ゆっくりいじめ系91 あるゆっくりアリスの記録2

以前のあるゆっくりアリスの記録の続きです。
未読の方はそちらを先に読むことをお勧めします。



 ゆっくりアリスが街から逃げてきて、今日でちょうど一週間.。
 この一週間、アリス達はずっと霊夢の家で誰かが戻ってくるのを待っていた。
 しかし、一週間降り続いた雨同様に、初日にお母さんゆっくりが戻ってきただけだった。
 なお、その街を尋ねた小悪魔がパチュリー伝に紅魔館の従者買い物を頼んだのだが。
「おがじかっでもだう~♪」
 と門の前で駄々をこねて、一緒に行ったゆっくりれみりゃとフランがいなくなった。
 と帰ってくるなりメイド長が顔尾真っ青にして騒いでいたらしいが、アリス達には関係がない。
 巣の中ではアリス達と霊夢が仲良く食事をとっていた。
「ありす、今日もゆっくりしようね!!!」
「! れいむがゆっくりしたいなら、いっしょにゆっくりしてあげる!!!」
「シャンハモユクゥリスル」
「ホラーイモスル」
 ゆっくり霊夢の家でしばらく暮らすうちに、アリスはお母さんゆっくりとも仲良くなった。
 それは、相手がもともと無垢なまでに友好的なゆっくり霊夢だった所為でもあるが。
「きょうは、あめもやんだから、おさんぽにいこう」
「うん、いっしょにいってあげる」
「シャンハイモィク」
「イクー」
 一週間も経つと、四匹は今までと同じように生活していた。
 この前の事を忘れた訳ではないが、ゆっくりという生物上あまり考えなくなっていた。
「トォクマデキィタネェ!」
「ここならゆっくりできるね!!!」
「いっしょにゆっくりしてあげるよ!」
 訪れたのは、自分達が住んでいる場所の端の辺り。
 今まで来た事もない所まで来たのは、周りに仲間が居なかったからかもしれない。
 ゆっくりのいない森同様、濁りの全くない澄んだ川のほとりまでやってきた。
 その近くを、四匹で駆け回る。
 その途中、アリスが何かに気付いた。
「ゆっ、まりさ! まりさだ!!」
 近くで同じように一匹のゆっくり魔理沙が蝶を追いかけていた。
「ゆっ! こんにちは! ゆっくりしていってね!!」
 魔理沙が挨拶をする。
「まりさ! いきてたんだ! よかったね!」
 ものすごい勢いで、ゆっくり魔理沙に抱きつくアリス。
 対する魔理沙は苦しそうだ。
「ゆゆ! まりさありすたちと、はじめてあったよ! ゆっくりちがいだよ!」
「! しってたよ、すごくにてたからびっくりしただけだよ!!!」
「そうだったの! ゆっくりしていってね!!!」
 ゆっくりに似てるも似てないもありはしないが、それでお互い納得するところがゆっくりらしい。
「いっしょにゆっくりしようね!!!」
「うん! まりさもゆっくりするよ!」
 それからは、日が沈むまで五匹で仲良く遊んだ。
 太陽は皆とサヨナラしたくないから赤くなって泣いている、だから夕焼けは赤いんだ。
 どこかで聞いた言葉、まさに今のアリス達の心情を表しているようだ。
「もうまっくらだね」
「おうちかえろうね」
「! こっ、ここからならありすのおうちがちかいよ!!
「ほんとう? じゃあありすのおうちにとまるよ」
「れいむもおとまりしていーい?」
「うっ、うんいいよ! ゆっくりしていってね!!!」
「アリスヨカァタネェ」
「オーチカエルノ、ヒサシブリダーネ」
 そういわれて、長い間家を空けておいたことに気が付いた。
 幸い、自分の家は他のゆっくり達に取られてはいなかった。
 ほっと、安堵の息を漏らすアリス。
「ここがありすのおうちだよ」
「ォウチヒィサシブリ」
「ヒーサシブリ」
「うわぁ、大きいね!」
「ここならゆっくりできるね」
 そういって喜んでいる二匹を、近くの川に連れて行くアリス。
 顔がずっと緩みっぱなしだ。
 初めて自分の家に友人を招いたことで、舞い上がっているらしい。 
「よごれてるとふけつだよ! とかいはのありすは、まいにちここでよごれをおとしてるの!」
「ァラウノ!」
「キレーニナルヨー!」
 まず、三匹が先に川に入る。
 それを見て、霊夢と魔理沙も川に入っていく。
 この時期の川は冷たいが、たくさん動いて体が温まっていた五匹には逆に心地いいものだった。
「つめたくてきもちいいね!!」
「ゆっくりできるね」
「あんまりつかってると、かわがふやけちゃうからもうあがろうね!!」
「「「「「すっきり!!」」」」」
 川から上がって、すっきりしたゆっくり達。
「きょうはいっぱいうごいたね!!!」
「たのしかったね!!!」
「まりさ! あっ、あしたもみんなでゆっくりしようね!!」
「うん! あしたもごにんでゆっくりしようね!!!」
 嬉しい! 初めて自分から遊ぶ約束が出来た。
 今、ゆっくりアリスの頭は幸福感で一杯だ。
 一週間前の悲劇と比べても、こちらの幸福感の方が遥かに大きかった。
「ま、まりさー!!」
 あまりの嬉しさにゆっくり魔理沙に抱きつくアリス。
 お返しに、魔理沙もじゃれ返す、またお返しにアリスがさらにじゃれ返す。
 何時しかそれは心地よい振動となって、二匹を包んでいた。
「ま、まりさ! まりさ!」
「あ、ありす! ありす!」
「ままま! まりざー!!!」
「ありずー!!!」
 偶発的に始まった二匹の交尾。
 二匹の段々と息遣いが荒くなっていく。
「ま゛ま゛ま゛っま゛ま゛り゛ざ!!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛り゛り゛り゛り゛り゛ず! あ゛り゛ずー!!!!」
 濃密な時間は二匹の絶叫と共に終了を迎えた。
「すっきりー! ……?」
 冷静になったアリスの目に映るのは、黒く朽ち果てた物体。
 先ほどまで仲良く遊んでいたモノであり、初めて遊ぶ約束をしたモノでもあった。
 同時に、ありすにとっては初めて自分の力で作った友人であった。
「まっまりざー!!! まりざー!!!」
 他のゆっくりより多少上品な言葉を紡ぐ口、今その口は絶叫を紡ぎ続けている。
 もちろん、朽ち果てたゆっくり魔理沙は応えられるはずもなく、アリスの懸命な訴えも無言で返される。
「うう……。まりさー、もっとゆっぐりしたかったよー!」
「アリィスナカナイデ」
「ナーカナイデ」
 どんな時でも、アリスに優しい声をかけてくれる二匹。
 こんな時でも、アリスに優しく声をかける。
 その声も、今のゆっくりアリスには届かなかった。
「アリス、げんきだしてね! これをみてね!!」
 ゆっくり霊夢の声、少し興奮しているその声に、恐る恐る振り向く。
 そこには、今なお横たわるゆっくり魔理沙の亡骸。
「ゆゆ!?」
 先ほどと違うのは、その頭から茎のようなものが伸びていたこと。
 当然、アリスにはこれがなんだか分からなかった。
「ゆ! これなに!? ゆ! ゆゆ!!」
 突然、友の亡骸から飛び出した茎、それは二重のショックとなってアリスを更に混乱させた。
「おちついてね! これはあかちゃんができるんだよ!!」
「……? あかちゃん? !!ありすとまりさのあかちゃん!!!」
「そうだよ! ありすとまりさのあかちゃんだよ!!」
「あかちゃん……」
 アリスが、よく物陰から見ていた光景。
 お母さん霊夢がたくさんの子供を連れてゆっくりしている光景。
 そんな光景を夢見ていたアリスにとって、自分の子供が出来る事はとても嬉しい事だった。
「ありすのこどもだよ!! かぞくでゆっくりできるよ!!」
「ァリスゥ、ヨォカッタネェ」
「ヨカタネーアリスー」
「うん!! しゃんはいもほーらいも、れいむもいっしょにゆっくりしようね!!!」
「「「ゆっくりしようね!!!」」」
 四匹のゆっくりの声に共鳴してか、茎の先の赤ちゃんゆっくりが我先に地面に体をつけ始めた。
「ゆっくりちていってね!!!」
「ゆっくりちようね!!!」
「ゆっくりできるね!!!」
 十匹のあかちゃんゆっくりは全てゆっくり魔理沙だった。
 どれも元気で、さっそく姉妹で追いかけっこをし始めた様だ。
「ゆゆ! まりさだ! あかちゃんまりさがいっぱいいる!!! みんな、おかあさんとゆっくりしようね!!!」
「シャンハイトモユックリシヨウネ!!」
「ホーライトモユックリシヨウネ!!」
「「「うん、ゆっくりするよ!!!」」」
 アリスの一番大好きだったゆっくり魔理沙、それと同じ姿の子供達がと一緒にゆっくりできる。
 仲間はたくさん失ったけれど、今の自分はもうさびしくない。
 ゆっくり霊夢にシャンハイ、ホーライ、そしてたくさんの自分の子供達。
 そう考えたアリスは、今が幸せの絶頂だった。
 彼女が想像するこれからは、まさに薔薇色の生活だった。
 しかし、絶頂よりも高いところは存在しない。
 あとはひたすら下るだけである。
 翌日、アリス達は子供たちを連れて森の中をお散歩中。
「ゆっくりついてきてね!!! ありすはとかいはのゆっくりだから、しずかでゆっくりできるところをたくさんしってるんだよ!!」
「おかあさん、しゅごい!!!」
「みんにゃでゆっくりできるね!!!」
 みんなでワイワイ、あっちを見てガヤガヤ、こっちを見てアハハと笑う。
 時間が経つのも忘れて森の中を歩き回る。
 気が付けば、見知らぬ人里まで足を伸ばしていた。
 以前の記憶が蘇る。
 悲しい記憶と同時に、アリスはあることを思いついた。
 自分のあかちゃんを見てもらいたい。
 こんなに可愛いのだ、きっと人もこの赤ちゃん達に夢中になるに違いない。
 こんどこそ一緒にゆっくりできるかもしれない……。
「そうだ! ありすのあかちゃんたちをもせてあげよう!! きっとかわいいってゆっくりしてくれるよ!!!」
 あの時と同じ様に、上機嫌で他の三匹に話しかけるアリス。
「そうだね! ありすのこどもはかわいいから、ゆっくりさせてあげられるね!!!」
「うん! それにこどもができたら、きんじょのひとにみせるのがとかいはのまなぁなんだよ」
「アリィスハトカイハダモンネェ」
「トカイハーノ、アリスカコイー」
 アリスに賛同する三匹を尻目に、子供達はいまいち理解していない。
「ひとってなぁに?」
「ゆっくりできるの?」
 こんな質問が来るのも当然。
「ひとっていうのはね、あそこにすんでいるるの。ありすたちよりもずっとおおきくて、おいしいものもたくさんつくってくれるんだよ!!!」
 そして、アリスがこのような答えを返すのもまた当然。
「ゆゆ! おいちいたべもの! おかあさん、まりしゃもあそこでゆっくりしたい!!!」
「ゆっくりしたい! したい!」
 ゆっくりしたい、の大合唱。
 つられてアリスもいっしょにゆっくりしようね、と叫ぶ。
 思えば今日は天気も良い、雲ひとつない青空だ。
「ゆっゆ♪」
 それを見てアリスは思った。
 今日はゆっくりできるかもしれない、こんなに天気が良いんだもの。
 そのままの気分で、森を出て人里に入る。
 幸い、以前の街とは違ったようで、出会い頭に捕らえられると言うことは無いようだ。
「ゆゆ! おかあしゃん、あれはなぁに?」
 一匹の魔理沙の視線の先、ちょうど正面にある商店の中にはおいしそうなお刺身。
 海のない幻想郷だが、何故か海産物も店に並ぶ。
 どれもこれも値は少し張るが、買っていくのは紅魔館の従者か金庫に悠々と進入できる八雲家の人が殆どである。
 後はお祝い事に買いに来る人なので、その位の値段は案外丁度いいモノなのかもしれない。
「おいしそうだね!!」
「れいむもたべたいよ!!」
「シャンハイモタベタィ」
「ホーライモタベタイ」
 お決まりのように、主人は配達で留守にしている。
「ゆっくりあかちゃんのおいわいに、これをもらってみんなでたべようね!!!」
 そう言って勢いよく台の上に登り、以前と同じ要領で地面に落としていく。
 初めに落としたのは大きな赤みのマグロ一柵。
 下で待っていた子供達が勢いよくむしゃぶりつく。
「おいちい!! すっごくおいしいよ!!!」
「むしゃむしゃ♪ お~いしい!!!」
 狭いながらも大量に並べられていた海産物は、殆どが地面に落とされた。
 しかも、次から次へと落ちてきたモノに食いつくので、殆どが食い散らかした状態で地面に転がっていく。
「ゆゆ!! れいむ! しゃんはい、ほーらい!! これはとってもおいしそうだから、ありすたちでたべようね!!!」
 一番上にあったソレを下の台に落としながら、今や潮の香りだけ残る台の上でソレを食べ始める四匹。
 食べているものはマグロの大トロ、随分な大きさのあるそれだが、ちょうど運動をした後の四匹は苦労もなく飲み込んでいく。
「むしゃ、むしゃ♪ !!すっごくおいっしいよ」
「うっめぇ!! これめっちゃうめえ!! ありす、これでゆっくりできるね!!!」
「オィシィネ、ホォライ」
「ウン、シャンハーイモイパーイタベテネ!」
 四匹が食べ終わるのに、時間は余りかからなかった。
 食べ終わった四匹だがまだ食べたりないようで、下に降りて子供たちと一緒に残っているモノを食べ始めた。
 子供と友達と一緒においしいご飯を食べる。
 まさにアリスの夢がかなった瞬間だった。
「れいむもあかちゃんたちも、いっしょにゆっくりs「おい! そこでなにしてるんだ!!」」
 ビクッとしたアリスが振り向くと、一人の男が桶を持って立っていた。
 陰になって顔はよく見えなかったが、アリスはその声でここに来た目的を思い出した。
「ゆゆ!! おじさん、ありすのあかちゃんだよ!! かわいいあかちゃんがうまれたから、みんなにみせにきたんだよ!!」
 上機嫌で答えるアリス。
 心の中では、かわいいねぇ、と言われるのを今か今かと待ち続けている。
「それで、なんでうちの食べ物を食べたんだい?」
 勤めて冷静に男は尋ねる、まるでまだ早いと自分に言い聞かせるように。
「ありすがみつけたの!! きょうはあかちゃんたちがうまれたおいわいだから、これをもらったの。みんなでゆっくりたべてたんだよ♪」
「オーイワーイダヨ!!」
「……これが売り物だって事はわからなかったのかなぁ?」
「しってたよ♪ ありすはとかいはだもん♪ あかちゃんのおいわいにもらったっていったでしょ? おじさんわすれちゃったの?」
「オジサン、ワスレェチャァダメダァヨ」
「……」
「おじさん! おいしかったよ!! とくにいちばんうえにあったのがおいしかったよ!! れいむもゆっくりできたよ!!!」
「みんな!! おじさんもいっしょにゆっくりしてもらおうね!!!」
 アリスがそう一声かけると、今までムシャムシャ食べていた子供達がぞろぞろと男の足元へ集まってきて一言。
「「「おじしゃん!!! ゆっくりちていってね!!!」」」
 早く可愛いね、って言ってもらいたい。
 それを見ながら、満面の笑みで声を出すありすはそう思った。
「ありすたちといっしょにゆっくりしていってね!!!」


 ぐしゃ。

 初めは何の音だか分からなかった。
 残った刺身でも踏みつけたのだろうか?
 そう思って男の足元を見るアリス。
 そこには黒い餡子が飛び散った饅頭と潰れた黒い帽子。
「!!!!!!」
 間違いなく、ゆっくり魔理沙だったモノ、だ。
「あ゛り゛ずの゛あ゛がじゃ゛ん゛がー゛!!! あ゛がじゃ゛ん゛がー!!!!!」
 絶叫をあげるアリス、その声にようやく気付いた霊夢達も叫ぶ。
「どうじでごん゛な゛ごと゛す゛る゛の゛ぉ゛ーーーー!!!!!!」
「ァヤマッテネ!!! ァリスニァヤマッテネ!!!」
「アリスノアカチャンガー、オジサンヒドイヨ!!!!!」
 対する男は、一瞬しまったという様な表情を浮かべた後、極めて冷静に子供達を捕まえ出した。
 まず、周りをうるさく飛んでいるシャンハイとホーライを掴んで握り潰した後、地面に叩きつけた。
 軽く肩を回した後、子供達を捕まえて桶に入れていく。
 ひょいっと摘んでは桶に入れていく男の行動。
 アリス達は男の行動が理解できない。
「おじざーん! ありすのあがじゃんをどーずるのぉ?」
「もちろん売るんだよ。コイツラ全員売りさばけば、お前らが食べた分以上の金になるからなぁ」
 特に小さいうちは皮も柔らかくておいしいんだよ、と男は付け加えた。
「やめでよ、それはありずのあがじゃんだよ!!! たべものじゃないよ!!!」
「ゆっくりはなしてね!!!」
 霊夢が勢いよく男に飛び掛る、分かっていたことだがゆっくりの力ではどうする事もできない。
 勢いよく蹴られて、餡子を吐き出しながら地面に転がっていく霊夢。
「れいむー!!!」
「ゆ……ゆゆ……」
 慌てて駆け寄るアリス、かろうじて意識は残っているようだ。
「よがった! またいっしょにゆっくりできるね!!!」
 ほっと一息つく。
 一安心。
「おがーーーじゃーーーん!!!!!!」
「!!!!!」
 その声で、ようやく思い出したアリスは、声のする方に振り向く。
 丁度最後の一匹と視線が合った。
 ガタン。
 直後に蓋を閉じられる。
 中からは相変わらず、おかあさん、と泣き叫ぶ声が聞こえてくる。
「ありすのあがちゃんをがえしでー!!」
 勢いよく男の下へ跳ねていくアリス。
 しかし、その速さは丁度フットボールのそれと同じだった。
「むぎょう!!!」
 先ほどの霊夢とは比べ物にならない程力強く蹴り出された。
 綺麗な放物線を描いて飛んでいき、霊夢の倍飛んだところで漸く地面にぶつかった。
 男はアリス達に見向きもしないで、桶を持って行ってしまった。
「あ……のあが……が、あがじゃ……がー!!!!」
 未だ餡子がガンガン動く感覚が抜けないまま呆然と呟く。
 仰ぐ空は何処までも青い。
 こんなに良い天気だ、おそらく人も沢山で歩いていることだろう。
 雲ひとつない天気は、男がゆっくりを高く売る事が出来るのを示しているようだ。

                       ~in the Forest~
 痛い体に鞭打って、何とかアリスの家まで還ってくることが出来た四匹。
 家の中に入ると、中央に子供達が昨晩積み上げて遊んでいた石のピラミッドが鎮座していた。
「あっ、ありすのあがじゃん! あがじゃんがー!!!」
 それを見て、近くにいた霊夢に寄り添って泣き叫ぶアリス。
 放っておいたら、何時までも泣き叫んでいるのではないかという程、アリスは激しく泣いていた。
「ゆ?! ゆゆゆゆ?」
 だが、それもここまで。
 嗚咽交じりに震えて泣いていたアリスは、いつの間にか全身を震わせていたからだ。
「れ゛れ゛れ゛れ゛、れ゛い゛む゛ーーー!!!!!」
「ゆゆゆ!! ゆっくりしてね! ゆっくりしてね!!」
 突然の事に慌てる霊夢、しかし直ぐに状況を理解するとアリスと一緒に体をゆすり始める。
 そのまま霊夢との交尾に入るアリス。
 一度経験したことによって、今回はスムーズに事が運んだ。
「ゆ゛ーーーーーー!!!!!」
「う~、すっきり♪」
 満足げな表情のアリスだったが、直後に自分のやった事に気付いた。
「れれ、れいむー!!! だいじょうぶ?!!」
「ゆっ……ゆっ。ゆっくりできるよ!」
 白目を剥いていた霊夢が答える、頭には一本の茎がきちんと生えていた。
「よがったー!! れいむがゆっくりできてよかったー!!!」
 そういってまた抱きつく。
 勿論嗚咽交じりで……。
「ゆゆゆゆゆ?」
「れいぶ! あのごたちのぶんまでゆっくりできるように、あがちゃんいっぱいつくろうね!」
 二回戦の始まりだ。
 朽ち果てないと分かったアリスは更に子供を作る気らしい。
「ありず、まっでね! ゆっぐりしようね!」
「れれれ、れいぶーーー!!!!」
「ゆーーーーー!!!」

「ゆ゛ーーーーーー!!!」

「れ゛れ゛れ゛、れ゛い゛ぶだい゛ずぎた゛よ゛ーーー!!!!!」
「う゛わ゛ぁ゛ーーーーーーーーー!!!!!!!」
 四回目の交尾でとうとう霊夢は朽ち果ててしまった。
 その頭には四本の茎。
 全部で三十匹は下らないだろうというほど、その茎にはたくさんの赤ちゃんゆっくりが下がっていた。
 しかし。
「れいむ!! れいむ!! ゆっくりしようよ!! なんで? なんで?」
 霊夢が朽ち果てて、漸く冷静になれたアリス。
 その茎には目もくれず、ただ目の前の亡骸に呼びかける。
 自分の泣き声以外聞こえない巣の中。
 今はもう動かない、初めて一緒にゆっくり出来た友達の亡骸に必死になって呼びかける。
「れいむーーーーー!!! ひどりはいやだよ!!! もっといっしょにゆっぐりじたいよーーーーー!!!」
 顔を真っ赤にして泣き叫ぶアリス、思わず亡骸に擦り寄る。
 しかし、亡骸は何も答えない。
 沈黙するだけだある。
 しかし、その拍子に茎の先から一匹のゆっくりが落ちてきた。
「ゆっくりちていってね!」
 元気よく声を出す赤ちゃん霊夢。
 泣き声と沈黙のだけだった空間に、暖色の声が響く。
 その言葉を聞いて上を見上げるアリス。
 そこには自分の子供達、それも以前よりも沢山の子供達がぶら下がっている。
「ゆ、ありすのあかちゃん。ありすのあかちゃんだ」
 泣くことを止め、笑顔を造りもう一度茎を見る。
 ……。
 一つ落ちた。
「ゆっくりちてね!!!」
 また一つ落ちる。
「ゆっくりちようね!!!」
 どんどん落ちてくる。
「「ゆっくりちていってね!!!!」」
「アリスゥノアカチャンダァ」
「ミンナーユックリシヨウネー」
 横を見るとさっきまで伸びていたシャンハイにホーライ。
 さびしい時もずっと一緒にいた三匹。
 何時だって三匹でいればアリスは寂しくなかった。
 それに、今度は沢山の赤ちゃん霊夢がいる。
 なんだ、自分は一人じゃなかったんだ。
「みんな、おかあさんとゆっくりしようね!!!!」
「「「「「うん!! ゆっくりしようね!!!!」」」」」
 三匹では大きすぎた巣。
 家族が増えた今、まだ余裕はあるがアリスの心の中はいっぱいに満たさせていた。
 今アリスは幸せだった。

 しかし絶頂は過ぎている、今のはただの下りの登り道に過ぎない。
 昇った後はどんな道を通っても、一番下まで降りるしかないのだ。
 折りしも、人里ではそろそろ冬支度を始める頃。
 越冬の準備をするのか、その前にまた人里へ行くのか。
 どちらにしても急がなければならない。
 もし、一度でも転べば、下る勢いは早くなるのだから。

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最終更新:2011年07月27日 23:12
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