子供たちが誘拐されてから一週間後の朝、れいむは自分のベットで寝込んでいた。
ベットとして使ってる専用の箱は、れいむとパートナーのまりさの二人が寝るには明らかに大きかった。
家族全員で寝るためにおにーさんに作ってもらったものである。れいむはそのベットで布を全身に被り、ずっと塞ぎこんでいた。
目を瞑るたびに子供たちが攫われたシーンが浮かんできた。もう何日も睡眠を取ってないなかった。食事も喉を通らない。
ふっくらとした体形は痩せ細り、目も虚ろになっていた。
「れいむ・・・おにーさんがみつけてくれるよ!だからしっかりごはんむしゃむしゃしようね!」
まりさがクッキーを持ってきた。まりさは誘拐された日から、毎日朝から晩まで子供たちを探していた。
相当疲れているだろうが、その疲れを微塵も表に出さずにれいむを毎日励ましていた。
「ゆ・・・わかったよまりさ。れいむむしゃむしゃするよ。」
喉から辛うじて出した声で返事を返すれいむ。そのままベットから出ると、食べやすく二つに砕かれたクッキーをむしゃむしゃと食べ始めた。
美味しいクッキーの筈なのに全く『しあわせー!』にはならなかった。
ご飯を食べ終わったころ、
「ただいま。」
「
ゆっくりおじゃまするよ!!!」
おにーさんの声が聞こえた。もしかしたら子供たちが見つかったのかもしれない。
なにかゆっくりの声が聞こえた気がしたが気にならなかった。
「ゆゆ!いまいくよ!れいむもはやくいくよ!」
まりさはれいむの後ろを押して、声のする玄関の方へ向かっていった。
その日の昼、ドスは子供たちと群れのみんなと近くの川に来ていた。ドスは子供たちに水の怖さを教えたり、まりさ種には帽子を使って水の上に
浮かぶ方法を教えていた。他の子供たちは群れの監視の下、川で遊んでいた。
「ぼうちにいればゆっきゅりできりゅね!」
「むーちゃ、むーちゃ、ちあわちぇー♪れーみゅどちゅのこにあんれちぇよきゃったよ!」
「ありすのまえのおかーさんは、はちみつもむしさんもとってこれないいなかものだったわ!」
「むのうなんだねーわかるよー」
ドスのそばでゆっくりとしすぎたせいか、元の親の事を愚痴りながら遊び子供たち
大半は浅瀬で遊んでいたが、たまに深いところに行こうとすると、
「う~みずにはいりすぎたらだめだど~♪」
そういって群れのれみりゃに掬われる。生まれてすぐ誘拐されたれみりゃは群れのゆっくりを食べるなどという考えは微塵も持っていない。
「むきゅ~きもちいわー」
「ゆ~どちゅはおきゃーしゃんよりゆっくちできゅるのね!」
ドスの頭の上で日向ぼっこをしているれいむがそう言った。
「ゆ~みんなゆっくりできてまりさうれしいよ~♪」
ドスは子供たちの遊ぶ姿を見て嬉しそうだ。機嫌が良いのか大声で歌い始めた。
傍から見れば、ゆっくりとした楽しい群れに見えるだろう。一部を除いては
「ゆ・・・ゆっきゅちできにゃいよ~」
「ごひゃんもまずいちね!はやくおきゃーしゃんたちのとこにかえりちゃいよ!」
誘拐されたれいむとまりさは不満げな顔でみんなとは離れた場所に居た。確かにドスの群れは野生のゆっくりにしてみれば
最高のゆっくりプレイスかもしれない。しかし生まれた時から人間の家で育てられた二人にしてみれば、寝床、食事、遊び場、安全
全てにおいて自分たちのおうちよりずっと劣っていた。なにより、母親と父親、そしておにーさんと一緒じゃないだけでここはもう地獄の様なものだ。
かといって二人で森を抜けられるかと言えば無理だと分かっていた。だからこうしてひたすら待っていた。みんなが来る事を。
二人が仕方なくすりすりしていると、森の奥から何かがやってくるのが見えた。
ガサゴソと木々をかき分けてきたのは大きな荷物を背負った数人の男たちだった。
「「ゆぅ・・・ゆ?ゆっくりしていってね!!!」」
人間に慣れていた二人は元気に挨拶をした。おにーさんの家に居る時も、家にやってきた人には母親と父親が挨拶をしていたのを思い出した。
人間達はこちらをジロジロと眺めると
「ん?ああ、ゆっくりしてるよ。・・・で、こいつらでいいんですよね旦那?」
人間達の後ろから誰かがやってきた。見覚えのある顔は・・・
「ドス~たいへんなんだよー!にんげんがきたよー!」
「ゆ!にんげんさんがきたの!ゆっくりしないでにげるよ!」
ちぇんの声を聞いたドスはあわてて子供たちの方へ向かった。人間とはなるべく関わらないのがドスの方針だった。
人間の強さはドスも知っていた。前に空で白黒の人間が自分のドススパークより遥かに凄いスパークを撃っていたのを見た。
全員じゃなくてもあんな事ができる人間が一人でもいる時点で、ドスは自分に勝ち目などないことを理解した。
故に子供たちには人間の里に近寄らないことを昔から教育し続けた。時には畑の近くまでいって、畑を襲ったゆっく達の末路を見せてやったりもした。
人間に関わるとゆっくりできない。こちらから関わらなければゆっくりできるのだと教えた。
それでも畑を襲う子供たちが居たのは残念だが、きちんとした教育のおかげか、全員無事だったのは幸運だった。
「みんな!はやくにげるよ!!まりさがうしろにいるからはやくにげてね!」
ドスはみんなを先に逃がして、自分が囮になるつもりだった。なんとか時間を稼げば子供たちは逃がせるだろうと踏んだのだ。
しかし安全というぬるま湯に浸かりきっていた子供たちには、危険という物がまるでわからなかった。
「ゆ!にんげんしゃんははちめてみるよ!ゆっきゅりちていっちぇね!」
そういって始めてみる人間に興味心身な物が半分も居た。残りの半分は人間の怖さを知っているのか我先にと逃げた。
「なにしてるの!!!はやくにげないとだめだ・・・?」
ドスは人間たちの中に見覚えのある子供を見た。あれは確か一週間前に来た子だったはずだ。
ドスは子供が人間に捕まったのと勘違いをした。そして人間に対して明確な殺意が湧いた。自分の子供に手を出した人間に。
「にんげんさん!ゆっくりそのこをはなしてね!まりさのこどもをはなさないとおこるよ!いまならまだゆるしてあげるよ!
あかちゃんたちまってね!いまたすけるから!」
人間の前に立ちふさがると、睨みつける様な目でそういったドス。しかし子供から帰ってきた返事はドスにとっては意外な物だった
「どちゅがなにかいっちぇるよ!はんざいちゃのくちぇに!」
「こどもをゆっきゅりちゃちぇないなんてぇ。おお、おばきゃおばきゃ。」
明らかに侮蔑の目でこちらを見てくる子供たち。ドスは何が起きてるのか全くわからなかった。
「ゆ!なにいってるの?まりさはこどもたちみんなをゆっくりさせてるよ?ゆっくりできないこなんていないよ!
- わかったよ!にんげんさんたちがなにかしたんだね!ひどいことするにんげんさんはゆっくりしね!」
そういってドスは口を開いた。そこから発射されるはドススパーク。あの白黒の人間ほどの威力はないが、下手に当たれば即死もありうる威力である。
幾多の敵を葬ったその切り札を使おうとして、ドスは横から何かで刺されたことに気づいた。
「ゆがぁ!!!」
鈍い痛みがドスを襲った。ドスの横に刺さったのは杭であった。先を尖っているそれはドスの表皮を容易に貫く。
痛みで一瞬気を失った隙に、ドンドンと杭が刺さる。
「いぎゃい!やべでね!ばりざぼんぎでおごがぁあ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
ドスはドススパークを放とうとするが休みなく続く攻撃で不可能だった。ドススパークは放つまで少々時間がかかるものである。
そして一度方向を定めると変えることができない。直線の攻撃は正面きってらなば恐れるほどのものではない。
更に数の上でも負けているのだ。当然の結果とも言えた。
背中から地面へ斜めに刺さった杭で、完全にドスは身動きが取れなくなった。
痛みがジリジリと伝わってきている。男たちはさらに、ドスの皮を伸ばすと皮に杭を突き刺し、地面に張り付けたような状態にした。
「いぎゃいなにずるの゛・・・ばりだぢな゛に゛も゛じでな゛い゛い゛」
そんな泣きそうな声を無視して、男たちは子供を抱いた男へ話しかけた。
「これからどうするんすか旦那?」
「とりあえずこの子達だけを家に返します。ちょうど村のうーぱっくも来ましたし。・・・ああ、逃げたのは私がなんとかしますので先に帰っていてください。」
落ち着きはらった態度でそういうと、旦那と呼ばれた男は、近くに来たうーぱっくに二匹を乗せた。
村で飼っているうーぱっくである。飼いゆっくりの証であるシールを体に付けていた。
「先に帰るんだよ。二人とも待ってるからね。」
「「ゆっきゅりりかいちたよ!」」
そう言うと同時に、うーぱっくは静かに飛び去って行った。
「ばりざのあがち゛ゃん゛がぁあ゛あ゛あ゛あ゛!!!!がえ゛ぜえ゛え゛!!」
涙目でそう言ってくるドス。ここまで来ると逆に尊敬できるものだ。
「とりあえずこのまま殺すんすか?」
「んあ、そうだな。よいしょっと。」
男たちは各々武器を取りだすと、思い思いにドスを痛めつけた。
片目が槍で貫かれ、斧で左頬は裂かれた。背中を包丁で切り開かれ、歯は一本一本抜かれた。
ある程度痛めつけると、男たちは武器をしまった。
「後は動物かゆっくりが食べるだろ。」
「最後に口でも縛りましょうか?針と糸持ってきたんすよ。」
「ああ、だな」
そうして口も塞がれたドス。男たちが去っていくのを片目で見ていたドスは、死の淵にある自分よりも群れや子供たちの心配をしていた。
(みんなゆっくりにげれたかな・・・おうちにはごはんがあるけど・・・ちゃんとなかよくたべてるかな・・・
あのふたりのこが・・・たすけたかったな・・・・まりさのこどもたちは・・・みんなゆっくり・・・)
思い出すのは楽しかった日々。すりすりしたり、ご飯を食べさせたり、みんなでピクニックに出かけたり、時には子供をを攫おうとするゆっくりをやっつけてご飯にしたりした。子供たちの笑顔見るたび、嬉しくてたまらなかった。
気づいた時には、周りをゆっくりで囲まれていた。見覚えのあるゆっくりだった。自分が子供たちをゆっくりできないゆっくりから
保護させるために使っているゆっくりたちだった。
「おお、ぶざまぶざま。」
「はんざいしゃはゆっくりしぬんだぜ!」
「じゃおおおおおおおんんん!!!」
「うー!うー!」
みな積年の恨みを晴らせるためか、生き生きしていた。ドスはそのままゆっくりと目を瞑った。
(みんあゆっくりするんだよ・・・それがまりさがゆっくりできるゆいいつの・・・)
ある意味ドスは幸せかもしれない。結局最後の最後まで勘違いをしたまま死ねたのだから。
過去作
悲しき聖帝ゆっくり! お前は愛につかれている!!1
悲しき聖帝ゆっくり! お前は愛につかれている!!2
悲しき聖帝ゆっくり! お前は愛につかれている!!3
お兄さんとドスれいむ
鬼意屋敷殺人事件
どすの加工所
幻想樹の迷宮
幻想樹の迷宮Ⅱ
徹夜でゆっくりしようぜ!
徹夜でゆっくりしようぜ!2
地震
ゆーうーかい
最終更新:2008年11月08日 08:19