魔理沙×ゆっくり系4 ゆっくりの身の程

403 :名無したんはエロカワイイ:2008/09/13(土) 01:00:12 ID:vPyZEYMF0
   生物(いきもの)じゃなくて食物(たべもの)だもんな
   いや、ナマモノか? 
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 食物でしょう。



  ゆっくりの身の程



 魔法の森の奥で、一人の少女がバスケット片手にきのこ取りをしていた。
 黒い三角帽子に黒いエプロンスカート、波打つ金髪にちょっと勝気な瞳。
 いわずと知れた霧雨魔理沙である。
「今日はなかなか実入りがいいぜ……」
 フンフンと鼻歌を歌いながらバスケットを満たし、森の奥へと歩いていく。
 と、いきなり横手からとげとげしい声をかけられた。
「ゆ! おねえさん、やめてね!」
「そうだよ! れいむたちのじゃまをしないでね!」
「ゆっくりとあやまってね!」
「あやまらないとひどいんだぜ!」
 魔理沙は驚いて振り向いた。そこにいたのは、いくつもの饅頭たち。
 いや、ゆっくりれいむとゆっくりまりさの群れである。
「は……?」
 魔理沙は目を点にして立ち止まる。といっても、ゆっくりの存在に驚いたからではない。
 森にゆっくりが出始めてから、もうずいぶんたつので、その存在には慣れている。
 驚いたのは、そのれいむとまりさたちの態度に、だった。
 はっきり言って、魔法の森における魔理沙の生態的地位は――

 王。

 のそれである。マスタースパークを撃つまでもなく、弾幕をほんのちょっと張るだけで、妖怪山賊の類でも逃げていく。
 いわんやゆっくりにおいておや。
 この森に住むゆっくりの中で、本家魔理沙の力を知らないものは、一匹たりとていないはずだった。
 だが、この饅頭たちは……
「ここはれいむたちのゆっくりプレイスだよ!」
「そーらよ、ゆっくちぷれいちゅだよ!」「ぷれいちゅ!」
「みんなでゆっくりキノコとりをしてるんだから、きちゃだめだぜ!」
「だめだぜ!」「らめらじぇー!」
「「「「ゆっくりあっちへいってね!!!」」」いっちぇね!」
 れいむ家族もまりさ家族も、口をそろえて言う。舌足らずな赤ゆっくりだけはちょっと遅れる。
 魔理沙はぽかんとそれを見つめていたが、「んー」と唸ってこめかみをぽりぽりかき、聞き返した。
「おまえら、ひょっとしてよその森から来たか?」
「ゆ? そうだよ! きょうついたばかりだよ!」
「だから、とってもつかれているんだぜ!」
「でも、こんなにきのこのいっぱいあるゆっくりプレイスをみつけられたから、ゆっくりしているよ!」
「「「「「ゆっくりしているよ!!!」」」りゅよ!」
 そう言ってなんのつもりか、にゅいにゅい、と二度ほど背伸びをし、
「ひさしぶりのゆっくりだから、ゆっくりするの!」
「するの!」「ちゅるのー!」
「ゆっくりとね!!!」
 そう言って、勝ち誇るようにふんぞり返った。
「はぁー……」
 なんというか、ゆっくりのゆっくり宣言のフルコンボを食らった感じで、唖然とする魔理沙だった。
 しばらくそうしていたが、キノコ取りをしていたことを思い出した。
 で、しゃがんでそこらのキノコを、ひょいひょい、と取った。
 当然、一帯をゆっくりプレイス化していたれいむたちは、激怒した様子で喚きだした。
「ゆゆゆ! れいむのゆっくりプレイスだっていったよね!」
「はやくやめてね! やめて、とらないでね! とらないでね! ゆーーーーーっ!」
「やめろっていってるんだぜ! ゆるさないんだぜ! むぅーーーーっ!」
「やっつけるんだぜ!!!」
 とうとうれいむとまりさたちは魔理沙に殺到し、体当たりを始めた。それなりに重いやわらか物体が、もこんぼこんどよんぶよんと、魔理沙の肩や背に当たる。
 もちろん、痛くはない。
 だが、うざい。
 魔理沙はため息をつき、ひとことだけ警告してやった。
「私は生き物。お前たちはそれ以下。物を食うな。わかったか?」
「ゆ? なにいってるの?」
「わけがわかんないんだぜ!」
 もこんぼこんどよんぶよん。
 魔理沙は決意した。
 顔の前に人差し指を立てて、唱える。
「Зола для золы, пыли, пыли, бун к булочке.」
 ぽっ、と爪の先に光がともった。
 その指で、一頭の母れいむの額に触れる。
「ゆっくりあっちへいってね! ゆっくりしんでね! ゆっ……」
 叫びながら自信満々で体当たりしていたれいむが、触れられた途端、ぽてん、と地に落ちた。
 傷はない。打たれたわけでもない。病や薬に冒されたようでもない。
 ただ、のたりと落ちた。
 勝気だった表情はそのままだ。目もしっかりと見開かれている。ただ、その瞳にもはや光はない。プラスチック玉のように無機質に景色を映しているだけ。
 バレーボールほどの丸い体が、わずかに傾き、のろのろと平らに潰れていく。
 その姿に、周りのゆっくりたちが驚き、駆け寄った。
「お、おかーさんん!?」「おかしーゃぁぁん!」
「れっ、れいむ? どうしたんだぜ?」
「ゆっくりしてね、ゆっくりげんきをだしてね!」
 話しかけたり、揺さぶったり、頬ずりしたり、懸命にぺろぺろとなめたり。
 ゆっくりにできる、精一杯の方法で、気遣ってやる。
 だが、反応はない。まったくない。悲鳴やうめき声さえも。
 即死したのだろうか。そう思い込んだ子供たちが、涙を流して魔理沙を罵倒した。
「れ゛い゛む゛の゛おがーぢゃんに、なにずるのぉぉぉぉぉ!?」
「ゆっくりできないひどだね! さいていだねぇぇ!!」
「いっしょうゆっくりしないでねぇぇぇ!」
「ゆっくりごろじいぃぃぃぃぃ!!!」
「私は、人間」
 我関せずとばかりにぷちぷちとキノコを取っていた魔理沙が、肩越しに言った。
「お前たちは、それ以下。――Зола для золы, пыли, пыли, бун к булочке.」
 再び、指先の光。今度はゆっくりまりさに触れる。
「ゆっくりじね! ゆっくりじ……」
 飛び掛る途中で触れられたまりさは、ごろごろん、と地に転がった。
 その顔は、れいむと同じだ。何の表情もない無機質。いや――
 ただの、有機物。
 食物。
 そう、饅頭であるゆっくりたちが、饅頭本来の姿に戻ったのだ。思考も運動もなく、幸福も不幸もなく、生も死もない、ただの菓子に。
 それは魔法の力。正確には、魔法を打ち消す力。
「魔法使い」である魔理沙にそれができて、なんの不思議があろう?
 だがゆっくりにはわからない。魔法はおろか、力の差すらわからない。
 おのれたちがいかに不自然な存在であるか、すら――。
「おかーしゃんたちをゆっぐりがえしでねええええ!」
「「「がえじでねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」」
 殺到するゆっくりたちにむかって、魔理沙はくるりと振り向いた。
 両手の指を花びらのように向ける。
 呪文――そして光。
 その瞬間、光に触れられたゆっくりたちは、啓示を受けたように悟る。
 れいむたち――
 まりさたち――

 お ま ん じ ゅ う ?


 ただちに悟りは消える。
 なぜなら、饅頭は悟らないから。
 ただ柔らかな和菓子と化して、ぼたぼたと落ちた。

「ん~ふふ~ふふ~♪ さあ、今日はこれぐらいでいいかな。……っと、いけないいけない」
 キノコ取りを終えて立ち上がった魔理沙は、周りの光景を見てつぶやいた。
 八卦炉を取り出して、何もない地面に向け、発砲する。
 魔砲・Fマスタースパーク。絶大な閃光があふれ、森の空が一瞬暗くなる。
 後には、煙を立てるおおきな穴。
「食べ物を粗末にしちゃ、いけないからな」
 転がっていたたくさんの饅頭を、足など使わず丁寧に手で穴に放り込むと、ようやく満足した様子で、少女は去っていった。


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最終更新:2008年09月14日 05:17
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