇ丸はなかなか入ろうとしませんでした。
仕方が無いのできめぇ丸を抱きかかえて風呂桶のなかに入れてあげます。
きめぇ丸が湯船につかるしばらくすると、突然「ボボボボボボボボ」と意味不明な声を挙げだしました。
きめぇ丸は声を上げると共に脱力するかのように沈んでいき、口元までお湯につかってしまいました。
口から泡を吹いている姿を見た青年は慌ててきめぇ丸を風呂桶から出し、風呂でのぼせた時の対処をします。
きめぇ丸はそのままぐったりとし、しばらく動きませんでしたが、小一時間した所でいつものきめぇ丸に戻りました。
翌日、今度は昨日よりぬるめのお湯を沸かし、きめぇ丸をお風呂に入れてやります。
しばらく様子を見ていても昨日のようになりません。すこしほっとした青年はきめぇ丸に声をかけました。
「湯加減はどうだい?」
ブンブンブン
「ちょっと温いか?」
ブンブンブン
「もっと冷たいほうがいい?」
「にゃ~ん」
「…おまえひょっとして水風呂の方がいいのか?」
「にゃ~ん!にゃ~ん!」
「そうか、じゃあ、明日は水風呂にしてやるからな!楽しみにしてろよ!」
その日、青年ときめぇ丸はよりいっそう絆を深めました。
第4羽 きめぇきめぇグッバイ
青年との生活を続けるうちに青年にある変化が訪れました。
それまで、不細工だと思っていたきめぇ丸の顔が、今ではなんとも思わず、すれどころかどこかいとおしい程に感じていたのです。
それどころか、それまできめぇ丸を倦厭して青年の友人も今では頻繁に青年の家を訪れるようになっていたのです。
その日は青年とその友人で青年の家に集まり、質素ながらも酒盛りを交わしていた日でした。
円もたけなわになり、友人がそれぞれの家へと帰り始める頃、外は月の光に照らされて不思議な輝きを放っていました。
青年が友人を見送った後、ふときめぇ丸の方を見ると、きめぇ丸は夜空を見上げ深々と光り輝く月を見つめていました。
その横顔は、初めて会った時とは比べ物にならないほど美しく見え、青年は一つの決意を決めました。
「きめぇ丸、俺の嫁にな ら な い か」
きめぇ丸はその問いに答えること無く、じっと夜空を見上げています。
しばしの沈黙が当たりを包みます。青年の耳には自分の心臓の鼓動だけが響いていました。
「にゃ~ん」
青年の中で張り詰めていた空気が解け、ほっとため息がこぼれます。
青年は妻となったきめ丸に近づき後ろからそっとやさしく抱きしめようとしました。
その時!!
「ボボボボボボボボ」
突如きめぇ丸の着物から白い煙が噴出し、きめぇ丸の体がふわり浮きました。
煙は尚も勢いをまし、ものすごい勢いで上昇していきます。
「きめぇ丸!」
青年は突然の事に驚きながらも手を伸ばしきめぇ丸を捕まえようとしました。
しかし、天高く伸ばしたその腕と青年の叫びは空しく周囲に響き、きめぇ丸はそのまま空へと飛び去ってしました。
青年は、きめぇ丸が去った後も呆然と空を眺めていました。
きめぇ丸が見えなくなったその近くで今まで見えなかった星がキラリと光り、
青年の目からも涙が一粒キラリとこぼれ落ちましたとさ。
おしまい
あとがき
まずはじめに
_人人人人人人人人人人人人人人人_
> きめぇ!!! <
 ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
\ \\ ____ // / /
< __ _____ ______ >
< ,´ _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ 、_ イ、 >
< 'r ´ ヽ、ン、 >
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< i イ iゝ、イ人レ/_ルヽイ i | >
< レリイi (ヒ_] ヒ_ン ).| .|、i .|| >
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< L.',. ヽ _ン L」 ノ| .| >
< | ||ヽ、 ,イ| ||イ| / >
< レ ル` ー--─ ´ルレ レ´ >
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意味不明で終わってもあれなので最後にこのSSでもきめぇ丸の設定を描きます。
- 胴体付きのきめぇ丸
- 「にゃ~ん」と声を発するときは、嫌悪や否定の意味。
- 首を横に振るのは、喜びや肯定の意味。
- 「ボボボボボボ」は言葉で説明できるような言葉じゃない!
- かわいく見えたのは食事を貰えずやせてスマートになったから。
最終更新:2008年09月14日 09:40