ゆっくりいじめ系1970 罪悪感

※初SSです
※一部のゆっくりが愛でられます



「うっめ! めっちゃうめぇ! まじぱねぇ!」
「むーちゃむーちゃ!」
「ちあわちぇぇぇぇ!」

とある村のそれほど広くない畑。
そこには数匹のゆっくりがいた。
俗に言う畑荒らしだ。
親と思われるれいむとまりさが一匹ずつ、あとは赤ゆっくりのれいむ種とまりさ種が数匹だ。
典型的なゆっくりの家族だ。

「おいお前ら、何やってるんだ?」

畑の主と思われる男が畑に入ってきて、ゆっくりたちに話しかける。

「ゆっ! ここはれいむたちのゆっくりプレイスだよ!
 かってにはいってこないでね!」
「「「「「こにゃいでにぇ!」」」」」
「ばかなにんげんさんはさっさとでていくんだぜ!
 そしておかしをもってくるんだぜ!!」
「「「「「もってきちぇにぇ!」」」」」
「いや、ここは俺の畑で、ここにある野菜は俺が育てたものだ。出て行くのはお前らの方だよ」
「ゆっ? なにいってるの? ばかなの? しぬの?
 ここはれいむたちがみつけたかられいむたちのものだよ!」
「ゆっへっへ、やっぱりにんげんはばかなんだぜ!
 やさいはかってにはえてくるんだぜ!
 あたまのわるいにんげんさんはさっさとしぬんだぜ!」
「「「「「ちんでね!」」」」」

どうやら一家揃って愚かな個体のようだ。
しかし男は青筋を立てる様子もなく、冷静なままでいる。

「おばかなにんげんさんはさっさとしんでね!」

親れいむが男に向かって跳ねてくる。
それを見た男は右足を上げて、タイミングを合わせて親れいむの顔面につま先をぶち込む。

「ゆっくりしぶげぇえ!!!?」

サッカーボールのように舞い上がった親れいむは太陽の光を遮り……
少し離れたところの地面に落ちて、ブシャっと音を立てながら餡子を撒き散らした。

「……ゆっ? れ、れいむ!?」
「「「「「お、おきゃあしゃあああああああああん!?」」」」」

親まりさたちは親れいむの死に様を見て、ようやく自分達が危機的な状況にあることを悟ったようだ。
男が親まりさたちのほうに一歩踏み出すと、親まりさは気配を感じて振り向く。

「ま、まりさはわるくないんだぜ!
 れいむとちびちゃんたちがおやさいをたべたいっていったんだぜ!」
「おちょおしゃああああああん!?」
「どおちてしょんにゃこちょいうにょおおおおおお!?」
「うるさいよ! ちびちゃんたちはだまってね!
 おにいさん、ちびちゃんたちはころしていいからまりさはみのがしてほしいんだぜ!」

親まりさは媚びるようなへらついた笑みを浮かべながら懇願する。
典型的なゲスの命乞い。
どうやらこの親まりさはゲスの素質があるようだ。
ゲスを生かして帰せばまた同じ事を繰り返す可能性は高い。
今後の畑荒らしの可能性を少しでも減らす為にも親まりさを真っ先に潰すべきだ、と普通の農家は考えるだろう。
しかし男は……





「ふむ、いいだろう。
 ちびたち全員を潰す代わりにお前は見逃してやる」





と言った。

「おにいさんはものわかりがよくてたすかるぜ!
 まりさはこのままおうちにかえるよ!
 ちびちゃんたちはすきにしていいんだぜ! 」
「おとーしゃんどぼぢでえええええええ!?」
「いやぢゃあああああああああああ!!」
「ゆっへっへ、まりさはおうちでゆっくりするよ!
 ちびちゃんたちはゆっくりしんでね!」

親まりさは巣に帰ろうと踵を返す。

「おい待て!!」
「ゆっ!? な、なんなんだぜ!?
 おにいさんはまりさをみのがしてくれるっていったんだぜ!」
「安心しろ。お前には手を出さないし、傷つけない。
 ただ……こっちを向いたままそこでじっとしてろ」
「ゆ? それだけなんだぜ?」
「ああ、それだけだ」
「わかったぜ! それくらいならおとなしくしたがってやるんだぜ!」

未だに泣き叫んでる赤ゆっくりたちを捕まえて、親まりさの近くまで来る。
そして赤ゆっくりを一匹摘むと、それを親まりさの目の前に持ってきた。

「ゆぅ、おちょおしゃん、れいみゅをたしゅけちぇ……」
「ごめんだぜ、まりさはゆっくりしたいんだぜ!
 だからちびちゃんはゆっくりせいさいされるんだぜ!」
「どぼぢゆぎっ!」

赤ゆっくりを掴む指に徐々に力を込めていく。
指の間隔を狭めるにつれて、赤ゆっくりの顔は膨れて上がり、目玉が飛び出しそうになる。
親まりさの視点では、赤ゆっくりの異様なまでに苦痛に歪んだ顔がよく見えることだろう。

「ぐるぢいよぉ……たしゅけちぇ……
 たじゅげちぇおちょーしゃ……えぎゅぼ!」

圧力に耐え切れず、赤ゆっくりの口や目から餡子が勢い良く飛び出す。
飛び出た餡子は親まりさの顔に満遍なく降りかかった。
男は親まりさの呆然とした様子に構わず、次の赤ゆっくりを手に取る。
そして次々と親まりさの目の前で潰していった。

「いやぢゃ、いやぢゃああああああ!
 ちにたきゅにゃい! ちにたきゅにゃいよおおおおおおおおおお……ぎゃぶ!」
「どぼぢでまりしゃをみしゅてちゃにょおおおおおおおお!
 おとーしゃんのばきゃあああああああああああ……えぎゅ!」
「ちね! おとーしゃんはちねえええ!
 れいみゅをみしゅてちゃおとーしゃんはちねええええええええええ……ぶぎゃ!」
「にょりょってやりゅううう! にょりょってやりゅうううううう!
 おとーしゃんはくるちんでちねええええ! じぎょくにおちろおおおおおおおおおおおおおおお……ぶげぇ!」

全ての赤ゆっくりを潰し終えた後も、親まりさは呆然としたままだった。
男は返り餡子にまみれた親まりさを軽くつついてやる。

「おい、もういいぞ」
「…ゆ?」
「もう帰っていいって言ってるんだよ」
「ゆ! おにいさんありがとうなんだぜ!
 まりさはかえるんだぜ!」

そういうと意気揚々といった感じで親まりさは跳ねて行った。
親まりさが出て行ったことを確認すると、男は赤ゆっくりの残骸を片付けて畑の修復に取り掛かった。














「ゆっゆっゆっ、ばかなおにいさんなんだぜ。
 ほんとうにちびちゃんたちのかわりにまりさをみのがしてくれたんだぜ」

山に戻った親まりさ(以下『まりさ』と呼ぶ)は畑の主に悪態をついていた。
上辺だけの謝罪で、心の中ではこれっぽっちも反省などしていなかったのである。
家族は死んでしまったが自分の命には代えられない。
自分がゆっくりしてるんだから、死んだ家族もきっと満足だろう。

「ゆっへっへ、いつかまたすきをみておやさいをいただいてやるんだぜ」
「ゆ!? まりさ!」

不意に声がかかり、まりさは立ち止まる。
横を見ると、まりさと同じくらいの大きさの一匹のれいむが跳ねてくる。
まりさの友達の一匹で、伴侶だったれいむを抜かせば一番仲が良いゆっくりだ。

「ゆ、れいむ! ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね! まりさ、そのかおどうしたの!?
 あんこさんでべたべただよ!」
「ゆ! これはね……」


―――たしゅけちぇ……


「これはね…にんげんさんとたたかったときにけがしちゃったんだぜ!
 めいよのふしょーだぜ!」
「ゆゆっ! ほんとなの!?
 だいじょうぶ!? いたくない!?」
「だいじょうぶだぜ! もうだいぶなおったから!
 にんげんさんはてごわかったけど、まりさがぼっこぼこにしてやったんだぜ!」
「ゆゆー! すごいよまりさ!
 にんげんさんにかっちゃうなんて!
 まりさはやまでいちばんのゆっくりだね!」
「ゆ〜ん、それほどでもないんだぜ〜」

まりさの言い分を鵜呑みにしたれいむは、まりさを『すごくゆっくりしてるね』と褒め称える。
まりさは有頂天になって、むず痒そうに体をうねらせる。

「けどそのままじゃいけないね!
 れいむがきれいにしてあげるよ!」
「ありがとうなんだぜれいむ!」

れいむはぺーろぺーろと、まりさに付着した餡子をなめ取る。
ある程度舐めたところで、急にれいむは舐めるのを止めた。

「ゆ? れいむ、どうしたんだぜ?」
「その…まりさ…。
 おくちのまわりについたのは…じぶんでなめてほしいな…」

れいむはぽっと顔を染めると、恥ずかしそうに俯く。
どうやられいむはまりさの口を舐めたらキスをすることになると思ったらしい。
このれいむはまりさに少なからず好意を持っていた。

「ゆ、わかったんだぜ!
 れいむありがとうなんだぜ!」

まりさは口周りの餡子を舐め取る。
それはとても甘くてゆっくりできるものだったが、何か心の中に引っ掛かりを感じた。
なんだろうと思ったが、持ち前の餡子脳により深く考えなかった。
この時すでにまりさの頭は、以前の家族の事はすっかり忘れてしまっていた。

「ゆ、ところでれいむ!」
「なに、まりさ?」

気を取り直したまりさは、真剣な表情でれいむに向き直る。

「まりさはひとりでさびしいんだぜ、だから……
 れいむ! まりさといっしょにゆっくりしてほしいんだぜ!」

いきなりれいむに告白した。
それに対してれいむは……

「ゆ……いいよ、まりさ。
 れいむとゆっくりしよう!」
「ゆ、ゆうーん! れいむー!」

まりさのプロポーズを快く受け入れた。
こうしてまりさはまた新しい家庭を持つことになった。














それから三日後…
夫婦となったれいむとまりさは巣の中でゆっくりしていた。
れいむは植物型にんっしんをしており、頭には赤ゆっくりが生った茎をつけている

「ゆ〜ゆ〜、ゆっくりしていってね〜。
 まりさ! まりさもいっしょにうたおう!」
「ゆ……そ、そうだね!」

れいむとまりさは夫婦になった後。
まりさはれいむをかつての巣に招待し、そこですっきりをした。
それから夫婦は何の問題もなく過ごし、赤ゆっくりも順調に育った。
茎についた赤ゆっくりはぷっくりとしており、今にも生まれ落ちそうである。
れいむは茎についた赤ゆっくりが大きくなるにつれて期待に胸をときめかせているが、対照的にまりさは少しばかり元気がなかった。
三日前、結ばれてすぐにれいむとすっきりをして、れいむの頭に生った赤ゆっくりを見た頃から、
まりさはゆっくりできない夢を見るようになった。
夢の内容は、自分の周りは真っ暗な闇に包まれており、どこか遠いところからボソボソと声が聞こえてくるのである。
その声は日にちが経つにつれて、だんだんと大きくなってきていた。

「ゆ〜ゆ〜、ゆっくりしていってね〜」
「ゆ、ゆ〜…ゆっくりしていってね…」
「ゆ!?」

歌を歌ってる最中、急にれいむは歌うのを止めて上を見上げる。
まりさもつられて見上げると、茎の赤ゆっくりがプルプルと震えている

「ゆゆ!? まりさ!
 あかちゃんがうまれるよ!」
「ゆゆ!?」

理解したまりさは急いで藁を持ってきて、赤ゆっくりの真下に敷いた。
そのまま見守る二匹だが、ついに茎の一番先端についた赤まりさが、茎から離れて藁の上に落ちた。

「ゆ、ゆっくちちていっちぇね!」

赤ゆっくりは生まれたばかりの体を精一杯使って両親を見上げ、元気な声で産声を上げた。
それを見たれいむは『ゆゆーん!! ゆっくりしていってね!』と感激の涙を流している。
まりさもれいむと共に、赤ゆっくりに返事を返そうとする。

「ゆゆーん! まりさのあかちゃん……



―――いやぢゃああああああ!



「ゆ?」
まりさの餡子脳に、何かがフラッシュバックする。
それと同時に、目の前の赤まりさが何かに似ていると思った。
いや、赤まりさだけじゃない。
次々と生れ落ちる赤ゆっくりの全てに、どこか面影を感じた。

「ゆっくりしていってね!
 ゆ? どうしたのまりさ?」
「……ゆ! な、なんでもないんだぜ!
 あかちゃん、ゆっくりしていってね!」
「「「「「「「「ゆっくちちちぇいっちぇね!」」」」」」」」

その後れいむは赤ゆっくりに食事を与えて、満腹になった赤ゆっくりたちといっしょにすりすりしたり歌を歌ったりした。
まりさもれいむといっしょになって、なついてくる赤ゆっくりをあやしていた。
しかし心のどこかに引っ掛かりを感じており、なぜか赤ゆっくりを素直に可愛いと思えなかった。







その日の夜、まりさは再び夢を見た。
だが夢の内容は、いつもと少し違っていた。
まりさの周りは相変わらず真っ暗だったが、いつもははっきり聞こえない声が今回はしっかり聞こえるのだ。

―――ぐるぢいよぉ……たしゅけちぇ……

まりさはその声に聞き覚えがあった。
そうだ、思い出した
今日生まれたばかりの赤れいむの声だ。
しかし赤れいむの声はどこか苦しそうでゆっくりできていなかった。
おかしい。今日の赤れいむはとてもゆっくりしていた。
苦しむようなことなんてなかったはず……

―――たじゅげちぇおちょーしゃ……

まりさは赤れいむがどこにいるのかと見渡すと、突如目の前に何かのシルエットが浮かび上がった。
まりさは目の前の何かが赤れいむだと確信し、声を掛けた。
途端にシルエットは徐々に形や色をはっきりと映し出し、赤れいむの姿になった。

赤れいむは、顔を膨張させて苦しそうに震えていた。

まりさは驚愕した。
なぜ赤れいむがこんなことになってるのか、少しも理解できなかった。
まりさが再び赤れいむに声を掛けようとした途端……

―――えぎゅぼ!

赤れいむの顔は断末魔と共に破裂し、飛び出たものがまりさの顔にピシャピシャと降り注いだ。







「ゆぎゃああああああああああああああああああああ!!!!」

まりさの絶叫が真夜中の巣の中に響き渡る。

「ゆ! なに! なんなの!?」
「ゆ? ゆ……ゆえーん!」
「ゆえーん! ゆえーん!」

突然聞こえた大声に、れいむは飛び起きて混乱し、赤ゆっくりは怯えて泣き出した。
れいむは叫んだのがまりさだと分かり、目を向ける。

「ゆ、まりさどうしたの!?」
「はあ……はあ……」

れいむはまりさの尋常じゃない様子を見て、心配そうに声を掛ける。
しかしまりさはれいむの声を気にせず、赤ゆっくりたちを凝視していた。
そして赤ゆっくりが無事なことを確認すると、気が抜けたようにゆっくりし始めた。

「まりさ! なにがあったの!?」
「ゆぅ……なんでもないんだぜ」
「ゆ、ほんとに?」
「ほんとになんでもないんだぜ」
「ゆうぅ〜……」

れいむは納得いかないように声を上げたが、まりさがさっさと寝たのを見てこれ以上追求するのを止めた。
れいむが再び寝入ったのは、泣いてる赤ゆっくりを全員あやした後だった。








それからまりさの悪夢は日に日に酷くなっていった。
だんだんと声がはっきりと、複数聞こえるようになったのである。
いろんな方向から、赤ゆっくりの助けを求める声や、自分を責める声が聞こえてくるのだ。
目の前に赤ゆっくりの苦しそうな顔があり、目を逸らしてもそこにはまた別の赤ゆっくりが自分に向かって何か言ってくる。
あるものは涙で顔をグシャグシャにしながら助けを求め、あるものは憎悪を込めた凄まじい表情をしながら呪詛を吐いてくる。
そして最後に顔面を破裂させ、中身をまりさにぶちまけてくるのだ。
体に当たる感触は恐ろしくリアルで、避けようにもなぜか体が動かなかった。
そんな夢を毎晩毎晩見続け、次第にまりさは精神を疲弊させていった。








「ゆ……ゆっくりかえったよ」
「「「「「「「「おきゃえりなしゃい、おとーしゃん」」」」」」」」
「おかえりまりさ!
 ゆ!? またこれだけしかとってこれなかったの?」

狩りに出ていたまりさが巣へ戻ってくる。
しかし取ってきた食べ物の量は、とても家族を満足させるには程遠かった。
ゆっくりできない悪夢を見続けたまりさは極度の寝不足に陥っている。
その結果、体力が減って狩りに身が入らなくなってしまったのだ。

「まりさいいかげんにしてね!
 こんなんじゃれいむたち、ちっともまんぞくできないよ!」
「しょーだよおとーしゃん!
 もういっかいいっちぇ、たべもにょとってきちぇね!」
「とってきちぇね!」
「いやだよ! まりさはつかれたよ!
 そんなにおなかがすいたならじぶんでいってきてね!」

家族の文句にイラついたまりさは声を荒げて反論する。
そんなまりさに対し、家族はさらにまりさを強く非難した。

「どぼぢでそんなごどゆうのおおおおおおおおお!!?
 ばりざがどっでごなぎゃだべでじょおおおおおおおおおおお!!」
「おとーしゃんのびゃきゃああああああああああ!!」
「ゆっくちできにゃいおとーしゃんにゃんかちねえええええええええ!!」

まりさを容赦なく罵倒していく家族。
その時、赤ゆっくりの泣き喚く顔が、醜く罵る言葉が、まりさが夢の中で見てきた赤ゆっくりと重なる。








―――どぼぢでまりしゃをみしゅてちゃにょおおおおおおおお! おとーしゃんのばきゃあああああああああああ!








―――ちね! おとーしゃんはちねえええ! れいみゅをみしゅてちゃおとーしゃんはちねええええええええええ!








―――にょりょってやりゅううう! にょりょってやりゅうううううう! おとーしゃんはくるちんでちねええええ! じぎょくにおちろおおおおおおおおおおおおおおお!



























「ゆっがぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」



「おとーしゃえぎょ!」
「や、やめぶっ!」
「たしゅけでばっ!」

「じねぇ! じねぇ! じねぇええええええええ!!!
 まりさのわるぐちばかりいってるちびちゃんはじねえええええええええええええええええええ!!!」

まりさの精神はついに決壊した。
夢の中で散々自分の子供に恨まれ、中身をぶちまける光景を見続けたまりさはついに正常な思考を行うことが出来なくなった。
自分はこんなに家族の為に尽くしてるのに、なぜこんなに恨まれなければならないのか?
まりさはもはや、わが子に対し憎しみの感情しか持っていなかった。
まりさは今までのゆっくりできなかった鬱憤を込めて、赤ゆっくりを潰していく。

「ばりざああああああああ!!
 なにじでるどおおおおおおおおお!!?」
「じねえええええ!!」
「ばり、ぶげ!?」

錯乱状態のまりさはれいむを突き飛ばし、残りの赤ゆっくりも次々と踏み潰す。
まりさが正気に戻ったのは、全ての赤ゆっくりが原形も留めずぐちゃぐちゃ潰された後だった。








「……ゆ?」

巣の中でまりさはゆっくりと目を覚ます。
散々暴れまわったまりさはあの後、極度の疲労から眠ってしまったのだ。
まりさにとって幸いなことに、今回は寝ている最中に悪夢を見ることはなかった。
そして起きたときにはすでに暴れた事など忘却の彼方へと飛んでいた。

「ゆゆっ!? どういうことなんだぜ!?
 ちびちゃんたち! どこいったんだぜ!?」

まりさは目の前に散乱する赤や黒や白の色をしたゴミを見て、何が起こったのか理解できず混乱した。
ふと、まりさの鼻を甘い匂いがくすぐる。
なんだろうと思って嗅いでみると、どうやら地面に撒き散らされた黒い物体から匂う事が分かった。
まりさはそれの放つ甘い誘惑に勝てず、舌で舐めてみた。

「ぺーろぺーろ、し、しあわせー!!!
 うっめ、めっちゃうめこれ!!!」

それはとても甘くておいしくて、お腹が空いていたまりさには中枢餡子がしびれるくらいゆっくりできるものだった。
そういえばこれ、以前も舐めた事があるような……
そんなことをまりさは思ったが、そんなの気にしてる場合じゃないとばかりに地面に付着した物体をベロベロ舐めていく。

「ゆふぅ〜、すっきり〜」
「ま…まりさ…」

ある程度お腹が膨れたところで、不意に後方から自分を呼ぶ声が聞こえる。
何だろうと思って振り返ると、傷だらけでボロボロのれいむが目に入った。
まりさは伴侶のれいむの有様に眼を丸くし、急いで駆け寄る。

「れ、れいむどうしたんだぜ!?
 だれにやられたんだぜ!?」
「まりさ……この……どうぞくごろし……」
「ゆ?」

いきなり自分を罵るれいむにまりさは驚く。

「なにをいってるんだぜれいむ?」
「……れいむたちのあかちゃんをころしたまりさは……ゆっくりしね……」
「ゆゆゆ!? なにいってるの、まりさはあかちゃんをころしてないよ!!」
「……うそいわないでね……あんなにききとしてつぶしてたじゃないの……
 しねとかいいながらつぶしてたじゃないの……
 あそこにちらばってるの……ぜんぶあかちゃんだったものだよ……
 さっきだってまりさ……あかちゃんのなかみ……たべてたじゃないの……」
「ゆゆゆゆ!!」

あれがあかちゃんだったもの?
あのあまくておいしいものがあかちゃん?

「このゆっくりごろし……
 しね……まりさなんか……しね!」
「ゆがあああ!! いいかげんなことばかりいうれいむがしねぇ!!」

まりさは怒りに任せて跳躍し、れいむを潰した。
弾けとんだれいむの体から出た餡子が、四方八方に飛び散る。

「ゆ?」

飛び散った餡子から甘い匂いが立ち上る。
その匂いは、まりさの頭の中の、さっきまで舐めてた黒い物体の匂いと一致した。

「……ゆ……ゆ、ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ」

瞬間、まりさは理解してしまう。
自分がさっき舐めていたのは、れいむの体内から出たのと同じものだということを。
そしてれいむが言っていたのは嘘ではないということを。

「ゆがあああああああああ!! ちがうんだぜ!!
 まりさはあかちゃんをたべてないんだぜえええええええええ!!」

いくら口で否定しようと、頭の中は否定できない。
頭をブンブン振り回して考えを追い出そうとしてるまりさの頭に、不意に声が響く。



―――たすけちぇ



まりさはそれが、今まで生活していた赤ゆっくりの声だと気づく。
声は立て続けに聞こえ、数も増えてくる。


『やめちぇ』
『ちねぇ』
『やぢゃぁ』
『こりょしゃにゃいで』
『ばきゃ』
『おちょーしゃん』
『にょりょってやりゅ』
『どおちて』
『ちにたきゅにゃい』
『みすてちゃにいで』
『おねぎゃい』


「だばれえええええええええ!!
 ばりざは、ばりざはばるぐだいんだぜええええええええええ!!」

幻聴に耐え切れなくなったまりさは巣の中を転がり、外へと飛び出す。
外はもう真っ暗で、大抵の生き物はとっくに寝ている時間になっていた。
まりさは未だに聞こえてくる幻聴を振り切るかのように、あちこち転げまわる。

「ゆぎいいいいいいいいいいいいいいい!!
 ごろじでやるぅ!! ごろじでやるぅううう!!
 ばりざをぐるじべるぢびぢゃんばじねえええええええええええええええええ!!!」

自分を苦しめているのは自分自身の心だというのに、そんなことに微塵も気づかないまりさ。
心の中にいる、自分に助けを求める赤ゆっくりにただただ反発し、散々罵倒し続ける。
木や地面に体を打ち付け、目の前に幻覚が見えたらそれに向かって噛み付く。
しかしそんなことをしても、赤ゆっくりの幻は一向に消えない。

『うー、うー』

だからこそ、後ろから忍び寄ってくるれみりゃの声に気づかなかった。
いや、仮に気づいたとして幻聴だと思い込んだだろう。
れみりゃはまりさに近づくと持ち上げ、月夜の空に向かって飛び立つ。
地面が無くなった感触も幻だと思い込んだまりさは、れみりゃの手の中で尚も暴れ続けた。
結局、まりさがそれが幻じゃないと気づいたのは、れみりゃの巣に持ち帰られた後だった。



まりさは最後まで、心の中の赤ゆっくりに謝ることはなかった。



















「ふー……今年も良い出来だな」

季節は秋の終わり頃、村は畑の収穫期に入っていた。
あの時まりさを見逃した男も、自身の畑の作物を収穫しているところだった。

「むきゅ、ここがにんげんさんのはたけよ」
「うわぁぁぁ! おおきいー!」
「おやさいがいっぱーい!」
「つちのいろがぜんぜんちがーう!」

急に畑の外から声が聞こえる。
男が目を向けるとそこには一匹の大きな体のぱちゅりーと、子れいむや子まりさ、子ちぇんなど十匹くらいの子ゆっくりがいた。
初めてみる畑に子ゆっくりたちは目を輝かせているが、ぱちゅりーはここには入っていけないと言い聞かせている。
男はそれを横目で見つつも、作業を続ける。

「ゆぅ〜、もうがまんできないよー!」

青々とした野菜に目がくらみ、一匹の子まりさが畑に入って野菜に齧り付く。

「むぎゃああああああ!! まりさなにしてるのおおおおおおお!!」
「むーしゃむーしゃ、しあわせー!!」

子まりさの勝手な行動に、それがどれほどいけないことか分かっているぱちゅりーが大声を上げる。
男は当然無視するはずもなく、ゆっくりたちの所へと歩いていく。

「むぎゅううううううう!! おにいざんごべんなざいいいいいい!!」
「ゆ?」

子まりさはぱちゅりーの言葉で、男がこっちに向かってきてる事に気づく。
子まりさはようやく自分がとんでもない過ちを犯した事に気づいた。
ここに来る前に、ぱちゅりーから散々この場所についてあらかじめ注意を受けていた。
畑に入ってはいけない、お野菜を食べてはいけない、人間さんに悪口を言ってはいけない、などなど…。
しかし目の前にある野菜の味を知りたいという好奇心に負け、ついつい口にしてしまった。
子まりさは目の前まで来た男に恐怖を感じ、ガタガタ震えだす。
男はしゃがむと子まりさの前に両手を突き出し……


「ゆ!?」


子まりさを掴んで持ち上げた。

「こら、勝手に食べちゃダメだろ」

そう言うと男は、ぱちゅりーたちの前まで歩いていき子まりさを置く。

「ゆ、ぱちゅりーおねえちゃん……」
「ばか!」

子まりさの傍まで駆け寄ったぱちゅりーは、勢いをつけて体を横回転させて、もみ上げの部分でビンタする。

「あれほどおやさいをたべちゃだめっていったでしょ!」
「ゆぅぅん、ごめんなさい……」
「わたしじゃなくておにいさんにあやまりなさい!」

ぱちゅりーに言われて、子まりさは男の方に向き直る。

「ゆぅ……ごめんなさい、おにいさん」
「ああ、もういいよ。
 ただ今度やったら多少痛い目にあってもらうからね」

男の言葉に子まりさはブルブル震える。

ここの近隣には小さな村がいくつもあり、どの村も農業が盛んなだけのこれといった特徴がないものだった。
この村もそういった村の一つだ。
しかしこの村は近隣の村に比べて、ゆっくりによる被害が明らかに少なかった。
ゆっくりの住処に近くて、虐待お兄さんなどゆっくりを痛めつけるのが趣味な人間がいないのにである。
理由はいくつかあるが、その一つがこの男だ。
男の畑は村の中でもゆっくりの住処に一番近いところにある。
そのため畑荒らしが目的で来るゆっくりの八割は、男の畑に侵入してきた。

かつてこの男も、畑に入ってきたゆっくりは問答無用で殺してきた。
両親や仲間からゆっくりは害獣だと教えられ、実際に野菜を食い荒らす光景を目の当たりにして以来、そのことを強く認識した。
目を潰したり足を焼いたりなど虐待じみたことはしなかったが、ゆっくりを潰す事に特に抵抗を感じていなかった。
一人暮らしをして畑を耕して以来、来る日も来る日もゆっくりを殺してきた。
しかしそんなことを続けていくうちに、男はだんだん空しさを感じるようになり、ゆっくりを殺すことにも疑問を持つようになった。
ある日、いつものように畑を荒らしに来たゆっくりに対して男は何故こんな事をするのか聞いてみた。

「ここはれいむたちがさきにみつけたかられいむたちのものだよ」
「おやさいはかってにはえてくるんだよ、しらないの?」

男はゆっくりたちに畑は人間のテリトリーである事、野菜が出来るには多大な手間と時間が必要である事などを、
ゆっくりたちが理解できるまでしっかりと説明した。

「ゆ! それじゃあここにあるのはぜんぶおにいさんのものなの!?」
「おにいさん、かってにたべてごめんなさい!」

幸いそのゆっくりたちは話が分かる素直な個体だったようで、男に対して謝罪をし、二度と荒らさない事を約束して去っていった。
ゆっくりたちが去るとき、男の心に湧き上がったのは後悔だった。
今までゆっくりは虫並みの知能しか持ってないと思っていたが、そうではない。
話せば分かる個体もいるのだ。
今まで自分はどれだけそういったゆっくりを殺してきたのだろう。
どれだけの命を無為に奪ってきたのだろう。
男は初めて、ゆっくりに対して罪悪感を感じた。
その日から男のゆっくりに接する態度が変わった。
畑に入ったゆっくりを頭ごなしに潰すのではなく、最初は説得を試みるようになった。
ある程度は話をするだけでなんとかなったが、中には話だけでは不十分なゆっくりもいた。
自分の願望を押し付けて理解しようとしない個体、反省したようにみえてもまた荒らしに来る個体、話自体聞こうとしない個体。
その時はやむを得ないと思って殺しても、後でこうすれば改心させられたのではないかと考えるようになった。
一匹でも多くのゆっくりを救うにはどうすればいいか、男は苦悩し続けた。
その中で編み出した一つの方法が、ゆっくりに罪悪感を与える方法だ。
この前見逃したゆっくりまりさを例にすると……
あのまりさは話も聞かず自分の欲求を押し通し、あまつさえ守るべき自分の子供をも犠牲にしようとした。
ちなみにあの時親れいむを殺したのは、親れいむが「ゆっくりしね」といって向かってきたからだ。
殺意には殺意で答える。男が出した妥協案の一つだ。
赤ゆっくりはまりさを愛していたが、まりさは自分の子供に愛着は持ってなかった。
そこでまりさに、自分が言い出したことを責任を持って見届けてもらうことにした。
ゆっくりは物忘れが激しいが、それは単に思い出すのが下手な場合が多い。
強い刺激であればあるほど、ゆっくりはその出来事を思い出すのが容易になる。
まりさの目の前で赤ゆっくりの叫びを聞かせ、視覚に、聴覚に、触覚に、嗅覚に、味覚に、赤ゆっくりの最後を記憶させる。
そして赤ゆっくりの断末魔は呪いとなり、まりさの潜在意識に留まり続ける。
いくら自分を正当化しようと、赤ゆっくりを見捨てた事実は変わらない。
なんらかのきっかけで赤ゆっくりのことを思い出す度に、まりさはゆっくり出来ない思いをする事になる。
男はあのまりさが仲間を見捨てる辛さを思い知り、苦しみを味わい続け、あわよくば改心すればと思って見逃した。
もっともまりさが改心する機会は永久になくなってしまったが。

今、目の前に居るぱちゅりーも、男が畑の仕組みを教え込んだゆっくりの一匹だ。
かつてぱちゅりーはパートナーのまりさと一緒に畑を荒らしに来た。
男が説得すると、ぱちゅりーは畑を荒らしてはいけないということを理解してくれたが、
まりさの方は理解しようとしないばかりか、あまつさえぱちゅりーをも殺そうとしたのでやむを得ず潰した。
男はぱちゅりーに謝罪したが、ぱちゅりーは「気にしないで」と許してくれた。
その後ぱちゅりーは群れのゆっくりの教育係になり、若いゆっくりに人間の畑について教えるため、
こうして何度か男の畑に実地研修に来るようになった。
今ではこの村の近くに住むゆっくりの多くは畑の仕組みや人間の強さを知っており、進んで畑を襲おうとするものは極一部になった。

「むきゅ、おにいさんほんとうにごめんなさい」
「まあ若い子は好奇心が強いだろうからね。
 気にしなくていいよ」
「……むきゅ、おにいさん、おねがいがあるの」
「ん? なんだい?」
「あの、ぱちゅりーたちにやさいのつくりかたをおしえてくれませんか!?」
「え?」

ぱちゅりーの言葉に男は困惑する。

「やまのめぐみにたよるだけでは、あんていしてたべものはえられないの。
 むれのみんながたべものがふそくしてゆっくりできなくならないようにしたいの。
 どうかおにいさんのちえをかしてください」
『かしてください』

ぱちゅりーと子ゆっくりたちは一斉に男に頼み込む。

「俺でよければ構わないよ」
「むきゅ! ほんとう!?」
「ああ、一緒に野菜を作れるように頑張ろう」

男は即答し、ぱちゅりーたちは歓声を上げて喜んだ。

最初はゆっくりを何とも思っていなかった男も、今ではゆっくりを好きになり、ゆっくりとの共存も考えるようになった。
ゆっくりを殺した過去は消えない、しかし過去に縛られては前に進めない。
過去を見つめゆっくりと共に歩いていく、それが今の自分に出来ることだと男は考えている。
畑にはぱちゅりーや子ゆっくりたちの声が響き渡り、男はそれを心地よい気分で聞いていた。
いつかゆっくりと共に生きていける世界が来ればいい。
そんな事を思いながら、男はぱちゅりーたちと一緒に畑を耕していった。

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最終更新:2009年01月17日 18:21
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