死ぬ事は誰しもが恐れる事、死を目の前に狼狽しない者など、よほど達観しているか、
その死が五感で捉えるよりも早く、命の灯を消したかだ。
ゆっくりれいむの子、ゆっくりまりさは今、まさに消える命の灯であった。
野犬に襲われ、酷い傷を負い。既に母れいむの手の施しようのない所まで来ていた。
泣きながら延命を懇願するまりさにれいむはただ申し訳なさそうに見送るしかない。
「おかーしゃん・・・もっとゆっくりしたいよ」
無理だ。目元から足に至るほどの大きな傷ではもう歩けもしない。
それでも、母れいむは何度も頷き、もっとゆっくりしようねと落ち着かせる。
騒げば、それだけ体力を使う。そうなってはこんな小さな灯など死神の吐息で消えてうやもしれない。
「まりさ、かけっこでいちばんなんだよ」
知っている。母れいむはまりさの事を何でも知っている。
好きなご飯も、得意な遊びも、よくやる悪戯も、何も知らない事はない。
それでも母れいむは凄いねと褒めた。今はこうしてこの子と話ができるのが唯一の救いだ。
「むきゅ?れいむ、どうしたの?あ、ケガしてるじゃない」
そこにやってきた群れ一番の物知りぱちゅりーに母れいむは事情を話した。
「れいむ、ちょっとつらいかもしれないけど、ひとつかいけつさくはあるわ!」
それから1年が経ったある日、八意永琳は実験結果の回収にやってきた。
永琳の姿を見ると、物知りぱちゅりーは自慢そうに言った。
「おねーさんのやりかたでむれのみんなはずーっとゆっくりしてるよ!!」
森にはあちらこちらに黒い箱が置かれていた。
「こっちがれいむで、あっちがまりさ。むきゅん、すごいでしょ!」
「ええ、圧巻ね。群れのどれぐらいが永遠にゆっくりできるようになったの?」
「むきゅー・・・ほとんどよ!」
「誰と誰が残ってるの?」
「おねーさんがくれたはこにはいれないおおきなゆっくりがいるの。そのことぱちゅりーだけ」
「じゃあ、大きな箱を用意するわね」
大きな黒い箱の中に飛び込むゆっくりまりさ、まりさは頬にいくつも小さな傷があり、それがズキズキと痛んだが、もう大丈夫だ。
この箱に入れば永遠にゆっくりしていられる。だって、みんなもこの箱の中で永遠にゆっくりしているんだから、自分はそこに加わるだけだ。
仲間が箱に入る事を見送ると、ぱちゅりーは群れの中でたった1匹残ってしまった。
「これでみんなゆっくりできるね」
「あなたは入らないの?」
「むきゅ・・・」
防音、防臭の黒い箱はゆっくりが入ると天井となる板が固く閉まる構造になっていた。
中でどれほど呼びかけようと、外に聞こえる事はない。外でどれほど呼びかけようと、中に聞こえる事はない。
箱の中には可能性が二通りあって、中のゆっくりは死んでいるか、もしくは生きているか、
生きているという観測者がいる限り、中の箱は開かないのだから、生きているという仮定が永遠に続く事になる。
お話はここで終わる。お話と言うのは黒い箱の中のようなものだ。
ぱちゅりーはこの後、箱に入るかもしれないし、箱に入らず生きているという観測を続けるかもしれない。
箱の中のゆっくりはぱちゅりーの観測とは裏腹にどれも餓死か衰弱死しているだろう。
ゆっくりぱちゅりーはより大きな黒い箱に入れられた。永遠の命を持つゆっくりだ。
どこかにこのお話がある限り、ぱちゅりーは永遠のあらゆる可能性の中で生きる。
~あとがき~
ぱちゅりーはずっと生きているのでしょうか、ずっと死んでいるのでしょうか、
それは分かりませんが、このお話はここでおしまい。
そして、もう一つ終わってしまう事があります。今まで
ゆっくり虐待SSをたくさん書かせていただきましたが、
このSSをもって私のゆっくり虐待での活動を終わらせていただきます。いやー、私生活がちょっと忙しくなって・・・。
別の所で仲間と違う作品を作っていく事になりました。そちらもまたよろしくお願いします。今まで私のSSをご愛読ありがとうございました。
最終更新:2009年04月03日 04:35