ごく当たり前な悲劇01



ゆっくり虐待ものですが、某幻想郷のキャラをいぢめるスレの成分が非常に高い、お前は一体東方キャラとゆっくりどっちがいじめたいんだというSSになっています。
※ゆっくりは行けるけど東方キャラ虐めは駄目な人にはオススメできません。ご了承ください。

※このSSは某幻想郷のキャラをいぢめるスレの設定を使わせてもらっています。やたらと嫌われている魔理沙がそれです。
※難しいかもしれませんが、魔理沙が好き勝手やった結果、知り合い全員から1人ハブられたと思って読んでもらえると嬉しいです。手抜きな書き方して済みません

※一応、可愛がりスレに上げたSSの続きのような内容になっていますが、これ単体でも読めるようにしてあるので読まなくても大丈夫です。










 幻想郷において、魔理沙はゴミクズだった。

 持ち前の強がりな性格が祟り、気がつけば友人だと思っていた誰からも避けられ、嫌われ、相手にされず、唯一可愛がってくれていた咲夜からも「排除するゆっくりが増えて仕事が忙しいからもういらないわ」と捨てられてしまった。

 自分の家で沈み込む魔理沙だったが気落ちする以前に、人のつてを失った今、普通に生活することさえままならなくなった。

 どうにか身を削り、持っていた物を二束三文で売り飛ばし、茸を狩って生活していたが、自然に体はやせ細っていく。

 しかし、そんな魔理沙も小さな幸せを手に入れた。

 人々から全面的に嫌われた魔理沙にとって、唯一仲良くなったゆっくりだけが心の支えだった。




「……ふぅ」

 流れる汗を腕で拭い、魔理沙は息を吐く。地面に映る木漏れ日が今日の天気の良さと暑さを物語っていた。

 魔理沙はいつも通りの道を通り、森を通り抜ける。

 遠くに見える崖を確認し、そこを目指してまた歩き始める。

 向かう先から、声が聞こえてきた。

「ゆーっ!」

 魔理沙の顔が自然と綻ぶ。

 両手を広げ、待ちかまえる魔理沙の胸に、ゆっくりれいむが飛び込んできた。

 以前より大きくなったれいむの重さに体が軋むも、魔理沙は声1つ上げず、そのまま持ち上げていた。

「ははっ、元気だったかれいむ?」
「ゆゆっ、れいむはげんきだよ! おねえさん、いっしょにゆっくりしようね!」
「ああ、ゆっくりさせてもらうぜ」

 そのままれいむを右肩に乗せ、魔理沙は改めて崖へ向かった。

 肩からはみ出ている部分を、手で摘みれいむに怒られながら進んでいく。

 徐々に見えてくる崖の麓には、多数のゆっくりが魔理沙達を出迎えようと待ちかまえていた。

「おいおい、大げさだぜ。ちび達まで全員いるのか?」
「ゆっ! みんなおねえさんを待っていたんだよ!」
「……ははっ」

 照れくさそうに魔理沙は頬を掻く。

「どうやらとかい派のおねえさんがきたみたいね!」
「むきゅー……れいむはあいかわらずおねえさんにべったり」
「おかあさん、おねえちゃんとなかいいね」
「すごくいいね、すごくゆっくりしてるね!」

 向こうからも魔理沙の姿が見えたらしく、次々に声を上げると、最後に声を揃えて叫んだ。

『ゆっくりしていってね!』

 魔理沙の笑顔が弾けた。




 やって来た魔理沙に、ゆっくりありすが声をかけた。

「こんにちはおねえさん、きょうもゆっくりしてるかしら?」
「ああ、ありすは今日も都会派らしく優雅だな」
「もちろんよ! とかい派はゆうがさをわすれないんだから!」

 続けて隣にいたゆっくりぱちゅりーが話しかける。

「むきゅー」
「おう、ゆっくりさせてもらうな」

 しゃがみ込み、魔理沙はゆちゅりーの頭を撫でる。

「おねえさんならかんげい。好きなだけゆっくりしていってね」

 ゆちゅりーは頬を赤くしながら、嬉しそうに応えた。

 続けて魔理沙の背中に、次々と声が飛んでくる。

「おかあさんおかえり!」
「おかあさんゆっくりしてるね! わたしもそこでゆっくりしたいよ!」
「おねえちゃん! きょうはわたしといっしょにゆっくりしよ!」

 魔理沙が後ろを振り向くと、そこにいたのは子れいむが6匹こちらを見ながら飛び跳ねている。

 子れいむ達のお母さんはれいむ。ありすとゆちゅりーとの愛の結晶だった。

「ただいまみんな! いっしょにゆっくりしようね!」

 魔理沙の右肩から器用にれいむは降りると、そのまま子供達へ駆け寄っていく。

 れいむが子供を産んだのはつい最近の話だ。れいむの幸せそうなその姿に、魔理沙は思わず目を細めて見つめていた。

 魔理沙がゆっくり達と出会ったのは、栄養失調により森で倒れたところをれいむに助けられからだ。

 当時はゆっくりに助けられた自分を惨めに感じていたものの、人間を恐れないれいむの態度と、そのれいむを必死に守ろうとするありすとゆちゅりー達に惹かれ、気がつけば一緒に遊ぶようになっていた。

 6匹の子供達に囲まれながら、れいむは楽しそうに遊んでいる。

 邪魔するのも悪いと思った魔理沙は、すぐ傍で同じようにれいむを見ていた2匹に声を掛けた。

「しかし子供が出来たことだし、そろそろ住処も替え時だな」
「そうね! とかい派にふさわしい家をてにいれるわ!」
「ここもぜったいにあんぜんじゃない……つぎはもっとあんぜんなところにすみたい」

 この崖の麓は日陰になっており、雨などは防げるものの風などにはあまりに脆い住処だ。住みやすいとは言いづらい。

 しかし付近で落石が多いためか、ゆっくりの捕食種をあまり見かけず、れいむ達にとっては何よりも天敵の存在が怖いので、こうして暮らしていた。

 子供が出来れば、守るものもやることも比例して増える。もっと良い場所を求めるのは当然といえた。

「……それじゃ、私の家に来るか?」
「え? おねえさんのいえ?」
「むきゅ? いいの?」
「ああ、ほとんど毎日会いに来てるし、私もおまえ達がいてくれた方が嬉しいぜ」

 それはここに来る前から、魔理沙が考えていた案だった。
 しかし、ありすとゆちゅりーの反応は芳しくない。

「とかい派のありすにもみりょくてきなんだけど……」
「むきゅー……」
「……そうか、あまりその気にはならないか」

 魔理沙は初めの頃、れいむとは違い自分を警戒していた2匹の姿を思い出していた。

 いくらうち解けてきたといっても、家に行くのは抵抗があるだろう。

「ちがうわ、おねえさん! とかい派のありすもおねえさんといっしょにすみたいもの!」
「ただひとつだけもんだいがある……」
「問題だって?」

 2匹は同時にれいむへと視線を送った。

「おねえさん。まりさのことはおぼえているでしょ?」
「ああ……」

 魔理沙の中で記憶が蘇る。

 元々れいむ達の他に、ここにはゆっくりまりさが暮らしていた。しかし今のれいむのように子供が出来て、ここは手狭だと住処を変えて過ごすようになった。

 それからも3匹とまりさの交流は変わらず、今もご飯を交換したりして助け合っている。

「おねえさんのところまでいったら、まりさとほんかくてきにわかれることになるわ」
「むきゅ。そうなったられいむはぜったいにはんたいする……」
「……そうか」

 目の前では子供達全員ののし掛かられ、れいむが軽く悲鳴を上げている。

 この中でも特に泣き虫なれいむは、まりさと別れるとなればきっと涙を流して嫌がるだろう。

 それは魔理沙にとって1番見たくないものだ。

「それじゃ仕方ないな。私なりに良い考えだと思ったんだぜ?」
「むきゅー……ごめんなさい」
「謝ることはないぜ、私もれいむの悲しむ顔は見たくないからな」

 言うと、魔理沙はそのままれいむ達へ近づいていく。
 その頃れいむは、子供達を喜ばせようと必死に地面を転がっていた。

「ほら、お前ら。そろそろお母さんをゆっくりさせてやれ。替わりに私が遊んでやるぜ!」
「ゆっ?」
「おねえさん、ゆっくりしてくれるの?」
「ああもちろん、人の中でゆっくりさせたら私の右に出る奴はいないぜ」
「ゆっくりー!」

 次々と魔理沙に群がっていく子れいむ達。
 転がるのを止めて、れいむは不思議そうに魔理沙を見る。

 魔理沙は手振りで「休んでろ」とれいむに伝えた。

「ゆっ!」

 目尻を下げ、極上の笑みをれいむは返した。
 子供達の元を離れ、そのまま2匹の元へ戻っていく。

「よーし、みんなゆっくりしようぜ!」
「ゆっ!」
「ゆっくり!」

 2匹の傍で体を沈め、平べったくなりながら一休みするれいむ。
 その様子を見ながら、魔理沙の脳裏には一抹の不安があった。

 まりさとれいむ、2匹が一緒にいた時のことを思い出す。

 れいむはまりさのことを友達といい、とても親しげな様子だった。

 しかしまりさの方は、れいむのことをむしろ恨んでいるような素振りだった。




 れいむ達のいる崖の反対側にある大きな洞穴。それほどの高さでない位置にあるそこは、
軽度の坂を登ればたどり着ける、ゆっくりの住処にとても適している場所だ。

 ただ穴の目の前に広がる森には、多くの捕食種が住んでおり、れいむ達は1度も近づいたことがない。

 その洞穴に、まりさは住んでいた。

「……」
「ゆゆっ! お腹がすいたね!」
「前にもらったきのこたべようね!」

 明後日の方向を見ながら考えを巡らせるまりさ。その目の前では、子供達が以前、れいむ達から貰った食料を食べている。

「……チッ」

 その様子があまりに腹立しくて、思わず舌が鳴っていた。

 まりさは、子供をつくり別れて以来、ずっとれいむのことを恨んでいた。

 それは、ずっと一緒にいたありすとゆちゅりーがれいむを選んだからだ。

 れいむがありす達と一緒になる前から、まりさとありす達は一緒に過ごしていた。

 3匹の中でもリーダー的な存在だったまりさの言うことをありすもゆちゅりーも素直に聞きながら、幸せに暮らしていた。

 ところがれいむがやって来てからというもの、ありすもゆちゅりーも自分の言うことを聞かなくなり、ついには反対までするようになっていった。

 私よりれいむの方がいいのか? まりさの中で嫉妬が渦巻いていく。

 今、まりさの目の前にいる9匹の子供達も元を正せば、別れることになれば、ありすとゆちゅりーは自分に付いてくると思い、無理矢理その辺にいた同種を襲い、産んだのだ。

 しかし、ありすとゆちゅりーはごく自然にまりさから離れていった。

「……チッ」

 れいむに対する憎しみが、まりさの舌を更に鳴らした。

「……おかあさんどうしたの?」
「ゆっくりしようよおかあさん」

 まりさの不穏な空気を読み取ったのか、近くにいた子まりさ達が近寄ってくる。

「なんでもないよ! みんなはゆっくりしててね!」

 まりさは叫ぶと、そのまま子まりさ達からそっぽを向いた。
 不機嫌なまりさの様子に落ち込む子まりさ達、それを見て、まりさの機嫌は更に悪くなった。

 元々子供が欲しくてつくったわけではない。今のまりさにとって、子供達はただ煩わしい面倒くさいものにしか思えない。もう成体になった子供達ならともかく、赤ん坊のまりさや子供のまりさとなれば尚更だ。

 もう1人の親である同族がいれば押しつけるところだが、そのまりさは食料を探させに行った際、目の前の崖から滑り落ちてそのままだ。きっと下の森に落ち、捕食種に食べられたのだろうと解釈して、まりさは特に探しに行こうともしなかった。

 子まりさ達がそれぞれに騒ぐ中、洞穴の奥でまりさが蠢く。

 その表情は目が細くなり、口元は鼠口のように小さくなっている。

 もはやまりさの嫉妬の炎は赤々と燃え上がり、後は焼きつくすだけだった。




「ゆゆっ! おかあさんおおきいね!」
「すごいね! かいてきそうだね!」
「すごくゆっくりできそうだよ!」

 洞穴の前で、子れいむ達がはしゃぎ回っている。

「ゆっ! ほんとだね! 今日からここでゆっくりしようね!」

 楽しそうな子供達の様子に、れいむも満面の笑顔で応えた。

 れいむ達は騒ぎながら中へ進んでいく。それを追いかけながら、ありすがゆちゅりーに話しかけた。

「……ぱちゅりーはどうおもってる?」
「むきゅー、あやしい」
「そうよね! とかい派のわたしもあやしいとおもってるわ!」

 先日、まりさ達がれいむ達へ食料を交換しに行った際、れいむは住処の話をまりさ達に相談した。

 するとまりさは、私たちと一緒に住めばいいと言ってきたのだ。

 少し前に同じようなことがあったものの、2匹が感じたのはデジャブではない。

 今まで住んでいる場所を頑なに教えなかったまりさが、いきなり一緒に住もうと言ってきた不自然さだった。

 2匹は同じように不安を感じている。しかしれいむを止めることは難しい。れいむにとって、まりさは自分たちと同じ家族なのだ。疑えと言っても疑ってはくれないだろう。

 2匹はお互いにある種の決意を固めて、れいむたちの後を追っていった。

 中に入っていくと、すぐに子まりさとまりさが出迎えてくれた。

 赤まりさが2匹、子まりさが3匹、そして成体のまりさ4匹が円をつくるように並んでいる。親であるまりさは、洞穴の奥で鎮座していた。

「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていくね!」

 お約束の挨拶を交わし、そのままゆっくり達は散り散りに交流していく。子まりさと子れいむ達は、1度も会ったことのない別種の同世代だからか特に楽しそうだ。

 賑わいをみせる洞穴の中でただ1匹、まりさだけは奥から動こうとしなかった。

「……ゆっ?」

 ふと動かないまりさを不思議に思い、子れいむが近づいていく。

 目の前にやって来た子れいむへまりさが目を向けた。

「いっしょにゆっくりしようね!」

 まりさから返事はこない。

「ゆっ?」

 不思議そうに声を上げる。

 それが。
 子れいむにとって最後の言葉になった。

 突如、目の前にいたまりさが消え、周りが暗くなった事に子れいむは戸惑い始める。

 しかし不安に思う間もなく、飛び跳ねたまりさに押し潰されていた。

「ぶじゅぅっ!」

 悲鳴もあがらない。ただ潰された子れいむの残骸がまりさの下にある、聞こえたのは饅頭から空気の抜けた音。

 そして、まりさの顔が歓喜のあまりに禍々しく歪んでいることが真実だった。

「れいむぅううぅううぅうぅっ!」

 瞬間、洞穴を絶叫が包む。

「ゆっ?」

 子まりさ達と仲良くしていたれいむは、思わず呼ばれた方向を見る。

 叫んだのは、ずっと周りを気にしていたありすだった。隣にいたゆちゅりーも慌てた様子で騒ぎ立てる。

「れいむ、にげて!」
「ゆっ? ゆゆっ?」
「むきゅー! こどもたちをつれて、はやく!」

 叫ぶ2匹に、しかしれいむは戸惑うばかり。

 今度はまりさが大きな声を上げた。

「ゆっくりさせてあげてね!」

 声を聞くと同時に、成体のまりさ達が子れいむを突き飛ばした。

「ゆゆっ!」
「なにするの! やめてね! ゆっくりさせてね!」
「ゆっくりしてね!」
「つぶれてでもゆっくりしてね!」
「いやぁあぁあぁ……っ」
「れいむ゛のごどもにな゛に゛ずるのおぉおぉぉおおぉおっ!!」

 さっきまで笑いながら話していたまりさ達の急変に、れいむは思わず絶叫した。

 最後の成体まりさが、怯えている子れいむを突き飛ばそうと迫る。

 その間にありすが割って入った。

「ゆっ! じゃましないでね! つきとばさせてね!」
「らんぼうな田舎ものね! おやの顔がみてみたいわ!」

 まりさの眉間の皮に皺が寄るも、ありすは気にせずれいむに呼び掛ける。

「れいむ、にげてっ! ここはわたしたちがどうにかするから!」
「むきゅー! 早くこどもたちを連れてにげて!」

 2匹の呼び掛けに、混乱していたれいむもどうにか落ち着いてきた。

 どうなっているのか分からない、ただ子供達は守らないといけない。

 ありすとゆちゅりーとの子を守ろうと、れいむも腹を括った。

「みんな、わたしにいそいでついてきてね! ゆっくりしないでね!」

 子供達に呼び掛けると、そのまま出口に向かって飛び跳ねていく。

「ゆっ!」
「おかあさーーんっ!!」
「いそいでここからでていくよ!」

 付いてきたのは3匹。残りの2匹は成体まりさに掴まって動けない。

「おかあさーーーんっ!!」
「だずげでよおがあざあぁあぁぁぁんっ!」
「……ゆっ」

 泣き叫ぶ子供達の声に、思わずれいむは泣きそうになる。
 しかし瞳を涙で曇らせたら他の子まで掴まってしまう。

 れいむは必死に耐えながら、急いで出口へと向かっていった。

「ゆぅううぅうぅううぅうっ!!」
「ゆっ!?」

 突然、後ろから聞こえてきた悲鳴に振り向くと、成体まりさが1番後ろにいた子れいむに乗りかかっている。

「ちゃんとゆっくりしてね、ずっとゆっくりしてね!」
「いやぁぁあぁああぁっ! おかあさぁぁあぁぁんっ!」

 殺さないようにしているのか、全体重をかけないで、じわりじわりと子れいむの体を平べったくしている。

 迷うことなく、れいむは突撃していた。

「ゆぅううぅっ!!」
「げふっ!?」

 1度子供を産んだ親ゆっくりの大きさには勝てず、成体まりさは突き飛ばされ、そのまま気を失った。

 後ろからは、残りの成体まりさが諦めずに追いかけて来ている。

「だいじょうぶ?」
「ゆ、ゆゆっ……」

 平気というが、体が全体的に潰れ、しばらくまともに動けそうにない。

「……ゆっくりしていてね!」

 れいむは子れいむを口に咥え、そのまま出口へと走っていく。

 先ほどまでより若干、速度は衰えたものの、成体まりさは追いつけそうにない。

 気がつけば、れいむ達は洞穴を飛び出ていた。

 空に広がる青色を見て、思わず子れいむ達が声をあげた。

「やったねおかあさん!」
「これでゆっくり出来るね!」

 しかしれいむは表情を崩さない。
 口に咥えていた子れいむを優しく地面に下ろすと、子供達に声をかける。

「まだゆっくりしたらだめだよ! すぐにここからおりようね!」

 れいむが見ている先は、来る時に登ってきた坂道。

「わたしがすぐにおろしてあげるよ!」

 その声は、突風と一緒に聞こえてきた。

「ゆぐっ!?」

 横から大きな衝撃を受けてれいむの体が空を舞う。飛んでいく先は崖。落ちれば生きていても、たどり着くのは捕食種達の森だ。

「おかあさんっ!?」
「いやぁあぁあぁあぁっ! しなないでぇええぇぇっ!!」

 傍にいた子供達の声が遠く聞こえる。

 そんな中、れいむの耳に最後に届いたのは。

「ゆっくりしね!」

 子れいむ達を捕まえて、にやりと笑うまりさの声だった。




 洞穴の中で、まりさは狂喜乱舞していた。

「ゆっくりしていってね! みんなゆっくりしていってね!」

 ひたすら飛び跳ねながら喜び続けている。

「ゆっ!」
「みんなゆっくりしようね!」

 ずっと機嫌の悪かったまりさの嬉しそうな様子に思わず釣られて子まりさ達も嬉しくなる。

 しかしまりさが喜んでいる理由を知っている成体まりさは、その様子に恐怖を抱き、自ら残った2匹は暗い面持ちをしていた。

「むきゅー……」
「だいじょうぶよ。とかい派のれいむがそんなかんたんに……かんたんに……ううっ……」

 目の前の酷い光景に、思わず目を逸らす成体まりさ。
 ふと、群れから離れたところで、1匹の赤まりさが何かを舐めているのに気づいた。

「ゆっ……!? ゆっくりやめてね!」
「ゆっ?」

 それがまりさの潰した子れいむの残骸だと気づいた瞬間、成体まりさは慌てて止めていた。

「ゆゆっ? どうしたのおねえちゃん? これおいしいよ?」
「それはたべちゃだめだよ! ゆっくりできなくなるよ!」

 実際にゆっくりを食べるゆっくりは捕食種を含めたくさん存在する。

 しかし普通のゆっくりが共食いを覚えた場合、それは今まで一緒に暮らしていた家族に食べられるかもしれないという不安がみんなの中で渦巻くことになる。そうなれば、もうゆっくりしていられなくなる。

 それだけは防がないといけない。

 ゆっくりできなくなると聞いて、残念そうに下を向いていたが、赤まりさは舐めるのをやめた。

 素直に聞いてくれたのを見て、成体まりさは安心から息を吐いた。

「ゆっくりつづけさせてね!」

 その声は、成体まりさの体を凍り付かせた。

 いつの間にか動きを止め、まりさが成体まりさの方を睨みつけている。

「……ゆっ」
「ゆっくりつづけさせてね!」
「……なめてもゆっくりできる?」

 赤まりさの質問に、まりさは断言した。

「もっとゆっくりできるよ! いっしょにどんどんゆっくりしようね!」
「ゆー!」
「むきゅっ!?」
「まりさ!?」

 突然の叫びに、思わず目を向けた2匹も止めようとするが、親に言われて迷う子供はいない。勢いよく残骸を舐め始めた。

「うめぇ、メッチャうめぇ!」と洞穴に絶賛する声が上がる。

 目の前で禁忌を犯す妹に声が出ない。

 成体まりさは、赤まりさに指示したまりさの顔をじっと見つめていた。

「……」

 潰れた子れいむを赤まりさが全部平らげてしまう。

「しあわせーっ!」

 その様子に、まりさの口が鼠口に変わった。

 成体まりさは確信した。もうこの人は親じゃない、赤まりさに同族の味を教えて遊んでいる。

 そしてまりさがこの後やるであろう惨劇に体を震わせ、成体まりさはその場から逃げ出していた。

「もうここじゃゆっくりできないよぉおおぉっ!」

 あっという間に、洞穴から立ち去っていった。

 いきなり出ていった成体まりさに、子まりさ達もざわめくが、まりさは気に掛けない。

 大きさ的に1番やっかいだったれいむは森へ突き落とした以上、後は余興のようなもの。自分の子供が1人いなくなったぐらいで、状況はまるで変わらなかった。

 子れいむを食べた赤まりさの周りに、他の赤まりさや子まりさも集まっていく。

 あれほど美味しいと絶賛している食べ物はどんな味なんだろうと、好奇心が刺激される。

 予想通りの光景に、まりさの口はますますにやけていった。

「おかあさんわたしもたべたいよ!」
「たべたい!」
「たべさせておかあさん!」

 次々に欲しがる赤まりさ達、その光景に、立ち去らなかった成体まりさ達は寒気を覚え、ありすとゆちゅりーは最悪の考えが思い浮かんだ。

「ま、まりさ……まさか」
「む、むきゅー……」

 2匹の声も気に掛けず、まりさは子供達に食べ物のありかを示した。

「いいよ、あと5つだからみんなでゆっくりたべてね!」
「いやぁあぁあぁぁっ!!」
「むきゅぅうぅうぅうううぅっ!!」

 まりさの視線の先にいたのは、潰されて動けなくされていた子れいむ達5匹だった。




「いただきますー」
「いやぁあぁぁぁっ! たべないでぇえぇえぇええええっ!!」
「はむ……もぐもぐ……うめぇ! メッチャうめぇ!」
「いやあぁぁああっ! れいむのからだがぁぁああぁぁっ!!」
「どうじでぇ! さっぎながよぐじでだのにぃいいぃいっ!」
「うめぇ! メチャクチャうめぇよ! ぜんぶたべるね! おいしくたべるね!」
「いやぁぁあぁぁああっ! れいむをたべないでぇぇええぇえっ!!」
「わたしのこどもたちがぁぁあぁぁっ」
「むぎゅぅうぅううううぅううっ!!」




「あ……ああ……」
「……むきゅ」

 目からも口からも液を漏らし、放心しきっている2匹。

 2匹の子供はもうどこにもいない。

 れいむに頑張って産んでもらった6匹は、少しの餡子も残らずまりさ達に食べられていた。

 残ったのは、不味いと捨てられたリボン5つだけだ。

『しあわせー♪』

 食後の余韻に浸っている子まりさ達。今まで食べたこともない美味さにご満悦らしく、全員が全員朗らかな顔をしている。

 しばらくすれば、この味が忘れられず共食いを繰り替えることになるだろう。

 虚ろな目の2匹に、まりさがゆっくりと近づいていった。

「……ゆっゆっゆっ」
「……なんのよう、とかい派はいのちごいなんてしないわ」
「ころしたかったらころして……」

 目の前にいるまりさに目を合わせないまま言う2匹、既に生きる喜びを失っている。

 沖に打ち上げられた魚のように反応の薄い2匹に、まりさはつまらなげに唾を吐くと、2匹に餌を与えることにした。

「れいむはいきてるよ」
「……ほんとうに?」
「……むきゅ」

 わずかながら、2匹に生気が戻ってくる。

 その反応を見て、まりさは憎たらしげに唇を噛んだ。

「そんなにれいむとゆっくりしたいの! わたしはどうでもいいの!?」
「え? なにをいってるのまりさ? とかい派のわたしにもわからないわよ」
「むきゅー……」

 ありすとゆちゅりーはまりさとれいむを比べた覚えはない。ただ家族が生きていると言われたらごく自然と嬉しくなるものだ。

 しかし今のまりさにそんな常識は通用しなかった。

 ありす達がれいむに反応するたびに、過剰に意識してしまう。

「ありす達はわたしとさいしょにゆっくりしたんだよ、なんでわたしとわかれたの! どうしてれいむをえらんだのぉっ!!」
「……」
「……」

 ありす達の目が冷ややかなものに変わっていく。

 子供が出来た時、ありす達はまりさを捨ててれいむを選んだわけではなかった。

 単に、まりさの相手に悪いと思い、気を遣っただけだ。

 なにより最初に別れると言い出したのはまりさなのだ。

 2匹にとって、目の前で叫ぶまりさはゆっくりでない異端の何かに感じられた。

「……」

 突然、黙り込み、ただ下を見続けるまりさ。異常な行動に、ありす達の不安が高まって
いく。

 まりさにとってありす達はもうどうでもいい存在だった。自分でなくれいむを選ぶゆっくりなんて、まりさからすればいなくても問題ない。

 ただ、せっかくだから考えつく限り苦しめて殺したいと考えていた。

「……ありす、れいむとこどもをつくったの?」
「え? そ、そうよ! とかい派で……りはつな子にそだづ予でいだっだのよ! それが……それが……!」

 後半は涙混じりで擦れている。

「ぱちゅりーも……?」
「……むきゅー」

 そこまで聞いて、まりさは視線を戻す。

 顔に浮かんでいたのは、あの鼠口だった。

「ありすは、ぱちゅりーを愛してないの?」
「むきゅー!?」
「な、なにいいだすの! そんなわけないじゃない!」

 2匹の頬が赤く染まる。

 れいむやまりさよりこの2匹の付き合いは長く、関係の密度もより濃い。

 ありすがゆっくりゃ達に襲われた時はゆちゅりーの機転で助かり、またゆちゅりーが寝込んだ時は、ありすがずっと看病していた。

 れいむ、まりさを含めた4匹の中では1番愛し合っている2匹だった。

「それじゃ、なんでありすとぱちゅりーは愛しあわないの?」
「ちょ、ちょっと!」
「むきゅー……」

 落ち込むゆちゅりーに、激怒するありす。体の弱いゆちゅりーでは子供を産むことは出来ない。ありすはゆっくりの中でも性欲の強い種、1度興奮したら自分を抑えることは出来なくなる。

 そんなありすをゆちゅりーが抑えられるわけもなく、子供を作るのは他のゆっくりとで、と2匹は話し合って決めていた。

 その事は、まりさも知っている筈だった。

「わざわざわたしたちのきずをえぐってたのしいの? まりさもとんだ田舎ものね!」
「……まりさ、ひどい」

 2匹から責められても、まりさの口は変わらず鼠口のままだった。

「まりさはそんなことしらないよ! 愛しあってるなら愛しあったらいいよ!」
「ちょ!」
「むきゅ!?」

 予想外の台詞に動揺していると、2匹を子まりさ達全員が囲っていた。

「……ま、まさか」
「ゆっくり愛し合ってね!」

 楽しそうに飛び跳ねるまりさ。家族全員で脅しながら、ありす達に交尾を要求していた。

 愛し合いに興味があるのか、子まりさ達は目を輝かせて注目している。一方、成体まりさ達は、もはや恐怖に震えながらまりさに逆らわないように、言われたことを実行しているようだ。

 周りから来る圧力に、ありすは思わずたじろいだ。

 このまま無理矢理、交尾してしまえば性欲溢れるありすに攻められ続け、ゆちゅりーは死んでしまうだろう。

 どうにか逃げる方法を考えていると、ゆちゅりーがありすに皮を擦り合わせてきた。

「ちょ、ちょっとぱちゅりー! どうしたの! やめてよ!」
「むきゅー……。いいの、ありす」
「なにがいいのよ! とかい派のありすにもわかるように言って!」
「……さいごに、せっきょくてきにありすと愛しあって死ぬほうほうでいいわ」

 ありすの動きが固まる。

 ゆちゅりーは変わらず、皮を擦り合わせていた。

「や、やめて! とかい派のありすはそんなの望んでないわ!」
「ありす……」
「やめてぱちゅりー! やめてぇっ!」

 いくらありすが言ってもゆちゅりーは止めようとしない、もはや覚悟を決めていた。

 抵抗しようにも逃げられる場所もなければ、周りは囲まれている。

 次第にありすの顔全体が赤く染まっていき、息が荒くなっていった。

「はぁ……はぁ……」
「……むきゅ」
「はぁ……」

 覚悟を決めたとはいえ、普段と違うありすの様子に怯えるゆちゅりー。

 ありすの目は徐々に血走っていき、遂に我慢の限界を超えた。

「ぱ、ぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱちゅりー!」
「むきゅーっ!!」
「ぱ、ぱちゅりー! 愛してるのぱちゅりー! ずっと愛し合いましょおおおぉおっ!!」
「や、やさしく、やさしくしでぇえぇええぇぇっ!!」

 上に乗り掛かられ、予想以上の激しい攻めにゆちゅりーの目は飛び出そうだ。

「すごいね、はげしいね」
「これじゃゆっくりできないよ」
「ゆゆっ、でもおわったあとはすごいゆっくりできるよ!」
「ほんとうに!」

 愛し合い始めた2匹を、子まりさ達はまじまじと観察していく。

「ゆっゆっゆっ!」

 まりさは笑いが止まらない。これでゆちゅりーは死ぬだろうが、何匹かの子供は産まれるだろう。

 まりさはその子供を、赤まりさと子まりさ達に食べさせるつもりで、2匹を嗾けたのだ。

「ああぱちゅりーぱちゅりーっ! ほんとはずっとこうしたかったの!!」
「む、むきゅうぅうぅっ!! わ、わたしもおぉおおぉおああああああぐるじいいぃいいいっ!!」
「ゆっゆっゆっゆっゆっゆっゆっゆっゆっ!!」

 興味本位の目に晒されながら。
 喘ぎと苦痛と笑い声が、洞穴に響き渡った。






 後編


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最終更新:2008年09月14日 05:10
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