自分の苦労が報われた。そう人が思うのはどんな時だろうか?
小さい子供ならテストで100点取ったとか、かけっこで1位になったとかだろう。
学生なら成績が学年ベスト10に入ったとか、大会で入賞したとかだ。
大人なら仕事で昇進できたとか、給料が上がったとか、まあ人それぞれだ。
でも、今の俺はどれも違う。
ゆっくりが死んだのだ。飼っていたゆっくりれいむが。
念のため言っておくが、俺が好きで飼っていたわけじゃない。
こいつは、亡くなった俺の母親が大切に育てていたゆっくりだった。
親父も死んでも一緒に住もうと言ったのに、ずっと母親は「迷惑になるからいい」と俺に断っていた母親が飼っていた。
別に結婚してるわけでもないんだし、迷惑だとも別に思わないと何度も言った。
それでも拒まれ続け、俺の母親は5年前に死んだ。老衰だった。
特に大きな病気もしなかった母親は、発見してくれた近所の人が言うには布団の中で本当に穏やかな顔で眠るように亡くなっていたらしい。
つまり、母親は天寿を全うしたわけだ。飼っていたゆっくりれいむを残して。
最初は加工場に引き取ってもらおうとも考えたけど、それは可哀想だと思って止めた。
母親が可愛がっていたのだから、こいつも自然に死ぬまで俺が飼ってやろうと思ったのだ。
すぐに後悔したけれど…
ゆっくりは我が強い生物だ。ブリーダーが躾けた奴ならまだしも、野生のゆっくりは人の言う事なんか聞く訳が無い。
そして、母親が飼っていたのは野生のゆっくりだった。
人に命令する、平気で我侭を言う、部屋を荒らす。何度も何度も潰したくなった…
馬鹿な子ほど可愛いという言葉があるが俺はそう思わない。少なくとも、ゆっくりにはそれは通用しないと俺は痛感した。
「ごはんもってきてね!!」
「へやがきたないからそうじしてね!!」
「のろまだね!! ゆっくりしすぎだよ!!」
「あじがこいよ!!」
「おなじものしかつくれないなんてくずだね!!」
「めしつかいのくせしてごしゅじんさまをにらむの? ばかなの?」
毎日毎日、れいむに俺はこんな事を言われてきた… 何度も潰したいって思った…
それでも、あの世で母親が見てると思ったら自然と我慢できた。
胃を痛め、薬も飲むようになった。
大嫌いだった残業が、気づけば誰よりも会社に残るようになった。
気づけば、安息の地が家ではなく会社になってることに気づいた。
そして、5年。5年も経った。
目の前には体が黒ずんでいるれいむがいる。ずっと飼っていたあのれいむだ。
最後れいむは俺に「またね」と言った。こいつなりの感謝の言葉だろう。俺はもう二度と会いたくないがな。
まだ開けてないゴミ袋を広げ、黒ずんでいるれいむを入れようと持ち上げた時あるものに気づいた。
小さな芽みたいなのが黒いれいむの頭から生えてきているのだ。
もしやと思い、黙ってみていると… 芽はどんどん伸びて蔓になり、その先に4つの小さいゆっくりをを実らせた。
尋常じゃない。普通植物型でもここまで早く実が付く事は無い。
あ、一匹はもう顔ができてる…
「おじさん!! これからもれいむがこきつかってあげるからちゃんとはたらいてね!! のろまはきらいだよ!!」
……気づいたら、俺は母親の大事にしていたれいむを殺していた。
いや、殺していたらしい。
何故なら、れいむの言葉を聞いてから俺は意識が無かったから分からないのだ。
介抱してくれた隣の人の話では、俺は涙を流し発狂していたらしい。
「ゆっくりの相手をして疲れちゃったんですよ。私も、一回そうなったことありますから」
隣の家の女の人は励ましなのか、そう言ってくれた。
今度しっかりお礼をしようと心に決め、今日は家に帰らせてもらう。
片付けはしておきましたと聞いていたが、本当に何にも無かったかのように家は元のままだ。
でも、部屋に入ると自分が何をしたか少し思い出した。
俺は、母親の大事にしていたゆっくりを、泣き叫ぶあの4つの実を…
握りつぶし、壁に叩きつけ、噛み千切り、踏み潰したのだ…
多分、天国にいる母親は悲しんでいるだろう…
仏壇の前に座り、俺は線香をあげた。心の中で母親に詫びながら…
終
こんな駄文を最後まで読んで頂き本当にありがとうございます!!
スレで幻覚でも妊娠するって出たのを見て、確かに
霊夢×ゆっくり系9&10 ゆっくり一家の生涯 『博麗神社編』
や
ゆっくりいじめ系867 あるゆっくりまりさの一生 中編
で幻覚で子供作れてるなあ…って思い、もしかして子供を一人で作れるのって
『寿命で死んだとき生まれ変わりみたいなのを自分で作るためなんじゃ…』って思ったのが今回書いた切欠です。
体が黒くなって朽ちるというのは、未成熟の個体が子供作って朽ちるのを参考にしました。
お目汚し失礼!!
by大貫さん
fuku2514.txt
最終更新:2008年09月27日 14:52