ある日、珍しい
ゆっくりが永遠亭で生まれた。
ゆっくりまりさの帽子をかぶったゆっくりれいむだ。
何度も確認したが、ゆっくりれいむは帽子を自分の物だと言い。
他の子どもに帽子のないゆっくりまりさはいなかった。
完全にこの帽子はゆっくりれいむのものだった。
母親のゆっくりれいむはその子を「まりさ」として育てた。
しかし、自我が強くなってくると帽子をかぶったゆっくりれいむは自分を「れいむ」だと主張した。
母親のゆっくりれいむは我が侭な所があり、
自分の思い通りにならない帽子れいむをゆっくりできない子としてリンチしようとしたが、
世話係の兎に阻止される。兎の報告で帽子れいむの保護が決まり、
一家はよりグレードの高い部屋に移送された。
母親れいむはお母さんのいう事を聞かないバカな子でも役に立つことはあるんだねと言っていたが、
その思いは大きく裏切られる。得意なゆっくりを出産した母体として移送後すぐに解剖され、
餡子や眼球、歯や口、髪や皮やリボン。ゆっくりを構成する全てのパーツは今も永遠亭の地下で保管されている。
復元すれば恐らくその顔は恐怖と激痛で大きく歪んでいるだろう。
他の姉妹達もそうだ。母親の隣で同じように解剖され保管されている。
帽子れいむは実験用のゆっくりが与えられる中ではかなりグレードの高い部屋でゆっくりしていた。
何度か実験をしたが、このゆっくりれいむはただのゆっくりれいむがまりさの帽子をかぶっているだけらしい。
そこで、帽子れいむとゆっくりまりさを掛け合わしてみた。
生まれた中に一匹だけ変わったゆっくりがいた。リボンをつけたゆっくりまりさだ。
このリボンまりさは帽子れいむと違った特徴を持っていた。
性格がれいむとまりさの特徴を持っていたのだ。母性と責任感が強いが、平均的なまりさに比べて少し頭が悪い。
八意永琳はその症状をケース582とし、資料に記載した。
人里にはガス灯が立ち並び、今度、妖怪の山までの鉄道が開通するらしい。
幻想郷ではまだ珍しいオープンカフェで珈琲を飲みながら永琳は人、いや妖怪を待つ。
「お待たせ、永琳」
「久しぶり、鈴蘭畑に変わりはない?」
「ええ、お陰様で」
落ち着いた服装の金髪の淑女はウェイターにブレンドのホットをオーダーする。
「昔みたいに大声で甘いものを注文するのかと思った」
「もう、何十年前の話よ。私がまだ妖怪になったばかりの話でしょ?」
「鈴仙と二人で嫌がるあなたを人里に連れてきたのよね。甘味処であなたったらあんみつを三杯も食べるんですもの」
ウェイターが持ってきた珈琲に何も入れずに飲み始める。
「ホント、成長したのね。メディスン」
永琳はニッコリ、まるで自分の娘が成長した様に感心するように笑う。
メディスンは照れ隠しに、あんな所にゆっくりがいるよ。と言う。
「もう、ゆっくりの研究はしてないの?」
「ええ、もうやりたい事は全てやってしまったわ」
「ところで、あれはゆっくり・・・何かしら」
ゆっくりまりさの帽子かぶった髪が紫のゆっくりありす。
餌を録に食べていないのかやせ細り、咳き込みながら道を跳ねている。
人里の大通りには路面電車が走っている。のろのろしていたゆっくりは路面電車に轢かれ生涯に幕を閉じる。
「さぁ、今はあんなのばっかりよ。数が減って近親相姦が増えてからは一気にね」
「ふぅん」
「パチュリーの所に私が書いた資料があるわ。それにケース582というのを探してみなさい」
しばらく昔話をした後、メディスンは紅魔館の図書館を訪ねる。
生憎、パチュリーは不在だったが、蔵書を共同で管理している古い友人を見つけ。図書館に入る事ができた。
「メディスン、あなたもこの図書館で働かない?新しいメイド長はどうも紅茶を淹れるのが苦手みたいで」
「あなたこそ、たまには魔法の森に帰ったらどうですか、魔法使いがいなくなってあの森、今はキノコの森なんて言われてますよ」
「あいつが眠ってる森らしくて良いじゃない」
また少し思い出話をして、永琳の資料を探す。
小悪魔に藻手伝ってもらい。やっとケース582という資料を見つける事ができた。
ゆっくりは交配する時にお互いの中身を交換する。
そのため中身が餡子のはずのゆっくりまりさからでも、カスタードのゆっくりありすが生まれるのだ。
そして、母体に入ったカスタードは通常なら蔦を通って実(中身の無いゆっくり)に入る事でゆっくりありすとなる。
ケース582では通常通りそれが行われなかった場合に発生する複合種に関する研究についてまとめる。
起こりは帽子れいむ(ゆっくりまりさの帽子をかぶったゆっくりれいむ)からである。
それまでにも性格がゆっくりまりさに告示したゆっくりれいむなどの報告はあったが、
容姿にこれだけ顕著に異常が見られたのは今回が初めてだった。
母親や姉妹を解剖し、餡子を採取したが、元々中身が同じであるゆっくりまりさとゆっくりれいむのためあまり大きな差は見られなかった。
次にゆっくりまりさとゆっくりパチュリーの番を100組用意し、複合種の発生について調べた。
500組中複合種が生まれたのは0組。次に生まれた子ども達による近親相姦を行わせる。
これは帽子れいむの母親が近親相姦実験に使用されていた個体であるため、近親相姦で何らかの異常が発生する可能性を証明するためである。
同じく500組のゆっくりまりさとゆっくりパチュリーの番を作る。すると100組中3組に複合種が誕生する。
続いて同じようにまた近親相姦を行う。すると100組中21組に複合種が生まれた。
ケース582追記
問題が発生する。昨今の人里の技術的進歩は目覚しく。
人は生活圏を森へと広げていった。
多くの森が切り開かれる。妖精はレティ・ホワイトロックに頼み、
霧の湖周辺の森を守ることを人間に約束させた。レティが動けない時は妖精のリーダーであるチルノと八雲の姓を貰った橙が問題に対処するらしい。
低級妖怪は蟲の王リグル・ナイトバグの呼びかけで、妖精たちと合流。その生活圏を確保した。
問題はゆっくりだ。多くのゆっくりは生活圏を失った。
妖精たちも向かいから付き合いのある妖怪は受け入れるものの、ゆっくりに対しては霧の湖に近づけることすらさせない。
次第にゆっくりの数が減っていく。それと同時に野生でも複合種が見られるようになる。
隠れる場所が減り、群を形成する事が困難になったゆっくりはどうやら家族内で繁殖を繰り返しているらしい。
このまま身体の弱いゆっくりパチュリーの特性を含んだ複合種が増えればゆっくりは何十年の間に全滅するだろう。
「あー、専門的な用語が多すぎて概要しか分かんない・・・」
頭を抱えるメディスンに見かねたアリスがハーブティーを入れながら助言する。
「永琳の所に行けば良いじゃない」
「読んで分からないものは聞いても分からないわ。それに」
「それに?」
「そろそろ自立する頃じゃない」
その言葉にアリスはニッコリ、まるで自分の娘が成長した様に感心するように笑う。
~あとがき~
ラストはごめんなさい。
今の幻想郷から少し時間が経った幻想郷のお話です。
時間の経過が出るように、少し悲しい。物寂しい話をしています
その反面、八雲橙やそれぞれのリーダーになってチルノ、リグル。成長したメディスンには少し胸が躍ります
by118
最終更新:2008年09月28日 20:59