※舞台は現代的な感じがしなくもないどこか
※儚月抄のネタバレが若干あります
※あ○きィィィ!さんごべんなさい
「なあ、お前、よっちゃんどう思うよ?」
突拍子のない質問をぶつけてきた野郎は10年来の腐れ縁の悪友だ。
手には大きめのサラダボウルと袋入りの食用赤
ゆっくり姉妹(れいむ&まりさ)が握られている。
「おいおい、親友が来てるってのにケチるなよ?ちぇんとかぱちぇ出せよ」
「誰が親友だよ?で、お前はよっちゃんどう思う?」
「いや、よっちゃんじゃわかんねえよ。世直しマンか?ヨミ様か?」
突っ込みながらも悪友の作った2人分のコーヒーを机まで運ぶ。
初めてこの家に来たときから変わることなくその部屋にあり続けるボロい机。
俺が描いた落書きの怪獣は相変わらずの馬鹿っぽい咆哮をあげている。
「あれだよ、依姫様だよ」
「ああ、儚月抄か。俺は好みだよ、よっちゃん。神話じゃあ自分の甥っ子を抱いちゃうし、きっと乱れると凄いぞ」
「お前の好みは昔から知ってる。よって言わんでよろしい」
一足先に座布団の上に座った俺を見下ろしながら、サラダボウルを机の上に置く。
そのまま自分用の座布団を引っ張り出し、腰を下ろすと、スナック菓子のそれと良く似たデザインの袋を開封した。
瞬間・・・
「ゆぅ・・・もうあしゃにゃの?」
「「ゆっくちおきりゅよ!」」
「「「「ゆっくち!」」」」
「「ゆゆ〜ん!」」
などなど、総勢33匹の赤ちゃんゆっくりれいむ&まりさがおしゃべりを始める。
ゆっくり達の声が袋から溢れ出し、俺と悪友だけの狭っ苦しい部屋は急に賑やかを通り越して喧しくなった。
「○女の宅急便のキキを観ながら言ってたもんな」
「こういうすました奴ほど、堕ちた時にはどこまでも堕ちて行くんだ、ってか」
「・・・絶対妹には近づくなよ?」
「残念、既にゼロ距離射撃ずm・・・ごめんなさい!冗談!冗談です!冗談だからホットコーヒーはやめて!?」
何とかシスコンパワーで修羅と化した奴を落ち着かせ、がさがさと赤ゆっくりをボウルの中に入れる。
袋を揺するたびに赤ゆっくり達が「ゆゆっ!」だの「ゆぴぃ!?」だのと驚き騒ぐのが、いつやっても面白い。
そうして赤ゆっくりを全てボウルに入れ終えたところで、ようやく着席した悪友との会話を再開した。
「で、綿月のよっちゃんがなんだって?」
「いやな・・・俺のおぜう様のカリスマをブレイクしやがってけしからん、と」
「このロリコンめが!そんな調子だからあ○きィィィなんてあだ名を付けられるんだ!」
「俺、ルーミアは別に・・・」
冷静に返す悪友の傍らにはREXが10冊ほど積み上げられていて、その上には東方儚月抄の上巻と中巻が置かれている。
やれやれ・・・とため息を吐き、コーヒースプーン代わりのフォークを手に取ると、俺はそれサラダボウルの中へと誘う。
それを見たボウルの上のほうの赤ゆっくり達は一斉に「ゆゆっ!きょれにゃあに?」と首を傾げた。
「お前なぁ・・・カリスマブレイクも何も、緋想天のぎゃおーとか言ってる時点で既に・・・」
「・・・REXでも2冊あればガンガンと渡り合えるよな?」
余談ではあるが、この男は本当にバイオレンスな野郎で、デンジャラスなことを平然とやらかすところがある。
それゆえ、本当にREXが飛んで来やしないかと内心びくびくして、奴の手元を凝視する俺の手はまだサラダボウルの中。
「ゆーーーっ!きょれにゃあにっちぇいっちぇるでちょ!ゆっきゅちおちえちぇね!ぷきゅうううううう!!」
同時にボウルの中を覗き込む俺と悪友。
手に収まっているフォークをにさっきからずっと関心を示していた一匹の赤まりさが文句を垂れながら膨らんでいた。
流石は食用の赤ゆっくりだ。ゲスい言葉こそ使わないものの、ゆっくりの名に逆らうようにすぐに怒ったり暴れたりする。
その甲高い叫び声に話の腰を折られた気分になった俺は「なら教えてやるよ」と言わんばかりにそいつを突き刺す。
「ゆ゛っ!!」
「「「「「「「ゆっぎゅぢ!?」」」」」」」
不運なことに、その赤まりさはフォークを目で追いかけていた。
まりさ種の帽子のせいであまり広くない視野を補うために一生懸命下にいる姉妹の上を跳ねて、フォークの先端と向かい合うように。
つまり、赤まりさのほうをろくに見向きもしないで刺したにもかかわらず、ものの見事に彼女の目を刺し貫いていたのだ。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!?」
どことなく噛み付きそうな名前の不人気キャラが主人公の漫画みたいな感じで声にならない叫びをあげる赤まりさ。
一方、その光景を間近で見ていた上のほうの他の赤ゆっくり達は「やめちぇえええ!」だの「ゆっきゅちできにゃいいい!」だのと喚いている。
必死になってボウルの外に出ようとするが、このサラダボウルは結構な大きさがあるので最上段にいる赤ゆっくりさえもそれは叶わない。
「ん〜・・・チクショウ、いつ食っても安いくせにうめぇなあ・・・」
「まったくだ」
俺の感嘆に同意しながら、長い付き合いの悪友は怯えて固まっている赤れいむを指で摘む。
赤れいむは人差し指と親指の間でじたばたと暴れ、うにうにと体を捩って抜け出そうとしているが、当然無駄な努力だ。
30秒ほどその様子を観察していると、自力での脱出を諦めたらしく、大粒の涙をぽろぽろ零しながら命乞いを始めた。
「やめちぇね!やめちぇね!れーみゅゆっくちちゃいよ!」
「おにーしゃんもれーみゅとゆっくちちよーね!」
「ゆっくちー!ゆっくちー!」
そうして更に30秒後、赤れいむは問答無用でお腹の中に収まった。しかも生きたまま。
これは悪友の特技と言っても過言ではなく、直径2,3センチはあるであろう赤ゆっくりをいとも簡単に丸呑み出来る。
話し相手になるこちらとしては口の中から変な声が漏れ出して来るので話しにくいことこの上ないのだが。
「話を戻して、よっちゃゃんによるカリスマブレイクだけどさ・・・」
「ああ、オリキャラが俺TUEEEEEとか死ねばいいのに」
「待て待て。アレは俺TUEEEEEじゃないぞ。いわば妖々夢のメイド長状態だ」
どういうことだよ、と言いたげな表情をしている悪友の顔からいったん視線を外し、食べる赤ゆっくりを選ぶ。
すると、勘のいい赤まりさが身の危険を察知して姉妹のはずの赤れいむを俺のほうに突き飛ばしてきた。
そして「まりちゃはゆっきゅちしゅるよ!れーみゅはきゃわりにたべられちぇね!」などとテンプレなことをのたまっている。
「ふむ・・・」
こういう行動を見たとき、人間が取る行動は一つ。
差し出された、昨日まで仲良くしていたはずの姉妹に裏切られた可愛そうなれいむを避けて、残忍で狡猾なゲスを狙うことだ。
更に俺から距離を取るために下にいる姉妹たちも押しのけて潜って行こうとする赤まりさの尻にフォークを突き立てた。
「ゆぴぇん!?」
「で、どういう事なんだよ、妖々夢のメイド長状態って?」
「要するにあれだ。弾幕ごっこの妙味を分かっていない。だから加減の仕方がなってない。ボムを4つも搭載しちゃう」
永夜抄では実に瀟洒だった。普通のプレイでは物足りない殿方をどれだけ唸らせた事か、と付け加えてから赤まりさの様子を見る。
目線が合うや否や、自分の可愛さや賢さ、いかにゆっくりしているかを必死にアピールして許しを請う。
が、当然全て聞き流し、その上でこう言ってやった。
「仲間を平気で見捨てるようなゲスは嫌いなんだよ」
そして、その言葉を聞くや否や、今度は「れーみゅをいじめにゃいでにぇ!たべりゅんにゃらまりしゃをたべちぇね!」と主張し始める。
もちろん、本人がそう言うのであれば断る理由もない。彼女の言い分に従って、口の中に放り込んでやった。ただし、まだ咀嚼すらしていない。
すると予想通りにまたしても「たべるんなられーみゅを〜」と言い始めたので、口に赤まりさを含んだまま・・・
「ゲスは死ね」
「ゆびゅ!?」
死の宣告を言い渡し、短いゆん生に幕を閉じてやった。
餡子の、涙の、目玉の、汗の・・・似ているようで少し違う甘味が、舌の上をじわりと広がっていく。
しばしその風味を堪能し、口直しに苦いコーヒーを一口啜った。
「なるほどなぁ・・・咲夜戦の厨攻勢なんかは本当に酷かったもんなぁ・・・」
「ゆぴぇええええええええええ!どうちちぇこんなこちょしゅるにょおおおお!?」
「射撃無効、つかカウンターに加えて、ボム(咲夜の世界)でも回避不能だからな。どこの夢想天生だよ」
「やめちぇね!ゆっきゅちできにゃいよおおお!?」
「スペカ2枚同時使用に加えて、初スペカに対して開幕ボムってやがったし・・・な?」
「ゆっきゅちちちゃいよおおおおおお!!」
流石に姉妹が3匹も食べられたとあっては冷静でいられるはずがない。俺だってこいつらと々立場だったらそうだろう。
しかし、久し振りに悪友と話している時に喚かれるのも不愉快きわまりない。
そんな訳で、俺は一番元気良く泣き喚いている赤まりさにフォークを突き刺し、目の前まで運んでからこう言ってやった。
「よし、これからはうるさくした奴から食べることにしよう」
瞬間、現在フォークを刺された痛みで苦しんでいる赤まりさ以外の、ボウルの中の赤ゆっくり達は静かになった。
赤ゆっくり達の聞き分けの良さに感動を覚えつつ、赤まりさを咀嚼すると、話を再開する。
「そういう訳だから、アレは相手のホームのルールで勝ってるよっちゃんSUGEEEEって描写ではないんだよ」
「つまりあれか。サッカーのルールを全く知らない奴が手を使って大活躍しているのを周囲が苦笑いしながら見守っている状態か」
「うむ。だから、月の都で弾幕ごっこが流行った暁にはよっちゃんは最強厨女として後ろ指を差される事になる」
「そして、昔の自分に対して『どうしてあんな馬鹿なことしたの、イヤン☆』となるわけか。意外と可愛いな、よっちゃん」
それが事実かどうかは神主のみぞ知るといったところだが、都合の良い解釈を得た悪友は少し満足そうだ。
すっ、とフォークを伸ばして手近な赤れいむに突き刺すと、コーヒーの中にフォークごと放り込む。
黒い水面がぶくぶくと泡を立てるその光景は、月の世界の賢者の海を彷彿とさせるものがあった。
「よし、そろそろかな?」
「ゆきゅう・・・にぎゃいいいいい・・・!」
すげぇ、結構な時間コーヒーに浸かっていたのにわりと元気そうだ。
が、元気だからどうなるということもなく、悪友の口の中に収まり、今度はしっかりと噛み潰して胃袋へと輸送された。
「レミリア戦に関しても結構分かっていない行動が目に付いたよな」
「アメノウズメか」
「うむ、あの神様は全裸でナンボだろうに。おっぱい晒せよ」
「いや、今は関係ねえだろ。それに作画女性、それセクハラだぞ?」
「いやいや、モクソンのおっぱいは実に良いものですよ?」
くっくっく、と何故か同じタイミングで笑いながら、同時にフォークをサラダボウルに伸ばす。
俺のフォークには赤れいむが、悪友のフォークには赤まりさが刺さっていた。
会話に熱中していたこともあって、この2匹は恐怖を味わうことなく噛み砕かれて永遠のゆっくりへと旅立っていった。
「あれも言ってみりゃ、曇天でもないのにジェリーフィッシュとロイヤルフレアを立て続けに撃つようなものだからな」
「それ曇天でも無理じゃね?なるほど、そりゃ負けても仕方ないわ」
「それどころか、散々地上のものではまず敵わないと言われていた月人を殴り合いではフルボッコしたんだから面目躍如だ」
「流石おぜう様じゃないか。それでこそ俺の嫁だ」
「俺の嫁とか現実で言うな、きしょい」
分別は付けろよ、と冷めた目で悪友を見つめる。
すると、自分の痛さを理解したらしく、咳払いをしてから儚月抄の話を再開した。
それから、照れ隠しなのだろうか、サラダボウルにフォークを伸ばし、1匹の赤れいむにこんな命令をした。
「フォークを咥えろ。断ったら食べる」
「ゆゆっ!ゆっきゅちきゅわえりゅよ!だきゃらたべにゃいでね!」
そう言って、硬い、しかもコーヒーに突っ込んでいたせいで苦味のあるフォークを涙目になりながら咥えた。
フォークを持ち上げると赤れいむの体は宙に浮き上がり、フォークがある一定の高度を越えた瞬間・・・
「おしょらをとんでりゅみちゃああああああ〜・・・」
何も考えずにそんな言葉を口にして、かなりの高さからテーブルに叩きつけられた。
もっとも、打撃や衝撃には強い体と、軽い体重のおかげで致命傷を負うような事はなかったが、かなり痛そうだ。
「ゆぴぇええええん!いちゃいいいい!いちゃいよおおおお!」
ゆっくり起き上がったれいむは飛び跳ねることも、這いずることもせずにその場にへたり込んで泣きじゃくってしまった。
が、10秒後に悪友がさっきの命令を再び声に出したところ、自分の失態に気がついたれいむは、口と目を大きく開いた驚愕の表情で硬直した。
更にその3秒後、れいむは生きたまま悪友のお腹の中に収まった。
「それだけじゃないぞ。依姫はガチでやり合ってもそんなに強くないかもしれない」
「マジで?余裕こいてたし、実際強かったじゃん?」
「メイド長に2回後ろを取られている。レミリアに殴り倒されている。同種の格下能力者に苦戦している」
「いや、メイド長は仕方な・・・」
「仕方ないだろ」と言おうとした時、ドアをノックする音が室内に響いた。
悪友が「おー」と気のない返事をすると、ドアが開き、ショートヘアの見目麗しいセーラー服の女子高生が姿を現す。
どうでも良い事かも知れないが、一応説明しておくと悪友の妹である。
「あ、お久し振りです〜。お兄がいつもお世話になってます〜」
「お兄のお世話してやってます〜。ってことで結婚してくれ!」
「あはは、相変わらず〜。っと、赤ゆん貰ってくよ〜」
悪友の肩に手を乗せて頭にお腹をのっけた格好でサラダボウルを覗き込む。
セーラー服のスキマから、小さな可愛らしい膨らみが見えそうで見えないのがもどかしいが、本人は全く気にしていない。
ひょいひょいと11匹の赤ゆっくりを摘み上げて、まくったスカートのすそに放り込む。見たところ、ズボンやスパッツは穿いていなかった。
お嬢さん、君は何でこうも無頓着なんだい?まあ、幼馴染の上に、兄貴みたいなものだから異性として意識されにくいんだろうけどさ。
「「「「「「「「「「「やっちゃあ、こりぇでゆっきゅちできりゅよ!」」」」」」」」」」」
「「「「「いーにゃ!いーにゃ!」」」」」
「「「「「れーみゅもゆっきゅちちちゃいよぉ」」」」」
「「「「「まりしゃも!まりしゃも!」」」」」
スカートのすその上で喜ぶ赤ゆっくり達。しかし、残念無念のご愁傷様。
俺たちよりもその子はずっと美味しく赤ゆっくりを食べる子だよ。まあ、知らぬが仏だ。とやかく言うこともないだろう。
知ったところでどのみち行き先は想像を絶する地獄だろうしな。
「んじゃ〜、ゆっくりしていってね〜」
「ああ〜、ゆっくりしていくよ〜」
そう言って、妹ちゃんはあっさりと悪友の部屋を後にした。
その後に残されたシスコン気味の悪友の鋭い視線から目を逸らしつつ、白々しく話題を戻す。
「そう言うけどな、地上人では絶対敵わないってんならそれこそ『それは月人が1000万年前に通った道だ!』と言いつつ、無効化しても良いじゃないか」
「・・・何という依 海王」
「実際、致命的だぞ。神霊には同じ神霊使いをぶつけて対策を立てましたが、時間停止を無効化出来ませんってのは」
「火雷神もしっかり時間停止で止まってたしな」
「弾幕ごっこでは一応勝ったけど、言ってみれば『1勝のために2回殺された』と言っても過言ではない状況じゃないか」
「・・・何という花山 咲夜」
それに・・・と呟きながら、フォークをボウルの中でさまよわせる。
動ける赤ゆっくりの多くは必死に逃げ惑っているが、さっき妹ちゃんが大量に連れて行ったことで色々状況が変化したらしい。
中には最初の赤まりさと同じように首をかしげてゆらゆらと動くフォークを見つめているものもいた。
「う〜む・・・どいつにしようかな?」
しばらく、フォークを左右に動かして遊んでみることにした。
右へふら〜り。すると、フォークの怖さを知っている赤ゆっくり達は必死になって逃げ回る。
泣き叫びながら必死に飛び跳ね、転んでも転んでも起き上がって逃げ惑う。
「「ゆっきゅちにげりゅよ!」」
「つんつんしゃんはゆっきゅちできにゃいよ!」
「やめちぇね!れーみゅはゆっきゅちちたいよ!」
どうやらさっきの「喋ったら食べる」はほぼ完全に忘れ去られているようだ。
左へふら〜り。逃げる赤ゆっくりがいる一方で、勇敢なのかお馬鹿なのか、きゃっきゃと喜びながらフォークを追いかける連中が3匹。
赤まりさが2匹と赤れいむが1匹。試しに右にフォークを動かしてみても、楽しそうに笑いながらついて来る。
好奇心旺盛なまりさ種はともかく、付和雷同しやすく、気の弱いれいむ種が混ざっているのは少し意外である。
「「きらきらしゃん、まっちぇ〜!」」
「みゃんみゃ〜!れみゅ〜、ちゅりちゅりしちゃっちゃ〜!」
なるほど、少し頭が残念な個体らしい。聞き取りにくい言葉から察するに彼女はフォークを母親だと思っているようだ。
フォークを動かさずに構えていると、赤まりさ2匹は近寄り過ぎずにある程度距離を置いて様子を伺っているが、その赤れいむは無防備に近寄ってきた。
そして、触れ合うことの出来る距離まで近づくと、おもむろに舌でフォークを舐め始めた。
「ぴぇ〜りょぴぇ〜りょ・・・ゆぴゅ!いちゃい!いちゃいよおおおおお!?」
案の定、赤れいむは自らフォークの先端に舌を刺して、その痛みで泣き出してしまった。
面白いので、泣きじゃくっている赤れいむの頬を本当に軽く突いてみる。
すると・・・
「ゆゆっ!みゃんみゃ〜、ちゅりちゅり!ちゅりちゅり!りぇーみゅ、ちゅりちゅりちゅるよ!」
本当に聞き取りにくい言葉ですりすり宣言をした赤れいむは、体を揺らして、母親の柔らかい頬にぶつかっていった。
言うまでも無いかもしれないが、母親の頬というのはフォークの先端のことである。
「ゆぴぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」
そして大方の予想通りに赤ゆっくりの瑞々しい柔らかいほっぺに無機質なフォークがぶっすり。
様子を見守っていた赤まりさと下の方にいて思うように身動きが取れない中の、上を向いている赤ゆっくりが驚愕の表情でそれを見つめていた。
逃げ惑う赤ゆっくり達に関しては、相変わらずみんなで固まって震えているだけだった。
「なんか刺さっちまったな」
「刺したら食えよ。2度刺し厳禁!」
「お前は新世界の串揚げ屋か?」
偶然といえど刺さってしまったものは食べねばなるまい。この家に古くから伝わる掟に従って、赤れいむを引き上げる。
痛みと、恐怖によって生まれたての赤ゆっくり特有のぷるぷる震える仕草に近い様子を見せる彼女は俺と目が合った瞬間ににぱぁっと微笑んだ。
「おきゃ〜きゃ!れーひゅ!れーひゅひゃほ!ひゃふへてへ!へーひゅほたひゃふへてへ!へ〜ろへ〜ろちちぇ・・・・・・・・・ぴひゃ!?」
何か煩わしかったので、とっとと口の中に放り込みすりつぶしてやった。
う〜ん・・・精神が破綻していたせいだろうか、いまいち狙ったとおりの、あるいは予想していた甘味と違っていて変な感じだ。
口直しに再びコーヒーを啜り、一息ついたところで「えーっと、よっちゃんだっけ?」と話題を戻す。
「レミリアにボッコされたのに関しては『弾幕ごっこだから』は言い訳にならんだろ?」
「まあ、そうだろうな」
「霊夢に関しても、弾幕ごっこだったとは言え大禍津見に苦戦していたのを見る限り、神霊に対処しきる力が本人にあるとは思えない」
「スタンドがいくら強くても、本人にスタンドに対抗する力があるわけじゃない、って感じか?」
「早人くんすげぇよな。神霊の場合、どっちかっつーとペルソナ?まあ、何でも良いや」
そこで一旦会話を止めて、2人同時にサラダボウルにフォークを伸ばした。
赤ゆっくり達は恐怖のあまりに逃げることもままならず、隅っこで固まってがたがたと震えている。
「やめちぇね!」「にゃにみょわりゅいこちょしちぇにゃいよ!」「きょわいよー!」の大合唱が聞こえてくるが、2人とも気にも留めない。
「「ゆぴゃ!?」」
ほぼ同時に、適当な赤ゆっくりを突き刺し、俺は赤まりさを、悪友は赤れいむを口の中に放り込む。
もしゃもしゃと咀嚼していると、突如隣の部屋から・・・・・
「「「「ゆきゅああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」」」」
と、赤ゆっくりの悲鳴、それもこの部屋の連中のそれとは比較にならないほどの大絶叫が聞こえてきた。
隣の部屋は確か妹ちゃんの部屋だ。
「「ふぅ・・・」」
が、俺も悪友もそんなもの気にせず、コーヒーを啜った。
気がつけばコーヒーを飲み干してしまったらしく、白いティーカップの中には僅かなコーヒーだまりがあるばかり。
それに気付いた悪友はすっと立ち上がるとおかわりを用意するために2つのティーカップを持って部屋を出て行った。
「お兄〜!・・・あれ〜?」
「コーヒー淹れに行ったよ」
「なぁんだ〜・・・せっかく凄く甘い赤ゆんの作り方教えてあげようと思ったのに〜」
兄貴のほうと入れ替わるように部屋に入ってきた妹ちゃんは心なしか興奮していた。
ちなみに、セーラー服ではなく、まだ午後4時ごろであるにもかかわらず、ピンクのストライプ模様のパジャマに着替えていた。
彼女は普段、ほんのり日焼けした健康的な肌と、ショートヘア、そしてあまり大きくない胸とボーイッシュな雰囲気をかもし出している。
が、こういう姿を見ているとやっぱり女の子なんだなぁと思ってしまう。
「じゃあ、俺に教えてくれよ?」
「おっけ〜!え〜、まず、赤ゆっくりの頬の少し後ろのほうを噛み千切ります」
「ゆゆっ!おにぇーしゃ、ゆぎぃ!いぢゃい!いぢゃいいいいい!?」
そう言いながら、1匹の赤れいむを摘んで、彼女の小さな頬を前歯で少しだけ噛み千切る。
それから、さらに1匹の赤れいむと2匹の赤まりさを取り出して、同じように頬を噛み千切った。
「ゆびゅ!?」「ゆぐっ!?」「ゆぎょぉ!?」
「同じように両頬の後ろを噛み千切った4匹を用意して、傷口同士をくっつける!」
赤ゆっくりの傷口同士をくっつけると、俺の使っていたフォークを器用に使って赤ゆっくり達の皮と皮を癒着させてゆく。
やがて、4匹の別の個体だった赤ゆっくりはひとつながりの生命体となってしまった。
「するとなんと〜!痛覚が共有されて誰を叩いても皆痛がるのだ!」
「「「「ゆきゅ!?」」」」「「「「いぎぁ!?」」」」「「「「ゆぴぇ!?」」」」
「そして、なんと〜・・・全員いっぺんに叩くと通常の4倍痛がります〜」
「「「「ゆきゅああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」」」」
その後、妹ちゃんはゆっくりが一番痛がる底部の中心部分を徹底的にフォークで責め立て、気がつけば4匹とも、餡子も吐かずショックだけで絶命していた。
口が、元の顔の大きさに匹敵しそうなくらい広がり、目も皮が破れるほどに大きく見開かれたその表情が、彼女の責めがどれだけ激しかったのかを如実に現している。
そんな悶死赤ゆを彼女に勧められるままに2匹、赤れいむと赤まりさを1匹ずつ口の中に放り込む。残りの2匹はもちろん妹ちゃんの口の中。
「んぐ・・・なるほど、確かに甘いな」
「でしょでしょ〜!」
「でも、ちょっと俺には甘すぎるかな?」
俺の言葉を聞いた途端、さっきまで満面の笑みを浮かべていた妹ちゃんは目に見えて落ち込んでしまう。
う〜ん、年頃の女の子は感情のムラが激しくて困る。
とはいえ、流石にこのままフォローしないわけにも行くまい。
「でも、美味しかったよ」
「本当に!?」
「ホントホント」
こんなしょっぱいフォローでも十分効果があったようだ。
さっきまで落ち込んでいたのが、一転して破顔一笑。夏のお日様のよりも眩しい笑顔を輝かせている。
可愛いな、チクショウ!
「キサマァ!妹とちゅっちゅしてねーだろうなああああああ!!?」
「してねーよ!!!」
が、シスコン兄貴の帰還によって、その笑顔は隣の部屋へと沈んでいった。
またしても鋭い視線を俺に迎える悪友。憮然とした表情のまま、黙ってコーヒーを手渡してきた。
その視線から目を逸らしつつ、さっきまで何を話していたのか必死に思い出す。
「・・・そうだ。神霊無しだと霊夢にも苦戦するって話だったっけ?」
「ああ、さっきの話の続きか」
「それに、よっちゃんが弾幕戦に応じたのも見逃せないな」
と言いながら、淹れたてののコーヒーのおかげで随分熱くなったフォークを掴み、適当な赤ゆっくりに突き刺す。
「ゆびゅ!?いぢゃ・・・い!?あぢゅ、あぢゅいいいいいいいいいいいい!」
「痛いのか熱いのか、どっちかにしろ」
「ゆぎゅううう・・・どっぢみょだよぉ〜・・・!」
「じゃあ、痛いのと熱いのどっちが嫌か言いなさい。どっちもって言ったらゆっくり出来なくするぞ?」
「ゆぴぃ!?ゆゆゆゆゆゆ・・・い、いぢゃいのがいやだよ・・・」
俺に脅されるような格好でどっちが嫌かを答えた赤れいむの目には大粒の涙が浮かんでいる。
そして、素直に答えた彼女にはご褒美として、と言う訳ではないが熱々のコーヒーの中に放り込んでやった。
黒い水面に浮かび、「あぢゅいいいいい!」と叫びながら、揉み上げを必死に動かしてばちゃばちゃと波紋を立てる赤れいむ。
その動きは徐々に鈍くなって行き、動かなくなったところで口の中に誘った。
「で、弾幕戦が何だって?」
悪友は口をむしゃむしゃと動かしながら続きを待っている。
その咀嚼の仕方を見る限り、口には2匹の赤ゆっくりが収まっているものと思われる。
「祗園様で完全に動きを封じた状態なのに魔理沙の提案に乗るのは、レミリア以外やる気皆無だったのを差し引いてもおかしいと思わないか?」
「まあ、そうかも知れんな・・・」
「そうかも知れんな、じゃないんだよ。将棋で詰んだ時に『別のゲームしよう!今のノーカンな!』って言われて応じるか?」
「いや、全力でぶん殴る」
喋りながら適当な赤れいむを指で掴み、手のひらの上に乗せる。
恐怖のあまりに身動き一つ取れないでいる赤れいむだったが、俺がしばらく何もしないでいると、すぐにゆっくりし始めた。
が、そこですかさずフォークによるひと突きをお見舞いして、涙目にしてやる。
「れいむ、喋らずにとっても可愛い仕草をしたら食べないでいてやるよ」
「ゆ、ゆっきゅちぃ〜・・・」
「つまり、あの勝負に応じるだけのメリットがよっちゃんにもあったってことだ」
「本人が明言しているのは無駄な血が流れない、くらいか?」
俺が全く見ていないにも関わらず、赤れいむは必死になって手のひらの上で這いずり、跳ね回って自分の可愛らしさをアピールしている。
しかし、見ていないのでそれが本当に可愛いかどうかなど分かるはずもない。よって無条件に失格とみなした。
「やめちぇね!れーみゅはきゃわいいよ!だきゃらやめちぇね!ゆえーーーーん!」
「うん、そうだな。れいむは可愛いな」
「ゆゆっ!じゃあ、れーみゅ・・・」
「でも頂きます。む〜しゃむ〜しゃ・・・」
れいむを食べて、視線を戻すと、悪友は手の上で赤ゆっくりを細かく分割していた。
ボウルの中にはその分割されたゆっくりがいくつか放り込まれていて、姉妹の餌になっている。
耐え難い恐怖の中で、ようやく得ることの出来た幸福に、いつの間にか残り3匹になってしまった赤ゆっくり達は喚起の涙を零す。
「月人は穢れを嫌うからな。平安時代には血も穢れとみなされていたらしいし。それ以外にもメイド長に後ろを取られたのとか、霊夢が神霊を使えるのも圧力になったろうな」
「あ〜・・・確かあの時点では時間操作を瞬間移動だと勘違いしていたからな。瞬間移動だと祗園様が通じないかもしれないわけか」
「あと、確証はないけど霊夢も同種の能力を持ってる以上、無効化する技を持っている可能性もある。少なくとも兎連中の全滅は覚悟せにゃならんわな」
「ってことは、魔理沙の『お互い大きな被害を被る』もあながちハッタリじゃないのか」
俺と悪友は同時に赤ゆっくり、どちらも赤れいむを指で摘んでボウルから取り出すと、さっき分割したゆっくりを手のひらの上で食べさせてやる。
声を揃えて、散々姉妹を酷い目に合わせてきた相手の手の中で「む〜ちゃむ〜ちゃ、ちあわちぇ〜!」と満面の笑みを浮かべた。
その後、2匹をボウルの中に戻し、同時に先ほど選ばれなかった最後の1匹である赤まりさを目の前で、ばらばらに分割する。
もちろん、俺たちが食べるものではない。
「お前ら、その赤まりさをちゃんと食べるんだぞ。食べないとお前らを食べるからな・・・あと、『力の強い妖怪の多い』なんて解説を入れてるのもある種の恫喝だよな」
「ああ、岩戸投げで推定1トンオーバーの岩を片手でぶん投げる萃香辺りに本気で殴られたら流石にやばそうだもんな。あと、何を差し置いてもゆゆ様」
「うむ、刀なんか持ってるから妖夢と勘違いして2つの意味で食われかねん」
「ところで、れいむ達はちゃんと食べ終えたか?」
「食う」からの連想で、れいむ達のことを思い出した悪友は、ボウルを覗き込んだ。
中では2匹の赤れいむが目にいっぱいの涙を溜めながら、姉妹の赤まりさだったものをむ〜しゃむ〜しゃしていた。
既に全体の8割以上を食べ終えており、後1分とかからずに食べ終えることだろう。
「なあ、れいむ?」
「「ゆ゛っ!?にゃ、にゃあに?でいうだちぢゃんとだべぢゃよ・・・!?」」
「さっきのあまあまさんと味が似てただろ?」
「「ゆぅ・・・・・・?ゆ゛ゆ゛っ!?」」
しばらく意味が理解できずに硬直していたれいむ達だったが、ようやく全てを理解した瞬間、顔が真っ青になった。
そして、「ゆ゛げー!ゆべぇ!」と必死に唸って食べたものを吐き出そうとする。
ついさっきまで赤まりさを食べていたのに。「しあわせ〜!」してしまったことに罪悪感があるのだろうか?
「「まあ、何でも良いか」」
「「ゆぴぃ!?」」
俺と悪友はハモりつつ、全く同じタイミングで手にしたフォークを赤れいむに伸ばし、口の中に放り込んだ。
しばらく噛まずに、口の中で命乞いするのを聞き、それから美味しくいただいた。
「で、結局何の話だったっけ?」
「よっちゃんは無双しているようで実は部下思いで、彼女達のために必死に頑張っている可愛らしい娘さんだって話だ。いちいち余裕こいた言動をするのも部下を安心させるため」
喋り終えた俺は、コーヒーを一口すすって、口の中に残る甘味を消し去った。
‐‐‐あとがき‐‐‐
よっちゃん可愛いよ、よっちゃん
今回のコンセプトは食品としての赤ゆっくりです
今までペットとしてのゆっくりは結構書いてきたんですが、こっちに対するアプローチが少なかったので
本当はもっと淡々と食べられて死んでゆく感じにしたかったんですが・・・
byゆっくりボールマン
最終更新:2009年01月19日 21:23