仕事を終え、車を操り自宅に帰ってきてみると、窓の一枚が割られているのが見えた。
やられた。泥棒か?まだ犯人は中にいるのだろうか。
俺は車をガレージに入れず、家の前の路肩に止めた。
警察に連絡する前に、犯人がまだ残っているかどうかを確かめよう。
車を降り、慎重に窓のもとに近づいていく。
すると、奥から人の声のような、ふざけた音が聞こえてきた。
「ゆ~、ゆゆゆゆっゆゆゆゆ~♪」
「ゆっ♪ゆっ♪」
犯人が何であるかを知った俺は、静かに玄関のドアを開けた。
割られたのはキッチンの窓だった。床に一つ、石つぶてが落ちている。
キッチンは居間に繋がっている。犯人は、次にそこへ向かったようだ。居間の荒らされようはひどい。
液晶テレビが倒れている。花瓶が割れ、ささっていたはずの花が無くなっている。
テーブルの上の本やら書類やらは破られている。畳んでおいてあった衣服は湿っていて、甘ったるい匂いがする。
そして今、犯人は寝室で、聞くに堪えない歌のようなものを歌っている。とてもご機嫌で。
よし、殺そう。
俺は深呼吸を一つした後、寝室に足を踏み入れた。
「ゆっ!おじさんだあれ?」
「ここはれいむたちのみつけたおうちだよ!しらないおじさんはさっさとでていってね!」
「でていかないならあまあまをもってくるんだぜ!おはなさんだけじゃまんぞくできn・・・ぶぎゅるりゅうう!?」
俺はすぐさまベッドの上にいたゆっくりたちに歩み寄り、そのうちの1匹の口に手を突っ込み、舌を引き抜いた。
「え゛ゆ゛ぅぅう゛う゛う゛う!?いあ゛い゛い゛い゛い゛い゛ぃい゛!!」
いかんいかん。あまりに口が悪いもんだからもう手が出てしまった。
ちなみに、まだ俺はおじさんなんて年じゃないぞ。
「まりさああああああああ!だいじょうぶうううううう!?」
「おとーさああぁぁん!ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
どうやらまりさ種とれいむ種の成体のつがいとその子ども(れいむ種)1匹、あわせて3匹だけのようだ。
親は全く同じ大きさで、サッカーボールくらい。“にんっしん”はしていないだろう。
子どもは赤ゆよりも三回りほど大きい、といった程度だ。
とりあえず、手の中にある赤黒くぬるぬるした物体をゴミ箱に放り捨てる。
「い゛あ゛・・・い゛あ゛・・・」
「ゆ゛う゛う゛う゛う゛!おとーさんのぺろぺろがああああ!!」
「くそじじいいいい!!さっさとまりさをなおしてね!そのあとあやまってね!そしてしんでね!」
舌を抜かれたまりさの方は放心状態だ。子れいむはそんな父を見て滝のような涙を流している。
親れいむは激昂し、俺に暴言を浴びせかけてきた。いきなり口悪くなったなこいつ。こいつも舌抜くか。
そう思って手を伸ばしたが、それはできなかった。
れいむが思い切り息を吸い込み、肥大化したのだ。そして口を真一文字に結び、巨大な風船となってこちらを睨んできた。
ああ、これがいわゆるゆっくりの「威嚇」か。体を大きく見せることで、他の生物を萎縮させようという。
もともとサッカーボールほどの大きさで、30cmも無かったゆっくりが、いきなり2倍程度の大きさになった。
床に降ろしたら膝の上くらいまであるだろう。良く伸びる皮だ。
なんて考えていると、あることをひらめいてしまった。野良ゆっくりが家に侵入してきたのなんて初めてだし、
虐待も駆除もしたことがなかったので、当初はシンプルに潰して殺そうと思っていたのだ。
しかし、ここまでゲスなら少しは苦しめてからでもいいだろう。子どもは純粋に見えなくもないが、ゲスの子はいずれゲスとなる。
俺は3匹の髪の毛をつかみ、外に出た。
「う゛あ゛ぁ・・・」
「ゆっ!はなぜええ゛ぇ゛え゛ぐぞじじい゛い゛!!」
「ゆーっ!おそらを(ry」
そして空っぽのガレージの中に3匹を放り込み、シャッターを降ろして閉じ込めた。
ゆっくりの力ではいくら頑張ってもシャッターは開けられまい。。
ガレージの中には古タイヤや、重い金具のついた工具箱しかない。
窓もキッチンよりは遥かに高い位置にあるから大丈夫・・・なはず。きっと被害は出ない。
俺は再び車に乗り、虐待道具の調達に出た。
戦利品を手に提げ帰ってきた俺は、キッチンに立ち寄ってオレンジジュースと小麦粉も手に取った。
それらを持ってガレージに戻る。
「ゆ゛う゛う゛う゛う゛!い゛え゛え゛え゛え゛え゛!」
「くそじじいいい!いまならゆるしてあげるよ!さっさとあやまれええええ!」
「ゆっくりできないおじさんはきらいだよ!はやくあやまってね!」
中に入ると、3匹の罵倒が一斉に降りかかってきた。
まりさは喚けるくらいまでは回復したらしい。だが舌は再生していないので、何を言ってるのかわからない。
とりあえず一番うるさい親れいむに、買ってきた透明な箱をかぶせる。
「ゅ゛・・・だせ・・・ぅ・・・」
この箱は成体ゆっくりが入るギリギリの大きさで、れいむは身動きが取れなくなった。
また、ある程度の防音加工がなされている。音量7割減と言ったところか。
れいむは中から殺意満点の目で睨んでくる。おおこわいこわい。
「う゛う゛う゛う゛う゛!」
「おかーさん!?おじさん!おかーさんをはやくだしてね!」
残りの2匹の抗議も必死だ。ああ、お前らが死んだ後に出してあげるよ。
さて、虐待の下準備だ。俺は工具箱を持ってきて、中からペンチを取り出した。
そしてまりさをつかみ、上を向かせて床に押さえつけた。
「う゛っ!あいふふんあえ・・・あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
強引に口を開かせ、次々と、リズミカルに歯を抜いていく。
まりさは激しく抵抗するが、動くと余計痛いと思う。
「あ゛っ!・・・ら゛っ!・・・あ゛っ!」
「おとぉじゃあああああん!!やべでええぇええ!!」
抜いた後の歯茎から餡子が染み出してきた。ペンチと手がどろどろになってしまう前に全部抜いてしまおう。
「や゛っ!・・・え゛っ!・・・あ゛っ!」
「どぼしでごんな゛ごどずる゛の゛ぼお゛お゛お゛お゛!?」
しかし砂糖細工でできているゆっくりの歯はもろい。一応全部手に掛けたが、何本かは途中で折れて歯茎に埋まったままだ。
それではいけないので掘りおこす。
「あ゛がや゛や゛あ゛がや゛や゛があ゛や゛や゛があ゛が」
「お・・・おとさ・・・」
結局、全部抜き終えた頃には俺の手の周りはどろどろだった。まりさは全身の1割程度の餡子を排出しただろうか。
白目をむいてピクピクと痙攣しているが、これは痛みによるものだろう。気付かなかったが子れいむも同じように痙攣していた。
よく見ると泡も吹いている。箱入り親れいむは目を見開き、絶句していた。ピクリとも動かない。
何だかこれだけで虐待になってる気がしないでもない。
だが、まだ下準備は終わっていない。
まりさを持ち上げ底部を見てみると、2つ穴が空いている。生殖と排泄の器官だろう。
俺は掌の上で小麦粉とオレンジジュースを溶き合わせ、穴の上に塗りたくった。
それを何度か繰り返す。すると、そこにもともと穴など無かったかのようにふさがってしまった。
恐るべしゆっくりパワー。
まりさと子れいむははまだ気絶しているが、立ち直った親れいむは怒りの表情で何かを喚いていた。
よく聞こえないので無視して、ウェットティッシュで手を拭いた。
下準備は終わった。いよいよ主役の出番だ。
俺が調達を行ってきた場所はおもちゃ屋だ。
買ってきたのは、まず前述の透明な箱。あまり子どもの目につかないような、奥まった場所に積まれていた。
そして、もう2つほど本命の道具を買ってきた。
袋からそれらを取り出す。――風船と、空気を入れるポンプだ。
もともと、親れいむとまりさの身長は30cmもない。しかし、威嚇状態の時は50cm程にまで大きくなる。
そこで、俺は普通の風船よりもかなり大きめの、特殊な風船を買ってきた。説明書には直径70cmまでOK、と書いてある。
ポンプはごく普通の足で踏むタイプの、おもちゃのポンプ。これを風船に繋げる。
さあ、始めようか。
子れいむを小突いて起こす。意識を取り戻した子れいむは、気絶して口の端から餡子を流している親を改めて見て悲鳴をあげた。
そして囚われのもう片方の親に少しでも近づこうと、箱の側面に顔をすりつけながらわんわんと泣き始めた。
親れいむもそんな子を見て泣き喚く。
そんな親子の目の前に気絶しているまりさを移動させ、口の中に青い風船を入れた。
ポンプを踏み、まりさの口内でふくらませていく。どんどんふくらませていく。ガレージにシューシューと言う音がこだまする。
風船がふくらんでいくと、合わせてまりさの体もふくらみ始める。
風船が20cm位になったところで、まりさが目を覚ました。むき出しの歯茎に風船が押しつけられた痛みのせいだろう。
まりさは顔をゆがめるが、そのおかげで染み出していたあんこは抑えられたはずだ。
俺はポンプを踏み続ける。風船は30cm位になった。
まりさのもともとの身長が30cmも無いので、もう通常時の大きさはとっくに超えている。
直径30cmの球体をくわえているので、今のまりさの全長は40cm超といったところか。
まりさの目に戸惑いの色が浮かび始めた。何だかよく分からないが、気がついたら口の中にぶよぶよしたものが入っていて、
それがどんどん大きくなっているのだ。息も吸えない。ゆっくりは窒息することはないが、声を出すことはできない。
体を揺らして、なんとか吐き出そうとしているようだが、うまくいきそうもない。
俺は事が想定通りに運んでいるのを見て、ニヤニヤと笑っていた。
口は入口よりも中の方が広い。まりさの唇の直径よりも中で広がった風船の直径の方が大きくなってしまい、
ぱっくりとくわえる形になってしまっている。唇から1/4ほどははみ出ているが、抜ける気配はない。
舌があれば押し出すこともできただろう。歯があれば割ることもできただろう。だがすでにそれは無理な話だ。
ただ、口の奥に入った風船が餡子に変換されるのではないか、というのを心配していた。しかしそれも杞憂だったようだ。
咀嚼もしていない無機物には、ゆっくりの不思議パワーも通じないのだろう。
ひたすら踏み続け、風船を40cm位までふくらませた。まりさの全長は50cm位になっている。
これで威嚇状態時の大きさになった訳だ。
もうここまで来ると体を動かす余裕もなくなったようだ。目にははっきりと焦りが見える。
ここからは自力でふくらませられる大きさを超えるのだ。
ここで一旦、踏み続けていた脚を休める。もはや口の中の青い球体が大きすぎて、まりさは前を見ることができない。
飛び出しそうな目で、天井だけを見つめているまりさをのぞき込んでみた。
俺と目が合うと、まりさの目つきは必死に懇願するようなものになった。
歯を抜かれた時点で、まりさの心はとっくに折れているのだろう。
しかし、子の心は違った。
「ゆっくりやめてね!おとーさんをはなしてね!」
ふくらはぎのあたりに何かが当たった。
子れいむが体当たりをしかけてきたのだ。
「ゆっ!はやくっ!あおいのを・・・とってね!」
少なからず俺は驚いた。これほどまでに親が痛めつけられている相手に、刃向かおうという気はどこから湧いてくるのか。
子の親に対する想いが恐怖を上回ったのか。それともまさか、餡子脳は倒せる相手だと判断したのか。
しかし言うまでもないことだが、これっぽっちもダメージにならない攻撃だ。いずれにしても関係ない。
俺は無視して、再びポンプを踏み始めた。
「ゆーっ!やめっ!ゆっ!!」
子れいむは無意味な体当たりを繰り返してくる。
奮闘もむなしく、まりさの体は再び肥大していく。
「お゛どっ!ざん゛を゛っ!がえ゛ぜっ!」
風船は50cm程になった。まりさの体は60cmくらい。俺の太ももの中腹あたりまである。
上に乗っかっていた帽子がずり落ちた。子れいむはそれを見て、さらに悲痛な声をあげる。
いよいよせっぱ詰まってきた。喉の奥にかかる圧力は、体内の餡子を圧迫する力に直結する。
排泄穴をふさがれてなければそこから餡子を吹き出していただろうが、今は穴なんてどこにも無い。
体内の餡子は行き場を失い、全身の皮がパツンパツンに張りつめている。
目は飛んでいきそうなほど浮き出ている。目尻付近の薄い皮は透け始め、黒っぽいものが中にあるのがわかる。
俯瞰してみると、とても形容できないようなものすごい形相だ。
「ゆ゛っ!お・・・おじざん゛!ざっざど・・・」
このままだと、風船の限界よりも先にまりさの限界が来そうだ。
どのように散ってくれるのだろう。目尻に穴が空いて、そこから餡子を盛大に吹き出す、というのが有力かもしれない。
「がえ゛ぜっ!はだぜっ!ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」
でも、唇の緊張感も見た感じでは相当高い。口から裂けて吹き飛ぶ、というのも豪快で面白そうだ。
俺は餡子がかからないように、ポンプのホースを延ばして少し距離を置いた。
「ごの゛・・・ぐぞじじい゛い゛い゛い゛!!」
風船はついに60cmになった。
まりさの体の所々が透けて見えてきた。特に目の周りはくまがあるかのように真っ黒だ。
その縁取られた中心で、焦点のぶれている目が小刻みに震えていた。
そろそろだ・・・もうまもなく限界だ、と俺は感じた。
「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛っ!!!
でいぶだぢな゛んに゛も゛わ゛る゛い゛ごどじでな゛い゛の゛に゛っ!!
なんでおどーざんいじめるの!?ばがなの!?やせがまんじないでいいよ!
いいがげん゛に゛じね゛え゛え゛え゛え゛え゛っ!!!」
俺はピタリと動きを止めた。止められてしまった。
なん・・・だと・・・?今・・・なんて言った・・・?
“やせ我慢せずに・・・・いい加減に死ね”・・・?
下に視線を移す。そこには憤怒の表情をしながら涙を流し、かつ疲れ切っている子れいむがいた。
そしてそいつの顔は俺と目が合うと、希望が見えた、と言わんばかりの明るい表情に変わった。
さらにその中には、どこか誇らしげな色も見て取れる。
「おちび・・・もうすこ・・・がん・・・れっ!」
別の方向から、くぐもった声が聞こえた。
そちらに目を向けると、子れいむと同じ表情をした親れいむが、必死に子れいむに何かを語りかけていた。
「がんばれ」という口の動きがはっきりと見えた。
どうやら先ほどの疑問の答えは、残念ながら後者だったらしい。
こいつらは、本気で俺に勝てると思っている。ポンプを踏むのを止めたのは、体当たりが効いているからだ、とも。
おそらく俺がひたすらポンプを踏んでいる隙に、親れいむが子れいむに攻撃を指示したのだろう。
箱の防音加工は大したものではない。すぐ近くなら会話が可能だ。
子れいむは気力を振り絞って俺への体当たりを再開した。その顔は疲れているが、輝いている。
親れいむの応援にも熱が入る。目一杯叫ぶその顔もまた、輝いている。
先ほどの発言で、もう一つわかったことがあった。
こいつらには、罪の意識は全く無い。
俺はまりさのくわえている風船の口に手を掛けた。
「ゆっ!ようやくれいむのつよさがわかったんだね!くそじじい!よけいなていこうはせずにさっさとそのあおいのをとってね!」
風船とホースの連結部分を外す。そしてそのまま、風船の口を縛った。
まりさの重心は風船によって後頭部付近に押しのけられており、手を離すとごろんと仰向けに転がった。
限界近くまでふくらませられているまりさの表情は変わらない。というか顔はすっかり変形してしまい、ゆっくりとは思えない
とてつもない表情だ。今は何を考えているのだろう。もしかしたら何も考えられていないのかもしれない。
まあ、あとしばらくはそのまま苦しんでてくれ。お前の子どもの最期は見せてやる。
まりさを水平に回転させて、子れいむの方を向かせた。これで逆さまだが子れいむの姿が見える。
子れいむのほうに向き直ると、きょとんとした顔で未だ苦しんでいる父親の方を見ていた。
「ゆっ!じじい!やっぱりばかなの?しぬの?れいむはさっさとそのあおいのをとれって・・・ゆぶゅりゅう゛う゛う゛う゛!?」
皆まで言わせずに、舌を引き抜いた。
「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!え゛ろ゛え゛ろ゛あ゛あ゛あ゛!」
「な゛に゛・・・・・・お゛お゛!」
親れいむも、箱の中から非難の絶叫をあげる。その親れいむによく見えるように、子れいむを箱のすぐそばに押さえつけた。
そして、ペンチを手に取る。
「い゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
「やべでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!」
やはり箱のすぐ近くだと、親れいむの声もよく聞こえる。
「あ゛っ!あ゛っ!あ゛っ!」
「ゆ゛う゛う゛うう!やべで!やべでぐだざい゛い゛い゛い゛!!」
子れいむの歯は根が浅くて抜きやすい。つまんでちょっと捻るだけですぐ取れる。
「・・・っ・・・っ・・・ゅ・・・」
「お・・・おぢびぢゃ・・・」
子れいむはまた意識を手放してしまった。
親れいむは気絶することはなかったが、もう叫び疲れたようでただただ涙を流していた。
そういえばまりさの方はどうなのだろう。向き直ると、なんとまりさも涙を流していた。
ちゃんと意識もあれば目も見えているようだ。立派なことだ。
もちろん子れいむ用にも、普通のサイズの風船を買ってきてある。両親の目の前で弾けてもらおう。
穴をふさぐ処理を終えた。リボンは障害になるかもしれないので、あらかじめ取っておいた。
普通の赤い風船を口に入れ、まりさとまったく同じようにふくらませていく。
今度は風船が10cmくらいになったときに意識を取り戻した。
しかし体力を使い果たした子れいむは抵抗するそぶりも見せない。
両親も涙を流すだけだった。途中経過は何も動きがなかったので省略する。
風船が25cm位になったところで、まりさとほぼ同じような状態になった。
もともと子れいむは15cmくらいだ。それが今では30cmを超えている。
ここからは未知の領域。慎重に、ゆっくりと踏んでいく。
また2,3cmは大きくなっただろうか。そんなときに変化が訪れた。
眼窩から餡子が染み出してきたのだ。ぶじゅぶじゅと湧き出てくる。
親れいむが小さく声をもらした。チラリと伺い見ると、顔一杯に恐怖と怯えが広がっていた。
俺は踏むスピードをもっと落とした。一回一回確かめるように。来る瞬間を見逃すまいと、息を呑んで凝視していた。
そして、餡子の涙が子れいむのほおを伝い、床に接しようかというとき。
ついにその時が来た。
唇の左端からほおにかけて、黒い線が一気に走った。
そこから皮がめくれ上がり、中の黒い流動体が波打つように出てくる。
黒い線は後頭部を走り抜け、右ほお、唇の右端まで達した。
そこからはまさに一瞬だった。皮は裏返り、餡子ははじけ飛ぶ。
バツン、という音が聞こえた気がした。
体は上下に分かれ、反動で目玉は飛び出した。
一拍おいて、後に残ったのはぐちゃぐちゃの皮と髪の毛を大量にまとった赤い風船と、
半径2mの間に飛び散ったゆっくりの血だった。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
すぐさま親れいむの絶叫が鳴り響いた。防音なんて意味のないほどの大音量だ。
この子れいむの犠牲でいくつかわかったことがある。
ゆっくりの目の周辺の皮膚は、薄いが弾力に富んでいて、なかなか破れない。
臨界点を超えると、破れるよりも隙間から餡子が漏れだしてしまうようだ。
そうなると次に臨界を迎えるのは、唇だった。
ひとたび破れると、尋常ではない水圧ならぬ餡圧が傷口を広げていく。
一瞬で全身の餡子をぶちまけ、絶命する。
なかなか壮絶な死に方だ。風船についた餡子を指でひとすくいして口に入れてみる。すごく甘かった。
では、もうそろそろお待たせしていたまりさを楽にしてあげよう。もっと大きな爆発を見てみたい。
だが風船の口をほどくのは面倒なので、一旦割ってしまうことにする。
スペアの風船はまだいくつかあるのだ。感想も聞いてみたいし。
全身から絶望のオーラが出ているまりさに近づき、ペンチの先端で風船を割ってやった。
急激にしぼんでいくまりさ。体を引きずって必死に俺から遠ざかり、震えながら、涙を流しながら、命乞いの言葉を並べる――
というのを期待したが、そうはならなかった。
弛みきってしまった体が、元に戻らないのだ。唇は閉じることなく、全身が平べったくつぶれてしまった。
脱ぎ捨てられたパジャマを連想させる姿勢だ。
「ぅー・・・ゅー・・・」
うめき声しか出てこない。口の端から濁った液体を、目からは情けない涙を垂れ流している。
「ばりざあああ!どぼじで・・・ゆうああああ!!」
れいむの声に反応するそぶりもない。
哀れになってきたので、さっさと弾けさせることにしよう。
緑色の風船はもう60cm弱までふくらんだ。
再び張りのある姿に戻ることができたまりさは、また体の所々に黒斑を作り、飛び出しそうな目で虚空を仰いでいる。
そして、その目の奥から黒い涙が溢れ始めた。
ポンプを踏むスピードを落とし、あの瞬間に備えた。
だが、それから俺はなんと3分間も踏み続けることとなった。
風船は70cmに達しようかというほどに。実に俺の腰くらいまである。
それでもまだまりさは持ちこたえていた。限界点は、俺が思っていたよりも遥か先にあったのだ。
すごいや成体ゆっくり。なんて可能性に溢れた生物なんだ。
しかしもう本当にゆっくりには見えない。全く別の物体になってしまった。
皮は黒斑というレベルではない。もはやマーブル模様だ。
風船をくわえていると言うより、風船に張り付いていると言った方がいい。
喉の奥にかかる圧力が強すぎて、餡子が全身に均質化してしまっている。ほおも唇も後頭部も同じ厚さだ。
眉間から切り分けたとしたら、断面はきれいなCの字を描いているだろう。
ここまでくると、何やら前衛的な芸術作品に見えてしまう。
“ゆっくりバルーンオブジェ”・・・とでも名づけようか。
「ばでぃざあ゛あ゛あ゛あ゛!!ばでぃざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
れいむはさっきから叫びっぱなしだ。箱よ、防音加工の名が泣くぞ。
突然、ブチン、という音が聞こえた。
そのあとに、水が噴き出すような音が続いた。
まりさの顔の表皮に変化はない。
なのに、まりさの目から急激に生気が抜けていった。
音が続いている。どこから聞こえてくるのか俺は急いで探した。
見つけた。後頭部だ。後頭部から餡子がものすごい勢いで噴き出している。
まりさの後方、3mは離れたガレージの壁に、大量の餡子が吹き付けられ続けた。
体の餡子のほとんどが小さな傷口に殺到し、4秒の間に体外に排出された。
まりさの薄い抜け殻は、緑色の風船にぴったりと張り付き、透きとおっていた。
何度目かわからない、れいむの絶叫が一番の音量で響いた。
これは予想外だった。まさか裏側から噴き出すなんて。
歯を抜くときに、仰向けのまま激しく抵抗した結果だろうか。
俺は唇ばかり凝視していて、後頭部なんて見えるはずもなかった。
決定的瞬間を見逃したのだ。もったいない。
とりあえず、抜け殻に付着している餡子を舐めてみた。
びっくりするくらい甘かった。喉が焼け付きそうだ。
消化不良の感が拭えない。このれいむをどうしようか。
「し゛ね゛し゛ね゛し゛ね゛し゛ね゛し゛ね゛し゛ね゛・・・」
俺はれいむの箱を持ち上げ、どけてやった。
れいむと目があった。一片の光もない。表情には絶望と憤怒のみが混じり合っていた。
箱が取り上げられたことを確認したれいむは、雄叫びを上げて俺に飛びかかかってきた。
「うがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」
そこそこの力で蹴り返してやった。れいむはきれいな放物線を描き、まりさが噴き出した壁際の餡子の海に顔から落ちた。
顔を上げたれいむの目にはいくらか光が戻っていた。表情も怯えを取り戻している。目が覚めたようだ。
「ご・・・ごべんだざい!ごごはおにいざんどおうぢでずっ!がっでにはいっでごべんだざいっ!
でもおはだざんたべだのわばりざでずっ!ごごにはいろーっでいっだのもばりざでずっ!
でいぶはただばりざにいわれだだげなんでずううううっ!」
勝手にべらべらしゃべり始めた。痛みを感じたことで生への執着が湧いてきたのか。しかし言動がゲスのテンプレだ。
「だから!だかだでいぶだけは・・・ゆどぅじでぐだざいいいいい!!」
だが断る。
ペンチを手にとった。3度目ともなると、もう丁寧に処理してやるのは面倒なので歯茎ごとねじり取る。
わんわん喚いていたが気にしない。ちゃっちゃと穴もふさいで準備完了。
黄色の風船を口に入れ、一気に60cm強までふくらませた。
あっという間にれいむバルーンオブジェの出来上がり。
風船をポンプから外した。風船の口を指ではさみ、空気が漏れないように持つ。縛りはしない。
そしてガレージの中央に向かい、それを無造作に放り捨てた。
抑えが無くなった風船の口から空気が漏れていく。不自然な軌道で空中を漂ったれいむ付き風船は、れいむを下にして接地した。
その瞬間、接地したれいむの頭頂部に穴が空いた。そこから勢いよく餡子が噴射する。
噴射口が二つになったオブジェは突飛な方向に飛んでいく。いびつな放物線を描きつつ2回目の接地。今度はれいむの顎に穴が空いた。
そこからはムチャクチャだ。接地するたびにれいむに穴が空く。餡子が噴き出す。四方八方に、ねずみ花火のように暴れ回った。
最後はきりもみ状に回転し、舞い上がった後にべちゃりと地面にひっついた。
そこにはれいむだった面影の欠片もなく、もの言わぬ饅頭がぐちゃぐちゃにねじ切れていた。
結果的になかなか苦しんでもらえたようで何よりだ。
今度からは家の前に罠をしかけておこう。
まだ風船が余っているので、機会があればまた活躍してもらおう。
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あとがき
初投稿です。いやもう俺設定満載になってしまいました。
お兄さん虐待初めてなのにゆっくりのこと詳しすぎじゃね?というツッコミはごもっともですな。
あと全体的に文章が冗長な感じが否めません。もう少し精進します。
こんな乱文を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
最終更新:2009年05月22日 21:27