※一部東方以外のパロディです
※独自の設定があります
※虐待成分が
おまけに過ぎません
※同じ
タイトル等あったらごめんなさい
「おまえは この おせろっとが もらう!」
崖を挟んで睨み合う俺と奴…。
待ち伏せの上、周囲を大人数で囲み、威嚇射撃でご挨拶、前には不意討ちもあったな…。
どう考えても正々堂々とは言えない一騎討ちが始まった…。
俺は以前、美
ゆっくり探しを行った地に再び訪れた。
謎の爆発によって壊滅した村の調査と、もう一つの密命の為に…。
村を襲ったゆっくり達は、一部を残してまた別の村を襲う準備の為に拠点へ戻っていた。
現地を訪れた俺を待っていたのは、熱烈なゆっくりコールだった。
…と言っても、その先に続くのは消えろだの帰れだのという悪意ある言葉だったが…。
加工所からの情報で、現地にゆっくりの群れの中にスパイがいる事が判明し、
合流の為壊滅した村近くの小屋の跡地へ向かった。
そこで何を言ってるのか良く分からない赤髪緑帽子のゆっくりと出合った。
状況と態度から察するにこいつがスパイだろう。
めーりん種でまともに話せないのにスパイだと…?
どなたか“ゆっくリンガル”ください、一昔前に流行った翻訳機です。
一夜明けて、俺達は以前にも戦った事のあるゆっくり達に囲まれていた。
種族の飾り以外に赤い帽子を被ったちょっと強めのゆっくり達だ。
流石ゆっくりだ、何匹潰しても幾らでも湧いてきやがる。
その姿を見るなりスパイは一目散に逃げ出して、俺に全部押し付けやがった。
次遭ったら遠慮なく潰すか…。
勿論、赤帽子共は軽く捻ってやった。
壊滅した村の調査は直ぐに終わった。
…というのも、全て跡形も無く吹き飛んでいたからだ。
一体何があったのだろうか…?
ゆっくりの群れは少数を各地に派遣し、そこを拠点として防衛している。
野生のゆっくりが考えたにしては良く出来た作戦だ。
惜しむらくはゆっくりであるという事だけだろう。
虫を追いかけたり、手近な奴と交尾していたりと全く防衛していない。
後ろに忍び寄ってみたりしたのだが全く気付かない。
余りに馬鹿らしいので全員爆破しておいた。
そして、切り立った崖に達した所で奴と再び出遭った。
村近くの小屋でのスパイとの合流時の赤帽子の襲撃時にいた奴らの親玉だ。
以前の戦いで弾幕が薄いと指摘したやったのだが、今度は武器を変えてきやがったか。
また出て来るのは簡単に予想出来るから、次は嘘吐いて弱体化させてみよう…。
さて、あの自称山猫の式神猫モドキに格の違いを“わからせて”やるとするか…。
「…とまぁ、昨日こんな感じの小説読んだんだけどだけど…」
「あっそ、暑苦しいから話しかけないで」
「おいおい、だったらそんな冷たい態度取らないでくれよ…。
これで扇いでやるからさ…」
「ありがとう、いいセンスね」
【俺と彼女とゆっくりと】 ~ゆっくりいーたーさくせん編・序の口~
さて、今日も今日とて彼女の憐れな奴隷である俺は、野山を駆け巡っていた…。
誤解を防ぐ為に言っておくが、これでも一応彼女とは恋人関係なんだぞ!
恋人関係なんだ! 恋人関係だと思う…! 恋人関係なんだけどなぁ…。
「♪ゆっく~り~ 追~いし~ 彼~の~山~」
そんな事を歌いながら歩く俺の、今回の任務は“美ゆっくり”の追加補充。
前回彼女が“つい、やってしまった”ので、新しい個体を探さなくてはならないのだ。
「♪ゆっく~り~ 釣~りし~ 彼~の~川~」
ストレスでおかしくなった訳ではない。 目の前の川の上にゆっくりがいるのだ。
ゆっくりというのは本が饅頭である為、非常に水に弱いのだが、
その飾りは饅頭ではない為、物によっては水に耐性を持っている事がある。
特に、大きな帽子を被っているまりさ種は、時に帽子を逆さまに川に浮かべて、
枝をオールの様に使って川を渡る事もあるというのだから驚きだ。
実際に見たのは今日が初めてだが、なるほど大したものである。
「あまあまさん、ゆっくりまってね! まりさにたべられていってね!」
暇潰しとストレス解消を兼ねて、そのまりさで遊んでいるのだ。
捕獲網(今回は持って来た)の先に糸、その端に駄菓子を括り付けて垂らす。
口の近くに持っていっては食い付く前に離し、また近づけては離す。
「ゆぅううう! あまあまさん、もっとゆっくりしていってね!」
焦らされに焦らされて、遂に駄菓子に対して怒り出すまりさ。
駄菓子だけに可笑しな話ではあるが、俺からすれば共食いにしか思えないがな。
「ゆっ! あとちょっとでとどきそうだよ! ゆぅ~ん!!」
飽きてきたので届くか届かないかのギリギリの位置に餌を固定する。
まりさが軽く一跳びすれば簡単に取れる位置だ。
多少は気晴らしになったから、褒美として食わせてやろうとした。
「ゆっくりたべるよ!」
あっ、跳ねた。
「ゆごぼぼぼっ! どうしてまりさがおぼれてるのぉおおおっ!!?」
あっ、溺れた。
残念、あまあまはお預けだな。
「さて、美ゆっくり探しを再開するか…」
俺は立ち上がると、再び山の中へと入っていった。
暫く探し回っていたが、一向に美ゆっくりと呼べる代物は見つからなかった。
気が付けば日は高く昇り、昼食を摂る時刻になっていた。
ここで取り出したるは彼女の手作り弁当!
…といけば嬉しいのだが、非常に残念な事に彼女の料理の腕は俺以上に残念である。
泣く泣く自分で作った弁当を広げる事にする。
今日の献立はシンプルに握り飯と漬物と玉子焼きと。
自慢じゃないがこのメニューに関しては並大抵の奴に負けない自身がある。
それしか作れないので極めてしまったとも言うがな!
そもそも一人の期間が長く、やっと出来た彼女がアレでは…。
あれ、おかしいな…? このオニギリ、塩入れてないのに何だか塩辛いや…。
一つ目を食べ終え、さて二つ目というところで、背後から大きな気配がした。
不審に思って振り返ると、いつかのドスまりさではないか!
「おにいさん、どうしてもどってきたの…?」
「ドス…!」
因縁の相手ではあるが、迂闊に攻撃する訳にはいかない。
以前このドスと戦った時、邪魔が入ったとはいえ、俺はこいつに負けたのだ。
俺は舌で絡め取られるのを警戒して、距離を取り身構えていた。
「またむれのなかまをつかまえたんだね。 ゆっくりしないでかえしてもらうよ!」
食後のデザートにしようと思って一匹捕まえていたのが拙かったらしい。
しかし、一体どうやって嗅ぎ付けて来るのだか…。
「この前は不覚を取ったが、今回はそうはいかないぜ!
お前と出遭った時の為に銃を用意させてもらった!」
知り合いの猟師から猟銃を譲り受け、持ち運びし易いように銃身を短くしてある。
威力は劣るが、軽くて持ち運びが容易で、扱いやすいのが特徴だ。
河童に頼んで作ってもらった甲斐があるというものだ。
「そんなものでまりさをたおせるとでも…?」
「確かに、倒すのは無理だろうな? でも、対抗手段としては十分だぜ!」
ドスまりさを倒す場合、その分厚い皮を打ち抜く為に、数発の銃弾を要する。
一般的な対処法として罠で足止めしての一斉射撃があるが、
この小銃ではそこまでの威力は無いし、何より弾が無い。
だが、足に撃ち込んでやれば動きは大幅に制限できる。
その間に俺はゆっくり逃げ出せば良いのだ。
「はやくなかまをおいてにげたほうがいいとおもうけど…?」
「はっ! 言われなくてもスタコラサッサだぜ!」
発砲! …とは言え、威嚇射撃的なものだ。
「うおっ、まぶしっ!」
火薬の量を間違えたか?
銃口から閃光が放たれ、目が眩んで狙いを外してしまった。
その隙にドスの接近を許してしまい、その舌で俺は捕らえられた。
直ぐに離れようともがくが、ドスはそのまま俺の腕を捻り上げていく。
「ぐおぁああ…っ!」
指の力が緩んだ隙に、手から銃を奪い、器用に分解して銃を捨てるドス。
その為、舌の拘束から逃れる事は出来たが、痛みで右腕が思う様に動かせなくなった。
「うではもうなおっていたんだね」
「こっ、このやろぉおおおっ!!」
頭にきた俺は回し蹴りを仕掛けるが、ドスの分厚い皮には余り効果が無く、
逆に俺が弾き飛ばされてしまった。
体制を崩した俺をドスは再び拘束し、俺から荷物を取り上げていく。
「ぶきもそうびもうばわれて、どうやってたたかうの?」
「くっ、くそ…っ!!」
デザートのゆっくりを奪われてしまった。
そして、事もあろうにドスは俺の荷物を崖から放り投げてしまった。
「あっ、てめぇ俺の荷物を! …というか昼飯をっ!!」
「これにこりたら、ゆっくりしないでおうちにかえってね!」
それだけ言うと、ドスは俺を地面に叩きつけて去って行った…。
「うぉおおおっ! 俺の昼飯を返せぇえええええっ!!」
体は痛いわ、腹は減るわで散々である。
「許さん、絶対に許さんぞ、ドスゥウウウッ!
食い物の恨みは恐ろしいという事を思い知らせてやるっ!!」
俺はドスに復讐を誓ったのだった!
「それで、泣いて帰ってきた訳ね」
「違うって言ってるでしょぉおおおおっ!!?」
泣いてなんか無いやい! これは心の汗だい!!
「それより、さっきの話から想像するより、随分怪我が酷いみたいだけど?」
「あー、それはですね…」
あの後、転がり落ちていく昼飯を追って俺は崖を降りていった。
その途中、包みから握り飯が零れ落ち、途中の坂に開いた穴に落ち込んだのだ。
「これはアレですよ!
中を覗くと、腹をすかせたゆっくりがその握り飯を食っていて、
お礼に金銀財宝ザックザクという…!」
「それで、何で怪我をするの?」
「穴の中を覗きに行って、足を滑らせて崖から落ちました」
「あなた、ドスに殴られ過ぎて餡子脳になったんじゃない?」
「どぼじでぞんな事言うのぉおおおおおっ!!?」
「そんな事より、結局美ゆっくりの捕獲は出来なかったのね」
「うぅ…、はい…、その通りです…」
「素麺かぁ…、私は耐えられないわね…」
(俺の給与査定の事かぁあああっ!!?)
「まぁ、いいわ。 一匹はこっちで用意出来たから」
「へ? 俺以外に誰かに捕りに行かせたのか?」
「いいえ、前回美ゆっくりれいむの遺伝子を採取したのを覚えている?」
「ああ、お前が暴走して餡子を抜きまくった…」
「余計な事は…、言わない方が…、身の為よ…?」
「はい、すいませんでした!」
冷たい視線に射殺されるところだったぜ!
「あのー、それがどう関係しているんでしょうか?」
「ゆっくりには遺伝子があると説明したわね。
遺伝子があるならば、その複製も出来るという事よ」
「ま…っ、まさか、ゆっくりのクローン!?」
「その、まさかよ。 実験は成功したわ、失敗も多かったけどね」
「どうやって複製したのか全く想像がつかないんだが…」
「永遠亭との共同開発よ、詳細は極秘だけどね」
「それで、そいつらはどこに?」
「私の実験室にいるわよ、良かったら見に来る?」
「ああ、そうしよう」
彼女の実験室に着いた。 実験の為の各種高級器具が揃っている。
加工所の施設内にこうして自分の研究室が持てるのだ。
彼女の実力と地位の高さが伺えるというものである。
「ゆっくりしていってね!」
「ほー、これがそのクローンゆっくりか…。 やっぱり違いが分からんけど」
「オリジナルと全く同じ遺伝子で構成されているわ。
これでいつでも復元出来るようになったわ」
「それで、こいつをどうするんだ?」
「本来なら遺伝子の詳しい解析を行うところなんだけど、
一匹だけでは比較研究できないわね。
これはれいむ種だから、他の種類の美ゆっくりもほしいところだわ」
「また俺が捕りに行くのか…?」
「あなたには期待できないから、誰か他の人に任せるわ」
「そうですねー」
後日、まりさ種やありす種等の主だった美ゆっくりが集められ、
彼女は嬉々として研究に励んでいた。
その間、俺は専らドス退治に励んでいたのは言うまでも無い。
「面白い実験結果が出たわよ」
「うわぁ、全部同じ顔に見える…」
「多数の美ゆっくりと呼ばれる個体を集め、それぞれに共通する特徴と遺伝子を比較し、
一体どの部分が美しさに影響するのかを調べてみたわ」
「その結果が大量の出来損ないですか…」
「遺伝子に異変が生じたみたいね。 貝殻を被ったまりさ種も生まれたわよ」
「突然変異しすぎだろう…」
「でも、苦労の甲斐あって、究極の美ゆっくりを生み出す事が出来たわ!
今から野外区画でお披露目を行うわよ」
さっきから気になっていたのだが、机の上に布を被せた箱が置いてある。
彼女は俺にそれを持たせて(結構重い)、早々と野外区画へ行ってしまった。
野外区画には、比較的自然に近い環境下でゆっくりの生態を研究している場所がある。
彼女はそこの放牧場で美ゆっくりを放し、周囲の反応を見るつもりだ。
「遅いわよ! さっさと美ゆっくりを出しなさい!」
「はいはい、了解です」
箱から美ゆっくりを放り出す。 何となく手触りが心地良かった。
「ゆっ? とってもきれいなれいむがいるよ!」
「ほんとうだよ! いままでにみたことないよ!」
その瞬間、周囲のゆっくりに動揺が走った。
「今回は試験的にれいむ種の美ゆっくりを作ってみたわ」
「さて、こいつらの反応は…」
「ゆぅうう!? ゆきゅ~ん…」
何という事だろうか! 見ただけで失神する奴がいた!
「文字通り目も眩む様な美しさって事よ」
「それって比喩表現じゃなかったか!?」
「ゆぅっくりぃ、していってねぇ!」
美ゆっくりが、ゆっくりと挨拶をした。
信じられない事だが俺にとっても心地良く聞こえた。
「ゆっ、ゆゆゆゆゆっ!? うっとり~!!」
その声を聞いて、何匹かのゆっくりは虚空を見つめて不気味な笑みを浮かべている。
どうやら、美ゆっくりの声に夢現の状態らしい。
「ゆっくりは人間に近い言語で鳴くけれど、それは人間に近い声帯をしているからなの。
だから、美ゆっくりは人間に近い発声を可能とするの。
…と言っても、主に小麦と小豆で出来ているのは変わらないけどね」
「声でワイングラスを割れそうな位良い声してるぞ!?」
美ゆっくりが近くのゆっくりににっこりと微笑みかけた。
「きらっ☆」
「ずぎゅううううん!」
「おい、謎の奇声を上げて吹き飛んだ奴がいるぞ」
「どうやら視線に射抜かれたみたいね」
「何か雷にでも打たれたかの様に痙攣してるぞ」
「君の瞳は百万ボルトって事ね」
突然一匹のゆっくりが前に出て、美ゆっくりにすりすりを求めた。
「す、すすすすす、すりすりしようね! いや、させていただけませんか!?」
「おい、今野良ゆっくりが敬語使ったぞ」
「美ゆっくりに高貴なる気品を感じとった様ね」
「いいわよぅ、す~りす~りぃ」
「す、すーりすーり!」
野良ゆっくりが美ゆっくりとすりすりしている。
だが、ものの数回も擦り合わせない内に…。
「へっ、へぶんじょうたい!!」
虹色の光をバックに恍惚とした表情で固まってしまった。
「そのまま昇天しそうな勢いだな」
「こんな感じのシステムでゲームを作ったら売れるかしらね?」
このれいむ、確かに美ゆっくりであった。
この俺の目から見ても、もっちりしっとりとしたハリのある肌、
しなやかで瑞々しい艶のある髪、すっきりきっちりと整った顔立ち、
透き通った水晶の様な輝く瞳にオペラ歌手に勝るとも劣らない声質と、
凡そ思い付く限りの美しさを詰め込んだかの様な容姿に、
その美しさに比例するかの如く、優雅な雰囲気と立ち居振る舞いだ。
はっきり言って、人間でもここまで周囲を引き付ける奴はいないのではないだろうか?
「んっ、んほぉおおおおお! れいむぅうう!!
とかいはのありすとすっきりしましょうねぇえええええ!!!」
その美ゆっくりの美しさに理性が吹き飛び、暴走したありすが襲い掛かっていった。
だが、俺が助けるまでもなく、ありすは一瞬で撃退されてしまった。
「われらのれいむさまにてをだすなあっ!」
「ゆげぇええええ!!?」
いつの間にか美ゆっくりに親衛隊が出来ており、通常では在りえない言葉まで使っている。
その上暴走したありすを集団で返り討ちにしてしまった。
「みんなぁ、ありがとうねぇ」
「ゆぉおおおおおおっ! れいむさまっ、れいむさまぁあああああっ!!」
あれ? ゆっくりってこんな生物だったっけ?
「おい、何だか大変な事になってきたぞ」
「やっぱりね…」
「はぁ? 何がだ?」
「……………。 どうして、自然界に美ゆっくりが少ないか分かるかしら…?」
「んー、人間でも美人が少ないように、全体的に割合が低いからか?」
「違うわ。 美形個体ならば子孫を残す上で有利でしょう?
だったら、当然数も増え易いわよね?」
「じゃあ、目立つからありす種みたいな奴等に狙われて減り易いとか?」
「それはあるでしょうね。 でも、本当の理由は別にあるわ」
彼女は美ゆっくりの方を、どこか遠い目で見ながら言葉を続けた。
「美ゆっくりを美ゆっくり足らしめる根幹、
美形遺伝子には二つの特徴があるの…」
美ゆっくりは野良ゆっくり達の前で美声を披露している。
「一つは劣性遺伝である事…。
繁栄に有利な筈の遺伝が、子孫に発現し難いのよ」
美ゆっくりは野良ゆっくり達の前でゆっくりと踊りを披露している。
「そして、もう一つ…。 美形遺伝子は致死因子でもあるの。
今回は致死性の抑制に成功したけれど、自然状態では大抵が発生段階で死に至るわ」
遊びつかれたのか、美ゆっくりは眠りだしてしまった。
「あの美ゆっくりも、寿命はかなり短いでしょうね。
その一瞬の生に全てを懸けて光り輝く…」
「……………」
「美人薄命という事かしら。 私みたいに…」
「お前、実はそれが言いたかっただけだろ」
彼女に首を絞められて意識が遠のいていた様だ。
気が付くと、日が山に沈もうとしていた。
「あら、漸くお目覚め?
あなたが眠っている間に、何だか面白い事になったわよ」
その言葉に周囲を見渡すと、そこは凄惨たる有様だった。
辺り地面の野原は餡子で真っ黒に染まり、所々に飾りと思しき物が飛び散っている。
そして、その中心に美ゆっくりと二匹の野良ゆっくりがいた。
「しぶといありすなんだぜ! さっさとくたばるんだぜ!!」
「ほんとうにいなかもののまりさね! とかいはのあいのまえにちるがいいわ!!」
「もうやめてぇ! れいむのためにあらそわないでぇ!!」
「えーと、これは一体何のコントですか?」
「ありすの暴走を契機に、美ゆっくりを巡っての争奪戦が始まったのよ」
「何で途中で止めないんだ!?」
「どのゆっくりが美ゆっくりを勝ち取るのか面白そうだったから。
ねぇ、折角起きたんだし、どっちが勝つか賭けでもしない?
まりさが勝ったらあなたが私に指輪を買う、
ありすが勝ったら私があなたに宝石を買わせてあげる」
「それ、どっちに転んでも俺が損して無いか!?」
そんな事を言い合っている内に、争いに決着が付いた様だ。
「ゆぉおおおおお!!!」
「ゆわぁああああ!!!」
饅頭と饅頭がぶつかり合う激しい音が響き、静寂が訪れる。
二匹はそのまま暫く硬直していたが、ふらりと同時に倒れ込んだ。
「これは…、どっちが勝ったんだ!?」
「指輪、宝石、指輪、宝石、指輪、宝石…!」
倒れたまりさとありす、そのどちらからともなく、口元に微かな笑みを浮かべる。
「おまえ、けっこうやるんだぜ…」
「あなたもとかいはなところがあるわね…」
二匹は夕暮れの野原に寝そべり、沈みかけた夕日を見上げながら笑い出す。
「まりさはまりさっていうんだぜ…。 おまえはなんていんだぜ…?」
「ありすはありすっていうのよ…。 とかいはなまえでしょ…?」
二匹はゆっくりと見つめ合い、体を寄せ合いながら起き上がる。
「きにいったんだぜ! おまえをまりささまのともだちにしてやるんだぜ!」
「ふ、ふん! とくべつにあなたのともだちになってあげてもいいわよ!」
二匹の間に奇妙な友情が生まれた様だ。
拳(?)で語り合ってこそ、真の友情が生まれるというものだ。
「ふたりともぅ! ようやくわかってくれたんだねぇ!」
美れいむが二匹の傍に駆け寄ってくる。
喧嘩が漸く収まったので、目に涙を浮かべて喜んでいる。
「れいむ…?」
「れいむ!」
「もうけんかはやめてねぇ! れいむはみんなのれいむなんだからぁ!」
「ああ、たしかにそうなんだぜ…」
「みにくくあらそいあうなんて、とかいはのすることじゃなかったわね…」
「でも、ゆるしてあげるよぅ! みんなでなかよくしようねぇ!」
三匹で笑いあっていたゆっくり達だが、突然まりさが何かを閃いた様だ。
「ぴこーん! そうだぜ! ありす、ちょっとみみをかしてほしんだぜ!」
「なに? とかいはなわたしになにかいいたいことでもあるの?」
「ごにょごにょ…、ごにょごにょなんだぜ…」
「………! それはめいあんだわ! すごくとかいてきないけんね!」
「ねぇ、いったいなんのおはなしをしてるのぅ?
ゆっくりしないでれいむにもきかせてねぇ!」
内緒話をしていたまりさとありすは、れいむの方に向き直る。
その顔には今までの笑みとは異なる、下卑た表情が浮かんでいた。
「あー、れいむ。 そうだんのけっか、まりささまとありすで…」
「れいむをおいしくいただくことがけっていしたわよ!」
「はいぶんはまりささまがまえで…」
「ありすがうしろをたんとうすることになったわ!」
「ゆっくりやさしくしてあげるから…」
「とかいはなあいをうけとってね!」
「ゆゆうっ!!?」
「というわけで…」
「んほぉおおおおおおおおおっ!!!」
「ゆんやぁああああああああっ!!?」
慌てて逃げ出すれいむ。 しかし、あっと言う間に追いつかれて押さえ込まれる。
「ゆんやぁああっ! やめてぇえええっ!!」
「へへっ、ないたってだれもたすけにこないんだぜ!」
「こういうときはおとなしくするのがとかいはよ!」
「さあっ!」
「かくごしなさーいっ!!」
まりさとありすが襲い掛かる!
だが、その瞬間…!
「ゆっ、ゆがっ、ゆがががが…っ!!?」
れいむが痙攣を始め、口から餡子を吐き出す!
「な、なにごとなんだぜ!?」
「このれいむ、ちっともとかいはじゃないわぁ!」
「ゆべっ、ゆぼべべべべべ…っ!!?」
そして、瞬く間に衰弱し、れいむは黒ずんでしまった。
「いっ、一体何が起きたんだ!?」
「致死遺伝の影響が出た様ね」
それまで事態を傍観していた俺達だが、この事態に困惑せざるを得なかった。
「寿命が短いとは聞いたが、まさかここまでとは…」
「元々そんなに丈夫な個体ではなかったけど、恐怖が発症の引き金になった様ね」
「発症? 何がだ?」
「美形遺伝子に眠る、致死因子の正体よ…」
れいむの死の原因をお互いの所為にして、罵り合っているまりさとありすから、
れいむを奪い取りながら彼女は言葉を続けた。
「このれいむの様に、美ゆっくりは最高にゆっくり出来る存在だけど、
その美しさがこの様な争いを生む事がある。 時に美しさは罪なのよ…」
(また、自分は美しいとかのオチをつけるんじゃないだろうな…)
「だからこそ、その無用の争いを回避する為に、ゆっくりは致死因子を持つの。
その因子とは美形遺伝子を持つゆっくりのみに作用する病魔、“YUX DIE”…!」
「YUX DIE…!!?」
「この病魔は全てのゆっくりに感染し、美形遺伝子を持つゆっくりのみを駆逐する。
だから、自然界には美ゆっくりが殆ど存在しないのよ…」
「もう何が何だか…」
彼女は美ゆっくりれいむを丁寧に埋葬してやり、こちらを振り返った。
「さようなら、れいむ…」
「結構良い奴だったんだけどな…」
「でも、あなたの死という悲しみを乗り越えて、私は次の実験に励むわ!」
「そうだぜ、元気出せよ。 俺が何か奢ってやるからさ」
「その悲しみを乗り越える為に、私は指輪と宝石を彼から頂くわ!」
「はあっ!? 懸けは不成立に終わっただろうが!?」
「何寝ぼけた事を言っているのかしら?
れいむはまりさとありす両方のものになったから、懸けは両方とも成立よ!」
「そっ、そんな馬鹿なぁああああああっ!!?」
俺の絶叫は、まりさとありすの罵声と混じり合って、星の輝く空に吸い込まれていった…。
(きらっ☆)
【美しさの基準は人それぞれだと思います。
この話では世間一般的に見た場合の美しさでしょうか…。
遺伝子がどうとか偉そうな事言ってますが、詳しい事は餡子脳なので分かりません…】
最終更新:2009年06月08日 02:34