「ゆっくりしていってね!!!」
ドンッ
ビリリッ
なんとお気に入りの服が破れてしまった。朝着替えた直後に
ゆっくりがじゃれついてきて、尻餅をついた結果がこれだよ。
「ゆゆっ!おねえさんころんでる!!おっかしい!!ゆっくりころんでいってね!!!」
「―――黙りなさい」
調子に乗って騒ぐゆっくりを黙らせる。流石に都会派は格が違った。
「あーあ、これじゃまるで霊夢ね」
見事に腋が丸見えだ。一部の奇矯な趣味を持った者ならそれもファッションとして受け入れられるのだろうが、私には無理だ。
都会派でセレブな私的に腋丸出しというのはおへそを出しているのより恥ずかしい事だ。ぶっちゃけ半裸のようなものだ。
しかもこの服は母(のような人)がわざわざ繕ってくれた大事な一品だ。
当然、このような事をしたゆっくりにはしかるべき罰を与えねばならない。
「ねえゆっくり。あなた、無残に破られたお洋服の気持ちが分かるかしら?」
「わからないよ!わからなくてもゆっくりできるよ!!」
「そうよねえ。でもゆっくり。お洋服って、とってもゆっくりしている物なのよ。あなたも、なりたくない?」
「ゆっくりできるの!!?ゆっくりしたい!!まりさもゆっくりしたいよ!!」
「分かったわ。準備するから少し待ってなさい。ふふっ」
我ながら天才的な閃きだ。今まで何百匹もこいつらで遊んできたけど、これは今までに無い発想だ。
早速人形を作る作業場へ向かい、準備をしてゆっくりを呼びつける。
「じゃあ、そこの台でじっとしていて」
「ゆっくりするよ!!」
「上海蓬莱、お願い」
「シャンハーイ」「ホウラーイ」
「ゆゆっ!くすぐったいよ!!」
二人にゆっくりを押さえてもらう。
そして、以前リュウグウノツカイと遊んだ時にヒントを得て新しく作った人形を呼び出す。
「じゃあお願いねカッキー」
「イヤッホーゥ!」
カッキーは上海や蓬莱よりも一回り大きい人形で、可変ギミックを内蔵してある。
その全身には、ドリルが内蔵されている。今回のような作業にはぴったりだ。
「ギィィィガドリルブレイクゥゥゥゥ!!」
「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!!!」
べちゃべちゃと激しく餡子を撒き散らしながらゆっくりに穴を開けて行くカッキー。
無論、都会派な私は帰り餡など浴びていない。その為の雨合羽です。……可愛くない?雨合羽。
頭まで掘り進んだ所で一旦止めさせる。まりさは激しくもがいているが上海蓬莱の握力は108㌔あるのでほどけない。
「パンツアカイッス!!」
「シャシャシャシャ、シャンハーイ!!!」
「あらあら駄目よカッキー。女の子にそんな事言ったら。上海に謝ってね」
「イ、イヤッホーゥ」
「シャ、シャンハーイ」
「ゆぐっ……どおぢで、ごん゛な゛ごどずる゛の゛お゛ぉ゛ぉ゛……」
「だって、あなたお洋服になりたいんでしょう?だからわざわざそうしてあげてるんじゃない」
「ま゛、ま゛り゛ざお゛よ゛う゛ふぐな゛ん゛がい゛い゛!ゆ゛っぐり゛じだい゛い゛ぃ゛ぃ゛!!」
「お洋服がいい?そうね分かったわ。じゃあカッキー。次お願い」
「イヤッホーゥ!!チョウギンガ!ギガドリルブレイクゥゥゥゥ!!」
「ゆ゛っっっぎい゛い゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!?ぃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
次にさっきとは違う方向に穴を掘らせる。結構な量の餡が飛び散っているが、この程度で死なないことは確定的に明らかだ。
貫通した所でまた止めさせる。とりあえずカッキーの出番はここまでだ。
「もういいわ。お疲れ様カッキー。お風呂場で汚れを落としたら休んでいいわ」
「パンツアカイッス!!イヤッホーゥ!!」
「ホホホホ、ホウラーイ!!!」
「まったくしょうがない子ねカッキーは。まだ小さいから仕方ないのかしら」
「ホウライ!ホウラーイ!」
「ふふ、ごめんね蓬莱。後でちゃんと言い聞かせておくから」
「ゆ゛っぐ…ゆ゛っぐい゛…じだい゛よ゛ぉ゛……」
穴を空けられ餡子も減ってペラペラになったゆっくり。その声にも張りが無い。
次は内側の加工をしないと。一応その前に補給をしておいた方がいいかな。
「上海、オレンジジュースをあげて頂戴。蓬莱は貯蔵庫から皮を持ってきて」
「シャンハーイ」「ホウラーイ」
「お゛、お゛ね゛え゛ざん゛……ゆ゛っぐり゛、ざぜでよ゛お゛ぉ゛」
「だから、私はあなたの言う通りにしているだけよ?何がそんなに不満なのかしら」
「ゆ゛っぐり゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛……」
「うふふ、かーわいい」
「シャンハーイ」「ホウラーイ」
「二人ともご苦労様。じゃあゆっくり。オレンジジュースをあげるわね」
「ゆ゛っ!ジュースのみたい!ゆっくりのませてね!!」
途端に元気になるゆっくり。先程までのは大袈裟に痛がっていただけなのだ。
こいつらは人形程の知恵すら無い癖にそういった媚の売り方だけは心得ている。それは私が一番知っている。
「はいどうぞ」
「ゆぶっ!っぶは!もっとゆっくりのませてねぇっほ!!ぶほっ!おえっほ!!」
「あらあらそんなに慌てて飲んじゃって、元気がいいのねえ。何か良い事でもあったのかしら」
1リットルほど口に流し込む。これで次の処置にも耐えられるだろう。
死なれてしまっては、元も子も無いのだから。
「じゃあ蓬莱、上海と一緒に皮を中へ入れて」
「シャンハーイ」「ホウラーイ」
「ゆ!それはなあに!?なんなのおねえさん!!!」
「それはゆっくりまりさの皮よ。あなたのお母さんだったかしら。一緒になれて良かったわね」
「お゛、お゛があざん!!?お゛があ゛ざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん!!!」
「そんなに喜んで貰えて嬉しいわ。わざわざ保管しておいた甲斐があるというものね」
言いながら、ゆっくり同士の皮を縫い合わせて行く。丁寧にやらないと癒着しないので非常に難しい。
多分こんな事が出来るのは私くらいのものだろう。それとも永遠亭の薬師ならできるのだろうか。
「ゆぐぐぐぐぐぐ!!や゛め゛で!!はや゛ぐや゛め゛でね゛!!ゆ゛っぐり゛ざぜでよ゛!!!」
そんな声に構っている余裕は無い。もし癒着しなかったら全てがパアだ。そうなったらなったで、別のおしおきをするだけだが。
三十分も経っただろうか。とりあえず縫合は終えた。ゆっくりはもう体力が残っていないようでぐったりしている。
まあ、ジュースにでも浸しておけばいいだろう。随分と疲れたし、とりあえず仮眠をとることにする。
「二人ともお疲れ様。そこの皿にジュースを注いでそいつも入れておいて。逃げられないように糸で固定するから」
「シャンハーイ」「ホウラーイ」
「…………」
喋る気力も無いのか。まあいいや。疲れたのは私も同じだ。
これで相手が魔理沙ならもう少し素敵な展開も想像できるのだけれど。