逃げだした群れは少し離れたところにいた。急いだ為かみんな疲れていた。
「ゆ・・・これからどうすればいいの・・・」
「ドスがいなきゃ
ゆっくりできないんだぜ!」
「うー!はらへったぞー!」
「おにゃきゃついちゃ!」
「まりちゃたちをこんにゃめにあわちゅなんて、どすはさいちぇいだね!」
「むきゅん!だいたいあんなあぶないところにつれていくなんて、しょせんゆーかーいはんだったわね!」
群れの話し合いは、これからの相談からドスへの恨み言へシフトしていった。最悪な状況を他人のせいにするのはゆっくりではよくある事である。
「君たち、ちょっといいかな。」
そう言って話しかけたのはれいむたちのおにーさん、男たちから旦那と呼ばれていた男だった。
「ああ大丈夫。ほら、クッキーでも食べてお互い落ち着こうか。」
そういって群れにクッキーを砕いて渡した。群れは我先にと群がる。
「まだ量はあるからね。焦らなくてもいいよ。」
「うめ!うめ!これめっちゃうめ!」
「みゅーちゃ、みゅーちゃ、ちあわせー!」
「おいしいどぉ~れみぃのせんぞぐごっくにしてあげるどぉ~♪」
「ドスのごはんよりおいしいわね。とかいはにはぴったりのごはんよ!」
嬉しそうに食べるゆっくりたち。それをにこやかに眺めていた男は
「なら、僕の家に来るかい?ドスほどじゃないがゆっくりできる場所だと思うよ?」
流石に群れのみんなは考えた。いまだドスの巣は顕在。別に暮らせないわけではない。
群れの沈黙を破ったのは、誘拐犯の親まりさを罵倒したぱちゅりーだった。
「む!いいわよおにーさん!おにーさんのいえならドスなんかよりずっとゆっくりできるわ!」
「そうだね!あんなやくただすのでかぶつより、おにーさんのほうがずっとゆっくりできるよ!」
男は相変わらず表情を崩さない。ずっと笑ったままだ。
「おかーさんやおとーさんはいいのかい?」
「いいんだぜあんなおや!まずいむしさんなんてたべさせるおやはゆっくりできないんだぜ!」
どうやら今の生活に慣れきってそれが当たり前だと思うようになったらしい。口々に自分を産んだ親に文句を言っていた。
ゆっくりといえど、ここまで薄情なのも珍しい。やはり小さい頃から甘やかすのは問題があるようだ。
「わかった。それじゃ、みんなを一度に運ぶからこの袋に入ってくれるかな?れみりゃたちは僕の後を追ってね?」
「「「「ゆっくりりかいしたよ!!!」」」」
そうして子供たちをまとめて袋に入れ、山を降りることにした。
途中で、ドスまりさが他のゆっくりに食われているのを見た。ドスの体から出た甘い匂いにつられて、周りに野犬だのキツネだの
熊だのが集まっていたために、中々帰るのに苦労した。
ぱちゅりーは目が覚めると、桶の中に居た。水は入っていない。辺りを見回したが群れのみんなは誰も居なかった。
「む・・なぜかした?」
クエスチョンマークを頭の上に浮かべていると、真上に先ほどのおにーさんの顔が見えた。
「ゆっくりしていってね!!!」
「ああ、ゆっくりしているよ。」
おにーさんの手からお水が滴り落ちた。舐めてみるととっても甘かった。
「む~むきゅん!」
「ところでぱちゅりー。きみだけ一人なのは訳があるんだ。」
「わけ?」
「実はね、あのドスの群れが分かったのは君のおとーさんのおかげなんだ。君のおとーさんが今日の明け方、僕のおうちに来てね。君を助けてくれって。だからお礼に親子で暮さないかい?」
おとーさんと一緒か・・・正直一瞬迷った。今まで散々馬鹿にしたからだ。しかしまあ、このおにーさんの家でなら別にいいだろう。
おとーさんも、もう許しているはずだ。そう思って返事を返した。
「いいわよ!ぱちゅりはーびょうじゃくだから、ゆっくりするにはおやがひつようだわ!」
「そうかい。んじゃおうちに行こうか。すでにみんなはもう居るからね。」
そういっておにーさんは桶を持った。自分がお空をとんでるのがわかった。
これからのゆっくり生活への期待で胸が湧いた。最早ドスのことなど欠片も覚えていなかった。
「ねえ?ぱちゅりー?」
「む?なにかしら?」
「ぱちゅりーの思うゆっくりプレイスってなんだい?」
「む!おいしいごはんと、ごほんと、てんてきがいない、ゆっくりしたところよ!そしてぱちゅりーにみんなやさしいの!」
「わかったよ。おにーさんもそれを目指そう。」
「きたいしてるわよ!むきゅん!」
男は皆から旦那と呼ばれている男の家に来ていた。実を言うと、男はあのドス討伐後の旦那の行動が気になっていた。
旦那は数年前までは駆除を名目に行き過ぎた虐待で村人からも反感を買っていた男だ。比較的裕福な生まれで、村の祭りや工事にも積極的だった一族の二男なために、表向きは誰も文句は言わなかったが。
今ではゆっくりを庭で放し飼いにし、専用の遊び部屋までわざわざ作るほどの溺愛っぷりと聞く。
今回は畑を荒らすドスの群れの討伐への協力の礼として代表で来たのだが、実は隠れ虐待派な自分としては、捕まえた群れをどうしたのか知りたかった。
玄関へ入ると、見覚えのあるゆっくりがいた。確か旦那の飼いゆっくりだ。家族四人でこちらを出迎えてくれたらしい。
「「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」
流石に四人も揃うとうるさい。俺は心に湧く虐待の感情を鎮めながら玄関に上がった
「ああ、ゆっくりするよ。ところで旦那は?」
「はなれのしょさいにいるよ!かってにはいっていいって、おにーさんがいってた!」
離れの書斎・・・ああ、あの書斎か。高い塀に囲まれてるが外からでも少しはわかる。
「わかったありがと・・・おまえらは書斎に行かないのか?」
「しょさいはおにーさんのゆっくりプレイスだよ!れいむたちはゆっくりをじゃまするゆっくりじゃないよ!」
そうかい。まあいいや書斎か。俺はゆっくり達を踏まないようにしながら、廊下を歩いた。
離れの書斎の扉の前に付いた。もうこの時点で相当アレなのがわかった。なにせドアのぶがみょんなのだ。
どうやら底の部分を取り外した、ドアのぶカバーにしたらしい。みょんの形にぴったりはまっているとこを見るとわざわざ作ったのかろうか。
しかもドアとは。一般の家はドアなんざ使わないのに。とりあえずドアと軽くノックして中に入った。
「しつれいしまーす。」
「ああ、すいません。出迎えもせずに。」
旦那は椅子に座りながら、本を読んでいるようだった。目の錯覚なのかやたらデカイ椅子の背もたれの部分がモゾモゾと動いている。
というか他も普通じゃない。
まず、書斎のいたる所にゆっくりの剥製が置かれていた。一体一体目の部分がきちんとガラス玉になっていた。
おそらく骨格?も針金で整えているのだろう。手間かけすぎ。
窓には珍しくカーテンが付けられていた。ゆっくりの飾りで作ったパッチワーク的なカーテンだった。配色がおかしい
そしてさっきから気になっていた、もぞもぞと動く椅子。なにこれ?
「椅子のなかにれみりゃがいるんですよ。ちょうど背中辺りでモゾモゾとしているので中々気持ちよくて、そちらはふらんですから、座ってみては?」
やべえ進められた。流石の俺も気が引ける。なんか抓ったり、潰したりとは別次元の世界だ。
仕方なく腰を下ろすと、確かに背中のあたりがモゾモゾする。落ち着けーねよ。なんか小さく「しね!ゆっくりしね!」とか聞こえるし。
まあいいや、とりあえず本題を済まそう。
「昨日の討伐の件、力を貸していただきありがt」
「ああ、私は何もしてませんよ。この家族のお陰です。」
そういって私の言葉を遮った旦那は、机の上に置いてあった箱を見せた。透明なケースなのだろうが、全体的に真っ黒
「今、ちょうど読み聞かせていたところなんです。どうぞ」
箱を手渡された俺は箱をそっと覗いた。そこには餡子を吹いてガクブルと端で震えるぱちゅりーと餡子が1つほどポツンと置いてあった。
「なんすかこれ。」
「ぱちゅりーの親のまりさですよ。」
え?これまさか中身の餡子?っていうかよく気づいたら箱の壁全体が引き延ばしたゆっくりだし。どういう事だ?
「ああ、ぱちゅりーが親とずっとゆっくりしたいといっていたので、やっつけ仕事で作ったんですよ。やり方ですか?
簡単ですよ。とりあえず群れのゆっくりを、壁に貼り付けるんですよ。餡子が無くなると死ぬんで、これが一番大変なんですけどね。
そうしたら・・・これは実践した方が早いですね。」
そういって机の上でスヤスヤと寝ていた赤ちゃんれいむを手に取った。あの飼っているゆっくりの子供ではないだろう。
おやつにでもするつもりだったのだろうか。
旦那は手際よく小さいナイフを取り出す。そしてれいむの真横から縦に切れ目を入れる。
「いぎゃ!なにちゅるのぉ!!!いぎゃいよ!」
旦那は四つほど切れ目をいれると、皮を少しづつ丁寧にはぎとっていく。餡子を気づ付けないようにかなり集中しているようだ。
「いぎゃいよ゛!れーみゅのがわぎゃ!!!いぎゃ!」
どんどん餡子がむき出しになっていく。
「おにーしゃんれーみゅがなにちたのgyあ!」
口の部分が剥がされ始め満足に喋れなくなったようだ。口や目もピンセットで丁寧に取っている。
30分ほどでれいむはただの餡子になった。それを箱の中に置く旦那。ぱちゅりーの「ゆひぃ!」という声が聞こえた。
「これ・・・生きてんすか?」
「生きてるんですよ。どうやらゆっくりは中の物が気づ付かなきゃ、皮をはがされても大丈夫みたいなんですよ。しかも餡子の状態でも意識はあるし
耳も聞こえる。まあ眼は見えないし、口は利けませんがね。普通の餡子じゃないので、定期的に砂糖水でも与えとけばだいぶ持ちます。
素晴らしくゆっくりしていますね。」
そういって音読をし始めた旦那。どうやらぱちゅりーに読み聞かせていたようだ。
「なんで壁にこんな手間を?」
「実はそれ生きてるんですよ。」
まじで?・・・確かによく聞くと声が聞こえる。「ぱぢゅり゛ぃはじね゛」だのと。
そちらはまだ口が動くので毎日餌を与えてます。やっぱりゆっくりするには床や壁の素材にも気を使いたいですからね。ゆっくりにとって気持ちいい
のはゆっくりの皮でしょう。あんなんにすりすりするんですし。」
そーなのかー。絶対違う気がするが。
「いや~よかったですよ。ぱちゅりーがゆっくりできて。しかもおとーさんと二人でですよ。
誰にも襲われないし、餌は美味しいのが貰えるし、よかったねぱちゅりー?」
そう笑いながら問いかけた旦那。
ぱちゅりーはと言うと「
おにーじゃん゛ぼう゛や゛べでえ゛え゛え゛!!!!ゆっぐじでぎな゛い゛い゛い゛!!!」
餡子を吐きながら訴えるぱちゅりー。旦那はすかさず砂糖水を与える。
これが噂のゆっくりハウスか。なにせ壁からふとんまですべてゆっくりだ。
しかも全員がぱちゅりーに恨み節を炸裂中。肝心の親は餡子になり果てた。この状況で何を思っているのだろうか。
「ぱぢゅり゛ぃはわ゛る゛ぐな゛い゛わ゛~~~びんなだっでざんぜいじだぐぜにぃ!!!」
俺は疑問を投げかけた。
「そういえば玄関のゆっくりたちが、ここが旦那のゆっくりプレイスって言ってましたけど、ゆっくりできるんすかこんな饅頭地獄で?」
男はいつものように笑顔で答えた。
「ゆっくりが好きだからね。」
なんか背中のふらんが暴れ出したような気がした。よく聞くとこれみりゃも入ってるな。
「おねーしゃまじゃませまい!」だの
「れみぃも゛う゛お゛う゛じがえ゛る゛どお゛ー!ざぐや゛ー!」だの
ああ、ちょっと気持ちいいかも。
用を済ませ書斎を後にした、庭の方をちらっと見た。一匹の赤ちゃんゆうかが、必死に畑を作っていた。
よく見ると先ほどの家族も手伝ってた。俺は最高のゆっくりプレイスである我が家へ帰った。
過去作
悲しき聖帝ゆっくり! お前は愛につかれている!!1
悲しき聖帝ゆっくり! お前は愛につかれている!!2
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お兄さんとドスれいむ
鬼意屋敷殺人事件
どすの加工所
幻想樹の迷宮
幻想樹の迷宮Ⅱ
徹夜でゆっくりしようぜ!
徹夜でゆっくりしようぜ!2
地震
ゆーうーかい
ゆーうーかい 解決編
最終更新:2008年11月08日 08:26