ミスティア×ゆっくり系1 ゆっくりいじめ鰻篇 前編

 ミスティア・ローレライは、一晩の仕事が終わり、屋台を巣のそばへと引いていってから朝の眠りについた。
水を張ったたらいの中で眠っていた八目鰻はちょうど起き出す時間なので、多少の餌を与えておくことも忘れない。

             *       *       *

 山の向こうから太陽が完全に姿を現し、幻想郷の少女たちが朝食の用意をするために天狗の新聞を炉にくべ始める頃、ゆっくりまりさ達は今日の冒険を始めた。
 ゆっくりまりさ、ゆっくりれいむ、ゆっくりパチュリーは仲良し三人組。
先ほど木の洞(うろ)の中で目覚め、「今日もゆっくりしようね!」とお決まりの挨拶を交わしたばかりだ。
丘を下り、せせらぎで喉を潤した後、そのせせらぎにそって二匹は跳ね、一匹は体を引きずりながら進んでいく。
「うっめ!水うっめ!」
「ゆっくりいこうね!」
「むきゅー」
 初めて来るところでも、三匹一緒なら怖くなかった。時々蝶を捕まえては口移しで回し食いをする。
 日も昇り、本格的に朝食を食べたいと感じ始めたころ、ゆっくりれいむはがあるものを見つける。
 それは、ミスティアの屋台と、その脇に置かれた木箱だった。
「なんだあれ!なんだあれ!」
「ゆっくりあけてみようね!」
 好奇心旺盛なゆっくりまりさが箱に体当たりすると、木箱のふたがずれる。
 中にあったのは、屋台で出た残飯であった。
「うっめ!これめっちゃうっめ!!」
 迷わず口に含んだゆっくりまりさが喜びの声を上げる。
「おいていかないでー」
「ゆっくりしててね!」
 すぐに二匹も追いつき、三匹で力を合わせて体当たり。残飯は地面にぶちまけられる。
木箱の中に敷き詰められた新聞には自分たちと同じ顔をした少女の写真などが載っているのだが、見向きもしない。
「ゆっくり食べようね!」
「むきゅー、じゃあいただこうかしらー」
「うっめ!」
「うっめ!うっめこれ!」
 残飯をまき散らかしながら貪り食う三匹。やがて一足先に食べていたゆっくりまりさが一息ついて周囲を見回す。
すると屋台の陰になっていて見えなかった位置に、樽とたらいがあるのを見つけた。
「ゆっくりたべててね!」
「ゆっくりたべてるよ!」
 ゆっくりまりさは樽にまず興味をもったが、少女の顔よりふた回り大きい程度のゆっくりまりさの体ではその樽を見下ろすことはできなかった。
そこでゆっくりまりさは、いったん屋台にぶつかり反動を利用して樽に食らいつく。そして樽の上に昇ることに成功した。
「ゆっ!ゆっ!ゆっ!」
 喜んで樽の上で飛び跳ねるゆっくりまりさ。するとゆっくりまりさの足もとの板が一枚外れて下に落ちた。
もう一度ジャンプすると、もう二枚落ちた。中を覗き込むと、米の香りがした。
「ゆっくりいくよ!」
 気づけば、ゆっくりれいむとゆっくりパチュリーも樽のところに来ていた。
 まずゆっくりれいむを引っ張り上げ、そして二匹でゆっくりパチュリーを引っ張り上げる。
「なんだこれ!ふしぎだね!」
「ゆっくりなめてみようよ!」
「むきゅー!」
「ゆっくりなめてみようね!」
 中身――屋台で出す酒――へ舌を突っ込む三匹。中の水分を十分含んだ舌が、糸を引きながらゆっくりの口へ帰還する。
「からいね!」
「でもあまいね!ふしぎ!」
「むきゅー」
「ゆっくりあつくなってきた!」
「あつい!ふしぎ!」
 やがて全身がぽかぽかしてきて、なぜだか嬉しくなって飛び跳ねる三匹。何度も舌を突っ込んでは酒を吸収する。
 酒饅頭というには赤すぎる、ゆっくり三匹。
「ゆっ!ゆっ!」
 木箱にはうまいものがあった、樽にもうまいものがあった。ならばたらいにもうまいものがあると考えるのは、知能の低いゆっくりにも十分可能なことだった。
「ゆっ!ゆー」
 千鳥足というのであろうか、左右へとふらふら飛び跳ねながらたらいへ向かい、たらいの上に掛けられた白い布を口でくわえて取り去る。
 するとたらいの中では八目鰻が泳いでいた。
「なんかいゆよ!」
「ゆっゆりいゆよ!」
「おいてゆかないでー」
 すでにろれつが回らなくなっている二匹もたらいへとやってくる。
 そして三匹が八目鰻の踊り食いを始めるのにはそう時間はかからなかった。
「うっめ!めちゃうっめ!」
「いちばんうっめ!」
「むきゅー!むきゅー!」
 そして八目鰻を食いつくし、たらいの水も飲みした三匹はやがて眠くなってきた。
「ゆっくりおひるねしようね!」
「ゆっくりおやすみ!」
「むきゅー」
 最高に幸せな気分に包まれた三匹は、たらいの中で身を寄せ合い、幸せを三乗にしながら豊かな眠りについた。

             *       *       *

「何なの、これ・・・」
 下ごしらえのため起きてきたミスティアが見たのは、いたずらというにはあまりに度を越した光景だった。
 残飯はぶちまけられ、樽は破られ・・・八目鰻、そう、鰻は。
 たらいの中へ目をやったミスティアが見たのは、至上の幸せといった顔で眠る三匹のゆっくり饅頭っだった。
「こいつらが・・・!」
 ミスティアはゆっくりは別に嫌いではなかったし、残飯をくれてやることもあった。
 その頃はまだ数も少なかったゆっくりだが、最近では増えてきていると聞く。
しかし夜に活動するミスティアにはあまり縁のない話だった。・・・いや、そう思っていた。

 自分一羽で店を回し、そして少しずつ少しずつそのサイクルを大きくして来ていた。
わずかだが蓄えもでき、何を買おうか考えるのが楽しみであった。
 しかしこの饅頭たちはその楽しみを一瞬で奪った。
 許せない。
 こいつらが舌を突っ込んだ酒を客に出すことなどできない。
残飯を片づけていたら今日出す八目鰻を手に入れることもできるはずがない。
 ミスティアは自然と、杭(くい)を手に取っていた。
 出店する場所を確保するために打つ杭で、ロープを通せるように先端が輪になっている。

             *       *       *

「おきて、おきて」
 優しい声がする。
「おきて、おきて」
 ゆっくりれいむが目をあけると、ミスティアがほほえんでいた。
「ゆっくりしていってね!」
 その声に反応してゆっくりまりさ、ゆっくりパチュリーが目を覚ます。
「おねえさんはゆっくりできるひと?」
「むきゅー」
「いっしょにゆっくりしようよ!」
「ゆっ!ゆっ!」
 何が「ゆっくりできるひと?」だ。そう思ったがミスティアは笑顔を崩さなかった。
「ねえねえみんな、最近困ったことがあったんじゃないかな?」
「ないよ!」
「ゆっくりしあわせだよ!」
「むきゅー」
「そうかな?ここの樽に登るとき、苦労したんじゃない?」
 一瞬顔を見合わせる三匹。
「うん!」
「ゆっくりがんばったよ!」
「むきゅー」
 ミスティアの笑顔に黒いものが混じる。
「そっか、じゃあお姉さんがいいこと教えてあげる」
「ほんと!?おねえさんいいひと!」
「ゆっくりきいてあげるね!」

「みんなで力を合わせれば、高い所にも上れるんだよ」
 そう言うとミスティアは、まずゆっくりれいむを抱き抱え、樽の横に置く。
 そして次はゆっくりパチュリーを、その上に置く。
「むきゅー」
「ゆっ?」
 ゆっくりれいむは一瞬不思議そうな顔をしたが、自分の頭の上に誰かが載ってもさほど不満は感じないようだ。
 最後にゆっくりまりさをその上に置く。大きな帽子があるため一番上でないとバランスが取りづらいからだ。
そしてゆっくりのトーテムポールが出来上がった。
「ゆっくりのぼれるね!」
 樽が自分の目線の高さにあるのを見て、ゆっくりまりさが喜ぶ。
「これでもっとゆっくりできるね!」
 ゆっくりれいむもゆっくりパチュリーも喜び、樽の方を向いた瞬間。

「ゆ゙っ!!!」

 ミスティアは三匹を杭で貫いた。杭は地面に軽く刺さる。
「お゙ね゙え゙ざんびどい゙!」
「ゆ゙っぐりじよ゙うよ゙!」
「む゙ぎゅうううううう」
 悲痛な叫びを上げる三匹。
 人間なら絶命しそうなところだが、中の餡子の欠損はさほどないため三匹は十分に意識もあるようだ。
「あはははははは!串団子の出来上がりだ!!あははあははははははは!!!」
 高笑いするミスティア、やがて高らかに喜びの歌を歌い始める。
「これで~♪ 終わりと~♪ 思ったら~♪」
 ミスティアは杭を打つ木づちを高く掲げ、
「ゆ゙っ!!!」
 ゆっくりまりさのすぐ上にある、先端の輪に振りおろした。
「ゆ゙っ!!!」
 振り下ろした。
「ゆ゙っ!!!」
 振り下ろした。
 すでに杭は地中深く刺さり、そして輪に押されて三匹の饅頭は大きくひしゃげている。
「い゙だい゙よ゙おおおおおお」
「ゆ゙っぐり゙でぎな゙い゙よ゙おおお」
「む゙む゙む゙む゙む゙む゙ううううう」
 滝のように涙を流す三匹。
「ぎも゙ぢわ゙る゙い゙いいいいいいい」
 やはり餡子の中に太い金属の棒が通っているというのは異様な感覚なのだろう。もはや知ったことではないが。
「だんご♪だんご♪だんご♪だんご♪だんご三姉妹♪」
 喉を張り上げ歓喜の歌を歌うミスティアの瞳は濁り、そして喜びに満たされていた。

             *       *       *

 天頂に達した太陽がじりじりと三匹を焼く。
 陰を作っていた屋台はどかされ、ミスティアは鼻歌交じりで残飯を片付け終わるとどこかへ消えた。

「お゙ね゙え゙ざん!ごごがら゙だぢで!!」
「お゙ゔぢがえ゙る゙!!」
「む゙ぎううううう」
 口を開け閉めするたびに鈍痛が全身を支配するのだが、それでも三匹は涙の洪水を作りながら泣き叫んだ。
 白目をむき、脂汗で全身をてらてらと光らせる三匹を一瞥するとミスティアは一際大きな笑い声上げ去って行った。

「あ゙づいよ」
「のどがわいだ」
「ゆ゙っぐりがえりだいよ」
 最高にゆっくりしている状態にもかかわらず、三匹は死んだような眼をしていた。
 大きく口を動かすと杭で体内をえぐられ万力で頭を締め付けられるような痛みが走るため、つぶやくような調子で独り言が続く。
 ゆっくり饅頭といえどアルコールの分解には水を必要とするため、たちまち喉が渇くのだ。
 そのとき、
「う、うおおお、うおおおおおおおお」
 ゆっくりれいむが体を揺らしながらうなる。
体を揺らすたびに杭が体をえぐり全身に焼き鏝を当てられたような痛みが走るのだが、それでも体の中に存在する猛烈な気持ち悪さがゆっくりれいむを揺り動かすのだ。
 そしてゆっくりれいむが動くたびに杭が動き、残り二匹の体内をもかき回す。
「れ゙いむ゙ううう」
「む゙ううう」
「ゆ゙っぐりじでよ゙おおおお」
「でもぎも゙ぢわるいのおお」
 ゆっくりれいむを襲う謎の症状。
 そしてその症状はすぐに他の二匹にも伝染した。
「ゔわ゙ああああああああああ」
「む゙あああああああああああああ」
 三匹は結果として、バイブレーションするへしゃげ串団子となる。
 串はぶるぶると震え、そこに刺さった三個の団子は汗と涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながらのたうちまわるのだ。
「ゆ゙っ!ゆ゙っ!ゆ゙がああああああああああああああ、ぐあああああああああああああ」

 ゆっくりの体内で蠢く存在の正体、それは八目鰻であった。
 口の中でしゃぶったあと丸呑みする習性のあるゆっくり達は、ご多分にもれず八目鰻も丸呑みしていた。
しかしそのときすでに消化器官の中にはアルコールがあったため、それで八目鰻は眠っていたのだ。
 幻想郷では鰻もアルコールに酔うのである。
 しかし三匹がアルコールを分解し終えたため、鰻は目を覚まし、体中を焼く酸の痛みからのたうちまわったのである。全身を杭で貫かれ、体がへしゃげた状態で体内で鰻がのたうちまわる。
 まさに極限状態であった。


(長くなったので後篇に続く)

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最終更新:2008年09月14日 10:38
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