ゆっくりパチェがマラソンさせられている場面を
たまたま上空を飛んでいたゆっくりみすちーが目撃していた。
すぐにでも助けてあげたいと焦るゆっくりみすちーだが、
少し離れたところには、とても静かな微笑みでゆっくり魔理沙を抱いている一人の女性が。
抱かれているゆっくり魔理沙は下を向いたままピクピクと震えてた。上空からでは表情はわからない。
少し近づこうと思ったゆっくりみすちーだったが、
ハッと アリスの表情とその裏に篭るどす黒い狂気渦巻く何かを感じ取った。
(ここで私が助けに行ってもゆっくりところされちゃう!!)
ゆっくりみすちーは急いで親友のゆっくりあややに相談しに行った。
その後、ゆっくりあややの調べでゆっくり霊夢がアリスに殺されてしまったことや
ゆっくり魔理沙が酷い虐待を受け続けていることが明らかになる。
この事実を知った2匹のゆっくりは、幻想郷中の仲間にこの事を知らせた。
「魔理沙をあいつから助けよう!!」
「魔理沙をゆっくりさせてあげよう!!!」
仲間思いのゆっくり達が 足こそ無いけど皆立ち上がった。
湖で氷精と遊んでたゆっくりも、
紅魔館の裏で一方的な鬼ごっこをしていた姉妹のゆっくりも、
白くて巨大なゆっくりも、
春とともに嫌な顔でやってくるゆっくりも、
半分幽霊のゆっくりも、
竹林の腹黒いゆっくりも、
ちょっとキモい顔のゆっくりも、
ネトゲー中毒のゆっくりも、
花畑の隣で農業を営んでいるゆっくりも、
そいつに無謀にも蹴りを入れるゆっくりも、
年中飲んでいるゆっくりも、
魔理沙も知らない地中のゆっくりも、
そしてアリスにそっくりなゆっくりまでもが、
みんなみんな力を合わせて、仲間の救出と復讐を心に誓った。
争い事を嫌い、平和にゆっくりする事を好むゆっくり達が戦いを決めた。
ゆっくり霊夢が殺された、あの日から1週間。
遠くから夜雀の歌声が聞こえる。星がゆっくり瞬く満月の夜。
アリスの家の灯りが消えるのを、
河童からこっそり借りてきた光学迷彩スーツを纏ったゆっくりにとりが確認した。
音が立たないようゆっくりと敵陣から離れ、待機している仲間のところへ戻る。
アリスの家から約1km離れたところにある小さな洞窟。
そこには幻想郷中から集まったゆっくりがびっしり集まっていた。
この小さな洞窟は魔法の森に元からあったもので、
大きさやアリスの家への距離が丁度いい隠れ家という事でゆっくり達がここに集合したのだ。
「灯りが消えたよ!」
自分達の存在が周囲にバレないよう、エクスクラメーションマークが1つで収まるような小声で仲間に伝える。
「みんなそろそろ準備してね! 魔理沙を助けるよ!」
将軍役に抜擢されたゆっくりえーりんの合図で、待機していたゆっくり達が武器を持つ。
武器といっても、木の枝やら尖った石やらいまいち殺傷性のないものばかりだが、
多分ゆっくり達は真面目だ。
マーガトロイド邸の照明が消えてから約30分後。アリスは自分のベッドで眠り始めていたが、
ゆっくり魔理沙は窓際でガラス越しに満月を見つめていた。
ちょっと潤んだ瞳で、じっと満月を見つめていた。
大きなお月様に映って見えるのは、
今は亡き親友達、ゆっくり霊夢とゆっくりパチュリーの顔。
もう自分の下にはやってこない、平和で楽しくてゆっくりできた日々。
みんなでちょうちょを追いかけて、
ぽかぽか原っぱでお昼寝して、
そんなゆっくりした日々が、ゆっくり魔理沙が見たお月様には映っていた。
とっても綺麗だけど、決してとどかないお月様に映っていた。
「う・・・ ゆ゛・・・・・」
また、泣きたくなった。
「れぃむ・・・ ぱじゅりぃ・・・・・
いやだよう・・・ ゆっぐり・・・ じたいよ・・・・」
(大丈夫! もうすぐゆっくりできるよ!!!)
突然、どこからか声が聞こえたような気がした。
窓からあたりを見渡すと、魔法の森には場違いな可愛らしい花の咲いた茂みがもぞもぞとこっちに来ている。
しかもそれは1つじゃない。いくつもの場違いな茂みが、アリスの家を囲うように揃い、
そしてゆっくりもぞもぞと近づいてきているのだ。
そんな無意味な擬態で敵陣へ攻め込む兵に気づいたのは
囚われの身であるゆっくり魔理沙と、それを監視していた冷たい人形1つ。
「シャンハーイ!!シャンハーイ!!」
上海人形の警戒警報にアリスが目覚める。
それとほぼ同時に、ゆっくり達は擬態を脱ぎ捨て、敵陣へと飛び掛った。
「ゆっくりしね!!!」
ゆっくりフランの、おそらくこの軍の中では破壊力のある方であろう突撃が玄関の扉を貫いて小さな穴を空けた。
「な、何よこいつら!?」
「魔法使いめ!! 魔理沙をゆっくりさせろ!!!」
その穴から雪崩れ込む様々なゆっくり達。
寝巻きのまま驚くアリスだが、すぐに自分の危機を理解し、スペルカードを手に取り応戦できる体制をとった。
その様子をゆっくり魔理沙は震えながら見ていた。
体が震えて、見ている以外に何もできなかった。
みんなが 助けに来てくれた。
見ず知らずのゆっくり達が 助けにきてくれた!!
でも・・・
誰かに助けを求めると、その誰かが不幸になってしまう。
ゆっくり魔理沙の心配通りの出来事が目の前で繰り広げられていた。
アリスと上海人形の放つ弾で、簡単に吹き飛ばされていくゆっくり達。
決死の思いで枝やら石やらを投げつけるが、体制を整えたアリスに通じるわけがない。
ダメだ・・・
もうダメだよ・・・・
この人に逆らっちゃ ゆっくりできないよ・・・・
ゆっくり魔理沙は、また泣きたくなった。
武器はほとんど投げつくしてしまい、覚悟を決めたゆっくり兵が、アリスに向かって体当たりを仕掛ける。
小さな弾一発で撃墜される。
被弾して吹き飛び、壁にべちっと叩きつけられる。
覚悟、突撃、被弾。
覚悟、突撃、被弾。
何十匹ものゆっくりとたった一人の魔法使いが、そうした戦いを続けていた。
アリスが実力を全然出していないことを、ゆっくり魔理沙はよく知っていた。
人形1体を使うだけでこちらの攻撃が完封されてしまうのだから、
今棚に眠っている何体もの人形が動き出したら、どうなってしまうだろうか。
ゆっくりを迎え撃つアリスの顔は、いつの間にか子供と遊ぶときような笑顔になっていた。
「やめて!みんなをいじめないで!!」
必死にアリスに叫ぶゆっくり魔理沙。
それに気づいてか気づかずか、アリスは魔理沙の頭をわしっと掴み、ゆっくり兵達につきつけてこう言った。
「ふふふ、ゆっくりの皆さん。今から魔理沙が大切なお話をするそうよ。
よーく聞いてあげてくださいね。」
急な展開にゆっくり魔理沙も、ゆっくり兵達も驚く。
だがこの時、魔理沙はアリスに何を求められているかわかった。
そしてその要求通りにしなければ皆がどうなってしまうかも理解した。
「う・・ う゛う・・・ み みんな゛・・・
わ わだじは・・・ 今 じあわぜでずから・・・・」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で語るゆっくり魔理沙。
今自分の右手にいるそれに、アリスは悦び「ふふふ・・・」と小さく口から漏らしている。
「でずがら・・・ みんな゛・・・・」
大粒の涙が、床に滴り落ちている。
「アリズに・・ め、迷わグ・・・ かげないで・・・・」
ゆっくり兵達が、静かな瞳で魔理沙を見つめる。
「ゆ゛ ゆっぐりじで・・・ いっ・・ いっで・・・・」
「ゆっぐり・・・ じ・・・ で・・・・・・ 」
( (みんなで一緒に ゆっくりしようね!!!) )
!!?
突然、聞き覚えのある声が聞こえた。
懐かしくて、暖かくて、もう二度と聞けないと思ったあの声・・・・
ゆっくり霊夢とゆっくりパチュリーが そこにはいた。
ゆっくり霊夢とゆっくりパチュリーは、そっとゆっくり魔理沙に近づいて、涙をそっと舐めとってくれた。
( (魔理沙、今度こそゆっくりしようね!!!) )
「・・・え?」
( (今ここで頑張ったら、 こんどこそみんなでゆっくりできるね!!!!) )
「うん・・ そうだね!今度こそ みんなでゆっくりしたいね!!」
( (そう、だから今は・・ ) )
「どうしたの?魔理沙。」
目を閉じて、眠るように動かなくなったゆっくり魔理沙をアリスは軽くゆする。
「今度こそ・・・」
「え?」
( (・・・だから今は、ゆっくりがんばってね!!!) )
「今度こそみんなでゆっぐりずるんだああああああああああああ!!」
アリスの手を振りほどいたゆっくり魔理沙が、アリスの咽喉におもいっきり噛み付いた!
「があああっがっがああっごおあああ!!」
いきなりの魔理沙の襲撃。 喉を噛まれ悲鳴を上げるアリス。
「ご・・ この饅頭がぁ!!」
魔理沙を何とか振りほどき、思いっきり投げて壁に叩きつける。
アリスの表情には、さっきまでのような笑顔は全く無い。
そしてこのチャンスをゆっくり兵は見逃さなかった。
「ピチューンしていってね!!!」
ゆっくりグルがアリスの後頭部から思いっきり蹴りをぶちかます。
蹴りは見事に命中し、アリスはバランスを崩した。
ゆっくりグルに続き、他のゆっくり達も一斉にアリスに飛び掛る。
倒れたアリスに何十匹ものゆっくりが乗っかり、これでもかこれでもかと踏み、噛み、石で抉りと畳み掛ける。
アリスがダメージを負った事で上海人形も行動が乱れ、その隙にゆっくりルーミアとゆっくりゆゆこが食い壊した。
「や・・・や゛め・・・ やめで・・・・・」
ゆっくり兵達に埋もれながら助けを請うアリスだが、勿論その助けの声が聞く者は誰もいない。
その光景をゆっくり魔理沙はじっと見ていた。
さっきまでの震えていたゆっくり魔理沙とは違い、明日ゆっくりできることを信じているゆっくり魔理沙だった。
「魔理沙!今のうちにこっちへ!!」
ゆっくり魔理沙が声の方向 壊れた玄関扉の方を向くと、司令塔であるゆっくりえーりんの姿があった。
えーりんに言われるがままに家の外へ出る。
暗くてよくわからなかったが、家の側の大きな木の上に、これまた大きな丸い物体があるのをゆっくり魔理沙は見た。
「みんな、撤収! 撤収~!!」
ゆっくりえーりんの号令で、アリスに群がっていたゆっくり兵は一斉に家の外に逃げた。
アリスの攻撃で気を失っていたゆっくり兵は、別のゆっくり兵が担いで持っていった。
「ガハ・・・ ハァ・・・ ハァ・・・」
刺し傷噛み傷だらけで自室に大の字で倒れているアリス。
その目には先程のゆっくり魔理沙のような涙が溢れている。
「なんで・・・ な゛んで わだし・・ だげ・・・・・ ハァ・・・・ ハァ・・・・」
「無様だね!! なんでアナタはこんな目に遭うんだろうね!!!」
窓の外から、ゆっくりアリスが傷だらけのアリスに話しかけていた。
「な・・ な゛によ・・アンダ・・・」
「それはね・・
アナタがひとりだった結果がこれだよ!!!」
それだけ言い残して、ゆっくりアリスは逃げていった。
(ふん・・ 何がひとりだった結果よ・・・!
みんな魔理沙のせいよ・・!魔理沙があんな奴だから!魔理沙が私よりも紫もやしなんかへ行くから!
魔理沙が腋巫女ばっかりに構うから!!
魔理沙が!! 魔理沙が! 魔理沙が!!!)
ずるずる・・ ずるずる・・・
嫉妬心渦巻くアリスの上方。マーガドロイド邸の天井のさらに上から、麺をすするような音が聞こえた。
「すぐおいしい・・ すごくおいしい・・・♪」
(な、何よこの歌・・・)
とアリスが思ったのも束の間
巨大なゆっくりレティが木から飛び降り
家屋の天井を貫いて
そして
大の字で倒れているアリスの上に
・
・
・
魔法の森の奥深く、
七色の人形遣いと呼ばれていた魔法使いが住んでいた屋敷は、
今ではゆっくり達の遊び場となっている。
寒い日は暖炉に火を点して、みんなで持ち寄った材料で暖かいシチューを作るのだ。
雨で外じゃ遊べない日には、やっぱりみんなで集まって楽しく歌でも歌うのだ。
あまりにもゆっくりとしたこの屋敷には、湖の氷精や蛍の妖怪、近所の魔法使いなどがたまに遊びにやってくる。
以前ここに住んでいた者が話題になることはあまりない。
不思議なことに、この屋敷には天井に大きな穴が空いた部屋が1つある。
その部屋には2つのお墓があって、1つには赤と白の花が、もう1つには紫色の花が供えられている。
黒い帽子をかぶった金髪のゆっくりが毎日やってきて供えているとの噂だ。
部屋の中にありながら、太陽の光も月の光もよくあたるこの2つのお墓には、
春先になるとちょうちょが近くにゆっくりと集まってくるらしい。
そう、ここは誰もがゆっくりできる場所。
「おーい、ゆっくり私! 今日は友達を二人も連れてきたぜ!」
「全く、やけに図書館から連れ出したがるから何かと思えば。
・・・でも確かに凄い数ね。紅魔館の裏にも何匹かいるけど比べ物にならないわ。」
「はー、これだけの人がうちにお賽銭入れてってくれないかしらね。」
「みんなこんにちは!! 今日もゆっくりしていってね!!!」
End
最終更新:2008年09月14日 10:51