ゆっくりいじめ系2931 スィーらいせんす

  • スィーとか色々超絶俺設定注意。









スィーは不思議な乗り物。
じゃり道,あぜ道,ぬかるみ,キツイ山道。
どんな悪路だろうがスィーっと進む。
正直チート臭い能力だ。

選ばれたゆっくりだけが乗れる。
…と言う訳ではなく、たまたま手に入れたラッキーガールの割合が高い。
どこかで拾ったのか。それとも貰ったのか?
野生のオーナーに聞いても、「よくわからないよっ!」の言葉だけが返ってくる。
そんな不思議な乗り物。

野生では希少かもしれない。だが都会の専門ショップなら購入も可能。
ちょっとお高めだが、一般市民でも無理をしないで購入できる金額設定。
ゆっくり達のランクアップの重要アイテム。
野良に見せると涎を垂らしながら懇願する程の存在価値。
お値段以上の感動がそこにある。らしい。

これは、そんなスィーを乗りこなすゆっくり達の熱き物語である。





「ゆっくりはしるよっ!」

庭でれいむがスィーで爆走中だ。
ゆっくりなんて微塵も感じさせないスピードで疾走する。
ご満悦の表情で爽快に飛ばしまくっていた。庭は順調に荒れていく。
あっ!花瓶倒しやがったっ。この野朗…遠慮をしらねぇ。

「れいむはすぴーどすたーだよっ!」

なかなかのドライビングテクニック。右に左へとカーブを決める。
どうやって曲がっているのだろうか?疑問に思い聞いてみた所、
「かんがえるだけでまがるよっ!」との答えが。んなアホな。


「れいむはてんさいだねっ!すぃーますたーだよっ!」
「それならこれに挑戦してみようか?」

一枚のパンフレットをれいむに突き出した。
そこにはスィーらいせんす所得の詳細が記載されていた。





「ここがきょうしゅうじょーなんだねっ!」

教習所到着。受付完了。即実習。
意外と教習希望者は多い。
周りの同期を見渡しながら大声で叫んだ。

「れいむなら らくしょうだよっ!」

自信満々なれいむ。
最初はS字カーブと駐車の実習。次は坂道に信号付きコースを順調に走った。

「ゆっくりとまるよっ!」

れいむは交差点の赤信号で止まる。停止線ぴったりだ。素晴らしい。
「かんたんだねっ!」そんな事を思いながら口元がにやけてきた。
だがっ!その時れいむに衝撃走るっ!

「ゆ゛わぁぁぁぁぁぁぁーーーー~っ゛!」
「まり…?ゆほーーーーーー~っ!?」

まりさが反対車線を通過。完全に空をぶっ飛んでいく。
途中、信号無視をしていた対向車線のありすが巻き込まれていった。
そして遥か彼方のコンクリの壁に激突。
鈍い音を奏でて、無残に潰れたまりさ達は絶命する。

信号無視。ダメ、絶対。


「ゆ…。えぇぇええええええええええぇっ゛!?」

お気楽ムードから一転。あっという間に死の香り漂う戦場へ。
後ろに停車している他のゆっくり達も、驚愕の表情しながら固まっている。


「はいはーい。青になったので早く渡ってくださいねー。」

パンパン手を叩きながら催促している人間さんが向こうに見える。
今の出来事を問い詰めねばならない。れいむは涙を流しながらスィーを走らせた。

「どぼじでまりざが おぞらをどんでるのぉぉぉぉぉっ!?」
「さぁ?」
「それだけじゃわがらないよぉぉぉぉっ!?」

指導員はあっさりした言葉を返し、これからすべき事の説明を語りだす。

「いいですか~?これからがライセンス所得本番です。頑張ってください。」
「もうやだっ!おうちかえるー~っ!?」

「こちらも仕事なので帰せません。
 どうしても帰りたい場合は、天国か地獄に逝って頂きます。」
「そのせんたくは とかいはじゃないわっ!?」
「ありえないんだぜっ!?」

ゆっくり達は口々に不満を喚く。
それに耳を貸さず淡々と説明を続ける。プロの鏡です。

「あなた達は今から3つの試験を受けて頂きます。それをクリアーしたらライセンス所得です。」
「ゆっ?それなららくしょーだよっ!」
「とかいはなありすなら らくしょーねっ!」
「わかるよーっ。らくしょうなんだねー!」

ゆっくりは3の数字までは解るらしい。
数えられる試験なら先が見えるから安心するのだろう。
最も、試験内容を確認しないでホイホイ了承するのは、アホだとしか言いようが無い。

「これがあなた達に挑んで貰うコースだっ!」

指を刺す方向は先程まりさがぶっ飛んでいった直線コース。
奥にはコンクリの壁が聳えている。

「第1のコース!壁手前の停止線で止まればクリアー。さぁ 散るがいいっ!」
『『どうしでちることぜんていなのー~っ!?』』


他のゆっくりが騒ぐ中、すぃーますたー(自称)のれいむは分析していた。
別に止まるだけなら楽勝だ。まりさは調子に乗って制御不能になったに違いない。
しかしっ!そう考えているれいむにまた衝撃走るっ!

「それではリミッター解除しまーす。」
「どうじでそんなものがあるのぉおぉぉぉぉぉっ゛!?」

れいむは即座に突っ込んだ。
何かとてもゆっくり出来なさそうな感じがする。
でも指導員は聞いちゃいねぇ。機械でピピッと手際良く処理していく。
れいむのスィーもリミッター解除。
シリの下から嫌な鼓動感を感じる。このまま空に飛んでいきそうな勢いだ。



「GO!」

指導員が最高の笑顔でスタートの合図。
ゆっくり達の意思に反し、スィーがホイールスピンをして勢い良くかっとぶ!
でも、スィー。しか擬音が出ない。不思議!

「わからないよぉおぉぉぉぉっ!?」
「ゆっくりさせてぇぇぇぇっ!?」
「いやぁぁぁぁぁっ!?」

れいむの少し前方の数体が素晴らしいスタートダッシュを見せ付ける。
ただ止まるだけ。それだけの事を今のスィーは是としない。
油断するとケツが浮く。その後は壁に激突。完全なる死のコース。

「ゅゅぅぅぅぅーーーーーっ゛!?」
「だいぴんちなんだねっ!?わかるよぉー~っ!」

ちぇんとありすの目の前に壁が迫る!死ぬ気でブレーキをかける!
停止線ギリギリで奇跡的にスィーが止まった。
だけどちぇんとありすは止まらない。

スィーから体が投げ出されていた。

「わがらないよぉおぉぉぉぉっ゛!?」
「ぁああああああぁっ!?」

そのまま仲良く壁に吸い込まれる。
鈍い音の後、マーブル模様のアートが壁に映し出された。


「まりさはしぬのはごめんだぜぇえぇぇぇっ!」
「やめてぇえぇっ!まりさぁっ!エレエレッ…。」

ぱちゅりーはクリームを口から流しながら走る。
スタート中盤で虫の息。
この原因の大部分はまりさにあった。

急に止まると落ちてしまう。
そこで、ぱちゅりーの体を緩衝材として利用する方法を思いついた。
ぱちぇは必死で踏ん張る。まりさはガスガス体ごとぶつかってくる。
これなら、スィーから飛び出さずに止まれそうだ。
知恵が回るまりさである。

おいおい。そんな密着操作テクニックが出来るなら普通にクリアーしろよ…。
知恵が回っても賢いとは限らない。

「あぁああぁああぁあっ゛!むきゅっ!?」

ぱちゅりーは容赦ない体当たりを立て続けに受けて、バランスが保てない。
そして、とうとう力尽きスィーから投げ出された。
目の前に転がるぱちぇりーを踏み潰してしまい、まりさは焦る。

ぬるぬるでタイヤがスリップしてスィーが止まらない。
必死の形相で歯を食いしばり、ようやく停車した所で安堵の言葉を口にする。

「ゆーっ!ゆっくりとまったよっ!」

良い仕事したぜっ!の、この表情。顔には返り生クリームが付いていた。
後方には、ぱちゅりーだった残骸が道路に散らばっている。

「ぱちゅりーのぶんまでゆっくりするよっ!」

勝手な事をほざきながら最終回のように締めくくる。
熱い涙を流しながら去ろうとしたその時、
ハンマーを肩に担いだ、マッソォーなモンスターが奥からのっそり現れた。

「どおいうことなのぉおぉぉぉっ゛!?」

いきなり教習所に不釣合いなハンマー鬼威惨が現れる。
完全停止のまりさにおしおきの時間だ。

「ゆっ!ゆっくりゆるしてねっ!?」
「フシューッ。フシューッ。」
「かいわをじでぇえぇぇぇぇー~っ゛!?」

天高くハンマーが振り上げられる。
まりさは逃げようとするが、何故かスィーが動かない。
何故?どうして?考えている間にも危険が迫ってくる。
腰が抜けてスィーを降りる事ができなかった。

「ゆぐぢっっ!?」

哀れまりさはぺっちゃんこ。
ハンマーを持ち上げると、まりさだった物がボタボタと垂れ落ちる。
そのまま無言でモンスターは退場する。



「あのように途中で止まるとペナルティーがございます。」

笑顔で右手のリモコンを操作しつつ、待機中のゆっくりに伝える。

「ありえないでしょぉおぉぉぉぉっ!?」
「ぜんぜんわからないよぉおぉぉぉっ゛!?」
「どこのせいきまつなのぉおぉぉっ゛!?」

もっともである。

「もうおうちかえるっ!」
「もういやだぁあっ!」
「ゆっくりさせてぇっ!」

ゆっくり達は逃げ出した。
スィーであっという間に走り去っていく。
だが指導員は慌てない。ピピッとリモコンを操作して笑顔で呟く。


「グッバイ。」


遠くて爆炎が上がる。
残ったゆっくり達は皆一様に『うわぁぁぁぁぁっ』の顔である。
追従して逃げ出そうとしていたゆっくりは固まった。
何故爆発したのかは理解不能。
だが、逃げられない。その一点だけは強く理解した。


「それでは次の方達。GO!」

爽やかにスタートの合図をかける。ゆっくり達の意見は無視。
清清しい程の外道である。

また新しいアートが壁に公開された。
数体のゆっくりが散ったが成功者はゼロ。
このまま誰もクリアー出来ないのだろうか?


しかし、その後成功者がぼちぼち出始める。
ゆっくり達は生き残る為に、死線を越える戦いに身を投じ始めた。
簡単に言うとヤケクソである。


「どくんだよーーーーーっ!」
「ゆげっ!」「ゆっ!」「ゆがっ!」
「らくしょうなんだねーっ!わかるよーっ!」

ちぇんはピンボールよろしく他のゆっくりに激突しながら、最高の位置をキープする。
完璧にクリアーしてガッツポーズまで取っていた。二股の尾がハートの形になる。
弾かれた他のゆっくりは、ハンマーお兄さんの餌食となった。
道路にまた大穴が刻まれる。


「いけるわっ!むきゅっ!」

ぱちゅりーは頭を使い的確な操縦をする。
スィーは基本、思考と本能で動かす。
理性があるならその分的確に動いてくれるのだ。
だが、体が弱い大半の固体はスピードに耐え切れず、果かなく散った。

それなりの数が成功していく。
その中で、

眼帯の~。
右頬にキズがある~。
黒い~。

このゆっくり達は成功して当然の顔で去っていった。
只者ではない。




そして、れいむの出番がやってきた。

「どぼじでごんなことにっ…!」

ハラハラ涙を流す。
ライセンスはなんとなく欲しかったが、ここまで酷い内容だとは思わなかった。
涙で視界が濁り全てを投げ出したくなったその時、

「あきらめたらそこでおわりなんだぜっ!」

声が響く。
とってもゆっくり出来そうな力強い声。
仮面を付けたまりさが側に寄り添ってくる。
カリスマが溢れ出すその姿に、れいむは一目惚れ。

「ゆっ!」
「がんばろう!れいむっ!」

れいむは感動した。
暖かい言葉で心を取り戻す。
それに答えるようにスィーが困難に立ち向かってくれる様な気がした。
体に響く振動が心地よく感じる。

「ありがとう!ゆっくりれいむはがんばるよっ!」
「ゆっ!そのいきだぜっ!」
「はいはい。GO,GO!」

空気を読めないスタート合図。れいむは突風となり突き進む。
しかし、れいむは冷静に状況を見つめていた。

まず、道路の穴を回避する必要がある。
あちらこちらに点在する穴に、引っかかって落ちたりしたらアウトだ。
視界の端でハンマーを持った御兄さんがそわそわしている。
叩きたくてウズウズしているよっ。キモ怖いっ。

ぶっちゃけ有効なルートは少ない。
れいむは素早く判断して生存する為の道へと突き進む。

そこに邪魔が入った。

「とかいはなありすにみちをゆずりなさいっ!」
「ちぇんにゆずるんだよっ!」

スィー1台分しか通れないスペースに密集する。
早い者勝ちの空気が場に浸透し始めた。
れいむはブレーキをかける。完全停止しなければハンマーで潰される事は無い。
他の2台はチャンスとばかりにスピードを上げる。

「んほぉおぉぉぉぉっ!」
「わかるよぉおぉぉっ!」

勝利の雄たけびを上げて栄光の道へと突き進む。

れいむは臆病風に吹かれてブレーキをかけた訳では無い。
1台しか入らないスペースの3台突っ込んだらどうなるか。そんなことは解りきっている。
れいむは的確な判断を下した。

愚かな2台は絶望的な隙間に我先に飛び込んだ。
接触して互いに弾かれる。その先はポッカリ開いた道路の大穴。

ちぇんはわりと深めの穴に落ちていく。
高速移動による急停止。その衝撃をモロに顔面で受け、歯がグチャグチャに砕けた。
声も出せぬまま気絶する。ハンマーの洗礼を受けて死ぬ事が確定した。

ありすは運悪く低めの穴だった。
スィーだけが穴に嵌り体は投げ出される。

「ゆぎゃぁあぁっ゛!?あついぃいぃぃぃぃっ゛!」

道路は暑い夏の日差しによって超高温。
転がるありすは満遍なく全身を焼かれる苦痛を受けた。

急に回転が収まった。横滑りで滑走する。
視界が安定して助かったと希望が見え始めた時、
自分の側面が削れていく感覚を餡子脳で認識する。

「ゆぎゃあぁぁおぉぉっ゛!?」

アスファルトを滑り続けるありすは、摩擦で体が擦られていく。
「あじすのびはだがぁあっ!」と叫びながら前進していくが、まだまだ止まる気配が無い。
乳白状のラインを道路に描きながら、随分距離を進んだ所でようやく停止。
止まった時には体の半分以上が原型を留めていなかった。



「ゆっくりするのがせいかいだよっ!」

れいむは慎重に最高のルートを走る。
自信が体の底から溢れてきた。
今ならなんでも出来るよっ!れいむは調子に乗っていた。

油断していたその時、側面から衝撃が訪れバランスが崩れる。

落ちそうになりながら懸命にバランスを保つ。が、
更に連続した衝撃を受けて厳しい状況に追い込まれた。

「ゆっふっふっ!ゆっくりしていってね!」

青いおリボンを、身につけているれいむが、下卑た表情で見下していた。
先程からアタックして来るのは何故なのか?
「どぼじでそんなことするのー~!」と叫ぶ余裕すらも無い。
恐怖に涙がこぼれる。


「すたーはふたりもいらないんだよっ!ゆっくりしんでねっ!」

この組で自分以外のれいむ種に合格されるのが気に食わないらしい。
一人注目を浴びる快感に酔いしれる為、邪魔なれいむを抹殺する道を選択した。

れいむは泣き続けるのを辞めて、決断する。このまま落ちるわけにいかない。
スピードを上げて前に飛び出す。風に煽られ危なげにフラフラ体が揺れた。

「にがさないよっ!」

負けじとスピードを上げる。
もう一撃当てれば転げ落ちる!勝利を確信した笑みで接近してきた。
「これでおわりだよっ!」側面に止めの一撃が突き刺さる!




この試験はレースでは無い。
壁の前にある停止線に停車する事が合格条件。
スィーが制御できるならノロノロ走って止まればそれでも合格。
完全停止しなければ何をしてもOK。


止まる事をすっかり忘れていた青リボンれいむは、壁が見えて顔が青くなる。
止めの一撃どころでは無い。
このままでは確実に昇天する一撃を食らってしまう。

「ゆっ…?あぁぁぁぁぁぁー~っ゛!」

必死にブレーキを掛けるが壁はどんどん迫ってくる。間に合わない。
隣の運命を共にするれいむを罵倒して絶望を紛らわす。

「ゆっふっふっ!まぬけなれいむはしんでねっ!」

言い切った後口元が嫌らしく歪む。
思い残す事はなくゆっくり逝けそうだ。そんな事を思っていた目の前で、
何故か目の前のれいむが膨れ始めたのだった。


れいむは閃いていた。スピードを殺す方法を。
足を踏ん張り体を安定させた後、体を大きく扇状に広げる。
風を受けてスピードが急激に落ちていく。

エアブレーキ。

れいむとスィーは、今、一体となった!




「いろいろとおかしいでしょおぉぉぉぉーー~っ゛!?」

一連を見ていた青リボンれいむは叫びながら壁へと突貫。
死ぬのは嫌だという感情よりも、納得出来ない感情が色濃く餡子脳を支配する。
そして、例外無くこの青リボンれいむも壁へ吸い込まれた。
更に命を食らった壁は、漆黒の色具合を増しながら不動に聳え立つ。


「ゆっくり…。していってねっ!」

れいむは満足そうに口にした。
停止線ピッタリに止まり第1試験は文句無く合格である。
涙が一筋流れ落ちた。


「ゆっ?そうだよっ!まりさはどこっ!」

仮面のまりさを探す。
あのまりさが居なければ自分は死んでいたに違いない。
とってもカッコイイゆっくりだねっ!れいむの純潔あげてもいいよっ!

キョロキョロ世話しなく辺りを見渡す。
だが停止線付近には誰も居なかった。「ゆっ?」体を傾け疑問のポーズをする。
ふと、後方を見るとそこには……、


「たずげてぐだざいっ!ずぃーがぢょうじわるがったんでずっ!」
「フシュー。フシュー。」
「もういちどっ!ぢゃんずをぐだざいっ!」
「フシュー。フシュー。」
「おでがいじばずっ!おでがいじばずぅうぅぅっ゛!」
「フシュー。フシュー。」
「かいわをじでぇえぇぇぇぇー~っ゛!?」

仮面のまりさが涙を流しながら、許しを請う情けない姿があった。


このまりさ。スタート開始早々、スピードにビビッてしまい即効でブレーキを掛けた。
ノロノロ走った挙句あっさり完全停止したのだ。
ヤッベ。と思い速攻逃げ出そうとしたが、何故かスィーが動かない。

焦って無駄な時間を過ごして居る間に、
向こうからちぇんとありすを潰して、一仕事終えたモンスターがやって来てしまった。
そして現在に至る。

「うわぁあぁぁぁぁぁぁっ゛!?」

気合一発ハンマーの餌食に。哀れまりさはぺっちゃんこ。
仮面とスィーの小気味良い破砕音や振動が手に伝って来て、
何時にない快感を得たモンスターは、満足そうに道路を横断していく。


それを見ていたれいむは無表情で合格者エリアに入っていく。
灼熱の恋が瞬間冷凍!あれはねーよ。デジャブったよ。

「ゆっくりごうかくしたよっ!」

れいむは見なかった事にして、スィーっとその場を速やかに去っていった。




「合格おめでとうございまーす。」

指導員は変わらない笑顔で話しかけてくる。

「えーと。予想より大分残りましたねー。……チッ。」
『『ゆっ?』』

ありえない声が聞こえたような?ゆっくり達は困惑する。

「何でもありませーん。ゆっくりしていってねっ!」
『『ゆっくりしていってねっ!』』

満足そうな顔で言葉を返すゆっくり達。
お馬鹿な集団を引き連れて建物に入り、多少進んだ所で大きなドアが眼前に現れた。
ピピッと機械音がした後、ゆっくりと開いていく。

「それではここが第2の試験会場でーすっ!」

うねりを上げる渦潮。
全てを焼き尽くすような火炎放射。
ジャキンジャキン揺れてるギロチン。
転がって来るようにセッティングされた丸岩。

「さぁ 滅してしまえっ!」
『『だからいろいろとおかしいでしょおぉぉぉっ゛!?』』


お宝が有りそうな遺跡の罠が満載だ!
殺す気も満々だっ!

「しんじゃうでしょおぉぉぉっ゛!?」
「おみずさんは ゆっくりできないぃいぃぃっ゛!」
「ぎろちんさんは もっとゆっくりできないぃいぃぃっ゛!」

「大丈夫です。死んでも保険は降りますから。」
「ゆっ!?ほけんさんはゆっくりできるのっ?」
「全部飼い主さんに降ります。あなた達は死にます。何を言ってるんですか?」
『『ぜんぜんゆっくりできないぃいぃぃぃぃっ゛!』』

ここには、ゆっくり出来る要素が何も無いよっ!
ゆっくり達はぐねぐね上下運動しながら抗議活動。
当然。耳を傾けない指導員。

「はーい。GO!ごーっ!」

強制射出。
涙を流しながらコースへ飛び出していく一部のゆっくり達。
凶悪なギミックを除けばそんなに長いコースでは無い。
如何に罠を避けてゴールラインを割るか。それが勝利の要となる。



「わかるよぉおぉぉっ!」

ちぇんが他のゆっくりを弾きながら突き進む。
危険を感じたら身代わりを躊躇無く使う。

「ちぇん!やめてねっ!ゆっくりできないっ!」
「うぎゃぁあぁぁぁぁっ!?」
「あづいーーーーっ゛!?」

丸焼きになったゆっくりがコースを転がり下に落ちた。
そこには不規則な水流がゆっくりを厳しくお出迎え。
そのまま流されて渦潮に飲み込まれていく。

「すっごく!わかるよぉおぉぉぉっ!」
「いやぁあぁ!ぎろちんさんこないでぇーーーっ゛!?」

ちぇんの盾にされたゆっくりは、ザックリとスィーごと両断された。
その隙に体制を立て直したちぇんは華麗に走り去る。
勝利を確信して突き進む!ゴールは目の前だっ!

…その時、押してはいけないスイッチを踏んだ。

後ろから重量感タップリの音が聞こえてくる。
見たくは無いが後ろをそ~っと振り向くと、
そこにはゆっくりを轢死させながら迫り来る丸岩が!

「わっ?わからないよぉおぉぉぉぉっ!?」

必死で走った。ゴールは目の前にある。
あそこまで行けば助かるのだっ!

そしてちぇんは念願のゴールラインを割った。

全てが開放された顔。
世の中の全てにありがとう。
決めポーズをしようと二股の尾を動かしたその時っ!
転がってきた丸岩に潰されて星になった。

ゴールしても岩止めが無いから突っ立っていると潰される。
最後の詰めを誤ったちぇんであった。


「むきゅー~!あつくてちかずけないわっ!」

火炎放射で体力を奪われ先に進めない。
この試験は完全停止してもハンマーでは叩かれないらしい。

そんなの物で叩いたらこのコースは構造上、間違いなく崩れ落ちる。
ハンマー禁止。

「これはちゃんすねっ!」

頭脳明晰な、ぱちゅりーは閃いた。
逃げ出せるチャンスが来たと考えたのだろう。
いそいそとスィーで逆走し始める。
危険な道を進む必要なんて無い。スタートがゴールの漫画もあったから大丈夫!
勝手にルールを作り変えて走り出す。

「むぎゅっ!?」

乾いた音がした後にぱちゅりーが弾け飛んだ。
体の真ん中には大穴が開いている。
グチャリと潰れてフラフラと落下。水音がして底深く沈んでいく。


「あっ。このコースでは逆走禁止になっておりま~す。」
『『いうのがおそいよっ゛!?』』

れいむは涙を流しながら上を見上げると、黒ずくめの男が窓の奥で獲物を狙っていた。
ライフルの先から白煙が昇る。鋭い眼差しをれいむに向けた後、
親指をグッ!としながら爽やかな笑顔で歯を煌せる。
「いい仕事したでしょ!」と言わんばかりの表情。

「ぜんぜんきょうかんできないよっ゛!?」

もう一体何なのだ?ここの教習所は。
濃い面子が集まりすぎだ。
ぜんぜんゆっくりできない。ゆっくりさせてっ!


そして、濃い面子のゆっくり達。
右頬キズと眼帯のゆっくりは余裕でゴールを切る。


「うわぁあぁぁぁっ゛!」

黒いありすは叫びながら渦に飲まれていく。
何の見せ場も無く離脱した。

おぉ。企画倒れ 企画倒れ。




れいむは勝利を確信していた。
スィーと一体となった今ならどんな事も越えていける。
そして最大の罠である丸岩が設置されてなかった。大チャンス到来。
あれは流石に怖い。軽く死ねる。

「ゆっ!しょうりはもくぜんだよっ!」
「すいませーん。丸岩設置お願いしまーす。」
「おがじいでしょぉおぉぉぉぉっ゛!?」

勝利の算段が水の泡だ。
手際よく罠が設置されていく。

「どぼじでれいぶをいじめるのー~っ!?」
「だって、そうしないと盛り上がらないからねっ!」
「いみがわからないよぉおぉぉぉっ゛!?」

れいむは運命を呪った。






「れいむ。頑張ってるじゃないか。」

煌びやかな部屋の中。
膝の上に居るゆっくりを撫でながら、ドリンクを喉に通す。

その部屋には老若男女様々な顔ぶれが揃い、モニターを見ながら一気一様に感情を表す。
喜び,怒り,哀しみ,そして安堵の息を漏らす人。
画面に映るゆっくり達にはそれぞれ数字が付けられていた。
顔写真が黒くなってロストする度に溜息が漏れる。



「どこまでいけるのかが楽しみだ……。」

グラスの中で氷が鳴り響く。
笑顔でれいむが写るモニターを眺め続ける。






「それでは。GO!ごーっ!」
「ゆっくりさせてぇえぇぇぇぇぇぇっ!?」

相変わらずのマイペースでスタートをさせる指導員。
れいむはたまったもんじゃない。
目の前に広がる悪趣味なアスレチックコースに、スィーで向かっていく。

「ゆっぐぢしたいぃいぃぃぃっ゛!」

燃え盛る火炎放射に突っ込んでいく。
焼け死にたくないのでルートを確認しながら進んでいった。
周りのゆっくり達もギラギラした目で並走している。
中々気が抜けない状況だ。


果たしてここから先、一体どんな試練が待ち受けているのか。
それは誰にもわからない。
だって、未来はこれから作っていく物なのだから!
れいむは涙を流して絶叫する。

「どぼじで しめにはいっちゃってるのぉおぉぉぉぉっ゛!?」




れいむの戦いはこれからだっ!!!









 終





 …らずに続く。(予定)





「れいむとまほうのいた」
「金バッチ品質保障証」
「まりさは優秀な劇団員」
「ぬし」

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最終更新:2011年07月28日 12:38
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