ゆっくりいじめ系2120 ゆっくり生存競争

書きたかった事
  • 親は子を見限れるのか
  • でぶれいむ。ぶよぶよ
注意点
  • 口の中いっぱいに食べたら一日分の食事くらいの設定です






「「ゆっくりしていってね!!」」
「「「「ゆっきゅりしちぇいちぇね!!」」」」
うららかな陽気に誘われてまりさとれいむ、そしてその子供達いずれもれいむ種の四匹が背の低い草が生い茂る原っぱで思い思いにくつろいでいる。
両親は子供達が遠くに行かないよう見守り、子供達は四匹仲良くかけっこや押し合いを興じている。
今年の冬も無事越す事ができ、順調にご飯も集まったことから早めの子作りをして番は群れのゆっくり達よりいち早く幸せそうな日々を送っている。
れいむが子供達を呼ぶとその小さな体で一生懸命に跳ねてくる。
そよそよと撫でるように静かに吹く風やその大きさの割にのっそりと動く雲のおかげでここはとてもゆっくりできる。
そして番と子供達は寄り添って昼寝を始める。
天高く昇った太陽が体を温めてぽかぽかと気持ちよく、日光はまるで餡子にまで染み渡るようだ。

そんなゆっくり達の平穏を破る者が現れた。
片手に鞄を持った人間だ。わざわざゆっくりがいる森の奧までハイキングをしてくるような変わった男である。
「ゆっくりしていってね!!」
無防備に眠っているゆっくりの家族に向かって男は挨拶する。
すると眠そうな目をしながら律儀に挨拶を返してきた。
「「ゆっくりしていってね!!」」「「「「ゆっきゅりしちぇいちぇね!!」」」」
「おにいさん、ここはまりさたちのゆっくりぷれいすだからでていってね!!」
「まあそんな事言わずにここでゆっくりさせてくれよ」
「れいむたちはねむねむなんだよ? そんなこともわからないの?」
「せっかく君たちに美味しい食べ物を持ってきてやったんだがいらないのかい?」
男のその言葉に反応したのは子供達だ。今は睡眠欲よりも食欲が優先される時期なのだろう。
男の足下まで跳ねてきて、我先にとぴょこぴょこと垂直に飛び上がる。
「しょれってゆっきゅりできりゅ?」
「ああできるとも」
「れいみゅにいっぱいちょうらいね!!」
「れいみゅも!! れいみゅも!!」
「はいはい順番にね。お前達はいらないのかい?」男は番であるまりさとれいむにも呼びかける。
「ゆゆっ!! れいむたちにもちょうだいね!!」
「よしよし」
どうやら家族全員が男からのご飯に興味をもったようである。
男は手持ちの鞄から大きいおにぎりを一つ取り出しゆっくり達の背後に向かって放り投げた。
すると男の手を離れ放物線を描くおにぎりを家族全員が目で追う。
そしてゆっくり達は一目散に駆けだした。
おにぎりに一番近い位置にいるのは親であるまりさとれいむであり、あっという間におにぎりに食らいついていた。
それに遅れたのは子供達である。男の足下にいたうえ、親よりも移動速度も遅いのだ。
急いで跳ねていくがきっと辿り着いた頃には無くなっているだろう。
「にゃんでにゃげたのー!!」
「ゆえーん、いじわるしないでにぇ!!」
男に悪態を付きながら必死に跳ねていった。
そのうちの一匹の赤れいむが出遅れた。
男の足下で跳ねていて丁度着地してグニャっと変形しているときに男がおにぎりを投げた赤ゆっくりだ。
姉妹達の様子からようやくご飯が遠くにあることを知って、泣きながら後を追い始めたが完全に出遅れていた。
男はその赤れいむを見逃さなかった。
素早く背後から捕まえては叫ばれないように口に粘着テープで蓋をする。
さらに後ろ髪のリボンともみあげの飾りを奪って鞄の中から透明な箱を取りだしてそれにれいむを放り込んだ。
次に男が取り出したのは別の透明の箱でその中には飾りのない同じ大きさの赤れいむがいた。
そのれいむにこれまた素早く先程奪った飾りを取り付け、怪我をしないようそっとご飯の近くに投げた。
もちろんこの間の男の行動を家族のどのゆっくりも見ていなかった。それほど男の与えたご飯に注視していた。
そして男は静かにその場を去った。親であるれいむとまりさは自分の子供の中身がすり替わった異変に気が付くだろうか、いや気が付かない。
飾りで個体識別をするゆっくりにとってもはや本体は付属品なのだ。
まるでおまけ付きお菓子のような存在である。

余談はさておきゆっくりの家族の様子を見てみよう。
「うっめ、めっちゃうっめ」
男の投げたたった一個のおにぎりを親まりさと親れいむは二匹で食べ終えてしまった。
「おかーしゃん、おにいしゃんのごはんは?」
「ゆあああ、おいしくてぜんぶたべちゃったああああ」
「どおじでわけてくれにゃいのぉぉぉ」
「おかーしゃんのばきゃぁぁぁぁ」
「ごめ゛んね゛えええええええ」
泣き崩れて情けない表情の親子の元に男によって中身の変えられた赤れいむが近づいてきた。
「おなかへっちゃからごはんちょうらいね!!」
「ゆう?」親まりさは声のトーンが少し低いその赤れいむを少し不審に思った。
こんな声の子供がいたっけ。でも姿は間違いなくまりさの子供だし……。
だがそれ以上まりさは深く考えない。
「みんなおうちにかえってごはんたべようね!!」
「「「「ゆゆ~ん」」」」
親まりさは自分の気持ちを一旦押し込めて子供達のご飯を与える事を先決した。
どうせ気のせいだろう。よく思い出せば前からこんな感じだったさと何とも楽観的に考えながら家族仲良く帰宅したのだった。

「こんにゃのじゃたりないよ!! もっちょもってきてにぇ!!」
「おちびちゃんちょっとたべすぎだよ……」
親達が保管していたご飯を子供達に配り、皆で食べ終えさらに一匹だけおかわりをした直後の赤れいむの台詞である。
残り三匹の赤れいむはと言えば、お腹いっぱいで丸々としたその姿のせいかころころと巣の中を転がり回っている。
しかし残り一匹の様子がどうもおかしいのだ。
この一匹は親まりさが昼間の原っぱで異変を感じた一匹だったが、どこがおかしいのかわからないでいる。
「ゆゆっ……、しかたないからもうすこしもってくるね」
そう言って親れいむは食物庫に入っていく。食べ物の保管量に関しては申し分無いのでなんら問題ないが、今までに無い事態に少し戸惑っていた。
「れいむはそだちざかりなんだね!!」
親まりさはむしろそれを喜ぶ事にした。そうだ自分達が子供の頃もこれくらい食べたものだ。
いつも親の手を煩わしていた気もする。
そう思いこむ事にした。そうして問題を先延ばしにしてしまった。
「さあおちびちゃん、ゆっくりたべてね!!」
「はふはふ、むしゃむしゃ、がつがつ……」
「いっぱいたべてゆっくりおおきくなってね!!」
気持ちいいの食べっぷりに両親の頬は緩んだが、しかしそれを豹変させる台詞を赤れいむは吐く。
「まだしあわしぇーできにゃいよ!! もっちょちょうだいにぇ!!」
「「ゆ゛ゆ゛っ!!」」
結局その後普段の五倍の量を食べて赤れいむは渋々満足した。
あれほど食べたのにかかわらず体型が変わらないのが不思議なくらいだ。大食いの赤れいむの横で眠る姉妹はあんなにも丸々しているのに……。
そこには両親は気が付いていない要素があった。この赤れいむのサイズが一回り大きくなっていた事だ。
たった一回の食事で急激な成長をしたことになる。
中身の餡子が増えただけでは表皮が追いつかず破裂しかねないが、この赤れいむはその特異的な柔軟な皮のおかげで形を保っていた。
ようやく眠りについた赤れいむを見つめながら親まりさと親れいむは安堵のため息をつく。
しかしその安堵もその日の晩のご飯の時に打ち砕かれた。
再び大量のご飯を要求する一匹の赤れいむによりあれほど蓄えていた食料も残りわずかになってしまった。
「このちびちゃんはごはんをたべすぎだよ……」
「ゆゆっ……。まりさががんばってごはんをあつめるからだいじょうぶだよ!!」
就寝前に両親が一匹の赤れいむについての話をした。
ご飯を食べ過ぎる本人ももちろん心配だが、明日も明後日もこれから先ずっとこのペースで食べ続けられると家族全員のご飯が無くなってしまう心配があった。



翌朝、親まりさと親れいむが目覚めるといつもの挨拶を交わし合う。
「「ゆっくりしていってね!!」」
「「「ゆっきゅりしちぇいちぇね!!」」」
あれ?とまりさとれいむはどちらともなく思った。
そしてもう一度、今度は少し大きめの声で挨拶をする。
「「ゆっくりしていってね!!!!」」
「「「ゆっきゅりしちぇいちぇね!!!!」」」
まりさとれいむは巣の中をよくよく見回した。
そこにいるのは赤れいむが三匹だ。たしか自分達の子供はもう少し多かったような気がするのだが。
「おかーしゃんどうしちゃの?」
二度にわたる挨拶に赤れいむの一匹は不思議そうな顔をしている。
もう一匹は未だ眠そうな顔を、そして残りの一匹は朝からとても元気である。
「おなかへっちゃからごはんちょうだいね!!」
「そうだね、ごはんにしようね!!」
「れいむたちはゆっくりまっててね!!」
自分達の子供が一人減っている事に気が付かない親まりさと親れいむ。
ご飯の催促を受けてまりさが単身朝ご飯の調達に向かい、れいむは子供達と歌を歌ったり頬擦りをしながらその帰りを今か今かと待つ事にした。

所変わってここは町の加工場、ゆっくりたちの阿鼻叫喚に包まれるまさにゆっくり地獄と呼べる空間に冒頭に出てきた男が勤めていた。
男が勤務する部署は廃棄物処理の工程に携わっていた。
ゆっくり食品の製造過程においていくつか発生する商品適応外のものを処理することがメインで、その他にも繁殖、飼育中に出てくる残飯、発育不良品、死体等の処理も行うのだ。
この工場ではそういった物を一元化してゆっくりに処理させる工程にある方法を取っていた。
いわゆるゆっくりコンポストである。
コンポスト内には工場稼働中は常にゆっくりの餌となるものが流し込まれていった。
一般家庭や街角に設置してあるコンポストとは比にならないほどの処理効率を求められた内部のゆっくり達は、世代を経るたびにそこで生き残る術を身につけていった。
コンポスト設置当初は何度もゆっくり達は処理しきれない餌にまみれて死んでいき、工場全体の動きを停止せざるを得ない状況に陥らせた。
そこで男達が投入したのが表皮の伸縮性の高いゆっくりだった。
ゆっくりの食欲が完全に満たされるのは自分の体がパンパンになりこれ以上ご飯が食べられなくなったときだ。
つまりその状況までいかなければいくらでも食べ続ける事ができた。
そして通称コンポストゆっくりと呼ばれる大喰いのゆっくりが誕生した。
表皮が厚くさらにとても伸びるコンポストゆっくりはコンポスト内を溢れかえらすこともなく、その無限の食欲で廃棄物処理を行っていった。
このゆっくりは大喰いもそうだがやたらと成長が早いこともその特徴だった。
沢山食べるから早いのか、もっと沢山食べるために早く成長するのかは定かではない。
またコンポストを空にするのが彼らの目的であるためうんうんしーしーもきわめて少ない。
その体皮も手伝って体内の老廃物はすべて溜め込んでいるようだった。
結果コンポスト内では水ぶくれ気味で健康的なゆっくりからすればかなり太った体型となっていた。

男はこのコンポストゆっくりを興味本位で野に放ち、野生での適応は可能かを試してみる実験としてまりさとれいむの子供をすり替えたのだ。
そしてそのコンポストゆっくりの赤れいむはまさに猛威を振るっていた。
朝のうちから狩りに出かけた親まりさが昼ご飯も兼ねてかなりの量のご飯を取ってきていた。
昨日の昼ご飯、晩ご飯のことを考えれば二回の食事はこれくらいあれば食べ盛りの赤れいむも満足するだろう、そう思った結果である。
一般的なまりさからしてもとても優秀なご飯回収量といえる。
しかし、その大量のご飯はあっという間にコンポストれいむの食欲によって消費されることになる。
「むーしゃ、むーしゃ、ふまんぞくー」
「「なんでええええええ!!」」
ゆうに一回の食事量の十倍は超えている、それも成体ゆっくり換算でだ。
見てみるとコンポストれいむの体高はすでに子ゆっくり並の大きさで、球体というより円柱に近い形をしている。姉妹と比べるとその異様さは目立つ。
たった一回の食事でここまで急成長し、さらにデブ体型である。コンポストれいむ恐るべし。

親まりさとれいむは戦慄した。このままでは親の威厳が保てないと感じた。
どこのゆっくりの世界に子供に満足にご飯を与えてやることのできないゆっくりがいるのかと。
子供をゆっくりさせてやれない親はゆっくりできないゆっくりだ。
なんとしてもゆっくりさせてやらねばならないというような変な責任感の元に朝ご飯が終わると両親揃って赤ゆっくりを巣に置いて狩りに出かけてしまった。
しかしここで妙な気合いを出すのは無駄な行為であるとはまりさとれいむは知る由もない。
それはいくらご飯を持ってきてもコンポストれいむに満足という言葉はないからだ。

太陽が空高く昇りきった頃、親まりさとれいむはその帽子と口に入るだけご飯を入れて自分達の巣に帰ってきた。
巣で待っていたのは同い年とは思えないほど体格差のあるれいむの姉妹が二匹待っていた。
「ゆゆゆっ!! れいむはどこにいったの!?」
親れいむは子供が一匹いなくなっていると気が付いた。この狭い巣の中では隠れようもないのでやはりいないのだ。
「しらにゃいよ!! おきたらいにゃかったよ!!」
「ゆっくりはやくごはんちょうだいね!!」
「もしかしておそとにでていっちゃったの!?」
「どおじですでまっでないのおおおお!!」
しかし赤れいむが巣から出た形跡は全くなかった。なぜなら巣に戻ったときに巣の入り口の偽装は破られてはいなかったからだ。
「ゆっくりはやくごはんちょうだいね!!」
「「れいむはすこししずかにしてね!!」」

両親はしつこく催促してくる赤れいむにご飯を与えて黙らせる。
その間に巣の周辺の捜索していなくなった赤れいむの行方を追った。
しかしどうしても発見できなかった。赤れいむの移動速度なぞたかが知れている。
ご飯を探している時間がかなりあったとしてもそれほど遠くまでいけないのだ。
それでも見つからないというのは捕食種に食べられたと考えるのが妥当だった。
「ゆあーん、おちびちゃんがだべられだあああああ」
「れいむしっかりするんだぜ、のこったれいむたちをゆっくりそだてればいいんだぜ」
「ばでぃざ、ごめんね゛ええええええ」
「れいむがあやまることじゃないんだぜ。ゆっくりすにもどるんだぜ」
子供が一匹いなくなったことを後悔するれいむとそれを何とかなだめようとするまりさ。すでにいなくなったのが二匹目であることはわかっていないようだが。

そんな二匹が巣に戻ると今度は驚く事態が発生していた。
「もっとごはんちょうだいね!!」
「「ゆがーん!!」」
あれほど集めたご飯がもうすでに消えていた。朝与えた量の二倍はあったのに。
さらに巣の中にあったなけなしの蓄えもすっかり消えていた。
丸々とした赤れいむとほとんど成体サイズに近い赤れいむの対比も両親を驚かせる。
たった二日ばかりでもうすでに自分達と同じ大きさまで育ってしまった。
しかし心はまだ赤れいむのそれである。
「「しゅーりしゅーり」」
隣にいる普通の赤れいむとはまるで親子のようなご飯後の頬擦りをする。
力加減を誤れば赤れいむが潰されそうな勢いで頬擦りするので両親は内心ハラハラしてそれを見守っていた。
そのうち昼寝の時間なのか二匹は寄り添って寝息を立て始めた。
それを確認するとまりさとれいむは巣を飛び出した。
この時間を見計らって両親は再び大量のご飯を用意しなければならないのだ。

両親が巣から出たあとしばらくするとコンポストれいむは目を覚ました。
その空腹から満足な睡眠をとることはできずたびたび起きてしまうのだ。
そしてその寝ぼけ眼に入ってくるのは美味しそうなご飯だ。
とても丸々として美味しそうなご飯。
その餡子に刻まれた記憶では丸々としたゆっくりはご飯でしかないのだ。
もはやその体格差から小細工など必要ないから姉と呼んでいた赤れいむを豪快に一飲みにしてしまった。
こうしてこのれいむは三匹の姉妹を寝ているときに襲っては食料にしていた。
両親が気が付かぬよう別段に気をつけていたということはないがたまたま見つからなかった、それだけのことである。
しかしそれはどこか自分が生き延びていくために行ったという自然な光景にも見えた。
自分に親が集めてきたご飯を集中させることが目的であるようなそんな光景だ。



とある群れのリーダーであるゆっくりぱちゅりーは最近起こっていたご飯泥棒をついに捕獲することに成功した。
自分達の群れには属さないが群れの近くで住んでいる薄汚いまりさとれいむの番だった。
大量のご飯を盗んでいるはずなのに本人達は痩せ細っているのが不可解だが盗みの現場を目撃した限りやはり犯人なのだろう。
「むきゅー、いままでもっていったごはんをかえしてもらうわ!!」
「ゆっくりりかいしたよ……」
「まりさたちについてくるんだぜ……」
ぱちゅりーが泥棒ゆっくり達にご飯の返還を要求すると二匹はそれにすんなりと応じた。
自分達の非を認める潔さがあるのに盗みを働いたことがなおさらぱちゅりーの理解の範疇を超えていた。

森の中を二匹を先頭に多くのゆっくりがぞろぞろと這っている。
自分達のご飯を返してもらうため二匹の巣に向かっているのだ。
かなりの量が巣に溜め込まれているとみて群れから成体ゆっくりのほとんどが駆り出された。
二匹の巣の前に到着すると不思議な物が目に入ってくる。
巣の前にうずたかく積まれた土の山である。
これだけの量があれば、山を固めてそれをくり抜く事で地上の巣を作る事が出来そうだ。
群れのゆっくりがゆっくりできそうな土の山に見惚れている間に、先頭にいたまりさとれいむは巣の前に着くと中に向かって叫んだ。
「「ゆっくりできるごはんだよ!!」」
「むきゅ、そのなかなのね!! みんなゆっくりとりかえしてね!!」
「「「「ゆゆ~!!」」」」
まりさとれいむの様子から巣の中に持って行かれたご飯があるものとぱちゅりーは判断して、群れのゆっくりに号令を掛けた。
その声に反応のしてゆっくり達が列になってぞろぞろと巣の中に入っていった。
これだけの土を掘り返した巣だ。中はきっととてもゆっくりできる空間になっているだろう。ぱちゅりーは巣の外から中の様子を予想した。

どんどん群れのゆっくりが入っていくがまだその流れは止まりそうにない。
二十はいた大人のゆっくりが巣の中に入っていた。それだけの数が入っても窮屈そうな声が聞こえてこない辺り、中の広さは予想以上なのだろう。
ぱちゅりーは巣の住人と一緒に巣の外で群れのゆっくりが出てくるのを待っていた。
しかしいくら待っても中に入っていったゆっくりが出てくる様子はない。
いくら広いと言ってもご飯の匂いを嗅ぎつけて食物庫に入り、ご飯を口に入れて出てくるくらいならそれほど時間はかからないはずだ。
「おかしいわね。ゆっくりしてないででてきてね!!」
ぱちゅりーは痺れを切らして自らその巣の中へと入っていった。

それほど広くない入り口付近のトンネルをどんどん奧に入っていくと急に柔らかい地面の部屋が現れた。
その空洞は部屋と呼ぶにはそれほど広くなく大人三匹が入れば窮屈になる部屋だ。
不思議なのはその狭さなのに群れのゆっくりはどこにもいないのだ。
「むきゅー、みんなはどこかしら。むぎゃ!!」それがぱちゅりーの最期だった。
突然部屋の天井が下がってきてぱちゅりーを押しつぶした。
すると天井は再び上がり、また下がってくる。そのうちぱちゅりーだったものは部屋の奥へと消えていき、群れのゆっくりと合流した。
いずれも完全に潰された形ではあったが。

「れいむ、あのむれのこどもたちをここにゆっくりつれてきてね。まりさはすをひろげるよ……」
「ゆゆっ、わかったよ……」
肉体的にも精神的にも疲れ切った二匹のゆっくりは一秒の時間も惜しいとばかりにすぐに動き始める。
自分達の子供をゆっくりさせるためだけの親と成り果てたゆっくり達の姿である。
結局自分の子供の異変に疑問を持つのは最後まで無かった。
むしろ自分達の不甲斐なさを呪うほど子供に傾倒してしまった。
自分達がゆっくりであるためには大喰らいの子供をゆっくりさせてやらなければならない。
もし出来なければ自分達はゆっくりできないのだ。
やはりゆっくりという生物はゆっくりできないようにできているようだ。
どこかで子供を見捨てれば別のとてもゆっくりできたゆん生があったのかも知れない。
しかしもしの世界は実現しない限りあり得ない話であったのだ。
そんなゆん生はこの両親にはこれからもなく、忙しなくご飯やときにはゆっくりをかき集める日々が死ぬまで続くのだ。



加工場の男は不幸な二匹が死に絶えるのを見届け、野生に放したサンプルに挨拶をした。もちろん巣の中に向かってお互いの姿は見えないままでだ。
「れいむ、ゆっくりしていってね」
「ゆっくりしていってね!!」
巣の中からはれいむの重低音が響く声が聞こえてきた。この声はコンポストゆっくりが太りきったときの特徴でもある。
「そんなことよりもごはんちょうだいね!! まだしあわせーできないよ!!」
巣の中からご飯を求める声が聞こえてくる。
きっとこいつも最期までご飯を求め続けた事になるのだろうと思う。
幸せを知らぬまま死ねるのは不幸も知らないという意味で幸せなのかも知れない。
男は持参していたドスパークに用いられるキノコを巣の前に一山置き、中のコンポストれいむに話しかけた。
「巣の前にキノコを置いたから食べるといいよ」
「ゆっくりたべるよ!!」
その瞬間巣の中から大蛇のようなれいむの舌が伸びてきてキノコをかっさらっていった。
その様子を見届けると男はその巣を後にした。
男が森を後にした頃、木々を揺らす地響きと共に巣の中から黒い煙が吹き出した。



あとがき
カッコウの托卵っぽいのをテーマに書いてみました。
自分より体の小さな親に育てられるカッコウの写真を思い浮かべて貰えると丁度そんな感じかも。
初期のありすが托卵で増えるという設定は今ならかなり面白そうな気がする。

コンポストれいむの成長と共に移動が困難になり、巣を拡張することで肥大による圧迫を防いだそうです。
巣の中にまりさ達が入るときは親であると叫びながら入っていったそうな。

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最終更新:2009年02月03日 21:44
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