ゆっくりいじめ系2319 永夜緩居[三匹のゲス、一匹目-グズ(前編)

ある時から、ゆっくりの間でこんな噂が広まった。
『魔法の森の奥深くに
 おいしい花が美しく咲き乱れ
 太陽は燦燦と降り注ぎ
 小川はその光を照り返してやさしくせせらぐ
 緑に溢れ夜もやさしい空気が安らかな眠りに誘う
 そこには争う者はおらず誰であろうともゆっくりできる
 そんなゆっくりプレイスがあるという
 その場所の名は
 何度夜が来てもずっとゆっくりしていられる
 という意味を込めて
 永夜緩居(えいやゆるい)
 と呼ばれていた』

この物語は永夜緩居を目指したゆっくりしてないゆっくり三匹の物語である。



「お゛に゛い゛ざんゆ゛る゛ぢでぐだじゃいぃ!なんでぼぢばずがらああああああ!!」
わかっていた。
まりさにはわかっていた。
許されることはないことは何度も繰り返してわかっていた。
だが、懇願することをやめることが出来ない。
へつらうことをやめることが出来ない。
媚びることをやめることができない。
自分をゴミクズ同然に貶めることをやめることが出来ない。
無駄だとわかっているのにこの苦痛から逃げ出そうとすることをやめられない。

「はっはっは、人の畑を荒らしたゴミクズにかける情けはありませェん☆」
男は今はまりさのことを怒っているはずなのに、とても嬉しそうにまりさの懇願を退けた。
「ぢがうのおおおおお!!ま゛り゛ざもお゛があ゛ざん゛も゛ぢがぐをどお゛っだらわ゛な゛にひっががっだだげで」
「知るか」
男はまりさの言葉を無視して頭をむんずと抑える。
そして、手に持った焼鏝をまりさの左頬に押し付けた。

「あぢゅい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!お゛があ゛ざあああああぎゃああああああああ!!!」

まりさは自分の皮が焼ける臭いと気も遠くなるような
だが絶対に意識を失うことの出来ない激しく鮮烈な痛みに耐え切れずに助けを求めた。
「バッカだなぁお前ほんとバッカだなぁ
てめぇ産んだ粗大ゴミは俺がさっき目の前で肥溜めにぶち込んでやったんだから来るわけねえだろ
あああいつの沈んでいく時の顔サイコーだったな、穴開けた浮き輪持たせたのは我ながらほんとサイコーだった
沈んでいく時の必死なツラがじぃ~っくりと眺められたからなぁ」
そう言って、男はさらに焼鏝を押し付ける手の力を込めた。

「あ゛がああ゛あ゛ああああああ゛!!!」

中身の餡子まで焼けていく感覚にまりさは痛みにゾッとする。
自分が少しずつ熱に犯され消去されていくような気になって熱くて仕方が無いのに背筋が凍った。
「……ん~、こんなとこか?」
そう言って男は顎に手を当てながら焼鏝をまりさから離した。
まりさは熱源が遠のいたことにほんの少しだけ安堵して
焼け乾いた喉で必死に空気と水を求めて喘いだ。
「ぅん?なんだ、喉渇いたのか
そりゃ丁度いいな」
その様子を見て男は立ち上がると股座の辺りからグロテスクなソレを引っ張り出した。
「俺は黒いの見た後は小便がしたくなるんだよ」
ジョボジョボと、男のソレから熱くほとばしる汚水がまりさの火傷跡目掛けて降り注いだ。

「あ゛ぎいいいいいい!?!?」

出来たばかりの火傷跡に男の垂れ流す汚水は滲みる。
まりさは転がってソレから逃れようとするが、男は器用にまりさの火傷跡を追って汚水を振り掛ける。
べちゃべちゃと音を立てて傷口から汚水はどんどん滲みこんで行った。
滲みこんでいくにつれて全身を耐え難い痒みと痛みが蝕んでいく。
「おいゴミクズ」
「はぃぃ……」
男は出すモノを出し終わったソレをブルンと振って雫を飛ばしてから服の下にしまうと
地面とそこに這い蹲り惨めにも弱々しく返事をするまりさを指差して言った。
「そこに飛び散ったもんなめろ、汚ぇゴミクズにはちょうどいい仕事だわ
ちゃんとできたら手心加えてやるよ」
「ぃ、ぃや……」
まりさは不快感と痒みと痛みで一杯の体を残った力を振り絞って小さく横に振った。
それだけで痛みが全身を駆け巡る。
「ならまずは焼鏝からだな」
男はそう言ってさっき仕舞った焼鏝をどこからともなく取り出す。
それを見てまりさはもう一度あの拷問が繰り返されることを想像して夢なら覚めてくれと心中で悲鳴をあげた。
「で、どうする」
焼けた鉄の臭いをさせる焼鏝が鼻先に突きつけられ、そのまままりさの顔に




「わ゛がり゛まぢだああああ!!や゛り゛ばず!や゛り゛ば……ぁ……」

びっしょりと寝汗をかいたのを体を不快に思いながら寝床から起き上がり辺りを見回す。
男は居ない、場所も巣の中だ。
横にはいつものようにありすが眠っている。
ありすはろくに体も洗っておらず、髪もぼさぼさでそこから漂ってくる悪臭にはもはや慣れた。
「ゅ……どうかしたのまりさ……」
まりさの絶叫にありすも寝ぼけながら尋ねた。
「なんでもない……またいつものゆめをみただけだよ……」
まりさは力なくありすにそう伝える。
「ゆ、こわいおもいをしたのねまりさ……ありすがそんなのわすれさせてあげるからね……」
ありすは慈しむ様に目を潤ませて、まりさの右側に回り込むと垢の溜まった肌をくっつけて体をゆすり始める。
まりさの体の右側にはいつもありすが肌を擦り付けるのですっかりありすの悪臭が移ってしまっていた。
そう、ありすが体を擦り付けるのはいつも右側だ。
まりさはもはや慣れきって抵抗する気力さえ完全に失ったその行為に身を任せた。
いくら慣れても不快感だけは消えないのだけがまりさの悩みだった。
いっそ、右側の頬も左側と同じだったらよかったのにとまりさは思った。

左側と同じように、右側にも醜い火傷の跡が残っていればきっとありすは自分に見向きもしなかっただろうから。

まりさは、一定のリズムで繰り返される振動に身を任せながら
あの忌まわしい出来事が起こる前の幸せな風景を思い出した。


「ちょうちょさんまってよぉ~ゆっくりしていってねぇ~~!」
うららかな日差しが差し込む昼下がりに、まりさはいまだにお昼ご飯にありつけずに蝶を追っていた。
ぽよんぽよんと体の底を力いっぱい動かして飛び跳ねるが
後一歩のところで蝶はひらりひらりとまりさの噛み付きから逃れてしまう。
「ゆうぅ~~おなかすいてゆっくりできなくなっちゃうぅぅう~~」
まりさは空腹で目を回し始める。
そもままばたんと地面に倒れてしまうかというその時
ぼよん、という心地よい弾力のある何かにもたれかかる。

「ゆ?」

「もう!かってにとおくにいっちゃだめだよ!」
そこにはぷんぷんと眉を吊り上げて頬を膨らませた成体のゆっくりが居た。
「ゆ!おかあさんごめんなさいぃ~でもまりさおなかがすいてたんだよ…」
まりさは申し訳なさそうにそのゆっくりまりさをお母さんと呼んだ。
「ここはにんげんのはたけのちかくだからちかよっちゃだめっていったでしょ!
ごはんはおかあさんがよういしてあげるからゆっくりかえるね!」
「ゆゆ!ありがとうおかあさん!」

まりさはお母さんまりさの言葉に嬉しそうに微笑んでぴょんと一度跳ねた。

「かえったらごはんをたべておうちでゆっくりおひるねしようね」
柔らかな笑顔ででお母さんまりさはまりさに言った。
「ゆー、おひるねのまえにおはなししてね!」
少し不服そうにまりさが言う。
「ゆ、もーしかたないなー
どんなおはなしがいいの?」
「ゆっくりれいむのおはなしがいい!」
まりさは元気にぴょんと跳ねながら言った。
「ゆゆ、おちびちゃんはほんとそのおはなしがすきだね」
「うん!とってもゆっくりしたおはなしだもん!」
困ったように微笑むお母さんまりさと満面の笑顔でそう宣言するまりさ。
本当に幸せな光景だった。

「それにしても……まったく……こんなによごしてこまったおちびちゃんだよ」
お母さんまりさはぺろりとまりさの体を舐めて汚れを拭った。
「ゆゆ!?おかあしゃんくしゅぐっちゃきゃっ」
「ゆ~!にげちゃだめだよ!ちゃんときれいにしてね!」
まりさはお母さんまりさの執拗なぺろぺろ攻撃から逃れようと体を捩って転がっていく。
それを追って舌を伸ばしたままお母さんまりさはぴょんぴょん跳ねていった。
まりさは空腹も忘れてこの幸せな時間を楽しんだ。
将来、自分もお母さんになって子どもとこんな時間を体験させてあげたいと夢見ていた。

「ゆ!?」
「ゆゆ!!?」
突然訪れる浮遊感、離れていく地面、急転する景色、絶望の表情を浮かべる母。
「お、またかかったみたいだな」
そして厭らしいニヤニヤ笑いを浮かべる男が近づいてきて


「ゆああああああああああああああああ!!!!!!」
「ゆ?まりさもかんじてすっきりしちゃうのね!?ありすも!ありすもぉ!!んぎもちぃいいいい!!
すっきりー!!!」
幸せな時の回想の末に再びあの悪夢の中に堕ちていこうとする最中で
ありすの汚らしい媚声が耳を劈いて夢から現実へと引き戻された。
ぜえぜえと息を付きながら
まりさはこのありすとの行為という現実から逃れるために始めた逃避行為の末に苛まれた悪夢から
ありすの手によって助け出される皮肉さに自嘲の笑みを浮かべた。
「ゆぅ、そんなにわらって……とってもきもちよかったのね……わかるわ……」
そんな的外れなありすの言葉を聞きながらまりさは乾いた笑いをあげた。


まりさとありすの出会いはそれなりに時間をさかのぼることになる。
あれは雨がぱらぱらと降り注いでいる日のことだった。
「ゆ、あなたどうしたの!?
ひどいかっこう、いなかもの?」
幸か不幸か、その日まりさはそのまま野垂れ死にそうなところに偶然ありすに通りかかられた。
「ぁ……ぅ……」
まりさは息も絶え絶えで、男の所から逃げ出してやっとのことでこの群の近辺にたどり着いたのだ。
「もう、しかたないわね……わたしのとかいはなおうちにしょうたいしてあげるわ
べ、べつにたすけてあげるってわけじゃないんだからね!」
薄れ行く意識の中でありすの言葉を聴いたまりさはほっと胸を撫で下ろして目を瞑った。


「ようこそ!ありすのおうちへ!ゆっくりしていってもいいわよ!」
「ゅ……ゅっくりしてい……ゆ!?」
だがまりさが連れて行かれたその家はゴミ溜めとしか他に言いようの無い惨状だった。
ある意味では都会派なのかもしれない。
まりさは悪臭に耐えかねて再び意識を失った。

それから、まりさはゴミとありすの出す臭いに苛まれながらもゆっくりとありすの家で体を癒すことになった。
まりさはその真意には気付かなかったが
ありすも田舎者の世話をする優しい都会派な自分を思うさまに演じられたからかとても楽しそうだった。
狩りの得意なありすは食べ物もたくさん持ってきてくれるし
まりさも臭いや部屋の汚さには多少慣れてありすに感謝するようになった。

まりさの傷について、ありすは尋ねてくることは無かった。
それはあのことを少しでも早く忘れたいまりさにとってとてもありがたかった。
まりさはありすが自分のことを気遣ってそうしてくれているんだと思って心から感謝した。
それから一月ほどで体が多少動かせるようになり、まりさはありすの手伝いをするようになる。
といっても外には出て仕事をするほど回復するのは当分、いや一生かもしれないがとにかく無理だ。
なのでするのはもっぱら部屋の片付けだ。

部屋が綺麗になっていくのはまりさにとってもありすにとっても気分がよかった。

そうして部屋が一般のゆっくりの巣程度には綺麗になったころ。
まりさは久々に清清しい気持ちで床についていた。
その清清しいはずの眠りが、熱っぽく不快な息遣いと悪臭に妨げられてうっすらと目を開けた。
「まりさ……まりさ……!!」

目の前に、激しく息を荒げたありすが目を血走らせて仁王立ちしていた。
「ゆ……あり……ぶぇ!?」
「まりさあああああああああ!!あいしでるううううううううううううううう!!」
「な、にをずるのおおおおおおおおおおおおおお!?」
突然ありすに圧し掛かられて、まりさは訳もわからず悲鳴を上げた。
「まりざあああああああ!!!だいずぎいいいいいいいいいいいいい!!!
ありずのぎもぢいいいいいいいいいい!!うげどっでええええええええ!!!」
ぬぷぬぷと粘ついた液を全身からたらしながらありすはまりさの右頬に顎をこすりつけた。
「ひい、し、しらないょおおおお……!」
生ぬるい熱を持った粘液がまりさの体を濡らす。
血走ったありすの瞳は普段は半眼なのにも関わらず見開かれて
腫れぼったいまぶたがまるで芋虫のように盛り上がっていて
その瞳はまりさの体から一瞬たりとも目をそらさない。
「あ゛りずもうじぶんいづわらないのおおおおおおおおおおおおおお!!
あ゛りずのぎぼぢにごだえでばりざあああああああああああああああああああ!!!」
はあはあと息を荒げて口付けを交わそうとありすが迫る。
「ちが……じらないよおぞんなのおおおおおおお!!!」
我を失ったありすにさらに圧し掛かられて体中の傷口が突っ張るような感覚の後激痛が走る。
「うげええええええ!!」

「へんぢぃいいい!!へんぢぢでええええまりざあああああああああ!!!」
ありすの圧迫はどんどん強くなった。
「ゆぎいいいいいいいい……!」
「おじえでえええええ!!はやぐごだえでえええええええええええええ!!!」
ありすはどんどんと力を込めていく。
余りの痛みに皮が圧力に負けて餡子がぶち撒けられるのではないかとさえまりさは思った。
目玉が今にも飛び出してしまうのではないかという恐怖に駆られた。
「ずぎぃ!ま゛り゛ざずぎぃ!!!だいずぎいぃいいいいいい!!」
「は゛、は゛いいいいいいいい!!!」
遂にまりさはその恐怖に屈する。
「なにが!?なにが!?ありすにちゃんとわかるようにいってね!!」
ありすは下卑た笑いを口許に浮かべながらまりさに問うた。
「ま、ま゛り゛……ま゛りざは……あ……あ……」
その言葉を言うことをまりさは躊躇った。
母は口をすっぱくしてまりさに嘘だけはつくなと言っていたのを思い出した。
今は亡き母との大事な約束としていつも心の奥のほうに留めていた。
「どうなの!?はやくおしえてよ!!じらしぷれいなの!!?」
焦れたありすが限界ギリギリまで圧を強めた。
断ればどうなるかなど、誰にだって分かる。
そうまりさは思った。
「ま゛り゛ざはあ゛り゛すの゛ごどがだいずぎですううううううううう!!!」
心に浮かんだ母との約束はすぐにドブに捨てられた。
「ふふ……やっとすなおになったのねまりさあああああああああ!!」
それから、まりさにとってその生涯で二番目に辛い時間が始まった。

そして今に至る。
一生癒えることのない傷を負っているまりさが五体満足で健康体なありすに抵抗できるはずもない。
殆どありすの巣の中で子飼いのような状態となった。
既にまりさは体中に虐待の後遺症が出ておりどう転んでもありすに依存しながらでないと生きていけない。
まりさは泣く泣く、ありすの言うことには全て従い奴隷のような気持ちで生活した。
外には殆ど出して貰えず殆ど家の中ですごすことを強制された。
最初の頃は緩かった巣の中の戸締りも、ある時から急に監獄のように厳しくなった。
大きな石で出入り口を塞ぎ、窓代わりの空気穴も外が見えないように枝と葉っぱで塞がれた。
それがどれほど重苦しく、まりさの心を縛り付けたことだろうか。
仮に出られたとしても助けを求めようにもまりさのこの顔ではどのゆっくりも気味悪がって話も聞こうとはしないだろうが。

さらにありすのところに居るとわかれば、尚のこと避けて通られただろう。

まりさは日中は出入り口と枝の格子の間から漏れる小さな小さな木漏れ日を頼りに薄暗い巣穴の中で
ありすに渡された仕事だけをただ淡々と行っていた。
それ以外のことをすればありすは怒ったし、何か要求など出来るはずも無かった。
時折気まぐれのようにありすが申し出るつまらない遊びをするくらい。
大嫌いなありすが相手ではそんなもの楽しい訳も無い。

そんな生活を続けていく内にまりさはある事実に気付かされた。
まりさに妊娠する能力が無いこと、子どもを作れないということである。

妊娠に関する機能は、男に酷い虐待を受けた時の後遺症で破壊されていた。
それに気付いたのはまりさがありすの性欲の捌け口になって一月ほど経った頃だった。
「あなた……ひょっとしてあかちゃんつくれないの?」
あれだけ行為を重ねて未だに妊娠しないことを疑問に思ったありすが尋ねたのだ。
「ゆ!?そ、そんなことないよ!まりさはおっきくなったらおかあさんに」
「だってこれだけスッキリーしてもにんっしんしないじゃない
ま、まあありすはぜんぜんきにしないからね!」
「あ……ゆぁ……そんな……」
何気なく尋ねてくるありすの言葉はまりさの心を手ひどく抉った。
母に憧れて、大きくなったら素敵なお母さんになりたかったまりさにとってその現実は耐え難いものだった。
この頃から、あの男に受けた虐待のことを毎日のように夢見ることとなる。
それと同時に著しくまりさの口数は減っていった。
まりさは何度もあの男のことを思い出して呪おうとした。
だが想像の世界でさえ恐ろしくて彼に逆らうことはためらわれた。


そんな風にしてまりさの現状がある。
その現状に関してはもう半ばまりさは諦めていた。
だがここ数日ありすの様子がどうにもおかしいのが気にかかった。

そんな風に思っていたある日のこと。

ありすが帰ってくるなりまりさは旅に出る準備をするよう言われて言われるがままにその準備に取り掛かることになった。
まりさには事情は分からないが、ありすの苛立った様子や愚痴の内容から大方の予想はついた。
何らかの理由で、周りから糾弾されて群に居づらくなったのだろう。
その中にはまりさ自身のことも含まれているかもしれないとまりさは思った。

やがて準備が整うとまりさは帽子に穴を開けて蔦を結び付けられ、その端を咥えたありすに外に引っ張り出された。
大事な帽子に傷が付けられることにさえ抵抗する気力さえわかず、まりさはされるがままに久々の外出をした。
ありすの誘いを断って群に残る、そんなことをまりさは思い浮かべさえしなかった。

ありすはただ一言、永夜緩居を目指すとだけ言った。
永夜緩居の話は一度だけ聞いたことがあった。
確か魔法の森の奥深くにあると噂される伝説のゆっくりプレイスだった。
一度ありすの口からそんな与太話があると聞いたことがある。
あの時のありすは全く信じていなかったと思うが、調子の良いものだ。

そのまま連れられるままに群の外れの寂れた林へと向かう。
まりさが足が痛くてもう歩けないというと、ありすはまりさのことを睨みつけてから少し休んで居ろと言ってどこかへ行ってしまった。

このまま逃げてしまおうか、そんな度胸など無いくせにまりさは木漏れ日を浴びながらそんなことを思った。

「ただいま」
そうやって休んでいると、ありすが一匹のゆっくりを連れて戻ってきた。

そのゆっくりを見てまりさは、息を呑んだ。
なんて美しい銀髪のゆっくりなんだろうと、そのようむを見て思った。
その鋭利な印象は左頬に挿している木剣と同じ、まさに刀剣のごとくであった。

「このこはこれから永夜緩居をめざすための……なかま、でいいのかしら?」
「もちろんだみょん」
凛とした表情でようむは頷いた。

「そんなにおびえなくてもいいみょん
べつにゆっくりゆゆこじゃあるまいしとってくったりしないみょん」
安心させるかのようにようむはそう言った。
一瞬意味が理解できなかったが自分は怯えているように見えてしまったのかとわかり弁解したかったが俯いて赤面する。


「で、こっちのありすはもういくきまんまんみょんけど
そっちのまりさはどうなのみょんか?」
ぼーっと二人の様子を見ていたまりさは突然ようむの視線が自分に向いて驚いて目を丸くした。

「ゆ!まりさはもちろんいっしょにくるのよ!」
「ありすにはきいてないみょん」
後ろから口を出すありすを無視してまっすぐとまりさの目を見ながら近づいた。
そのようむの姿を見てまりさは何故か胸の奥が熱く高鳴るのを感じた。
思わず、右を向いて左頬の傷跡を隠した。
「ま、ま、ま……まりさは、その……」
まりさがしどろもどろにしているのを見てようむはまりさに近づいて顔を覗き込んだ。
「あ、あの」
ひょっとしたら、このようむなら自分をこの生活から
解放してくれるのではないかと淡い期待がまりさの中に芽生える。
このようむにまりさは自分たちのことを気持ち悪がり、煙たがって避けたゆっくり達とは違うものを感じていた。
「まりさはい……!」
その時、鬼の形相でまりさのことを睨むありすをようむの後ろに見て、まりさは息を呑んだ。
心臓も、時間もまるで止まったように凍りついた。
あのまりさの初めてのすっきりをさせられた夜のことが脳裏を過ぎる。
何故か全く似ても似つかないはずのありすの表情と、母を殺したあの男にやにやとした表情が重なって見えた。

「まりさは……い、いやじゃないです
ありすといっしょにゆるいにいきたいですようむさん」
やっと搾り出した言葉は、結局胸の中の想いとは似ても似つかないものだった。

一応、まりさから直接聞いて納得したのかようむは嘆息してつぶやいた。
「しかたないみょん、そこまでいうならみょんがむこうまでごえいするみょん」
そう言ってありすの方を振り返るとすたすたと跳ねて行く。
と、突然まりさの方を振り向くとまりさにむかってこう言った。
「ようむのことはみょんてよんでくれればいいみょん」
まりさは久しく忘れていた何かを思い出してきゅんと胸を高鳴らせた。


みょんは、ありすの方に歩み寄るとその大きな荷物袋を見て言った。
「そのにもつ、ちょっとみせてもらうみょん」
「?まあいいわ、とかいはなありすのもちものをみてもびっくりしないでね」
ありすの自慢げな顔に見向きもせずみょんはありすの荷物袋を改めていく。

「これはいらないみょん……これも……これもむだみょん」
そして袋の中の品物を見て次々とベロを使って取り出して辺りに放り投げた。
一部の品物は地面に落ちただけで砕けて壊れる。
「あ、ありすのとかいはではいせんすなたからものになにをするのおおおおおおお!?」
突然のみょんの暴挙にありすは悲鳴をあげた。
「こんなもの、もっていってもじゃまになるだけだみょん
永夜緩居をめざすならなるべくてがるに、ひつようなものだけをもっていくみょん」
そう言って、今度は袋の中から少し綺麗な石を取り出す。
それを見てみょんは眉を顰めて理解できない物を見るように言った。
「いしがいるんだったらむこうでひろうみょん」
そう言って他の品物と同じようにベロでその石を放り投げた。
もろい材質の石だったのかその石は地面に埋まっていた石にぶつかって粉々に砕けた。
「あ゛り゛す゛のお゛と゛っとき゛があああああああああああ!!!」
号泣するありすの姿を見てまりさはバレ無い様にこっそりとくすくす笑った。

それから、さくさくと先へ進んでいくみょんを先頭に三匹は永夜緩居を目指して進んでいった。
ありすはさっきのことを根に持っているのか、苛立ちを露にしていた。
まりさは他の二匹に必死についていくので精一杯だった。
未だに男の虐待の傷は完全には癒えず、後遺症に悩まされているまりさには二匹のペースにあわせるのはかなり辛い。
「ちょっと!いそぎなさいよまりさ!」
ありすは声を荒げてまりさに八つ当りした。
「ゆ……がんばるよ……」
帽子に付いた紐を引っ張られて、まりさは息も絶え絶えになりながらもペースをあげようとした。


「べつにむりにいそぐひつようはないみょん
すたみなぎれでへたられたらぎゃくにあしでまといになるみょん」
その時、みょんがまたまりさを庇うようにありすを嗜めた。
「わたしたちがふぉろーすればいいのよ!」
ありすはそう言ったがみょんは無視すると
先頭からまりさの横に寄り添って立った。
「これからはまりさのぺーすにあわせてあるくからむりしないでいくみょん」
「あ、ありがとうねみょん……でも、……その……」
まりさは嬉しいような困ったような複雑な表情をしながらみょんを見た。

「まりさのそばに、たたないでほしいよ」

まりさは目を伏せながら本当に申し訳なさそうに言った。
みょんはまりさの左側に立っていた。
木剣を左頬に挿している関係上そうしたのだろうがそこに立たれるとどうしてもまりさの醜い火傷痕が目に入ってしまう。
まりさはどうしてもそれが耐えられなかった。

「ほら、まりさがいやがってるじゃない!はやくどこかにいってあげたら?
これだからいなかものはでりかしーがなくてきらわれるのよ!!」

ありすはその様子を見て鬼の首をとったみたいにゲラゲラ笑いながらみょんを糾弾した。
みょんはそんなありすを意にも介さずにまりさにぺこりと頭を下げて言う。

「すまなかったみょん、みょんはまりさのすこしまえをあるくことにするみょん」

みょんは簡潔にそうとだけ言ってまた歩き始めた。
火傷について何一つ聞いて来ることはなかった。
そのことが、まりさにはとても嬉しかった。
さっきのことで多少溜飲が下ったのかありすも上機嫌にゆっくりと歩いてくれた。
まりさはみょんに感謝しつつ、ぽっと頬を赤らめながらみょんの後ろについて歩いていった。

「きょうはここでやすむのがいいとおもうみょん」
「そうね、もうひもかたむいてきたしちょうどいいわね」
「ゆ……」
「まりさもつかれてるみたいだしね」
ちらり、とありすが息を切らしたまりさの方を見るとみょんもそれに頷いた。

三匹は丸一日歩き続けてやっとのことで永夜緩居への道中にある小さな湖にたどり着いた。
そこにゆっくり達のキャンプ跡を見つけここなら大丈夫だろうと当たりをつけて夜を越すための準備を始めた。
「とりあえずきょうはもってきたたべものをたべるみょんが
あしたはたべものをほきゅうしてからすすむということでいいみょんか?」
「いろんないわ、ありすもそうしようとおもってたもの」

二匹は今後の予定を話し合っているのを尻目にまりさは寝床の準備を始めた。
以前にゆっくりが使った跡があるため最低限眠るために必要な準備はなされていたが
より快適に眠れるようまりさは誠心誠意綺麗にゴミを取り除き、草を敷き詰めた。
ここのところ殆どありすの巣に閉じ込められっぱなしだったのでベッドメイクのような家事だけは得意になっていた。
だがこれだけ気持ちを込めて行うのは久しぶりだった。
ひょっとしたらみょんがここで眠るのかもしれないと思うと不思議とやる気が出てくるのだった。


「だいたいのほうしんはきまったわね
あなたみたいないなかものといけんががっちするのはしゃくだけど」
「みょんとしてはばんじこうやってすすんでいってほしいみょん」
二匹が仲が悪いことは確かなようだがなんとか意見をまとめることに成功したようで
まりさはほっと胸を撫で下ろした。

「それじゃ、したくもできたみたいだしいっしょにねましょうかまりさ」
ありすがまりさの方に振り向いてねっとりとした生暖かい視線を向けた。
まりさはそれまでの少しふわふわした感覚から現実へと一気に引き戻されるのを感じた。
「ゆ、わ、わかったよ……」
まりさは今にも泣きそうな表情を誰にも見せたくなくて顔を伏せた。
「こんやもねかせないわよまりさ」
ありすか近づいて耳元に口をあてた。
生臭い吐息が耳に吹きかかる。
まりさは諦めて目を瞑った。

「それはだめだみょん」
独り言と変わらぬような声だったにも関わらずみょんは地獄耳でありすの言葉を聞き
ありすに対してぴしゃりとそう言い放った。
「!?な、あなたになんのけんりがあってありすとまりさのあいのいとなみを」
聞かれるとは思っても見なかった言葉をみょんに聞かれたことに驚きながらも
ありすは自分とまりさの仲がまた邪魔されたことに憤った。
「たいりょくはおんぞんしてもらわないとこまるみょん
そんなことしてそっちのまりさのからだがもつとはおもえないみょん」
「くッ……」
淡々と正論を述べるみょんにありすは舌打ちしてその場にあった木に奴当たった。
「いなかものなみょんのせいできょうがそがれちゃったわ!
あんたのいうとうりきょうはひとりでねてあげる」
そう言ってドスドスと跳ねながら用意してあった別の木の洞へと去っていった。

「あ、ありがとうねみょん」
「そんなことよりまりさもはやくねるみょん」
そっけないみょんの態度が逆にまりさの胸の鼓動を早めた。
まりさはみょんの言うとおりにしようとしたが、その日は中々寝付けなかった。
何かが変わるような予感がした。

次の朝、みょんの言うとおり早朝早くに起きて
乾かした花と、どんぐり二個ほどの軽い朝食を採ると
三匹で食料探しをしながら少しずつ永夜緩居を目指し進んだ。

そんな風に進んで、今はありすが食料集めに従事しみょんがそのサポートについている。
ありすはテキパキとみょんに悪態交じりに指示を出しながら的確に獲物を捕らえていった。
そして半日もすると、二三日進むのに充分な食料を獲得していた。
まりさはその姿を見て非常に意外に思った。

これまで巣の中でだらけきっているか
自分を犯そうと興奮し息を上気させるありすの姿くらいしか見たことがなかったから当然だ。

確かにこのありすはズボラで、身も心も醜い最低のありすだが
狩りなどの腕前に関しては並みのゆっくりを寄せ付けないだけの力があった。
体力も技術もあるしそれを扱う経験だって積んでいる。
そのことがありすをより傲慢にさせ彼女の周りから人を遠ざけ
心を傷つけて醜い性格になっていったというのは皮肉な話だが。

一方のみょんは、よくわからないがきっと狩りだってうまいのだろう。

ありすの狩りの腕には及ばないまでもきっと二匹が持ち帰ったものの内のいくつかはみょんの成果だろう。
ありすは頑なにそれを認めず全て自分の成果だと言い張ったが、まりさにはわかっていた。
また、その実力差を理解しさっさとありすのサポートに回ったのはさすがといったところだ。

まりさは、そんなありすの姿を見ていて
ありすに助けてもらって感謝していた頃のことを思い出して
そしてその後のこと、そして現状を思い浮かべてとても悲しくなった。
だからなるべく二匹から顔を背けて俯きもくもくと別の雑事を行っていた。

何度もありすのことが脳裏を過ぎり何故こんなことになったのかと自問自答して
その度に辛くなり、最後は嫌なことを振り払うようみょんのことを思い浮かべた。

そんなまりさの気持ち等誰も気にすることなく一向は順調に進んで行き
永夜緩居への道のりの最終行程に差し掛かっていた。

ありすは鼻息を荒くしながらどんどん先へ進んでいく。
遂に伝説のゆっくりプレイスへと行けるのだと思うとまりさも少し興奮した。

その時、先頭を歩いていたみょんが振り向いて
神妙な顔つきで二匹に言った。
「ほんとうにいくのかみょん?」
「はぁ?」
あまりに今更な問いにありすは怪訝気に呻いた。
「あたりまえでしょ、ここまできてわざわざかえるりゆうがないわ」
剣呑な空気が両者の間に流れるが、尚もみょんは言った。
「それはこのさきにゆっくりぷれいすがあるとかていしたばあいだみょん
このさきにはなにがあるのかわかったもんじゃないみょん
どうちゅうでみせてもらったみょんがありすくらいのちからがあるなら
このままもどってしずかにくらしたほうがよっぽどあんぜんだみょん」
「さっきからなんなの?もしかしてありすのゆっくりぷれいすをひとりじめするつもりなの?
ばかなの?しぬの?」
苛立ち、目を吊り上げながらありすはみょんを睨みつけた。
いくら言っても無駄と悟ったのかみょんは溜息をつくと、今度はまりさの方を向いて尋ねた。
「まりさはどうしたいみょん?
みちはわかってるからゆっくりきをつけてもどればかえれなくもないみょん」
初めてみょんに出逢ったときの様に尋ねられてまりさの鼓動は高鳴った。
「……ま、まりさはみょんといっしょにいきたいよ!」
まりさは喉から搾り出すようにそう言った。
横に居るありすの歯軋りが聞こえる。
「もうどうなってもしらないみょん」
みょんはまた溜息をついて先頭に立ち歩き始めた。


最終更新:2009年03月17日 01:00
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