一人暮らしなのに、家に帰ると出迎えがあった。
「ゆっくりしていってね!!」
「ここはれいむのおうちだよ!!おじさんも
ゆっくりしてね!」
やれやれ、またか。最近多いな。
相手にしているときりがないので、無視して先ほどコンビニで買ってきた「ゆっくり専用ごみ袋」を取り出す。少々大きめで、丈夫な素材でできている代物だ。
反応がないことに不満で、足元にぽよぽよぶつかるゆっくり2匹をつかむと、ゴミ袋に入れる。「ゆっくりだしてね!!」などとほざいているが、例によって取り合わない。
中にはいるとお母さんれいむとその子ども達が数体好き勝手に遊びまわっていた。
「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」
まったく。
「おじさん!!たべものがここにはないよ!ゆっくりできないよ!」
「おもちゃもないよ!!つまらないよ!!」
「ゆっくりたちにごはんとおもちゃをあげてね!!」
「「「あげてね!!」」」
ゆっくりが大量に増え住居侵入被害にあうことも珍しくなくなったため、一般家庭でもゆっくり対策を講じることが珍しくなくなった。我が家もその一環として食料庫や貴重品をしまう箱にはカギをかけているため大した被害はなかったのだが、ゆっくりたちにはそれが不満だったらしい。
そんなにつまらないなら諦めて出て行って欲しいのだが、この時期天敵の雨を凌げる場所はやはり欲しいらしく
「でもここはあめがこないから、れいむたちのおうちにするね!!」
「ここでみんなゆっくりしようね!!」
「「「「ゆっくりしようね!!」」」」
まぁ、これもいつものことなのでスルー。ずうずうしく「ごはんまだ?」ところをあっさりと捕まえると、ゴミ袋にポイポイ入れていく。ゆっくりたちは袋の中で「ゆっくりはなしてね!!」「ゆっくりできないよ!」とうるさいが、こいつらに事情説明しても事態は好転しないのはよーくわかっている。ひととおり入れたところで袋の口を縛り、袋にはまだまだ余裕があったがゴミ回収場に向かう。、
階下の回収場にはいつの日からか「もえるゴミ」「もえないゴミ」「資源ゴミ」のほかに「ゆっくり」のカテゴリーが追加されており、既に何個か専用袋が鎮座している。ご近所も災難だな。
袋の中からはまだゆーゆーうるさい声が聞こえる。このままでは近所迷惑になるので、早いところ静かにしてもらおう。袋をその場で回転させ、勢いをつけたところで道路に叩きつける。
どすんっ。
「「「「ゆ゛ーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!?」」」」
「や゛め゛てぇえええええええっ」
「ゆ゛っぐりでぎな゛いいいッ」
構わず何度も打ちつける。
どすんっ。
どすんっ。
どすんっ。
このようにして、餡子ペーストになるまでゆっくりどもをまとめて潰すのだ。なんでも、このために袋は丈夫に作られているのだとかそうでもないとか。
しかし餡子って意外と重いな。ちょっと腕が疲れてきたので腕を休めていると、中からの声は随分小さくなっていた。結構な数がただの餡子に成り果てたらしい。
「な゛んでごんな゛ごとにぃいいっ」
「ゆっぐりしだいよぅ・・・・」
なんでってまぁ、人様の家に勝手に上がりこんで自分の家宣言じゃなぁ。境遇を考えればちょっとかわいそうだが、もうちょっと愛嬌の振りまき方と遠慮を学んでくれ。
せめて楽に死なせてやるのがやさしさか。ということでトドメ。
どすんっ。
沈黙した餡子袋を回収場に置いて部屋に戻る。ストレス解消にならないでもないが、こうちょくちょくやらされるのも難儀だな。
ため息をつきながら、とりあえず座布団に腰を下ろすと
「ゆ゛っ」
・・・尻にくぐもった音と何かがつぶれる感触。見てみると、小さなゆっくりの成れの果てがあった。どうも1体ほど隠れていたのを見落としていたらしい。おかげで床にあんこが汚れてしまった。また面倒が増えた。
一人暮らしの寂しい身、ちいさいの1体ぐらいなら飼ってやらないこともないんだけどな。惜しいことをしたかな、と思いつつ、不幸なゆっくりの死体を始末した。
ゆっくりが現れてからというもの、小さな面倒が増えたものだ。
おわり
最終更新:2008年09月14日 05:22